2020/11/22 のログ
ご案内:「落第街 路地裏」に刀々斬 鈴音さんが現れました。
刀々斬 鈴音 > 化け物と化け物、巻き込まれたら簡単に命を落とす戦いから逃れて路地裏に駆け込む漆黒の装甲服の者達が数名。

「無理だよ!!!あれは絶対無理!!!!」

特務広報部、落第街に住まう者なら既に誰でも知ってるその中から少女の声が聞こえてくる。
ガスマスクを外して露わになったその顔は人斬り、刀々斬鈴音。

「……良く生きてここまで逃げれたよ鈴音達。もう、生きてるだけで偉い!
 100点満点だよ!!」

無傷な鈴音と違い同僚の中には負傷した者や体の一部を失っている者、今にも死にそうなものまでいる。
それでも、生きているなら問題ない。

刀々斬 鈴音 > 「あっ。あなた凄い血が出てるね。ちょっと見せて。」

一人の同僚の傷口を見れば矢が装甲を抉ってそれが内側に食い込んでいる。
出血が激しく止血も難しい。このままでは命を落とすだろう。

「うわ……痛そうだね。
 ……それにしてもアレ誰?誰だったの?落第街で有名な人?」

同僚たちにそんな事を聞きながら刀を抜いて身体に刺さった装甲をそれで切り落としていく。
多少身体も削れるけど……。

「公安委員の人なの?……えー……こっち風紀委員なのに公安に襲われるのおかしくない??」

文句を言いながらも傷口を切り落としていく。

刀々斬 鈴音 > 「これで斬っても痛くないし、血もすぐに止まるからね!
 これで大丈夫だよ!他に怪我してる人とかいる?鈴音が全部斬ってあげるよ!」

刀々斬鈴音は人を斬ることに関しては三流であるが斬った人間を殺さない事にかけては一流だった。
そして弱った人間を治療の為といいながら斬ることが出来るのを鈴音は割と楽しんで鼻歌交じりに斬っていた。

「それにしても一瞬でここまでボロボロにされるなんて本当にヤバいよね……。
 鈴音も多分、ギリギリいい勝負した末に負けちゃうと思う。」

自分の実力をかなり盛った。
恐らく鎧袖一触、あっけなくやられてしまうだろう。奥の手を出す前に命を落とす。

「えっ?もし、部長が負けて死んだりしたらこの組織どうなるのかって?」

同僚の一人が心配そうに話す。
神代理央を心配してるのではなく自分の処遇を心配しているのだ。
当然、落第街には戻れないが普通に生きていく事も難しい連中ばかり。

刀々斬 鈴音 > 「部長なら勝つよ。見たことあるでしょ?めっちゃ強いもん。

鉄火の支配者。
大量に展開される異形の集団は遠距離に秀でている。
幾ら、公安の実力者と言っても近距離武器では分が悪いだろう。
……近距離かな?

「……それでも心配?うーん。」

少し考えて……

「大丈夫!!鈴音が皆に新しい飼い主用意してあげる!!
 いう事聞いてれば優しいし!凄く可愛いし!たまに鞭で叩かれるけど!!」

そんな軽口を叩きながらも猟犬達は鉄火の支配者の自分たちの部長の勝利を願いつつ離脱する。
そうして鈴音と共に離脱した8名は無事に生還するのだった。

ご案内:「落第街 路地裏」から刀々斬 鈴音さんが去りました。
ご案内:「落第街 路地裏」に伊都波 凛霞さんが現れました。
伊都波 凛霞 >  
「はぁっ、は…っ……!」

