2021/05/30 のログ
ご案内:「落第街 路地裏」に黛 薫さんが現れました。
黛 薫 >  
落第街で弱者が生きるにはコツがある。
強者には従うべき。しかし隷属してはいけない。
反感を買えば踏み潰されるし、己を売り渡せば
使い捨てられる。肝要なのはバランスだ。

この街で成り上がれば必然的に敵が出来る。
幸運でのし上がったところで実力が伴わなければ
簡単に叩きのめされる。故に弁える必要がある。

しかし其処にこそ生き延びる余地があるのも事実。
この街に於ける強者は、押し並べて自分のような
雑魚よりも優先して警戒する相手がいる。

己が生きているだけで目障りな羽虫であることを
自覚し、気紛れで踏み潰されないようにひたすら
日陰でお零れを啜って生きる。欲を出さなければ
『敵』は自分と同じ雑魚だけに留められる。

把握しておかなければならないのは『日陰』が
何処にあるか。だから虎の尾を踏まない程度に
広く浅く情報を集めなければならない。

「……んん……?」

辛うじて雨風を凌げる……否、凌げてはいないが
野晒しよりは多少マシなボロ屋根の下で、黛薫は
集めた情報の整理中。手帳に記した情報を総括して
違和感に首を傾げていた。

黛 薫 >  
湿気た煙草に火を付けて、美味しくもない煙で
口腔を満たす。明らかに思考は鈍ってしまうのに
禁断症状による苛立ちがなくなり、思考の鈍化で
雑念が消えるお陰で頭の中がクリアになるのは
かなりバグめいていると思う。

「……こんなもん……なのか?」

集めた情報を整理する最中で感じた微かな違和感。
眺めていたのは各種違反組織の縄張りと中立地帯、
そして表裏問わずのトラブル、包み隠さず言えば
犯罪の分布に関する情報。

はっきり言って、不自然な点は何もない。
ただ『何も不自然な点がない』のが引っかかる。

例えるなら、提出された毎日の検温の記録を見て
同じ数字が並んでいたのを見つけたような気分。

おかしくはない、寧ろ繰り返し情報を集めれば
そういった一貫性は見えて然るべきなのだが……
何故かその違和感を無視できない。

黛 薫 >  
(表も裏も、もっとゴタつぃてると思ったのにな?)

落ち着いたとはいえ落第街には少し前に大きめの
『波』が来ていた。多少の波に動じる必要のない
大組織はともかく中小規模の違反部活動や自分の
ような弱者はその余波をモロに受けた形になる。

集めた情報からは、落第街がゆっくりと波に
よる被害から復帰しつつあるのが読み取れる。
そこまでは……理解できるし、納得もできる。

敢えて違和感を言葉にするなら……波の届かない
水面下で、粛々と一貫した『何か』が進められて
いるような……そんな感覚だ。

「考えすぎ、だよなぁ……?」

目に留まったのは『誘拐』の発生と検挙件数。
暴力行為に窃盗、違法な売買の検挙と比較して
『上手くやっている』印象が拭いきれない。

気にはなるけれど、何度見返しても違和感止まり。
大前提として『不自然ではない』からそれ以上に
探りを入れられる場所がない。

黛 薫 >  
仮に『何か』が進行しているなら、あまりにも
執念く狡猾に、かつ慎重に立ち回っている──と
評価せざるを得ないが、考え過ぎと片付けた方が
自然なのは間違いない。

少なくとも自分の張っているアンテナに違和感を
裏付ける情報はない。情報網より広く張り巡った
蜘蛛糸は引っかかりようがないのだから、確認を
取ることも出来はしないだろう。

それを承知で少し網を広げることは出来る、が。

(見なかったコトにすんのが無難、だろーな)

気の所為ならそれで良し、しかしもし勘が当たって
いたなら『余計なことはしない』のが正解だろう。
本当に何かが進行していたら下手に探りを入れると
逆鱗に触れる可能性がある。

ご案内:「落第街 路地裏」に羅刹さんが現れました。
黛 薫 >  
この辺りの匙加減は常に弱者の頭を悩ませる。

情報の不足が原因で大きな争いの余波を受ければ
紙切れの如く吹き飛ばされるのは目に見えている。

しかし余計な場所に首を突っ込んで生きて帰れる
力を持たないから、とりあえず探るという選択は
取れない。だからこそ悩ましい。

「ヤダヤダ、しばらく大人しくしとこーかな」

短くなった煙草の火を手の甲に押し付けて消す。

安価故の粗悪を違法な成分の混入で誤魔化した
この煙草は、ギリギリ麻薬とは呼べないだけで
とても落第街の外には出せない代物。最底辺の
住民が手を出す、トリップするためだけの品。

