2021/11/04 のログ
ご案内:「落第街 路地裏」に霧島 孝介さんが現れました。
フィーナ > 「んー…」
思案しながら、箱の上に座っている。
杖を携えており、体の紋様からも、『魔術師』のような出で立ちである。

思案しているが故に、相手に気付いていない。

霧島 孝介 > 「いやぁ~………アハハ、やばいねぇ~……」

引きつった笑顔で落第街の路地裏を早足で歩く男。
その服は落第街には似合わない学園から支給されたものだが、所々に土埃や汚れが付いている。
表情も笑顔ではあるが、その瞳には余裕がなく、額には汗をかいていて。

「迷子もここまで極まれば、むしろ才能だぞオイ…」

事の経緯を話そう。
歓楽街でアルバイトを終えて、いつも通り帰ろうとしたのだが
今日は気分を変えて、道を変えようと思ったのだ。

しかし、この男。天性の方向音痴。
迷った挙句さらに怪しい道を選んでしまい、気付いたら落第街のこんなところまで来てしまったのだ。
いや、バカ。普通にバカ。
というか落第街の怖いオッサンに襲われたし。一応異能で撃退出来たけど…
めっちゃ怖かった。と内心では既に号泣していて。

「ん…あの~…す、すいません
 道ぃ、聞いてもいいですか?」

箱の上に座っている小柄の少女に話しかける。
エルフ耳で刺青がめっちゃ入ってて、健全な学生の彼にとっては恐怖の対象には変わらないけど
それでも、スマホの充電が切れているゆえに、話しかける以外の選択肢はない。
まぁ、さっきのおっさんよりかは安全でしょ…うん

フィーナ > 「……大通りならあっち」
大通りの方向を、指差す。
ここ落第街の路地裏は落第街でも治安の悪い場所だ。
好き好んで誰かの道案内をする者などいない。

下手をすればそのまま誘拐される、なんていう事もここでは珍しくもない。

深く関わらず、さっさとどこかに行ってもらうほうが、互いのため…だとフィーナは思っていた。

霧島 孝介 > 「お、大通り、あぁ、はい…」

指差された方面を一瞥して、返事をする。
大通りの方向も見失い始めていたから、方向だけでも教えてくれるのは助かるが
そっちへ向かえば、そこで100%道に迷うだろうと考えて、勇気を振り絞って、もう一押しする

「あの~…大通りからどう進めば、学生通りとか歓楽街に戻れますかね?」

多分、相手からしたら『なんだこいつ、キモッ』って思われているのだろう。
それでも一刻も早く家に帰れるのならば、キモイでもキショイでも思われても仕方ない。
なおも引きつった笑顔で、彼女に質問をして。

フィーナ > 「……大通りなら比較的治安もいい。そこでまた聞けばいい。方向音痴だっていうのなら、全部教えたところでまた迷う」
塩対応。道案内したところでこちらに利はないし。
教えてもこのレベルの方向音痴の場合無為に帰す可能性が高い。

「…一応警告しとくけど。ここ、治安悪いから。」
念の為の、警告。今話している相手は、問答無用で攻撃してくる可能性だってあるんだぞ、という。

霧島 孝介 > 「たっ…確かに、正論……」

塩対応に困惑しつつも、納得する。
というか落第街で助けを求めるほうがナンセンスだった。
むしろ方向を教えてくれた彼女はめっちゃ優しい分類なのだろう。

「あ、あぁ…警告ありがとうございます。すいません」

その言葉を聞いて、ゴクリと生唾を飲む。
「念のため」と呟きながら、ポケットから六角形の手のひらサイズの『装置』取り出して胸に付ける。
取り付けた装置のボタンを押して起動させれば、彼の輪郭に沿って一瞬、半透明の膜のようなものが
展開され、直後にそれは透明となって景色に溶け込む。

(ん~…やっぱり飛んだ方が早いのか…?)