落第街
まだ日の高い路地裏を走る少女の姿

「ッ…!」

建物の壁を蹴るようにして垂直角に曲がり、朽ち欠けた木箱の陰へと素早く身を隠す
息を潜めて身を縮めこむ──数瞬後、数人の駆ける足音が通り過ぎ、遠ざかってゆく

「………」

「…はぁー………」

潜めていた息を大きく吐き出した

まさかただ見回りをしているだけで住人に追い回されるとは思っていなかった
異能犯罪者や違反部活の生徒ならともかく、ただの住人を返り討ちにするわけにもいかず

「参ったね…」

腕章をつけているだけでこんなことになるとは
額の汗を拭いつつ、乱れた呼吸を落ち着けてゆく…

ご案内:「落第街 路地裏」に照月奏詩さんが現れました。
照月奏詩 >  マスクをし、フードをかぶった顔のよく見えない男が歩いてくる。
 何やら街が騒がしい。あっちこっちで風紀委員を見つけただの女が逃げただの。
 本当に今のこの街は……騒がしい。
 ふと道の先を見る。ただの住民ならば見落とすだろうが……やけに砂ぼこりが舞っている。
 つい最近に誰かがここを通ったという証。少し目を細めるが。そこで声をかけられる、この道がどうかしたのかと言われれば。

「……いいや、勘違いだったらしい。一瞬小ぎれいな服が見えた気がしたからもしかしたらと思ったんだがな。それより、あっちで一瞬何か動いたぞ。仲間にも知らせたらどうだ?」

 何重にも布を通したような声。能力で声を拒絶しかなりくぐもって聞こえる声。その声で声をかけた主にそう語る。
 そして指指すのは明後日の方向。住民は血相を変えてそっちへと走りだしていくだろう。それから視線を道の先へと移し。

「……さて、だれかいるなら出てきた方が良いぞ。状況次第だが、今なら抜け道も教えてやれる」

 隠れるということは戦闘する意思がないということ。もしくは戦えないということ、ならば今この街で無益に殺すのはまずい。それが表がこっちに攻めてくる口実になるからだ。
 そう考え可能な限り保護しようと声をかける。

伊都波 凛霞 >  
「誰彼構わず戦闘行動なんてワケにもいかないし…っと……」

誰かが近づいて来る気配と、人を探している気配に再び息を潜める

同時に聞き耳を立てる…
聞こえてきた少年の声は、住民達をあらぬ方向へと誘導していた
やや不審に思うが、なるほど──呼吸の乱れもあり、気配を完全に隠せていなかった

少年一人の気配のみを感じる路地へと、ゆっくりと立ち上がって姿を現す

「……どうして?貴方は…」

木箱の陰から現れた制服姿の少女はやや警戒した、怪訝な視線を向けている
専守防衛で逃げ続けていたのか、制服はところどころが破れたりほつれたりはしているが目立つ怪我はない

左腕に括り付けられた風紀委員の腕章が、この場所で、こうなっている状況を物語っていた

照月奏詩 >  
 腕章を見て目を細める。本来であれば歩み寄るべきだろうが、距離を取ったまま。攻撃してくる可能性を警戒してだ。
 だが理由を問われればゆっくりと語る。

「風紀委員ならこの街の状況を知っているだろう。もしここで不用意に外から来た人間を殺せばどうなる。追加の風紀委員、しかも今来てる黒服とは別の正式な事件解決のための隊員がきて間違いなく街がパンクする」

 事件を解決するために更に風紀が乗り込んでくる事になる。もしそうなれば間違いなくパンクする。
 だから相手を確認してからだという意思を示してから。

「風紀なら猶更だ。仲間が消されたとなれば間違いなく更に調査が入ってくる……まぁ、お前次第だがな。さて、次はこっちの番だ」

 武器があるわけではない。だがポケットに手を入れている。ブラフだが無いよりはましだろうしもし攻撃してきても不意打ちに使える。

「風紀委員、今お前がここに来ればこうなることくらいわかっていただろう。なのになぜ来た、しかも腕章をつけ自身の立場を明確にしてだ……答える前に腕章をはずせ。次誰か来たらかばえない」

