2020/11/12 のログ
ご案内:「落第街 路地裏」に虞淵さんが現れました。
虞淵 >  
昼間でも薄暗い、落第街の路地裏
朽ちかけたドラム缶に腰かける大柄な男は、やや剣呑な表情を浮かべる

「──で?結局連中の情報は掴めたのかよ」

不機嫌そうな男の声に、電話先の相手はやや狼狽するように言葉を詰まらせていた

虞淵 >  
「とぼけるなよ。
 お前らが俺に依頼した標的の話だ
 裏切りの黒《ネロ・ディ・トラディメント》とか言ったか?」

大柄な男の声に、電話先の相手は随分と慌てていた
『標的』ではなく、『守って欲しいだけだ』などと、喚いていたが
それはどうでもいい

「…ま、それはいい。今月で契約を解消する可能性がある…ってのはどういう了見だ」

煙草の白煙を吐き吹かし、電話の相手を詰める

「足でもスッパリ洗うつもりか?今更」

煽るような言葉に、相手はまたしても言葉を詰まらせる
そして重苦しく、話しはじめた

虞淵 >  
「…それどころじゃなくなった?」

電話の向こうから帰ってきた消え入りそうな言葉
随分と絞り出すような声だったのは、それが已む無しといった判断からか

「──あァ、実態の見えねー連中より、
 最近出来たらしい風紀の集団のがヤベー、と。そういうことか?」

肩透かしを食らったように、その広い肩を竦めてみせる
電話先の相手には…まぁ声色で多少は伝わるか

「まァ、いいぜ。額面通りの金が入ればそれで納得してやるよ。
 ククッ、命と見なされてねぇ奴らでも己の命は大事だろうからな──」

虞淵 >  
「──ったく、少々掃除が行き届いた程度で大したチキンっぷりだな」

なかなか面白そうな火種だと思ったが、
残念ながらこの身に降り掛かることはなかったらしい

続けて別の番号にかける
スポンサー…というよりも闇格闘技のパトロンの女──
基本的には、便利に使えるヤツだ

「おう、近い内にホテルに帰ることになりそうだぜ。部屋は開けとけ──…ああ、しばらくはきな臭えかもな」

空を仰げば、底の暗い雲が流れてゆく
暗雲立ち込める…なんてほどでもないが、そのうち一雨来そうだった

虞淵 >  
「ま、面白ぇ流れになるなら歓迎だがな」

そう言って電話を切り、立ち上がる
雨が降ってくるまでに帰るか、と
化物と揶揄される男の運動能力も雨を避けることなどはできない

「…ちっ、どっかで屋根でも借りるか……」

言う間に、ぽつりぽつりと降り始める、雨
しとしとと降る秋雨の中、男は路地を早足に歩いていった…

ご案内:「落第街 路地裏」から虞淵さんが去りました。