2020/11/24 のログ
羽月 柊 >  
「ただの玩具だ。
 勘の良いモノは気付く。魔力に優れたモノには負ける。」

男は万能の"魔法使い"ではない。
才能に負け、平凡にも劣る"魔術師"であり、
目の前の少女にも、生来の素質でいうならば敵うところは何もない。

仮面は口元まで覆っている訳ではなく、煙を燻らせるのは問題なかった。
煙草を手で弄びながら、幾分か警戒を解いたのか、
傍らの小竜の一匹が男の肩に乗る。

「ここは表の世界以上に、一枚岩とはいかない。
 どれほど歩いたとて、闇の全てを見通せはしない。
 
 ……特務…『鉄火の支配者』も、一度は闇から抜け出したが、
 結局ここの全てを火の海には出来ないまま……いや、それは余談か。」

そう呟く男は、確かに知っていた。
この裏の世界で何が起きていたのかを、しかしそれすらも、この闇の場所の一部分。


少女の続く言葉に、口を挟まなかった。
最後の言葉を言い終えるまで、男は黙っていた。

だが、次に彼の口から放たれたのは。

羽月 柊 >  
 

「──ああ、『引き返せ。』」


 

羽月 柊 >  
彼が、少女の友人ならば、許したかもしれない。
彼と、少女が同年代ならば、見て見ぬフリをしたかもしれない。

だが、"男"は残酷にも聞こえるよう言い放った。

煙草を一度吸う。吐き出す。


「俺に逢わなければ、君は"独り"で考えただろう。
 俺はヨキのように優しい事は言えん。

 だが、こんな俺にすら"そこまで"ぶちまけるようでは、
 良い考えが浮かぶ可能性は低く、闇に囚われる可能性が高い。

 ……それは、君に山本の事を頼んだ時と同じだと、俺は思うがな。
 こればかりは、今までの付き合いがモノを言う。俺では…その役目には成れん。だからこそ、引き返せ。」

目の前の少女を信用していない訳ではない。
肩書も、己が友人と呼ぶ相手の先輩というのも、知っている。

それでもだ。

これはきっと、己だからこそ、言えることだ。

レイチェル >  
「全てを見通すだなんて、無理に決まってる。
 それでも、少しでも多く知ろうとすることは、
 決して無駄じゃねぇ」

対峙する者を知る。
それを行わずして、耳を塞いで目を塞いで。
一体、その先に何があるというのか。
個人であれば、それでも良い。
しかし、レイチェルはこの学園の風紀委員に属する者だ。
加えて、そこにはレイチェルの『手を差し伸べる』信条があった。
故に男の言葉に対して、レイチェルは首を横に振った。

「それに、こういう世界は初めましてって訳じゃねぇさ」

幼い頃からこういった闇には慣れ親しんでいる。
落第街でこそなかったが、この世界に来る以前。
全てを失ってからは、どうしようもない街で生きていた。
腐った街で、生死を賭けて生き抜いてきた。

だからこそレイチェルは、
その言葉には、はっきりと異を唱えるだけのことができた。


しかし続く言葉には、一瞬視線を落とす。

レイチェル >  
「……だが、追い詰められてるのは、否定しねぇよ」

自らの内に藁をも掴む気持ちがあったことも、今は肯定している。
一通り吐き終われば、既に心の内の靄は晴れていた。
だからこそ、冷静に自己を省察し、
それだけの言葉を紡ぐことができる。

少し前に真琴と会話をしていた時もそうだった。
目の前の相手を見ようと一所懸命に努めても、
どうしても頭から離れない靄があった。
それは話していく内に晴れてはいったが、
先に、男にここに居る理由を述べた時の感情は、
あの時ときっと似通っていた。

「心配してくれてる気持ちはよく伝わってくる。

 オレとしちゃ、あんたの気遣いには感謝してる。
 でも、今のオレにはやっぱりここを歩くことが必要なんだ。
 
 だから、折衷案といこうじゃねぇか。
 
 『寄り道』はしねぇよ。
 このまままっすぐこの道を歩いて、帰るとするぜ。
 せっかく『大人』から忠告を貰ったんだからな、
 そいつを無駄にはしねぇさ」
 
それで良いだろ、と。
レイチェルは声の穏やかさを崩さぬままにそう返した。
調子を崩さずそこにおり、ただ覚悟の目線を男に返すのみ。


そうして、歩き始めながらレイチェル・ラムレイは口にする。

レイチェル >  
 
 
「――あんたも。この街に居るには、ちょいと優しすぎるぜ」 
 
 
 