伊都波 凛霞 >  
「………」

投げられた言葉を黙って、ただ耳を傾ける
冷静に街の状況を俯瞰的に見る言葉はどこか、此処の住人らしくはない

これ以上の混乱を避ける…という街そのものを見据えての、広い視点での言葉に聞こえた

乱れかけた制服をなおし、一瞬躊躇いながらも、言われたとおりに腕章を外し、ポケットへと仕舞い込む
それから、ゆっくりと口を開いて

「その前に一言…ありがとう、助かった。…と、そうだね…此処に来たのは…」

「仕事だから、っていうのが簡潔な答え…。
 ほら、大きな出来事が起こってると、小さなことを見落としがちだから…ね」

まぁ結果として、特務広報室に触発された住人たちに追いまわさわれることにもなったのだが

「…けど、この辺りもとてもそんな状況じゃないみたいだね…」

失敗失敗、と苦笑シてみせる

照月奏詩 > 「小さな事……なるほどな。中々に変わり者だ、外の町ならいざ知らず、こっちの世界の小さな事件など風紀委員はあまり気にしないと思っていたが」

 マスクの下から小さく笑うような声が聞こえる。
 大事件ならともかく小さな事件を解決するために来たなどと言う風紀委員は見たことがない。
 しかも見た所嘘をついている様子もない、というより着く理由がない。

「お前の言う通り、見回りという意味で歩いて回るのは無理がある状況だ。今や風紀委員など目の敵と言うやつも少なくない……次に来る時には服装には気を付けるんだな。そんな綺麗な制服を着てくれば一発でバレるぞ」

 というとついてこいと言わんばかりに歩きだす。
 途中最短ルートを通らないのは人がいない道。文字通り抜け道を選んで歩いているからだろう。
 少し歩いているとそちらに軽く目線を投げかけて。

「だが、お前のような奴がいるということは、薄々は理解していたがやはり今回の一連の事件は一部部署の独断行動。いやもはや暴走と言うべき事態……ということで良いんだな?」

 確認ともとれるような聞き方でそう尋ねる。流石に風紀委員が本気を出して攻撃を開始したなどとは到底思えず、一部部署が行ったものだとは思っていた。
 その先導が数と火力の権化のような存在であったからそうは見えないだけで。一部を除いた隊員の質も正規の風紀委員の部隊とは言えないように思えていた。

伊都波 凛霞 >  
「はは…よく言われるけど。こういう状況だからこそっていうのもあってね…」

実際に殆どの風紀委員は歓楽街から向こう…学園方面の風紀を守ることを気にかけている
あえて自分が…というのは、少女がそれなりに武闘派であることを意味しているのだった、が…
にしても想定が甘かった。違反生徒でない住人すら風紀を目の敵として追いかけてくるのだ
直接特務広報室が活動したエリアでないにも関わらず、である

「………」

ついてこい、と促され。まだ少し警戒を残しつつも後をついてゆく
自分に危害を加えるつもりなら、そもそも他の住人を遠ざける理由もないが…
道すがら、投げかけられた言葉にはやや物憂げに視線を伏せる

「それは……言えない、かな」

無論、内部の体制について漏らすわけにはいかない
しかし明確な否定の言葉は出せず、ノーコメントとしてしまうのは…肯定ととれてしまうだろうか

「……君は、この街の住人?」

他の服装かあ、なんて考えつつ、妙に鋭い言葉を向ける少年へと問いかける
こんな裏道を知っている以上、外部の人間とも思えず、だからといってただの住人のようにも思えなかった

照月奏詩 >  
「こういう状況だからこそか。熱心な風紀委員だ……悪い意味じゃない。ほめているつもりだ。この街じゃ、少し軽口を叩くと皮肉に聞こえるから困る」

 というと肩をすくめる。
 風紀委員としてはとても良い事だと思うし、素直にほめられる事だと思う。
 だがいかんせんこの街の今の雰囲気、お互いの立場。そして自身がマスクにかけた能力のせいで声も平たんに聞こえる。それらが合わさり本当にほめているのに皮肉に聞こえる。
 言えないという言葉にはそうだろうなと言わんばかりに目線を外し先へと歩く。
 それから聞かれた質問には少しだけ間を開ける。

