2021/01/23 のログ
ご案内:「落第街 路地裏」に羅刹さんが現れました。
羅刹 > (…ったく、心配性な部下だ。梟と蛇は居るから構うな。気晴らしぐらいさせろ
それより、奴らにルートが絞られ始めてる。多少面倒だろうが、迂回と欺瞞を蟻に徹底しておけ)

(あたりまえでしょうボスー。ボスが倒れちゃおしまいなんだから。
りょーかいしました。構成員に伝えておきますよ)

表の世界からは…治安が悪い、犯罪の温床だのと言われている落第街の路地裏。
そこを、闇夜に溶け込む格好で歩く男。
煙草を咥えながら、雑多な街を歩く。
しかし、ただ歩いているわけではなく、下部組織に連絡しながら。

時間を無駄にはしないが、それでも男は…やはり人間でしかない。
休息、気晴らし…それらは必要。

散らかった道のゴミを蹴り、眉間に皺を寄せながら。
汚れた街を、ただ、歩く。

羅刹 > 『盃』を切り、どこへ行くともなく歩きなれた道を歩く。
もう、六年になるか。この道を歩き始めてから――

(人数は集まってきたが、まだまだ手が足りねえ。這い出るのは慎重にしねえと、な)

煙草を吐き捨てる。
相手の戦力は強大。
未だ見えていない戦力も考えれば敵う道理はない。

これが電子ゲームならば、発売前に開発が頓挫するレベルのバランスだ。
しかし、これはゲームではない。

削り合い、殺し合い。
あらゆるバグが許される戦い。

ならば、策を弄しよう。
無数の手を使い、隙に付け込もう。
罠は今でも無数に仕掛けてる。

さて、こうして俺が頻繁に、堂々と姿を現しているからこそ…
耳が早い『あいつら』が、少しでも情報を掴んでいるかどうか確かめることができる。

俺と言う餌に引っ掛かるかどうか。それを…休憩ついでに確かめよう。

ご案内:「落第街 路地裏」に神代理央さんが現れました。
神代理央 >  
落第街にて、一時の休息を取る男の元に、その優れた情報網から漏らされる一つの報告。
落第街の違反組織の中でも、此処迄正確で迅速で、そして有用な情報を齎す組織は、そう多くは無いだろう。
男の組織は、それだけ綿密な網を持っている。

その情報が齎される手段、方法、報告者は様々であろうが内容は単純明快にして簡素。かつ、緊急性を要するもの。
原因や理由など、当座必要ない情報は先ず省かれ、男に伝えられるべき情報が、何よりも優先して届けられる。

曰く。

『鉄火の支配者が、直ぐ近くまで迫っている』

と。


その情報が男の元に届いてから数秒と経たずして。
路地裏の右面を形成していた廃屋の壁が、轟音と共に崩れ落ちる。
其処から現れるのは、破壊の権化。圧制の象徴。蜘蛛の様な多脚と、巨大な砲身をその背に生やした金属の異形。
重機の様に壁を粉砕した異形の脚は――手に粗悪な拳銃を握り締めた儘の薄汚い男を一人、踏み潰していた。

「……全く。激昂して襲い掛かって来るにも場所を選ぶべきだろう。埃臭くて敵わん――」

そんな愚痴の様な独り言と共に、瓦礫の山を乗り越えて現れた小柄な少年。
新品の様に折り目正しい風紀委員の制服と腕章。
体制側の人間である事を如実に示す様な装い。
未だ、羅刹の姿を視認してはいない様だが――兎も角、鉄火の支配者は図らずも彼の眼前に現れた。

羅刹 > あらゆる他事を無視し、作り上げてきた情報網。
それらが、警鐘を鳴らす。

すぐに頭の中で鳴り響く『盃』
1つ目と2つ目の連絡を同時に接続してみれば、逃走を促す心配交じりの…聞いたことの無い切羽詰まった叫び声
3つ目以降はもう、察しがついた。

逃げるにしても不自然な間合いに、『アレ』が迫っているのだと。

(はっ…鯛で龍が釣れたってか?洒落にもなんねぇな)

