2021/10/18 のログ
紫陽花 剱菊 >  
奇しくも其れは同じだった。
侮らず、奢らず、生か死か。
戦場か、或いは外道か。
何れにせよ互いが巡る思考は生に至る為の思考である。
一種の共感さえ感じるものだ。
如何なる可能性さえ考え、負け戦に背を向ける事を厭わない。
力によってねじ伏せ、生を勝ち取り、屍に立つ戦の習わし。
本質は確かに、似通っているのやもしれない。

「…………」

唯一つ、違いが在るとすれば……──────。

「……!」

全身に重量がかかる。
足蹴にされ、前へと進み、其の体躯を以て動きを封じる心算なのか。
刃が僅かに斬り割いたのは先端のみ。
致命傷には至らないのは、斬った己がよく分かる。
……振り抜いた勢いで"刃は宙に弧を描く"。
"獲物に固執等、微塵も無い"。
空いたはずの右手で在ったが……。

其の手には確かに、指間に挟まれた四つの苦無が宵闇に鈍く乱反射。
前触れも無く表れた刃こそ、剱菊の異能。
望みし刃が、其の手に幾度も精製される刃故の、異能で在り。
生み出せる以上、獲物に固執する訳も無い。
痛みを以ても、瞳孔が閉じる事は無い。
羅刹が口を開いた刹那、返しに曲げられた右手首から乱雑に刃が投げられた。
手首のみでも風切り、上半身の何れかに投げられた苦無。
正確な狙いをする事は出来ない。故に、致命に成らずとも良い。
其れが付け入る隙に成れば良い。

本質の似通う二人が、剱菊の違いが在るとすれば"戦人"也。
苦悶に声は漏らしても、決して自ら言之葉を発しない。意識しない。
言之葉は付け入る隙を、或いは相手の言之葉を以て絡め捕られる事を知っている。
故に、羅刹の問いかけはまさに"好機"で在った。
苦無と同時に、押しつぶされる左に、背に力を入れ跳ね飛ばし立ち上がろうとする算段だ。
問い掛けと言う寸分の刹那の糸、此の瞬間に逆転を狙う。

羅刹 > 襲撃者の背に既に足は無い
足払いから羅刹の足が半円を描いて襲撃者の背を蹴りつけた後は、何もせずに前に進んでいた

そのため、振りぬかれた刃はほぼ空を切るのだが
立ち上がろうとすれば苦も無く立ち上がれるだろう

「―――…まあ、答えねえならそれでもいいが」

闇の中を何かが進んでくる
銃弾とは違う何か

一度襲い掛かればただ襲い掛かるだけか
苦手とするタイプではある
…今もまだ、生殺与奪は相手に握られているに違いないからだ
そう考えると、どうにも気が抜けるが

「っ」

…煙草の火を守るような仕草で両腕を使って上半身を守れば
肌に食い込む鉄の味
冷たいものが肉に入ってくる感触もまた、油断故に何度も味わってきたもの
痛みに呻きはするものの、ポケットから手を抜いたのは防御のためだけではなく
指に引っ掛けるようにして、黒い鉄の塊を引き出すため

ぼたりと血を流し、防御の姿勢から滑らかに…
立ち上がろうとするその体へと放たれるのは硝煙の匂いを伴った銃弾

三連射。光が走る。
かなりの小口径であるため異能相手にはあっさり防御されるもの
ただし、この相手は防御に自分の身体を使っていた
ならば有効である可能性は高い

拳のみを使うとも明言しておらず、特にこだわってもいない
ただ単に、それが都合が良い場面なら使うだけ
目的を果たすためなら…何でも、使う

銃弾程度止められそうな太刀筋ではあったが、今…刀はその手に無い
刀を手放したなら、それに依存する異能ではないかと思いながら
機械的に、頭部ではなく胴部を狙っての銃撃

致命よりも命中を目的とした光が戦人に襲い掛かる

紫陽花 剱菊 >  
目論見は成功。
半身から飛び起き、紺衣や黒髪が宙を舞い血しぶき舞う。
左手に上手く力は入らない。此の一時、握れど、一太刀振れれば重畳か。
即座に居住まいを但し、今度は此方から身を屈め踏み込む。
地を踏み抜き、間合いを詰めようとした最中、何処となく見慣れた冷やかな黒。

「(理央の砲火……?よりは小さいが……)」

宵闇に慣れた双眸が視認した其れは知識に無い獲物だった。
だが、"知っている"。是より大きく、より苛烈なあの砲火を。
幾度と刃と炎を交えた鉄火の支配者が従える鉄騎の砲身。
成れば、"出来る"。"同じであれば、対処も知っている"。

