2021/10/22 のログ
ご案内:「落第街 路地裏」に伊都波 凛霞さんが現れました。
伊都波 凛霞 >  
───数日、過ぎた

学園側──ある程度の秘匿はされているだろうけど──そちらでは自分はまだ行方知れずということになっている、筈

自由が与えられている、というわけではないが不自由というほどでもない

そんな生活が続くと、見えてくるものもある

普段、此処に訪れる時など風紀委員関係のコトでしかない
よく見ているつもりでも、立場という土台の上から眺めることになる

いざ、生活をしてみると見えてくるコトも、いくつもあったのだ

「想像以上というか、なんというか…」

生活レベルの低さ、治安の悪さ…
異邦人を含め不法入島者、違反部活に二級生徒
地下に潜れば、それは更に顕著になる

そんな、この街の実様を身に沁みながら
普段はポニーテールに纏めている長い髪をそのままに、
然と風に流し、廃ビルの屋上から、自身の数日過ごした街を眺めていた

ご案内:「落第街 路地裏」にさんが現れました。
> 少しずつ廃ビルの屋上へ上がってくる影
時折疲れたような息を吐き出すものの、しっかりと階段を踏んで上へと

ある趣味のために屋上を目指す影はようやっと屋上へと足を踏み出した

「――おや、先客がいらっしゃった様子」

ビルの屋上から出てきたのは絶えず笑みを浮かべる男
それは周囲を見渡した後に人の気配を感じ取って、小さく言葉を吐いた
さて、どこにいるのだろうか

伊都波 凛霞 >  
少女は錆びて少々頼りないフェンスの前でビルから街を眺めていた、が

──今の自身の立場もあり、気は張りつめていた
階下から屋上に上がる誰かの気配は感じていたのか、視線を向けて

「…どちらさま?」

こんな場所に来るのは…まぁ、この街の住人だろうか

>  
「おや、そこにいらっしゃいましたか」

見るからに頼りないフェンスの前
そこに少女を見つけ、軽くお辞儀を

「私、浄水器の販売員をしておりまして。柊、と申します」

少女の見立て通りどっぷりとこの街の住人だ
見た目は身ぎれいだが、浮かべている笑みは胡散臭く感じるかもしれない

「こんな所でどうなさったので? 飛び降りならやめておきなさい
 此処よりもっといい場所がありますよ?」

儚げな気配を感じて、そう口を動かしてみるがどうだろうか

伊都波 凛霞 >  
「──特には、この街を眺めてた、だけで」

柊、と名乗った男にそう答える
この街の住人にしては身なりは整っている
雰囲気も、どこか胡散臭さを感じるものの荒んだものを感じない

「飛び降りたりはしないので、大丈夫ですよ」

そう言って少女は苦笑する
まぁ、もしビルの下で何か問題があったら飛び降りるけども
それはきっと男の言うソレとは趣が違う

「此処より良い場所って。
 飛び降りるのに良い場所なんてあるの?」

より誰かに迷惑のかからない場所、とかだろうか
別に飛び降りる気もないけれど、興味本位だ

>  
「おや、おやおや。私もこの街を眺めるの好きなんですよ。
 汚くていいですよねぇ」

貰った回答で、嬉しそうな雰囲気を放ちながら答えて
ゆったりとした足取りで此方もフェンスの前まで進み出ようか

「そうなのですか。それはざんね――喜ばしいことです」

胸に手をおいて大仰な仕草で胸をなでおろす
きっと、此方は下でなにかあっても飛び降りないだろうが

表の人間だと、雰囲気、仕草、言葉遣いから推測する

「目立ちたいのならば学生通りがいいでしょう
 もっとひっそりと、となればスラムでしょうな」

ふむ、口に人差し指を当てて考えた後の答えはこうだ
碌なものではない

「さて、この街を見てなにか思いましたか表の人間さん
 人間でなかったごめんなさい?」

伊都波 凛霞 >  
目立つ、目立たない
なるほどそういった観点ならこのビルは微妙なのかもしれない
そんな男の返しに小さく肩を竦めていた

「この街を見て何を思ったか?」

問いかけを復唱しながら、視線を男から流し落第街のほうへ
もうじき夜の帳が下りるだろう、落第街の姿は…まるで希望を感じさせない色褪せた風景にすら思えた

「人が住んでいるんだから、街は街。
 でも、此処で健全に生きていくのは大変なんだろうな、とか
 
 ……まぁ、そんなありふれたことを」

面白くもない感想でごめんね、と言葉を返す

>  
「ええ、正直な感想おお願いしますよ?」

やがて、此方もフェンスの前に到着
相手と同じように落第街へと瞳を向け
あいも変わらず汚いと、笑うかのように肩を揺らした

「ははは、ありふれてますねぇ
 でもそういうのいいですよ。私は好きです」

飾った言葉より、全然好みだ
謝る言葉が耳に入ると首を横に振り

「大変ですよ。この街に住むのは