羅刹 > ざぶざぶと
大雨で、水たまりというより水路の様になりかけている路地を歩いてくる音がする
その音は、襤褸屋根へと近づいてくる
大雑把で…落第街らしい乱暴な水音だ

「……この辺りか」

少女に情報網があるように、蜥蜴にもまたその網はある
そこにほんの少し、違和感を感じた
情報を得ようとしているのに踏み込んでこない
マスコミとも違い、どちらかといえばこちらに近い雰囲気の情報の集め方
けれど敵対するでもなく、味方するでもなく…ただ情報を集めているように見える

そこに、少しの不気味さ…何を目的としているのかがわからないと言う感覚を覚えた
少女は単純に安全な場所を測っているだけだろう
しかし、この落第街で成り上がりや他者を押しのけることを目指さないというその理由に、男の思考はたどり着けなかった
障害となるのか、あるいは身分を偽装して引き込めれば、組織の力となるかもしれない

だからこちらの網を使って相手の網を手繰り、居るであろうとアタリをつけた近辺に訪れている
隠れた場所に護衛も居るだけのため、一人に見えるが…男自体がかなりの強面ではある

と、雨風を少しでも凌げそうな場所、その隙間から姿を見れば
ごんごん、と壁を叩いて自分の存在をアピールし

「おう、ちぃ、と用があってな。この辺りで情報を嗅ぎまわってるやつ、知らねぇか」

少し乱暴気味だがいきなり喧嘩を吹っ掛けるような男ではない
ここにも自分が未だ知らない強者が居り、縄張りもある
だからこそ、まずは対等に。
人相までは割れていないことを報せつつ、襤褸屋の外から声をかけよう

男の視線は、聞きたいことがあるという興味に近い視線と、もしかしたらこいつが、という視線が半々、といったところ

黛 薫 >  
「おぁ」

情報整理を一旦切り上げ、休もうとしていた折に
声をかけられる。探るような視線はこの落第街で
生きることに慣れた者の証。

つまり……下手に逆らえばマズい相手だ。

(探してるのは情報を集めてる誰か、か?
あーしじゃ無……いあ、そうとも言い切れねーか。
うっかりヤバめのトコに踏み込んでたらヤバぃし、
怒らせない程度に様子見てみっか……)

素早く保身の算段を整え、警戒のポーズを取る。

自分が警戒したところで、相手を本気にさせたら
何の抵抗も出来ない。つまり自分を『考えの浅い
取るに足らない者』に見せたいがための動きだ。

「情報?何かこの辺で知りたいコトあるんすかね。
そんならこっから出て、斜向かいの路地を抜けた
角にあるジジイが詳しいっすよ。見てくれはちと
信用できねー感じですけぉ、それはわざとだって
コトらしーんで」

さりげなく『この辺りで1番情報に通じた者』を
教えつつ、己もその世話になっていると伝える。
探し人が彼なら自分は用済みで解放されるはず。
もし自分が探されていたら……情報を逆に辿れば
彼のことは既に知られているだろう。

前者なら問題はない。後者でも下手な誤魔化しを
しない誠実な対応に見えてくれれば逆撫でせずに
済むはずだ……と願いたい。

羅刹 > 黒いスーツを雨に濡らし
ただ、目は煌々と光を持ちつつ、相手を見つめている

「……ああ。警戒すんなよ。別にやり合いに来たわけじゃねえ。
ただちぃ、と探してるっつーだけだ」

明らかな警戒の姿勢を見せる相手
けれど、警戒するということはこちらを大きく見積もっているということ
更に、すぐ逃げ出せばあらぬ疑いをかけられることがわかっている反応だ

賢い、とそう感じる
そこらの単細胞な雑魚であれば突っかかってくるか何か知られたくないことがあるなら逃げるだろう
その中心を取った相手に対して興味の視線がわずかに強まる

「あ?あの、うさん臭いよぼよぼのジジイか
…違うな。俺が探してるのはもっと若い奴だ
情報の集め方はそのジジイには及ばねえだろう。
ただ、嫌になるほど慎重でな
こんなごみ溜めで、そーいう身の程をわきまえてる奴にゃあ興味がある
ああ、別に殺そうとかそういうんじゃねえ、話をしてみてーだけさ」