空いたはずの右手には、既に銀刃の小太刀が握られていた。
如何にも、刃に依存はしない。作り出せる異能なのだから。
乾いた発砲音、爆ぜる火花。弓矢よりも速く、鋭く、確実な獲物だ。
然るに、"向き"が分かれば大砲を斬るより容易い。
素早く手元をうねる銀刃が甲高い金切り音を立てて一つ二つ、三つと鉄弾を弾く。
拍子に、頬が僅かに切れるも些細な事。
小太刀の切っ先を向け、一直線。其の胸部目掛けて突きを繰り出す。

羅刹 > 恨みも何もなく、感情も見せずただ殺しに来る殺し屋
誰が雇ったかは知らないが良い者を選んだことだ

「―――――…」

まだ隠し持っていたかと、異能の正体はまだ掴めておらず
衣服の内に、それを隠していたのかと
ただし、どれもこれも…この相手の厄介な部分は手だ

武器があるなら、銃弾が弾かれることは予想できる
次に光るのは自身の胸を目指してくる銀の刃

何としても殺すつもりなのか、その様子は止まることはない
リスクを冒して盃を繋げるか、このまま偶然を期待して待つか
ただ、どちらにしても対処はしなくてはならない

「―――…」

仕方ねえ、と声に出さずにため息を吐く
右手は銃を捨て
差し出される小太刀に『左手』を合わせる
無手ではあるが、掌を差し出して小太刀の先端を受け入れ。
神経を切り裂かれながら握る
貫通するのも構わず、固定しようとし

血の匂いが更に部屋に満ち、サングラスの奥の眼光が男を見据えようとする
相手の、もう片方の腕は狙わない
闇の中で腕を取るのはリスクも高すぎる

「―――――っ」

だから…声も無く、次に繰り出すのは膝
貫通した小太刀ごと、相手の腕を引き寄せ
こちらからの勢いと、引き寄せる勢い
二つの勢いを付け、太い膝が暗殺者の腹に強打を加えんと迫る

紫陽花 剱菊 >  
確かに刃は、肉を穿った。
血飛沫舞い、痛手を負わせた。
然れど、狙いを阻んだのは羅刹の左手。
想定していない訳では無い。己とて同じように、逆手を庇わせた。
成れば次は……──────。

「……!」

憶測通り、引っ張られる己の体。
掴まれた腕を払う事能わず。単純な力押しで在れば、相手が上。
引き合わせるなら、出し惜しみはしない。
此の血濡れの左を使わせて頂く。
腹部に迫る強打に合わせて……思案の矢先、僅かに目を見開いた。
迫る強打には、此方も脚を振り上げ、足掌を合わせて、腕を振り払うように飛び退いた。

「…………幕引きか」

互いに未だ五分では在れど、潮時が来た。
未だ遠いが、複数の気配が宵闇より這い出てくるのが分かる。
他の蜥蜴か、或いは別の存在か。
何にせよ、必要以上に目立たず斬る心算であったが、時間をかけ過ぎた。
是以上は、目的と憚られる。

「──────……。」

暗殺は結果的に失敗だ。
既に、増援が来るほど目立ってしまった以上意味は無い。
一歩、一歩、後ずさる戦人の姿は宵闇に溶けていく。

然れど、現状正体不明の暗殺者。
相手を注意を退く脅威となったはずだ。
故も知らぬが故に、多少の動きは牽制出来ると目論むが、如何出るか……。
宵闇に消える寸前まで、黒の双眸は一寸も逸らす事無く羅刹を見ていた。
『何時でも貴様"等"を狙っている』、と。

其の気配が消える時、再び静寂の夜が戻ってくるのであった。

ご案内:「落第街 路地裏」から紫陽花 剱菊さんが去りました。
羅刹 > しばらく、左手は使い物にならないだろう
僅かになら動かせるだろうが、生活にも支障が出よう
冷たい鋼が、羅刹の内から抜けていき

垂れさがる左手をそのままにしながら、様子を見る
盃は使っていないが、定時報告か、あるいは連絡が無いことに焦れた"仮の仲間"が帰ってきたか
どちらにせよ、闇に消える暗殺者を追う手段などこちらには無い。

あのように、闇を媒介にして移動する異能の可能性もあったなと今更ながらに思い
それならば、精々部屋だけは明るくしておこうかと対策を練る
落ち着かないが、対策を講じる必要があるならそうするだろう

「……問答だけして襲い掛かって帰るか。…ったく、嫌な想像の方なら…
…どんだけ手札を隠してやがる」

風紀ではないことは感づいているが確証はない
あれが腕章すら付けていない風紀の手の者なら、焔から受け取った伝言は信じるに値しなくなる
災厄とこちらで呼称した呪いの塊、異能すら傍受する手段、暗殺者
それらを取り揃えておいて何が『秩序』、『正義』だと考えたくもなる