 大多数は犯罪に手を染めなければなりませんから」

それを奪うのは、と言葉を続け

「風紀の方々、ですね
 あの方々のおかげで住みづらい」

伊都波 凛霞 >  
「…そうだね。
 この街と住人は学園側から存在を認められていないから」

それでも現実に、此処で人が生きている
それを人として定義するかしないか、という話でもあるが

「だから本来は皆、この街を出るべきなんだと思うけど」

意外な程に、この島の明るい場所で生きられない人は多いようだった
そんな人にも手を伸ばせば、とってくれる人は、いた
だから風紀委員に在っても、自分はそうしようと思い続けてきたのだけど

「風紀委員って、信用できません?」

そう、問いかけを返した

>  
「ははは、仰るとおり。
 存在を認められておりません。
 悲しいですね。寂しいですねぇ」

人と定義してくれている人は多いだろう
だが、認めない人々もいるのは事実
都合は良いですが。そう言葉を乗せた。

だけども、出るべきとの言葉は目をパチクリとさせるものだった

「随分と無理なことをおっしゃいますねぇ
 それができれば苦労は致しませんよ。
 
 ですがまぁ、できれば幸せでしょうねぇ」

どうしようもない人間もいる
藻掻いても藻掻いてもどうにもできない人間だっている
寂しげな、雰囲気を

「信用できませんねぇ」

返された問をすっぱりと、切り捨てた

「犯罪を糧に生きてる人たちにとってしてみれば
 風紀委員なんてものは邪魔者ですからね

 よくある話ですが。貧しい少年がパンを盗みました
 風紀委員はどうします?」

伊都波 凛霞 >  
「道がまったくない人ばかり、ではないと思ってるよ」

無理なことを、と言う男にはそう返す
道が見えていないだけ、の人もいるはず
その道を照らしてみせるのもまた、風紀委員の役割だと
少女もそう思っていた
しかしそれが出来るのは、信用を勝ち得た風紀委員だけ
男の言うように、犯罪を糧とする者にとっては邪魔でしかないのだろう

「犯罪をしなければ生きられない人と、そうでない人がいるからね。難しい」

「少年に罪を説いて、窘めて、理由を聞いて、盗みの必要のない環境へ導く。
 やるべきことは瞭然としてる。…もちろん、言葉が通じる前提だけどね」

自分の望む風紀としての在り方は、こうだ
現実にはそう簡単に進まないだろう、あくまでも理想に過ぎない

>  
「ほほう、随分と楽観してますねぇ
 ですがその通り。道がないわけではない
 
 しかし、照らしてくれる人がいない人間はどうするので?」

最後はつい、口が滑ってしまった
忘れてください 恥ずかしげに頬を掻いた

此方が思っているのは極端な話
風紀委員とは誰も彼も邪魔者でしかないのだ

「おや、理想だけを語らないのですか。意外や意外
 貴女は現実が見えてらっしゃるようだ」

相手の風紀のあり方、その有様を聞いて

「と、思えば理想ですか。貴女は評価が難しい
 では次の質問よろしいでしょうか?」

見定めるように、閉じていた目を開き相手を流し見て

伊都波 凛霞 >  
「現実は現実、理想は理想。
 でも理想がなかったら現実をそれに近づけることはできないから」

忘れて下さいと男が言った
"道を照らしてもらえない人間"
それも、きっと現実の一つ
そういった相手に巡り会えるかどうかは…本人の姿勢も勿論だが、多くは天運としか言い様がないのだから

「なにかな」

言葉の雰囲気は落ち着いたもの
ただし、剥き出しでないにしろ風紀委員への敵意は感じる
今の自分は腕章もしていなければそれらしい格好もしていないが
この街の情報通ならば、風紀委員が一人最近行方知れずになっていることも知っているかもしれない
目の前の男が何を意図して言葉を投げているのか、注意を払いつつ、言葉を待つ

>  
「ふむ、そうですね。理想がなければ現実を変えられない
 いい言葉です。胸に刻んでおきましょう。

 貴女のものとは違いますが、私も理想がありますので」

そう、相手の言う通りだ
理想がなければどうして望む道に辿り着けようか
相手の言葉、それに感動したのか大仰な仕草で胸の前に手を合わせた

「ここ最近、小耳に挟みまして。ドジを踏んだ間抜けな風紀委員がいると」

此処までの問答で表の人間ということは既に理解済み
更に深めていけば語った理想論などは風紀委員が語りそうなものだ
更に更に、情報を耳にしている。

「貴女は、その風紀委員でいらっしゃいます?」

伊都波 凛霞 >  
「なるほど」

その問いかけは意外といえば、意外だった
この男は落第街で生き抜いている
で、あれば迂闊な言葉なんかはそうそう使わないだろう
これまでの問答は世間話の延長ではなく小さな"探り"
要するに、これが本題ということだ
わかりやすい
思わず苦笑を漏らす