レイチェル >  
紡がれたのは警告、或いは心配の言葉。
 
誰もが、いつまでも子どもでは居られない。
システムから自分を取り戻したレイチェル・ラムレイとてまた同じ。

少しずつ大人へと向かっていく彼女は、そう口にすれば
道の先へと歩みを進めることだろう。

前に進んでいく。後戻りしているようであっても、それは前向きな飛翔に他ならない。

時計の針は耳に届かずとも、いつだって動き続けている。

羽月 柊 >  
男は目を細める。
『初めましてではない』からこそ、寄る辺の無い時にはそれが油断となる。
自分がこの夏、嫌というほど味わったことだ。
幸いして自分は良きモノに恵まれたが、それでも散々に辛酸を舐めたのも事実。
先程口にも出したが、同僚となった彼がいなければ、どうなっていたことか。

「…あぁ、知ろうとすることは確かに無駄じゃあない。
 無知は時に罪にすらなり得る。…残酷だが、世界はそういう風に出来ている。」

法がその最たる例。
知識は知っているモノの味方であり、
柊もまた、その知識でこうやって今まで生き抜いてきた。


「…分かった。そうすると言うなら何も言わん。
 俺がしていることは所詮は"対話"だ。
 逆らうことも、嘘をつく自由も許されている。俺が君に否と言ったようにな。」

折衷案に軽い溜息を吐き出す。
だがまぁ、それでいい。警告は聞き入れられた。
"音"は少女の何かしらに残ることを許された。


優しすぎるという言葉には、ただただ一度、ゆっくりと瞬きをするのみ。
視線を軽く逸らした分、受け入れ難い何かしらはあるのだろう。


そうして去って行く少女の背中に、言葉が投げられる。


「…次に来る時は、誰か親しいモノと一緒に来た方が良い。
 それこそ、今は弱っているとはいえ、山本も居るだろうしな…。
 異能は使えんだろうが、話すぐらいは出来るだろう。

 …彼も、君も、話す相手が居た方が良いだろう。」

男はそう口にする。
それはきっと、彼女たちの関係を深くは知らないからこそ、言えることなのかもしれない。

レイチェルが振り返らないならば、そのまま見送り男もその場を去るだろう。

レイチェル >  
彼がその言葉を受け容れきっていないことは、
背中に送られた無言から感じ取っていた。

この教師《おとな》は人が良すぎる。
甘い言葉を吐かず、諭してくれるのは以前の病院でも同じだったか。
それは厳しいようでいて、この上ない優しさである。

そしてそれは、レイチェルにとって心地が良いものだ。
今回だって、随分助けられたように思う。

だから生徒は生徒《こども》なりに、教師へ言葉を贈るのみ。


「……英治か」

今も幻と戦っているのだろう彼のことを思い出す。
以前に励ましてから、もう随分と経ってしまったように思う。
彼のことだって、救いたい。そう考えている。

特にここ最近は自分の感情と向き合うので手一杯だったが、
今ならまた英治とも向き合える気がする。

今度クッキーでも持っていきながら、
落第街を歩くかどうかはともかくとして、少しばかり話してみるのも良いのかも
しれない。戦友《あいつ》には支えが必要なのだから。


「じゃあな、ありがとよ。先生」

結界の効果範囲を出る直前のタイミングを見計らって、
レイチェルは最後にそう口にした。

金色が、闇の先に吸い込まれていくように消えていった。

ご案内:「落第街 路地裏」から羽月 柊さんが去りました。
ご案内:「落第街 路地裏」からレイチェルさんが去りました。
ご案内:「落第街 路地裏」に火光雷鳥さんが現れました。
火光雷鳥 > ――気が付いたら妙な場所に居た。実写映画やら漫画やらでよく見る、こう世紀末…違った、近未来?の荒廃したような街並みのような、まぁよく分からんがそんな感じだ。
問題は何で自分がそんな場所に居るのか?確か、配送のアルバイトで歓楽街に出向いた後、ちょっと寄り道して帰ろうと思っていた筈――…

「……うん、どう見てもこれ歓楽街じゃなくね?つーか、何処?」

おかしい、俺はそこまで方向音痴な属性は無かった筈なんだが。土地勘はまだあまり無いのが裏目に出たか?
けど、歓楽街の奥にこんな場所があるなんて、聞いた事無いんだが…。

(つーか怖い!何かこう、空気や雰囲気が怖い!絶対俺みてーな凡人が来る所じゃねーよここ!!)