自分とて、突っかかってくるならまだしも徒に落第街の住民は害さない
例の作戦でも事前に根回しをして、被害がなるべく出ないよう取り計らったほどだ

「情報じゃ今はこの辺りにいるっつうんだが…特徴が掴みづらくてな。
…だからこうして虱潰しに聞きまわってるってわけだ。…だから一応お前にも聞く。……こそこそ、落第街で色々嗅ぎまわってんのは、お前か?」


誤魔化されでもすれば、機会が勿体ない
強面ではあるが無暗に危害を加えないことを一応は示してから
一言一言、区切るように聞く
声音はほとんど変わっていないが、視線の質がより剣呑なものへと変わる
だましだまされが日常茶飯事であるここで…嘘を見抜こうとする、慣れた視線を向けていて
嘘を見抜く異能などは無いが、下手な誤魔化し程度なら見破れる自信はある様子で

黛 薫 >  
探している相手が自分か否かの確証は未だ無い。

しかし相手の探し人の候補に自分も入っていると
いう点については確定してしまった。自分とて
落第街のことを嗅ぎ回っている者のうちの1人だ。

「あー、んー……嗅ぎ回るって言い方はしょーじき
実感ねーですけど。あーしも情報は集めてますよ。
あーしみたいな雑魚は情報くらぃ持っとかねーと
明日の朝日すら拝めるか怪しぃすからね」

外面では自分が探されているとはつゆほども思って
いない風を装って己の立場を明かす。何もやましい
事情などないと示す目的だが、内心では観念して
いるに等しい。

『視線』からは踏んできた場数の差が伺える。

もし読み合いになればアドバンテージ足り得るのは
視線を読み取るこの異能だけ。出来るだけ正直に
誠実に答えて、始末する必要がないと結論付けて
貰えれば理想的。

危害を加える気がないのだと再三口にしているし、
『視線』からは嘘を言っている風でもない。
それを踏まえればまだ希望はあるはずと考える。

仮に自分が既に虎の尾を踏んでいたらほぼ詰み。
慎重に立ち回った過去の自分を信じるしかない。

羅刹 > 少女が答えてから、1秒、2秒、男は何も言わない
視線からは質問する前と同じ感情が読み取れるだろう

「……なるほど。頭回るな。探してたのはお前で間違いねえようだ」

そしてその沈黙の後口を開き…
視線から疑いが消え、確信の視線となる
ただ、言葉通り危害を加えようとする暴力的な視線はなく
襤褸屋根に入り、少女に近づいていこう

「いやなに、カマをかけただけだ
最初から落第街に来るような奴じゃなく…
表に居たのにからこっちに落ちてくる奴の情報はできるだけ仕入れてる。
おもしれぇヤツが多いからな

そこから、この辺りに居るっつー情報と照らし合わせて、お前じゃねーか、っていうところまでは絞り込んではいた
ここで言わねーならそれはそれでよかったが…」

「いい度胸だ。ガキの癖に立ち廻り方を良くわかってやがる」

ねたをばらしつつ、肩を竦める
問答のタイミング、警戒の見せ方、とぼけ方
どれもこちらがまともであれば激情を抱かせない方法だった
男から見れば、まだガキと言える年齢に見えるため、素直に賞賛の言葉を。

「…で、情報集めてる理由は…安全のためか。
イカれたこの場所で、それだけを追い求めてるのか、お前は?」

できるだけ、興味をそそられた相手の動向の情報は集めていた
けれど、その理由だけがわからなかったが…情報くらい、雑魚、なんてワードから保身だとアタリを付けて話を続ける
感心から、疑問へと視線が変わり、サングラスの奥の眼が細められていて

黛 薫 >  
「お褒めに預かり恐悦至極、ってな」

相手の『視線』から探し人が自分で確定したこと、
その理由が好奇心であることを理解する。発言と
併せて考えるに落第街らしからぬ立ち回りが目に
留まったのが原因らしい。

いずれにしても相手に害意がないと確定したから
無用に逆撫でさえしなければ憂慮する必要はない。
少女の声音からも誘導や演技の気配は消えた。

「そっすよ、あーたみたいなのには分かんねーかも
しれねーですけぉ。表に適応出来なかったクセして
裏で生きられる力もねーヤツには大事なんすよね」

軽口を叩いて見せるが、格上との駆け引きに随分
消耗していたと見え、懐から煙草を取り出す手が
震えている。むしろここまで隠し通せていたのが
意外なほどに。

「しっかし、あーしみたいな末端まで辿れるとは
良い情報網をお持ちのようで?こっちからしたら
そんなヤツに目ぇ付けられてヒヤヒヤっすよ」

駆け引きが終わり、その相手が広い情報網を持って
いると理解していても未だ探りを入れてくる様子は
見られない。多少なりとも野心があればこの機会を
みすみす逃すことはしないはずだが。