「そうだね…もしそうだったら?」

なので、あえて肯定も否定もせず、質問に質問で返した

>  
探っていたのは間違いない
下から仲間が来るやも、と考えてもいた
だがそれはなさそうだ

で、あれば。

「もしそうなら……そうですね
 このビルの下に落ちることになるでしょう」

きっぱり、そういった
しかし、しかしだ。

「もう一つだけ、最後の質問に答えてくださいませんか
 風紀委員?様 返答によっては雑談に戻りましょう」

此処までの問答で些か相手を気に入ってしまった
もし風紀委員だとしても、すぐに手をかけるのはどうだろうか
冷静な部分が、そう語りかけてくる
もう片方は、熱く煮えたぎっているのだが

伊都波 凛霞 >  
「ちゃんと答えて、教えてくれるんだね」

ビルから落ちることになる
そんなことをわざわざ伝える必要はない
風紀委員を心底疎ましく思う住人なら、
疑わしきはなんとやらで即行動に出てもおかしくはない

が、彼は違うようだ
敵意に似た感情は感じることが出来る
しかし同時にその思慮深さも十分に伝わる
先程の視線から感じた通り、"見定めて"いることがよくわかった

「いいよ。柊さん、がちゃんと質問に応えてくれたんだし、私もそうする」

風紀委員であることは肯定せず
自身の名乗りも返してはいない
それは警戒しているのは勿論のこと
ヘンに今の自分の状況に誰かを巻き込みたくないという思い

そう、少女としても"見定める"必要はあったのだ

>  
「それは勿論。風紀委員の方には敬意を払わなければ、ね?」

最後の問答になるかもしれない、もしかしたら違うかもしれない
であるのに”はい死んでください”では味気なくもあるし勿体ない
それに、相手に少々深入りしすぎたようだ
心根の優しさがにじみ出ている

「貴女はいい子ですね。ちゃんとした人に育てられたようだ」

羨ましい、妬ましい。
脳の片隅に出てきた感情を追いやり
目を開き、金の瞳を露出させる。

「あるところに一人の男がおりました
 その男は最愛の妹が一人いましたが重病です
 お金もない男は思いました。強盗をすればいい」

ゆっくり、手すりから身体を離す

「強盗当日。成功しかけましたが
 風紀委員に捕まってしまって結局妹を助けられませんでした
 その男はどうすればよかったでしょう」
 
そんなものはしらない。そう答えられたら問答は終わる
他愛もない話。よく転がっている話だ
でもそれが原動力になる人間もいる

体を相手へと向け、スタンスを広げる。
両拳も上へと上げる

この優しい少女のことだ
なにかの理由があって此方を思っているのも分かる

「此方のことはお気になさらず
 実は私闇金業者でして」

そんな答えも、乗せておこう

伊都波 凛霞 >  
男の話を、少女は黙って聞いていた
やがて聞き終えると小さく息を吐き、ややもの悲しげな瞳を男へと向ける

「そのお兄さんが…」

「助けを求めて、全てを尽くして」

「それでも手を差し伸べてもらえなかったのなら、
 きっとその人に残った道はそれしかなかったんだと思う
 私も同じ状況だったら、……どうするのかな」

そう言いながら、空を見上げる
すっきりとしない、曇天
傾いた西日が雲の底をやや紅く染めていた

「どうすればいい。に応えはないかな。
 きっと彼は、そうするしかなかったから

 そういう人がきっとこの街には大勢いて、犯罪に手を染めてる
 それを断罪する人もいれば、手を差し伸べたいと思う人もいる」

「私はどっちかでいえば後者でありたいかな、って思ってるよ」

暗に風紀委員であるということを肯定し、答えとして男に返した

>  
ああ、このような少女がそこにいればどれだけ良かっただろう
そう思って涙を流したいのに流れ出るはずの涙がでてこない
物悲しげな瞳を、揺れる金の瞳が捉え続ける。