崩れる廃屋の壁など、どうでもいい。
そこから現れる多脚の異形も…『聞き慣れた』姿だ。

(―――俺が言うまで攻撃はするな。
ここで迂闊に手ェだしたら…せっかくのチャンスが台無しだ。
ちょっとは俺にも遊ばせろ。だが、蛇と梟は来い。いつもとは逆だ。俺の方から情報を共有する)

次々に、下部組織の長に『盃』を繋げ、命令を伝える。
最悪なのは蛇あたりが先走って攻撃をしてしまうこと。
応射に巻き込まれかねない上に、情報を集められない。

この状況は最大の危機であると共に最大の好機でもある。
ここまで『鉄火』に接近できたのは…蜥蜴の中では男が初である。
何としても、逃すわけにはいかない。例え、頭を危険に晒しても、だ。
下部組織…特に、梟は動向に注意しているものの。

今のところ、何が鉄火の身に起こるわけでもない。


そして1つ。
確信に近い思惑が男にはある。
こいつらは、機械のように違反組織を潰して回るが…それは、男が把握できている限りでは証拠が流出した後。

時折この鉄火が行っている示威行為も、本来なら必要ない。
違反組織が邪魔であるだけなら、鉄火一人でこの区画を更地にすれば良いだけだからだ。
そこは『正義』を掲げている組織らしい部分と言える。

逆に言えば…それを利用すれば、この場で戦闘になることはほぼ無いと言える。

「っと、驚いた。…仕事熱心結構なことだな、風紀委員さんよ」

異形の砲をまともに受ければ男に防ぐ手段はない。
それを防ぐため、憎しみの炎を押し殺しつつ、両手をあげ武器を持っていないことをアピール。
そして、その場で逃げるでもなく立ち止まることで。
今しがた鉄火が『摘発』したであろう場所とは関係がないこともまた言外に伝えようと。

ここでも最悪な場合は…読み違えた場合だ。
その時は、蛇と梟の援護を受け、逃走するしかないが、さて。

神代理央 >  
投げかけられた言葉に、ゆっくりと視線を向ける少年。
男が見据える風紀委員は――こうして近付いてみれば、実に小柄な体躯である事を改めて視認出来るだろうか。
羅刹と比べれば、二回りほども小さく、華奢とも言える様な少年。
それが、神代理央、であった。

「……おや。驚かせてしまったのなら謝罪しよう。何分、此処は場所が場所だ。此方も、丁寧かつ繊細に仕事をしたいとは思っているのだがね」

小さく肩を竦めて、羅刹に向けて笑みを浮かべる。
それは友好的、という程でも無いが敵意を浮かべている訳でも無い。
社交辞令の様な、表面だけの笑み。

「全く。此処の住民は相変わらず行儀の悪い事だ。道を歩いているだけで襲い掛かられては、制服のクリーニング代が幾らあっても足りぬ故な。
……貴様は、其処の挽肉になった者とは違い、賢明な男であると期待したいものだが」

今回の邂逅は、本当に偶然が重なったものだった。
偶々、羅刹の近くで何時もの様に示威行動を兼ねた警邏を行っていた。
偶々、激昂した一人の住民が彼に凶弾を放った。
偶々、その男が逃げ込んだ先が――羅刹の直ぐ傍に位置する廃屋だった。
偶々――その男は、凶弾を放った対価として自らの命を差し出し、誰も食すことの出来ない挽肉と化して、異形に踏み潰された。

だからこそ、こうして相まみえる寸前まで羅刹には情報が伝わらなかったとも言えるし、偶発的な出会いの寸前に情報が伝えられた組織の有用性を証明しているとも言える。
兎も角、何もかもが偶然。意図せぬ出会い。
羅刹の正体に気付かぬ儘。少年は僅かに警戒を含んだ視線を、彼に向けているのだろうか。

羅刹 > (…は。実際見ると、ちいせぇ。男娼として売れそうなくらいだな)

対面したことの無い相手。
情報や写真などでは知っているが…実際に見てみるとやはりガキに思える。
異能、魔術なしでやり合えば間違いなく羅刹が勝つのだろうが。
そんな状況がこの場に現れるはずもない。