「……何とも言えないな。この街の住人といえばこの街の住人、違うといえば違う。そんな中途半端な存在だ」

 すごく中途半端な言葉で返した。
 状況によってこの街の敵にも味方にもなる存在。ゆえにそういうしかないのだ。
 事実現在進行形でこの街に敵対している。この街の状態を考えるなら今後ろにいる女を生かして返すなど間違いなのだから。
 だが秩序を守るという意味を考えるのなら……ここで彼女を殺したり裏組織に突き出すのはどう考えても間違いだと思っている。だからこうして街に敵対したのだ。

「いきなり妙な質問だな、この街の住人らしくなかったか? そんなつもりはなかったんだが」

伊都波 凛霞 >  
「空回りしちゃうんだけどね」

苦笑したまま、そう答える
不思議とこの女生徒には嫌味に聞こえていないようだった
元々あまり気にしないタチなのだろう

「んー…こういう道を知ってるからこの街の人、だとは思ったんだけど…」

小さく頬をかいて、先へ歩くその背中へと言葉を向ける
それなりに踏み入った、風紀委員の今の落第街に関する姿勢の話
答えられないといった言葉をそのままに納得する様子も含めて…

「ほら、さっきまでたくさん追いかけられてたんだけど、誰も話も聞いてくれなかったから」

そういう人達とは違うもんね、と
中途半端な存在だと少年は言うが、今少年がとっている行動は間違いなく…

「風紀委員を庇って逃したなんて他の人にバレたら君まで追い回されることになりそうなものなのに」

「利己的な判断じゃ、出来ないことだよ」

そういう意味では、この街の住人らしくない…と言えるのだろう

照月奏詩 > 「そういう物だ。だから小さい事件はあんまり触られないわけだからな」

 残念な話だがなと軽く目線を上に。こんな街でも空は明るい、しかし日が当たらない場所は確実に多いわけで。
 彼女なりの考察を述べれば目線をそちらに。

「たしかに、そういわれればそう見えるかもしれないな……だが、たとえ利己的に考えた所であそこで見逃すという選択はしないだろうさ。実際に実行した人物ならばともかく、お前はそうじゃない。なら不当に殺されるのを見るのはいい気分じゃない」

 誰だってそういうものだろうと肩をすくめる。だが残念ながらそうはならないのが利益や権力の悲しい面である。
 それから少しだけ冗談を交え。

「まぁ、もしこの一件でここにいられなくなったら二級学生ですとでもいってお前の権限で一般学生にでもしてもらうさ。風紀委員の権限があれば可能だろう。しかも単身ここの調査に来れるレベルの強さを持っている奴ならな」

伊都波 凛霞 >  
「私の手じゃ隙間だらけでも、少しでも掬えるものがあればと思ってるんだけどねー」

なかなかうまくいかないよね、と肩を竦め、笑う
散々疲弊するほど追い回されただろうに懲りていなさそうな様子にすら見える
さすがに状況が落ち着くまでは、服装などは今後気をつけるかもしれないが

「風紀委員への恨み憎しが高まってる中でそんな見方ができるんだもん。誰でも…ってわけにはいかないと思うよ?」

しかし話を変えれば、この状況を起こした張本人ならばその限りではないということ
当然といえば当然のこと、不当に殺されている落第街の人間が大勢いるのだから──

「…それは…うん。任せてもらって大丈夫。今日のお礼ってわけでもないけど、それも風紀委員のしごとのうちだもん。
 強さはー……んー、どうかな…?」

快く答えつつも、最後の言葉はやや濁していた
今日のところは逃げの一手だったのもあって、やや情けない姿なのだが

「もしそうなった時にも大事だし……名前、聞いても?」

自分の名前も名乗るつもりで、そう聞いてみた

照月奏詩 > 「……それでも確実に掬えてる物だってあるだろうし、言われなくても感謝はされていると思う。少なくとも俺はありがとうと伝えたい。そいつらに代わってな」

 自身も似たような立ち位置だからこそ、その歯がゆさはなんとなく理解できてしまう。懲りていないその様子もきっとまた来るだろうことも。
 だからあえてまた来る事に水を差したり来ないように言ったりはしない。
 だがその後の発言を。誰でもというわけにはいかないという言葉を聞けば少しだけ笑う。