貴方の目に留まった通り、彼女の行動はひたすら
致命的な失敗を避けることに徹しているようだ。

羅刹 > 「隠そうとするやつは、逆に目立つこともある
上がってきた情報見てたら、気になった。
それで丁度暇だったんで、それなら面白そうな奴に会おうと思っただけだ」

そら、使え、と
懐からジッポを取り出して煙草を出そうとしている相手に放り投げる
震える手も見えてはいるが、今は突っ込んで聞くことはせず

「取り入ろうともしてこねぇか。は、立派に生きてんじゃねーかよ」

く、く、と笑う男
あーたみたいな、という言葉から…相手も男の身分というか地位の高さは伺えているのだろう
けれど、それでも…ひたすら保身を求める態度は変わらない
そこにはある種、経験から来る信念のようなものがあると男には感じられた

それは変えようとは思わない
そんな人生相談をするほどは、暇ではない

「…疑り深くもあるな。俺ぁ手を出さねえつってんのに
むしろ増々興味が湧いちまう。保身つーなら、取り入った方がいい、と俺は思っちまうがね
そこんとこ、どうなんだ。大きい傘に入らねえ理由でもあんのか?」

興味が湧いたという言葉通り、質問を続ける
既に探るような視線は消え、ただ単に雑談、といった調子だ

黛 薫 >  
「は、あーしみてーのが立派とか笑えねーですよ」

緊張の残る手でキャッチする自信が無かったため、
パーカーの裾を伸ばし広げてジッポを受け止める。
雨靄の燻る薄暗い廃屋の中に粗悪な煙が漂った。

「強いヤツの下に付かねー理由は……まーいくつか
ありますけぉ。あーしくらい弱いと使い捨ての駒に
されても、抗争に巻き込まれてもノーフューチャー
なのが大きいっすね。その気が無くても象が足踏み
したら蟻は潰されるのが当たり前すから」

安全のため、極力取り繕わず話していた少女の声に
僅かな隠し事の気配が混ざる。嘘はついていないが
もっと大きな理由があると推測できる。

ただ、彼女の瞳に消沈したような陰が過ったのを
鑑みると、多少問い詰めても白状はしないだろう。
視線が不安定に揺れ、爪を立てるように己の腕を
強く握りしめている。

「……面白かったかどうかは知らねーですが。
あーしの見物が済んだなら用は終わりっすよね。

雨に濡れない寝床まで移動しねーといけないんで
あーしは此処でお暇させてもらいますよ、っと。
……火ぃ、助かりました。ありがとっす」

話を切り上げ、その場から立ち去る。

黛薫が最後の話題から逃げようとして見えたのは
気の所為ではないだろう。彼女は表に適応できず
裏で生きられる力もない、と自称していた。

組織への所属が出来ない、或いは出来ても避けたい
理由がそこに起因しているのでは、と予想するのは
貴方ほど頭が回るなら難しくないはずだ。

貴方ではなく、姿の見えない何かに怯えるように
足早に去っていく彼女の後姿は──落第街に身を
落とするほどの心の傷の存在を予感させた。

ご案内:「落第街 路地裏」から黛 薫さんが去りました。
羅刹 > 「……………」

嘘を完璧に見抜けるわけではない
声が震えている、腕を握りしめている
そんな動作を出す程度には、この話題は重かったらしい
それに対して罪悪感など抱かないが追及もしない
立ち上がって去っていくなら、止めもしない

「ああ。俺もそろそろ出なきゃならん時間だ。
…じゃあな。…それと、どうしても『潰されそう』になったらそのマークを捜せ
お前みたいな慎重な奴は歓迎だ」

ジッポは敢えて受け取らず、それだけ聞こえるように伝えて男も立ち上がる
それには『梟』がデザインされている
勧誘用の符丁も縁に小さく刻まれており、それを基にすれば…
少女の情報網でも、その組織にたどり着くことはできるだろう

男も、少女に続いて襤褸屋根から出る

雨は未だ降り続け、落第街を潤していく

ご案内:「落第街 路地裏」から羅刹さんが去りました。