今、吹き飛ばされて見る影もなくなった誰かとは…蜥蜴は繋がりがない。
手広くやっているとはいえ、全域を支配しているわけではないのは当然だ。
そしてやはり、敵対的行動を起こさなければ…こいつも仕掛けてはこないらしいことはわかった。

「生憎、自殺志願者じゃねぇ。だからこうして手ェあげてんだろ。
無抵抗を殺すほど、暇じゃないだろうしな」

となれば、普通に話しても問題ないだろう。
敬語を使えと言われて吹き飛ばされでもしたら笑い話だが。
手を上げたまま、口を動かす。まるで何も知らない風に。
警戒されているのはわかっている。

こんな路地裏で上等なスーツや靴を着た身綺麗な人物など、目立って当然。
また、鉄火を前にしても怯まないこともその理由か、と推測し。
示威行為を行っていたことを理由に、無抵抗であることを更に強調する。

「ただ、俺も一張羅のスーツが汚れちまった。これからハニーに会いに行くつもりだったのによ。
これ、風紀委員に申請したら補填でるか?」

身近で爆発が起きれば、羅刹が着用しているスーツも埃や砂まみれだ。
手を上げたままの状態ではあるが…おどけるように体を揺らして声音には動揺や恐怖を乗せず、嘘を吐く。
鉄火の戦闘能力は理解しているつもりだが…果たして腹芸はどうか。
落第街の住人からの補填申請など、受け入れられるはずもない。
こんな軽口に、どう反応するか。

相手の性質を見極めるのは非常に重要なことだ。
戦う相手がどう動くかが予想できれば対策も立てやすい。

だが…曲がりなりにも部隊を率いている以上…ある程度の海や山は越えてきていると考えるが。

(期待を裏切ってくれるなよ、『支配者』。強いだけのボンクラじゃ楽しくねーからな)

前回…『サービス』を受けたこともあり、期待を持ちながら。
そんな風にこの羅刹にとっての修羅場を楽しみつつ、返答を待とう

神代理央 >  
さて、居合わせた男に警戒と興味を含んだ視線を向ける。
小綺麗なスーツ。エナメルの革靴。威圧感を与える様な金髪のオールバック。
どこぞの娼館の経営者か。違反部活の長か。
まあ何にせよ、『此の街』でそんな小綺麗な装いの者に碌な奴が居る訳もない。

「その通り。抵抗、或いは敵対的な行動を見せぬ者に攻撃を加える程、我々も暇ではない。その逆もまた然り、ではあるがね。
まあ何にせよ、敵意が無いのであればそれで良い。此れ以上制服を汚したくはないからな」

ぱたぱた、と軽く制服の埃を払いながら男と対峙する。
羅刹の言葉遣いや態度にも、特に気を悪くした様子は無い。
無抵抗である事を殊更強調している様には、寧ろ其処までしなくてもいいと言わんばかりに軽く手を振ってみせるだろう。

「…ふむ?愉快な事を聞く事だな。だがまあ、風紀委員会の活動によって私財に影響が及んだというのであれば、話は聞こうじゃないか。
申請の書類は本庁で書き給え。尤も、スーツ代を手に入れる代わりに取調室の不味い飯を食う事になる…可能性は、否定しないがね」

男の軽口には、再び小さく肩を竦めてくつり、と笑みを零すのだろう。
彼の思う通り、風紀委員会が落第街の住民の補填申請など通す訳がない。しかし、申請したいのならご自由に、と。本庁迄来れば良い、と笑うのだろう。
きっと、そんな事は出来ないだろうと思うが故の軽口、冗談の類ではあるのだが。

「勿論、貴様が清廉潔白な住民であり、叩けば埃が出る身では無いというのなら、取調室は施錠された儘ではあろうけどもな」

と、言葉を締め括り。
男の軽口への返答とするのだろうか。

今のところ、男への態度が変化した様子は無い。
相変わらず、僅かな警戒の色を浮かべながらもそれを態度に出すことはない、といった具合。
言葉遣いには寧ろ尊大さすら見え隠れするのだろう。自身の力と権勢に裏打ちされた、傲慢さが。

羅刹 > 自分の命が簡単に消し飛ばされる状況での話がどれだけ楽しいか。
目の前の相手にはわかるだろうか。
あんな圧倒的な能力を持っていて窮地に立たされるというのも、まあ考えづらいが。