そんなことを考えながら、彼女に背を向けて歩き出す。

フィーナ > 「………」
一応、道を教えた手前、その後に何かあったら困る。

木箱から下り、付かず離れずの位置で様子を伺う。
何かしらの変な所作があった気はするが…

なんか、道を歩くことに集中していないから、大通りに出る前にまた迷いそうな予感がする。

霧島 孝介 > (………視線を感じる……)

落第街という場所で緊張しているからか
感覚が研ぎ澄まされてしまい、彼女の視線が気になってしまう。
一応、しばらく気付かないフリをして歩いてみるが…

「あの、何か癇に障る事しちゃいました…?」

木箱から下りてこちらの様子を伺う彼女に堪えきれずに振り返って
殺気のようなものは感じないから襲われることはない、とは思うが…
何か怒らせたのなら、素直に有り金を渡して謝ろう。うん。

フィーナ > 「…教えた手前、ちゃんと大通りに出てもらわないと私が困るの。ほら、前見て歩く」
杖でぺしぺし軽く叩きながら、前に向き直るよう言いつける。
懸念した通りだった。まだ道から逸れてはいないが、振り返った瞬間道を見失いそうだ。

「視線が気になるならさっさと走り抜けたほうがいい。その方がまだ逃げれるから。確認してる間に襲われても知らないよ?」

落第街での歩き方をレクチャーする。多分この者は落第街は初めてで、だからこんなにもおどおどしているのだろう。

危険は避けよ、妙な好奇心に踊らされるな。落第街に於いては基本である。

霧島 孝介 > 「え、えぇ?あ、あぁ、はい…ありがとうございます?」

何か杖でぺしぺしされている。
特段痛みは感じないし、逆に彼女の心遣いに少し安心する。
というか、俺そんなにしっかりしてなさそうに見える?と考えるが
彼女に道を聞いている手前、否定することもできずに自嘲するような引きつった笑いを浮かべて

「逃げるって貴女から、ですか?
 あはは、貴女からは逃げませんよ。だって、俺を助けてくれたじゃないですか」

落第街での歩き方をレクチャーされているとも知らずに
自分を助けてくれた彼女に対して笑顔で返す。
能天気というかなんというか、彼にとって、既に彼女は信頼を置ける相手になってしまっているのだ

フィーナ > 「…ここ、治安が悪いって言ったじゃないですか。私が道を示したのは油断させるためで、後ろを向いた瞬間頭ぶん殴られても仕方ありませんよ?」
その後、どうなるかは、本人の想像に任せる。自分は拐かされる可能性も示唆した。その上で、この能天気さだ。

「それに、私だって優しいって訳じゃないですよ?」
そう、私は優しくない。何人も不幸な人間を作っているし、『喰った』人間も少なくはない。
むしろ悪人…人ではないが、そういう種別の者だ。目の前の男を助けているのは気まぐれであり、もし別の方面の気まぐれが起きていれば、目の前の男を『喰っていた』かもしれない。

霧島 孝介 > 「じゃあ、俺にその隙があったら、ぶん殴って気絶させてくださいよ」

この街でやっと優しい人――というか彼から見たらエルフだが――に出会えたと思い込んでいる男。
圧倒的な能天気さで、彼女に言われた通りに前を向いて歩く。
もっとも、彼女相手ではないが自分も不測の事態には対応できるよう策は打ってある。

「…というか、そうやって注意してくれるんだから、やっぱり貴女は優しい人ですよ」

彼女が過去に何をやって来たかは、今は関係ない。
今こうやって自分を助けてくれていることはゆるぎない事実である。
こういうのを利己的っていうのだろうか?と考えつつ、歩むスピードは落とさずに

フィーナ > 「どうだか。その優しさだって見せかけだけかもしれないのに」
そもそも自分は人ではないし…まぁ、それについては言う必要はないか。

確かに目の前の男を助けているのは事実だ。だが、あまりにも無防備にすぎる。

注意も含めて、こつんと杖で頭を軽く叩くだろう。

霧島 孝介 > 「はは、まぁ、そういうことにしておきますよ」

どうやら彼女は自分をどうしても悪者に仕立て上げたいらしい。
こんな小さな子が含蓄あるセリフを言っていることが少しおかしくて
笑いながらもそのように返す。

「あぁ、そうだ。俺、霧島 孝介って言います。学園の2年生です。
 差し支えなければ、お名前を聞いても?」

頭をこつんと杖で叩かれながらも無反応で。
更に不用心にも自分の名前と学年を告げる。
恐らく、彼女になら明かしてよいだろうという、これまた信頼を置いての発言で。

フィーナ > 「…私は………そう、だな……」
フィーナ、と。名乗ろうとした。

しかし、もうすぐ、名乗れなくなる。

この名前は、借り物だから。返さなくてはならない。

「………名乗るほどでも、ないよ」

実際は、違う。

名乗る名前など、無いのだ。

霧島 孝介 > 「おお、はは、かっこいいですね」

彼女の返しに感嘆の声を上げながら笑顔で返す。
その言葉の真意を知らぬまま、またも能天気に返して。

「では、名乗るほどのものではない優しい…エルフさん?
 何か困ったことがあれば、俺に言ってください。
 ……力になれるかはわからないっすけど!」

まだ、彼女のことをエルフだと勘違いしていて
胸を張って自信満々に告げる。
道に迷ってる分際で何を言っているのか、と思うだろうけれど
恩返しのつもりで自分に出来ることならなんでもしようかと考えていて。