と、いう訳で慌てて回れ右!をして歓楽街に戻ろうとした――で、迷った。現在よく分からない路地裏をとぼとぼと歩いている。

「うわぁ…これ完全に道に迷ったんじゃねーか…?」

未だここが何処かは分からないが、先ほどの通りの雰囲気とかから察するに…まさか。

「――まさか…ここが『落第街』って所なんか?」

確か、転移荒野?と並ぶ二大ヤベー地帯だったような。最悪の所に迷い込んで無いだろうか、これ。

火光雷鳥 > (いかん、ひっじょーーにいかん!!俺みたいな奴は一番来ちゃ駄目な所だろこれ!
…とはいえ、どっちに進んでるかもわっかんねーし…誰かに道を聞くのは――…)

丁度、十字路のようになった場所へと差し掛かる。前を見る、右を見る、左を見る、後ろを振り返って今来た道を見る。
…誰も居ない。空気もこう、初めて感じる類のものだ…少なくとも、学生街とかとは真逆に近いものを感じる。

「…いやいや、落ち着け雷鳥。ここは深呼吸をして冷静に考えよう。…そう、冷静に冷静に…れい…せい…なれるかああああ!!!」

思わず叫んで頭を抱えた。怖い!寂しい!あとどっち進めばいいか分からん!!凡人にはハードルが高過ぎる!!

「ちくしょー!何で俺はバイト帰りについ寄り道なんて考えちまったんだ…あぁ、きっと歓楽街のエロい雰囲気に負けたんだな…。」

そのエロい雰囲気に負けた結果がこちらです。取り敢えずここで突っ立っててもしょうがないのだが。

ご案内:「落第街 路地裏」に雨見風菜さんが現れました。
雨見風菜 > バイトを終わらせた風菜が、そこに通りかかった。

「叫ぶ人が居るから何かと思えば雷鳥さんじゃないですか」

落第外に、風菜の姿は場違いだろう。
だが、風菜自身は何度も訪れている。
バイトのみならず……。

「そんなに叫んでいたら、こわ~い人たちが来ちゃいますよ」

火光雷鳥 > 「うっひょぉわぁ!?」

すげぇ素っ頓狂な声が自分か漏れた。どうやら声を掛けられるまで接近に気付いていなかったらしい。
まぁ、考えとか没頭すると周りが見えなくなるタイプなんだろう。慌ててそちらに顔を向けつつ。

「……って、おっぱ…ごほん、雨見…先輩?」

何時ぞやのおっぱ…いや、水着姿だった先輩が何故かこんなやばそうな場所に居た。
…え?何で先輩がこんなやべー感じの場所に居るの?と、思わず目を丸くしつつ。

「やっぱ怖い連中が居るのかよ!いや、先輩それより助かった!こっから歓楽街方面どっちに行けば帰れるんだ!?
ちょっと俺、絶賛迷子中なんだけど助けて!いや、助けて下さい!!」

と、思わず土下座でもしそうな勢いで先輩に食い気味に尋ねる。情けないようだが本人は割りと必死だ。

雨見風菜 > 「まあ、このあたりはまだ治安がマシな方ですけどもね。
 もっと奥に入っていたら、良くてカツアゲでしょうか」

脅かすように軽く言う。

「まあ、最近は風紀の方々が精力的になってますのでおおっぴらにはされないんですけど」

その分、風菜のバイト先は摘発されないかと戦々恐々だが。
今のところ風紀の手入れが入っていないとは言え安心はできない。
だが営業は続いている。

「歓楽街……え、そこから迷い込んできたんですか?
 迷い込むには奥深いですよ、この辺りは」

と言いつつ、案内する気は満々だ。
こうも必死になられては、見捨てるには忍びない。

火光雷鳥 > 「……財布の中身あんまし無いんだけど…あと治安がまだマシって何!?やっぱヤバい地帯じゃねーのここ!?」

あと、風紀委員が精力的に活動している、という言葉を聞いてちょっと青ざめる。
え?ヤバい地帯なだけでも胃が痛いのに警察の代替の皆様が闊歩しておられるの?