「そういう所はやっぱり違う世界の人間の見方だな……なにもここは化け物が住む街じゃない。同じように血が通った人が生きてる街なんだ。風紀だろうと不当に殺されるのが嫌だって人間は大勢いる。今は声が小さくて見えないだろうけどな」

 誰しもがそうじゃないのだ。ただバレればただでは済まない。だから弱い存在は言い出せないだけなんだろう。
 ここに住んでいる人達は血に飢えた獣でもなければ化け物でもない。もしかすれば外の人間以上に悲しみをしった人たちなのだから。

「まぁ今は強さは聞かないでおく……名前……か」

 少し考える。それからクルと振り返り。目を見る。
 フードとマスクの間から薄く黒い目が見えるだろう。

「ここじゃ虚無(ヴァニタス)と名乗ってる……後さっきのは冗談だ、言っておくが今更外に戻れるほど綺麗でもなければそもそも戻るつもりがない。俺の居場所はここだ」

 この街とは言わず”ここ”と表現する。それはさっきの会話。つまりこの街の住人と言えば住人であり違うといえば違う。そんな中途半端な存在という意味。

「お前は協力もしやすそうだ。だから名前を伝えた……おそらく1番の混乱はここからだからな。風紀という敵が消えた時、おそらくお前みたいなこの街を見てくれる風紀の力が必要になる。その時は頼らせてもらう」

伊都波 凛霞 >  
「………」

そんな言葉を向けられれば、思わずぽかんとした顔をしてしまう
今までそんなことを言われたことなど何度あっただろうか
無論、それを求めてやっているわけでもないけれど……
うっかり足も止まってしまって、それに気づくとちょっとだけ早足に、少年を追った

「そっか。そうだね…でもそういう見方が出来て、こうやって口にすることも出来る君は、やっぱり──」

見えない、小さな声ではなく…こうやってはっきりと…
"特別"だと感じる。という言葉を口にするべきか否か少々の迷い、そのまま言葉は立ち消えて

「虚無<ヴァニタス>……」

告げられた、その名前を反芻するように繰り返す
直接どこかでその名前を聞いたことはなかった、はずだ
けれど何か、引っかかるような気がして

「その名前、他の風紀委員に名乗ったりしたこと、ある?」

そう問いかけ、は、とするように

「と…私は凛霞…風紀委員の伊都波凛霞。
 さっきのが冗談なのは、うん…そっか。この先……かぁ」

風紀という敵
それが消えた時──
その言葉自体には刺さるものがある
けれど、頼れる力が必要であると言われれば、ぐ、と不安を堪え、笑顔を作る

「…この街、が大切なんだね」

学園のよりよい暮らしを得ることができる機会を冗談だといい、
あくまでもこの街のことを考えているその言葉を噛みしめる

照月奏詩 >  
 足が止まったのなら何をやっているとばかりに少しだけ後ろを振り返り、歩き始めればまた足を進める。
 別に自分が言われたいわけではないが。それでも少しでも掬えたらという思いは同じだろうと思った。だから告げただけだ。
 他の委員に名前を明かしたか聞かれれば一応と告げる。