「だろうよ。『綺麗』なその顔にも汚れが飛んでるようだしな」

言質を取ってからの、軽い挑発。
大抵、こういう優男…というより女に見える『男』はそれを気にしていたりするものだ。
取り乱しなどすれば大変笑えるが、それは望めないだろうことはわかっている。

「へぇ、そうか。じゃ、『鉄火の支配者』の許しも出たことだし、今度書類を書きに行くか。
レア物のスーツを汚されて無視されたままじゃ、『反抗』しちまうかもしれねーしな。取り調べもせずにいきなり逮捕、なんざしねーでくれよ?」

促されれば、無抵抗であるアピールを止め、スーツのポケットに手を入れて煙草を取り出し。
火をつけてから口に咥える。
そうしながらも、くつくつと笑いを返し。
臭い飯、施錠などという言葉にも、特に反応は返さない。

『お前ら』など怖くなどないと、挑発を繰り返していく。

「は。密室でタコられるほど怖いこたぁねぇからなぁ。精々、身綺麗にしていくさ。
それと、…滅多にねえ機会だ。聞いてもいいかい?鉄火の支配者」

そう言いつつ、羅刹は瓦礫に腰掛ける。
煙草を叩いて灰を落とせば、相手を少し見上げる形となろうか。

「どうしてお前は、こんなことをする。
その能力なら、軍隊にでも行きゃあ大活躍だろう。
あんな肉片が好きなら、戦場でも見れる。
ならなぜお前は、ここで支配者なんてやってる?」

顎で、ばらばらになった『元人間』を指しながら、言葉を続ける。
今はまだ、羅刹が蜥蜴の頭である証拠を掴まれていないことは確実。
それならば…この強大な相手のルーツを探る。

実際、この相手には興味を持っている。
一軍以上にも匹敵するであろう圧倒的な力と敵に対する冷酷さ、戦場での判断力。
そして、それに合わない幼さ。

恨みを持っているのは変わらない。
今も、手段さえあればためらうことなく相手の頭蓋を砕き、殺している。
あるいは、死んだ方がましだと思える拷問を与えて泣き叫ばせてから殺すか。

…それほど憎しみを持った視線をサングラスに隠し。
相手へと、問いを投げかける。

神代理央 >  
「……おや、お褒め頂き有難うとでも言えば良いかな。
貴様の様な溝鼠に容姿を褒められたところで、一銭の得にもならぬが」

僅かに片眉を上げて答えるその様は、あからさまな不機嫌さを隠そうとはしない。男の挑発にあっさりと引っ掛かり、気にしている様を晒すのは未だ幼い…というより、場数の足りない子供である証だろうか。

「何時でも歓迎しよう。勿論、罪のない者をいきなり逮捕だなんて、早々やりはしないさ。そんな事をするのは私くらいだ。
ただまあ…貴様が『善良な住民』であるのなら、こういった場所に立ち入らぬ様な"指導"は行うやも知れぬがね」

互いに交わし合う軽口。
探り合い、とは違う。少なくとも少年の方は、この会話から男の情報を引き出そうとしている様には見えないだろう。
実際、そういうつもりもない。此の程度でボロを出すならそれまでの事。そうでないなら…もう少し、警戒すれば良いだけの話。

「……おや、私の事を知っているのか。唯のゴロツキならいざ知らず。こんな掃溜めの様な街で、身嗜みに気を遣う様な者からも知見を得ているというのは光栄な事だな。
構わないさ。私に答えられる事であれば、答えてやるとも」

瓦礫に腰掛けた男を見下ろす。
此方も羅刹に合わせる様に、懐から取り出した煙草を咥えて火を付けるだろうか。
甘ったるく上品な香り。日本本土で流通する高級煙草の香りであることは、彼ならばすぐに分るだろうか。