そうでなくとも、目立った敵対組織のメンバーにあんな男はリストアップされていない以上
少なくとも、表側の人間であろう可能性が高い

ただ…どちらにしても、あの男の身分を決定付ける要素にはならない。考えは保留しておく

「―――――――――…」

転がった椅子を立て直し、机はそのままで新しい煙草に火をつけ
右手で面倒そうに苦無を抜き、適当に放る
指紋などはどうせ残っていないだろうし、調査させるだけさせて何かしらに利用するか


…結論から言うと、ではあるが
暗殺行為が抑止のためというなら二度手間であった。
元々、災厄が暴れまわった上、異能の傍受が為されているかもしれない疑いがある以上

蜥蜴は派手な動きなどする予定は立てていなかったのだから
抑止と言うなら、既に災厄を差し向けたことで目的は達成されている
風紀委員を攫い、仮に組織の一員とはしたが…それも今のところは情報収集、慰安が目的である
本当ならばこういった突発的な戦闘で代わりに戦わせるつもりではあったのだが、タイミングが悪かった

「――――…」

そうしてしばらく。
救援が来るか、あるいはまた不意の来客が無ければ…羅刹はそのまま、煙草を吹かすことだろう

羅刹 > ―――慌てて入ってきた構成員に治療されつつ。男は目を閉じ、闇に身を預けた
ご案内:「落第街 路地裏」から羅刹さんが去りました。
ご案内:「落第街 路地裏」に伊都波 凛霞さんが現れました。
伊都波 凛霞 >  
"蜥蜴"の仮のアジトの一つ
普段は余り身に付けないだろう、本人の趣味とは異なる私服に身を包み
首元につけられたチョーカーを指先で軽く引っ張ったりしながら、少女が佇んでいた

カットジーンズにブーツ、薄地のシャツに厚手のジャンパー
落第街で調達するなら、上等な部類に入る服装なのだろうか

まだ、許可を得られるまではこの仮のアジトの部屋から出ることは許されない
"とりあえずの信用"は、言葉でなく行動で示すとし、
手枷足枷なくとも部屋から脱出する様子は見せなかった

無事、シャンティさんは解放された
それを自らの眼で確認し、見送った
彼…羅刹は、律儀にも約束を守ったということになる

「…はあ」

口を開けば溜息が出るのは仕方のないこと
目の前の誰かを助けるのに全てを擲ったことに後悔はない
しかし今後を考えれば、気が重くならないわけがなかった

ご案内:「落第街 路地裏」に羅刹さんが現れました。
羅刹 > Rrr rrr

数あるアジトの一室。その外からそんな、小さな音と振動が響く
手かせ足かせは外されたものの女の服装については、手に入るモノの関係上、あまり本人の意向は叶えられていない
しかしそれでも最低限動けるだけの衣服は替えも含めて支給される

焔や白梟と言った『前例』があるから、女性に必要な物品も定期的に与えられるだろう

見張りは減ったものの、居ないわけでもなく
カメラでの監視と、部屋の外に二人…見張りが用意されている

そこから、『枷』に頼り切りでないことも伝わるか

そんな中、見張りの一人が女の部屋に入ってきて。
陰鬱なため息を漏らす女に、見張りは通話デバイスを手渡そうとする
今も鳴っているそれは、通信の秘匿性を重視した古臭いデザインのもの
受信しているのは、羅刹からの通信


―――よぉ、大人しくしてたみてぇだな
…最低限足りねぇモンは今のところ無いようにはしたが、どうだ?


通信を取れば、第一声はそんな声
ほんの僅か、言葉の端に疲れが乗っているような

…少なくとも、女は…、一夜は、無事に誠意ある行動を見せた
ならば羅刹もまた動く必要があるだろう

仮とはいえ、仲間扱い
逃げられない、監視されている以外の不満があれば聞いてやるとの声
本題に入る前の、こちらからの誠意も受け取っているかの確認ではある

伊都波 凛霞 >  
見張りが入ってくれば何か用かな、と視線を送る
成程、何処からか連絡があったらしい
大体想像はつくけれど、と手渡された通信デバイスに視線を落とす

「…貴方が約束を守ったから。
 ちゃんとした服ももらえたし、そっちの要求通り動くことに不足はないかな」

欲を言えば没収された武器等は返してほしいところでもあるが
どちらかといえばあれば対人よりも対怪異を想定した装備だ
なくても問題は…とりあえず、ない

「彼女の解放も見届けた。
 …あとは何から応えればいいか」

いくつか提示されている自身への要求
まずは何からさせられるのやら

羅刹 > 当然、働かせる以上最低限の装備は支給する
トンファーを扱っていたことから…無手でも戦えるであろうことは予想できるし
注文が無ければ、武器は用意されないが。