「いや、配送のアルバイトで何か歓楽街のけっこー奥のほうまで配達してさ。
で、そのまま直帰していいってバイト先の店長から言われたんだけど…こう、歓楽街って初めて行ったから、すこーしだけ好奇心で歩き回ってたら…。」

うん、どういうルートをこの馬鹿は辿ったのか、何故か落第街に入り込んでいたらしい。
ついでに、結構奥深いところに入り込んでいたらしいが、本人は勿論気付いていなかったようだ。

「取り敢えず、俺みたいな凡人は多分ここに居ちゃいかん気がするので頼むよ先輩!
……いや、待った。何でそんなやばそうな場所に先輩が居るの?」

少し落ち着いた?のか、ふと気付いた。彼女の語り口から明らかにヤバそうな地帯なのに、何でわざわざそんな場所にこの先輩は居るのだろう?

雨見風菜 > 「ええ、一般的には危険な場所ですね。
 奥に行くともっと」

くすくすと、自分たちの立ち位置を他人事かのように言い放つ。

「好奇心で歩くなら、大通りにとどめたほうがいいですよ。
 この先は、異能を持っていなくてもこわ~い人たちが居ますから」

異能持ちも、異能を持っていなくても。
ここに住むからにはそれなりの覚悟を持っている住民ばかりだ。
無論、積極的に問題を起こす住民ばかりではないが。

「アルバイトが終わって、何かを感じたのでやってきたところです。
 さ、こちらですよ」

歩き慣れた感じで、雷鳥を案内する。

火光雷鳥 > 「……うん、どういう風に危険なのかは聞かない事にするぜ…凡人には荷が重過ぎる…!」

くすくすと笑う雨見先輩の様子からして、この辺りは普通に足を運びなれてるのだろうなぁ、と何となく察する。
少なくとも、偶然迷い込んだ上に右も左も分からないこちらとは雲泥の差、というやつだろう。
あと、その精神的な余裕をこの後輩にも分けて貰いたい!さっきから周囲の空気が不穏で怖い!

「いや、好奇心は人並みにあるけど、この辺りを歩き回る度胸は俺にはねーから!
今回たまたま迷い込んだだけだし、自分から来るほど命知らずじゃねーって。」

自分みたいなのは良い『カモ』だろうし、それを分かっているからこんな場所はさっさと抜けたい。
生憎と、ここが落第街、かもしれないとは思っていてもその実態は全然知らないのだ。

「何かを感じた?バイト?…とと、了解了解!」

先導する先輩に慌てて小走りに駆け寄ってその後ろをおっかなびっくり付いていこうと。

(くそぅ、先輩が偶然通り掛かったから助かったけど、何でこんな場所に迷い込んじまったんだ俺!)

雨見風菜 > 「まあ、逃げ足なり腕っぷしなりある程度は必要ですね」

無論、風菜は迷い込んだわけではない。
何度も訪れている以上、この精神的な余裕は慣れがあるからだ。

「ええ、それが懸命です。
 こんなところに居れば、先もいいましたが良くてカツアゲされます」

良くてカツアゲ、その先は語らない。
語る必要もない、察せられるだろうと考えている。

「それに……大通り沿いのお店のほうが安全ですしね。
 治安的にも、お店の質的にも」

火光雷鳥 > 「取り敢えず俺はやばそうなら迷わず逃げるけど、逃げ足に自信があるかっつーと………ねーな。」

だって俺の周りすげーのばかりだし。身体能力は正直、そこまでずば抜けている訳でもない。
異能持ちではあるが、そこまで強力という訳でもないし、腕っぷしなんて喧嘩レベルがせいぜいだ。

「あーー…そしたら俺は全力で逃げるわ。逃げ切れるかわかんねーけどな!」

情けないようだが、そもそも別に好戦的ではないし、面倒事は回避するに限る訳で。
どうしても避けられないなら腹を括るしかないとはいえ、出来るなら荒事は避けたい。むしろ逃げたい。