「……ふむ、どうして、か。
そうだな。色々と理由はあるが…一言で言えば『練習』だな」

ふわりと吐き出した紫煙と共に。
滔々と言葉を返す。

「先ず、私は単純に軍属になるには能力が足りない。
勿論、私の異能そのものは戦闘向けである事は確かだが…軍人としての教育を受けた訳でも無し。人を率いるという経験に長けている訳でも無し。幼い頃、異能の実験の為に中東の戦場を訪れた事はあるが…まあ、それはお客様待遇の様なものであったしな。
年齢や体格を考慮しても、一兵卒としても指揮官としても、私は軍人であるには未だ不適格だ」

「次に、私が軍属となる事を私の両親が望んでいない。
此れでも、それなりに名家の出でな。何れ人の上に立つ事を望まれている身だ。一介の軍人として名を上げる事を、望まれている訳では無い」

「しかし、こういった情勢であれば自ら戦い、部下を指揮する能力も必要になる。であれば、此の島はそういった練習に最適だ。
それは貴様も認めるところであろう?此の島の犯罪者共は、島外の者よりも遥かに異能や魔術に優れるが、国家の軍隊に比べれば統率も組織も貧弱。程良い的、という訳だ」

「……他にも色々と理由はあるが、まあ、こんなところだ。
出会ったばかりの貴様には、少し退屈な話だったやも知れぬな」

男の問い掛けに、意外な程流暢に。そして多くの事を語る少年。
それは単なる気紛れか。或いは、男にならば話しても良い、と思える様な何かがあったからか。
何方にせよ、此れで満足しただろうかと言いたげな視線と共に。
言葉を締め括って男の反応を待つのだろう。

羅刹 > 「は。本気にするなよ。『坊ちゃん』、綺麗な顔結構じゃねぇか。お姉さまにモテるんじゃねえのか?
……それなら、支配者サマが居ないときに書きに行くかな。『見ての通り』善良な市民なもんでね。濡れ衣は御免だ」

くつくつ。
思わず…大笑いとはいかないが、喉を鳴らす笑いが漏れる。
鉄火もまた、ニンゲンらしい悩みがあるじゃないか、と。
敢えて、動揺した風は見せない。
容姿などの情報を与えているのは此方も同じ。
欺瞞を通すなら…この場面、多少躊躇ったり困惑するのが本来の正解なのだろう。

しかし、それこそ御免だ。
凝り固まった意地、恨み…それらが羅刹に…例えフリでも弱みを見せることを嫌った。

また軽口を言ってから…問いに対する返答を聞き。
緩く頭を横に振り、立ち上がる。

「能力が足りねぇとか、謙虚なことだ。
…しかし、的、的か。…なるほど。確かにここならその的にゃ事欠かねえだろうよ。
その的当てで俺はハニーとの約束にこんな煤けたスーツで行かなきゃならんわけだ。…迷惑なこった」

そのまま、背を向ける。
ハニーの元に、などと言っていたのに来た道を戻るように。
離れるに合わせて声量も少し大きく、相手に声が聞こえるように調整はしている。

正義ですらなく、ただの利己と的当て、と来たものだ。
『風紀』委員が聞いて呆れる。


そんな奴らの組織の判断で、俺は――――――

(いや、余計な考えだな)

背を向けたまま、緩く挨拶の様に手を上げる。
別れの挨拶のつもりだが。どうせ再会することにはなるだろう。
引き留められなければそのまま『善良な市民』として…路地を曲がり、去っていこうとするが、最後に。

「退屈な話じゃねーさ。いいことを聞けた。『鉄火の支配者』にも人間らしい考え、欲があるってなぁ。
…恨みは買ってるようだが、それも的になるだろ。だが精々タバコの火には気を付けな
ああ、後…面倒毎はここの常だが…善良な市民は巻き込まねーでくれよ、支配者」

ざ、ざ、と瓦礫を踏んで現れるのは…出会いの原因ともなった者の関係者。
梟から報告を受け、彼らが復讐に来ることを察した羅刹はそれを使ってこの場から脱出を図る。

当然、少し手は加えてある。
復讐者達に紛れ…先日も使った『デコイ』が隙を突いて身体に巻き付けた爆薬で自爆を試みる。


羅刹がここに残るのは証拠を残す意味でもよくはない。
今はまだ犯罪を犯していない『善良な市民』としてその場を去っていき。
巻き込まれないよう、地下へと…また蜥蜴は潜っていく――