――そうか。一歩目はうまく行ったようでなによりだ。
  後10分、っつーとこか。それだけ時間が経ったら見張りと部屋を出て1つ上の階の角部屋に来い
  今日のところは、情報を渡してもらう。何、部屋に沢山の男を呼んでる――、なんてことはねぇ。そのまま来い

それだけ言って、通信は切れる
今日のところは慰安目的ではないことを最後に言ってから
10分とは、羅刹が移動してくるための時間か

言葉通り、見張りと共に部屋へと向かうなら
羅刹は珍しく袖が無い…ランニングシャツを着ており
左手に大きな包帯、腕にいくつかの治療具を付けて…椅子で煙草を吹かしている

――その腕は丸太の様であるが、その傷以外にも傷だらけである

「来たか。そら、座れ」

その部屋には皮張りのソファとガラステーブル、キャスター付きの椅子が備えられているだけ
その内、ソファに羅刹は座り、キャスター付きの椅子を相手に示して座るように促す

女を連れてきた見張りは、近くで待機している状態だ

「色々あって聞きそびれた事が多かったからな。
まずは楽な仕事から、だ。改めて、名前と能力…異能を聞こうか」

隠し立てはしない、などという注意は行わない
相手もそれはわかっているだろうと
深くソファに背を預けながら、視線を向ける

伊都波 凛霞 >  
ひとまず、慰安目的の呼び出しではなかった
安堵で漏れた吐息は、偽りではなかっただろう
自身で呑んだ条件とはいえ、後ろめたさ、自身の尊厳
それらを完全に無視できるわけではない
例え我慢が出来ようとも、である

立ち上がり、見張りと共に部屋を移動する
…まずは男の風貌に驚いた
先日とは変わって、全身に大きな傷を負っていたからだ

「……その怪我は?」

問いかけながら、促されるままに椅子へと腰をかける
今日は、どうやら色々と聞かれる日らしかった
…まぁ、約束を交わしたとは言え、互いのことを何も知らない状態ではある

「伊都波 凛霞。
 異能は、リーディング」

他人や物体に残る記憶の残滓を辿る…
サイコメトリーって言い換えたほうがわかりやすい?と問いながら

「他の能力は……まぁ、戦えます、くらい…?」

細かく伝えようとすると長いんだけど、と
『なんでもできます』ぐらいの曖昧さで、それを伝えた

羅刹 > 優先順位を、羅刹は考えていた
この性格なら、我慢するなとでも言えば、例え演技でも良い反応を慰安で見せるだろうと予想はしている

だが、今必要なのは情報だ

ここしばらく
余りにも…今度はこちら側が、風紀側の手札を見ることができずにしてやられている状態が続いている
このままでは、慰安云々以前に、床に転がるのは蜥蜴たちの頭だ

「あ?、これか。それもまあ、お前を呼んだのに関係がある
…凛霞。異能を使わない、なんて舐めた真似して捕まったわけじゃあねえか」

嘘を吐いている可能性も多少は考えるが、まだ『緊張』し合っている状態で無駄な嘘は吐かないだろう

ただ、用心のため…確かめる為に…煙草の空箱を渡して
読み取れる記憶を聞いて能力を確かめようとはする
一番強烈に空箱に張り付いているのは、『死ぬ』ことを覚悟し
それを何とか乗り切った…昨日の出来事の後の、羅刹が暗い部屋で治療されながら佇んでいた記憶だが

それに答えられれば、ほう、と声を漏らして
一先ずは能力については信じるとしよう

「……ああ、だろうな。
あの動きであんだけ武器持って飾りでしたじゃあ、ねぇだろう
OKだ。伊都波 凛霞
続けて、だが――…」

取り出すのは、2枚の写真と1枚の似顔絵
写真の内1枚は非常にブレてはいるが、黒い文字が全身を覆う少女のもの
もう1枚は、落第街らしき場所で懸命に倒れている者に寄り添っている少女のもの

最後の似顔絵は、多少曖昧に描かれているものの、刀を持った鋭利な目つきをした男のものだ

「――わかればいい、っつー程度だがな。こいつらの事を教えろ」

問いかけをしつつ、羅刹は様子を見る
これも情報収集の一環
これらの人物が風紀委員に関係のあるものかどうか、探るためのものだ

立て続けに質問はするが。
当然、伊都波 凛霞は既に『仲間』ではあるので途中で口を挟むこともできるだろう