「は、はは……あははははは!
 貴女は優しいですねぇ! しょうもないほどに!」

まったく、反吐が出そうです。

構えた両拳を下げて、小さく俯いて大きく笑った
反吐が出そう。そう小さく、蚊の鳴くような言葉はただの強がりだ

こんな少女の言葉で、心をこうもかき乱されるとは想定の範囲外だった

「いつか、そんな甘い心では足元を掬われますよ
 あ、もう掬われてるんでしたよね。ひひ、面白いですねぇ」

いつも汚く見える空を見上げてみる
曇天ながら、綺麗に見えて ”はぁ” 溜息を零した
見上げた顔を相手へと戻す。そして無遠慮に近寄っていき懐に手を伸ばす

そして、出されたのは名刺で”雲雀”と書かれた会社名と
役職である”頭取”その他は電話番号や名前が記載されている。

「次にあったときは殺します
 それまで殺されないようにしてください。
 何かありましたら此処まで」

要は、殺されそうになったら連絡しろ。そう言っているらしい。

伊都波 凛霞 >  
「はい、まったく。
 おかげで今は此処でこうして黄昏れてるわけなので」

足元を掬われるのも経験済み
それを経験していて尚こう言うのだから、筋金入りなのだろう
根が頑固だったりもするのかもしれないと自分ですら思う

「随分物騒な名刺の渡しかた」

思わず破顔してしまう
次にあった時に殺す、というのなら今この場で殺そうとしない理由は何もない筈
名刺を受け取り、そこに書かれている文字を読み取れば、
成程、此処落第街を根城とする金融会社の名が見えた

「何かあったら、ね…。お金は借りないよ?
 …あ、こちらの自己紹介、いります?」

情報通ならば例の件を調べればすぐに出てくると思うけれど

>  
「情けないにもほどがありますよ?
 お陰様で殺す気が失せました。ありがとうございます」

皮肉を言ってみるがこの相手には効かないのだろうと分かっている
筋金入りで、頑固。どこかで見たような少女だ。懐かしさまでも感じる
目は閉じられ、笑みも消しさった

「うるさいですね。風紀委員にはこれくらいで丁度いいのです」

此処で殺さない理由なんて、此方には分からない
ただのきまぐれと自分の中でケリを付けておく

「貴女なんかに誰が貸すものですか
 私とて貸す人間を選ぶ権利がありますので
 そもそも、お金持ってるでしょ貴女」

自己紹介 その言葉には頷いておこう
礼儀として、聞いて置かなければなるまい

「調子が狂う女ですね」

伊都波 凛霞 >  
「じゃあその気紛れに感謝して、
 お金貸しさんなら、無益なコトはしないに越したこともないですもんね

 伊都波凛霞、です。風紀委員だけど、今は色々あってちょっとワケありで」

言葉を紡ぎながら、自身の首のチョーカーに触れる

「別に調子を狂わせようとしてるわけでもないんだけどね」

毒気を抜かれるような笑みを向ける

闇の金貸し業者
先程聞いた話が彼自身の話だとすれば、なんとなく理解ができる

「そうですね。私なんかより…
 一時の大金で道が開ける人に、貸してあげてくださいね
 それじゃ、私はそろそろ行かなきゃ」

西日が沈みかけている、夜になる前に…指定のアジトに戻っておこう

「では、これで」

ぺこりと一礼し、踵を返す
呼び止められなければ、そのまま階段を降り、廃ビルを後にするだろう

> 「その通りです
 無益な所にお金は貸したくありません

 はい、知ってます。知り得ている情報と合致しました」

相手の首のチョーカーに、視線を向ける

「喋ってると調子が狂うんですよ
 天性の才能ですね。誇ってもいいですよ」

哀れにも捕まってしまった少女
こうして出歩いているということは……思考を回した刹那
耳に入った言葉に声をなくしてしまいそうだった

「んなっ……そんな理由で金貸しをしてるわけではありません!」

怒鳴り声を上げたが、踵を返した相手を大人しく見送る
引き止める言葉などあるはずもない
相手を見送った後

「お気をつけて」

聞こえなくなっただろう所で 呟いた

ご案内:「落第街 路地裏」から伊都波 凛霞さんが去りました。
>  
「はぁ、草臥れ儲けとはこのことですねぇ」

曇天の空を見上げる
雲の底を染めていた西日が完全に消え去った
その様子を穴が空くようなほどに、寂しそうに 見つめて

「ぶれてしまいました……ああもう! 
 殺しておけばよかったのに!」

フェンスを、力の限り蹴り上げた
屋上に金属音が響き渡って

そうは口で言っても、悪い気分ではなかった
こんな気分は、何年ぶりだろうか

「はぁ……理想があって現実に近づける、ですか」

あの少女の言葉は、一々胸に響いた

>  
それとも、未だに昔のことを引きずっている証拠だろうか
そうなのだろう 名刺まで渡してしまってどういうつもりなのか

「少し、蜥蜴の尻尾でも嗅ぎ回りますかねぇ」

もし此方の理想に近いのならばお近づきになっても損はないだろう
風紀委員撲滅という、理想。

それに、もしかしたらあの少女のことも と思考にあの顔が入り込んで
もう一度フェンスを蹴り上げた。

「ああ、調子が狂う……! 今更正義なんてできるか!」

もう汚れきってしまっているこの手で正義など行えない
分かりきった現実が背中を真っ直ぐにしてくれた気がした