(…雨見先輩、自然な口調で言ってるけど、金とか巻き上げられるのはむしろ『優しい』って事だよなぁ、これ)

最悪、殺されるのだろうか?と、考えてぶるり、と体を震わせる。流石にまだ17歳で死にたくはない。

「つーかさ。もしかしなくてもここって…えーと、『落第街』…って場所だったりする?
前に出会った同級生に聞いたら、転移荒野と並んでやべー地帯って聞いたんだけど」

先輩ならこの島にはそこそこ長く居る、のかもしれないし、島に来てまだ2ヶ月ちょいの自分は土地勘がまだ全然無い。
その辺り、ちょっと確認はしてみつつ先導する彼女に続いて路地裏を歩き続ける。

雨見風菜 > 「ええ、そうなったときは全力で逃げましょう。
 まあ、この近辺は先程も言いましたが治安は良いほうです」

それでも油断しきれませんが、と続ける。
なお、彼の名誉のために自分の逃げ足で引っ張るつもりなのは言わない。
身震いする様を見て、脅かしはきちんと効果は出ているようだとも。

「ええ、その通りですよ。
 一般生徒には危険地帯ですよ」

自分も一般生徒であることは棚に上げて。
それも、喧嘩慣れしているわけでもないし。

火光雷鳥 > 「…アレで治安が良いのか…つまり、やべー所はもっと凄まじいのか…。」

この路地裏に迷い込む前に落第街の大通り、と思える場所に一度顔を出したのだが…そうか、アレで治安が良い方なのか…と、やや遠い目。

「まぁ、今後は気をつけるよ。俺も流石にまた迷い込みたくねーし…今回先輩が通りかかったのも運がよかっただけだろーしなぁ。」

先輩は先ほど、何かを感じて、とは言ったが、それも近くを通り掛からないと気付かなかったものかもしれないし。
どうやら、不運ではあるが悪運もそれなりに働いてくれたらしい。

(…ほんと、この島はどーなってんだか…俺みたいな初心者にはサッパリだぜ)

島に来ておよそ2ヶ月半。少しは慣れてきた、と思っていたが…この島の懐はまだまだ限りなく深いらしい。

雨見風菜 > 「そうなんですよ。
 言ってしまえば『此処から先は一見さんお断り』みたいなものです」

そんなところに平然と足を運んでいたりするわけだが。
無論、そんな大通りでもトラブルに巻き込まれない保証など無いが。

「ええ、気をつけてください。
 触らぬ神に祟り無し、ですよ」

この地は未だ氷山の一角に過ぎないことは、言うまでもない。
まだ『わかりやすい』だけ、親切な場所であるとも言えるだろう。

「そうそう、雷鳥さん。
 ……エッチなお店の雰囲気に、釣られたんでしたっけ」

からかうでもなく、軽蔑するでもなく。
怒る筋合いなんて、ありもせず。
そう、微笑みを崩さず問いかける。

火光雷鳥 > 「何その敷居が高いお店みたいなノリ…いや、言わんとしてる事は何となく分かるけどさ。」

そんな所に普通に足を運んでる先輩は一般生徒じゃないのでは…と、ジト目で後ろから眺めるが、その程度で動じる人でもないだろう。

「触らぬ神…いや、むしろ神様みたいなのが普通に居そうすけどね、この島。」

変な異世界があるわ、やべー地帯が幾つかあるわで今まで、本土の地方都市で平穏に暮らしてきた一般人からすれば驚きしかない。
彼女の口ぶりからして、あの大通りなどは序の口…落第街の入り口でしかないのだろう。
その『奥』がどうなっているかなんて――少なくとも、好奇心で探ろうとすれば自分なぞすぐ潰されるだろうな、とぼんやり思う。

「ばっちり聞こえてたああああああああ!!!???」

そして、さらりとした先輩のお言葉に頭を抱えて悶絶する。羞恥プレイか新手の!!

「と、取り敢えず先輩!それはそれとして歓楽街まであとどれくらいすか!?」

等と、誤魔化すように、でもしどろもどろになりつつも先輩を急かしつつ何とか無事に歓楽街に帰れた…筈!