「だが、そいつは少し過激なタイプだった……お前とはタイプが別かもしれないやつだ。知らないということは本人も態々報告はしなかったようだな」

 それがだれかとは告げない。告げれば双方にとって面倒な事になる。
 だが伝えたことは事実だと言った。

 その後の言葉この街が好きかと言われれば少し足を止める。

「好きか……実を言うとそういうわけじゃない。むしろ嫌いだよ。誰かが泣くしかないような状況を作り出すこんな街はな。無くなればいいとすら思っている」

 少しだけさっきまでのどこかこの世界を中立で見ているような言葉ではなく、少しだけ乱れるような。感情のこもった声で。
 だけどと言いながら足を進めた。

「過去に犯罪を犯しそれを後悔している者、外の生き方を知らない者……そういったここを出たくても出られず、この黒い世界でしか生きられない奴も大勢いるのがこの街なんだ。それを切り捨てていい理由なんてどこにもない。だから少しでも風紀委員に頑張ってほしいのさ。そういった犯罪とは無縁だけどここでしか生きられない奴のために」

 自身が頑張るとは言えない。それでは組織に属していると明かすようなものだ。
 まだそこまで彼女が信頼に足るかどうかはわからないのだから。
 しばらく歩くと足を止める。

「ここまでくれば後は曲がって少し進めば常世渋谷の裏通りだ。そこまでいけば追っ手もいない……案内はここまでだ。まさか家まで送ってくれなどとは言わないだろう?」
 

伊都波 凛霞 >  
自分とは違うタイプの風紀委員に告げた、という少年
何か大きな問題に発展するタイプの人物ならば、情報は共有されているはず
今更この少年のことを疑うわけではない、が──ならばと僅かに安心する様子を見せる
そもそも嘘を吐くならばわざわざ答える必要すらない質問である
自分が騙されやすいタイプだという自覚は一応あるらしい

「………そうだね。君の言う通り。
 私達に出来ることもまだ手を伸ばすことくらいで。
 此処の生活を捨てて、明るい世界で生きることを選ぶ人は、うん。少ないんだよね…」

それは信用問題もあるだろうけれど、彼の言うように此処でしか生きられない人がいる…ということも明らかだった
そして、学園側が認めようと認めまいと、そういう人達もまた生活をして、生きているのだということ

今の状況がそれを余計に難しくしているのだということを心苦しげに、表情に浮かべる
少年の言葉は途方もなくリアルで、彼自身の出自に関わるものなんかと想起させるほどだ
淡々とした彼の声に乱れが生じたそれが、余計にそう思わせた

まだどこか素性の知れない少年の言葉が、なぜか嘘とは思えなかった
そんな会話を交わしながら歩き、やがて指示された曲がり角をひょこっと覗けば見慣れた歓楽街に繋がる大通りが見える

「ここに繋がってたんだ…、ありがとう。お世話になっちゃったね。…うん、そういうのは彼氏に頼むよ」

振り返り、笑顔を作って

照月奏詩 >  
「だろうな、それができるのならそもそもここになんて来ないってやつが大半だろうしな」

 少ないという言葉には同意しか返せない。それができないからここに落ちてしまったのがほとんどなのだから。
 笑顔と彼氏という言葉を聞けばクルりと背を向ける。

「そうしておけ、ついでに彼氏には俺の事は言わない方が良い……彼氏の嫉妬や痴話喧嘩などどんなに金を積まれたって参加したくない話題だ」

 最後にそう冗談のように言い残すと自身は来た道を戻り再び闇の中へ。
 その行き着く先は闇の奥底かそれとも闇と光が入り混じる世界か。

伊都波 凛霞 >  
「そうしとく」

冗談めかした言葉にはこちらも少しおどけた様子で返して…

「……」

細い路地、まだ日が高いにもかかわらず暗い闇へと消えゆく少年の背中を振り返って…
少年の言葉を思い返すように、胸元にきゅ…と手をあて、その背が見えなくなるまで、路地を眺めていた

「虚無<ヴァニタス>……か…」

刻み込むように、少年が名乗った名を呟き、少年とは対象的に光の溢れる大通りへと少女は歩いていった──

ご案内:「落第街 路地裏」から照月奏詩さんが去りました。
ご案内:「落第街 路地裏」から伊都波 凛霞さんが去りました。