2021/03/27 のログ
ご案内:「落第街 路地裏」に神代理央さんが現れました。
神代理央 >  
「……逃げなければ、特段厳しい取調も無かったのにな」

落第街の宵闇。
裏の裏。それは表であるまいかと、言葉遊びをする者がいるのだろうか。

何にせよ、己の言葉に応える者は誰もいない。
此処にいるのは、自分と、自分が召喚した異形と
異形に踏み潰された男の死体。
それだけなのだから。

「慎ましやかにしていれば、多少目こぼししてやっても…とは、いかないかもしれないが」

懐から取り出した煙草を咥えながら、死体を見下ろして肩を落とす。
追いかけっこは、得意では無かったから。

神代理央 >  
踏み潰された男は、所謂"運び屋"として生計を立てていた二級学生。
とはいえ、その異能は輸送に即したものではない。
男の異能は『空気を固める』というものだった。

道の無い場所にブロック状に固めた空気を敷き詰めて道路を造り
小型の車両や他の運び屋が通れる"道"を造る。
検問所のある大きな道路や、風紀委員の目につきやすい場所を避け、道の無い場所から効率的に輸送を行う。
男の果たしていた役割はそれなりに大きく、尚且つ本人が
直接者を運ぶ訳ではないから余り目立たない。
今夜偶々、その"道"を自分が見つけてしまうまでは。

「異能の応用力も、咄嗟に壁を作って運び屋たちを逃がした機転も、判断力も悪くはない。
出来れば、此方側に引き込みたいくらいではあったよ。此方は常に人材不足だからな」

男が犯した唯一の誤り。それは、逃げ出してしまったこと。
降り注ぐ砲弾の雨によって空気の壁は容易く撃ち抜かれ、熱で気流が乱れればそもそも異能をろくに発動する事も出来ず。
それでも懸命に逃げ続けた末に――瓦礫に躓いたところを、異形に踏み潰された。

あっけない最期だった。此方にそのつもりが無かった事が、吐き出す溜息をより深くさせる。

神代理央 >  
事後処理は、部下に任せよう。
通信機で手短に連絡を入れると、少年と異形は再び落第街の奥へ。
今夜の狩りは、まだ終わっていないのだから――

ご案内:「落第街 路地裏」から神代理央さんが去りました。