フィーナ > 「無事に帰ってから、そういう事は言うものよ?」
いたずらっぽく笑って見せて。

でも。手伝ってくれると言うのであれば。手は打っておいたほうが良いだろう。

「なら…もし、この落第街から逃げ出す人が現れたら…その人を手伝ってあげてほしいかな?」
別に、自分の関係するところでなくても良い。私がこう言ったことで、感づいてくれる…というのは少し贅沢だが。
何にせよ、逃した先が混乱していた、というのは良くない。
正確性には欠けるが、伝えて然るべきだろう。

「近い内に、此処…戦場になると思うから。」

霧島 孝介 > 「はは、手厳しいっすね」

いたずらっぽく笑う彼女をみて、こちらも笑顔を見せる。
始めてみた彼女の笑顔に(笑えるじゃん)とほっとした様子で

「落第街から?え、えぇ…手伝うのいいんですけど…
 ……戦場?」

彼女の言葉に意気揚々と頷こうとするが続いた単語に眉を顰める。
ここが?戦場に?
その言葉の真意がわからず、立ち止まって

「え、それってどういう……」

真剣なまなざしで彼女の方を振り返って

フィーナ > 「風紀委員の過激派が此処に踏み込む可能性があるの」
そう、可能性。その情報を直接耳にしたわけではない。
しかし、情報屋が集めた状況証拠が、それを物語っている。

「此処で『厄災』が暴れたときより、おそらく酷いことになるわ。個人じゃなくて、組織による戦争。貴方も…危険な目に遭いたくないなら離れておいたほうが良い」

霧島 孝介 > 「風紀委員の過激派…?」

彼女の言葉に神妙な顔をする。
その口ぶりから、うそを言ってるわけでも自分をだまそうとしているわけでもない。
それなら、風紀委員に『過激派』なるものが存在していて、何かを抹殺しようするために
この街に来る…と?

「…すいません、理解が追い付かないです
 どういうことだ…はは、組織による戦争?
 それって現実の話ですか?」

綴られる言葉に、頭を抱えて、難色を示す。
戦争…それって、この街の人が大勢死ぬってことか?
もしかしたら、自分たちの街にも余波が来るかもしれない。

そんなことになったら…

「あ、原因!原因は何なんですか!?」

フィーナ > 「…さぁね?それ以上を求めるなら…自分でも調べてみなさいな。良かったわね、此処には情報屋はいっぱいあるわ?」
自分が握った情報も、情報屋からもらったものだ。あんまり口外すれば情報屋の沽券にも関わるだろう。

「そも、過激派よ?学園はこの場所を認めていない。だから厄介事を持ち込むこの場所を掃除する。理由なんてね、何でも良いのよ。『口実』さえあれば」
この街に恨みを持つ人間なんて掃いて捨てるほどいる。この街に不幸にされた者も沢山いる。

「風紀委員の過激派は、『口実』を手に入れた。だから此処は戦場になる。それだけよ」

霧島 孝介 > 「っ……」

鼻垂れた言葉に、息を呑んで苦い顔をする。
そうだ。これ以上彼女に求めるのはお門違いだ。
であるならば、他の風紀委員の生徒に聞くしかない。

幸い、アテはある。
だが連絡を先を交換していない…などと苦悩して

「……クソッ、確かにそうだけど…」

彼女の言葉は的を射ている。正論だ。
自分もこの街に対しては、確かにいい印象は持っていない。
しかし、だからと言って罪もない人間がいるかもしれないこの街を戦場にするなんて…

「そうだ、貴女は!貴女は逃げないんですか!?」

戦場になるのを知っているのなら、何故目の前の少女は逃げないのかと
焦ったような顔をして問いかけて。

フィーナ > 「んー…まぁ、やることがあるから。逃したい人も、いるしね」
自分は逃げるつもりはない。

逃げられる場所もない。

だって私は人ではないから。

人に仇なす怪異なのだから。

「だから、その逃がす先が欲しいの、私は」

霧島 孝介 > 「…なんで…くっ…わかり、ました」

聡明な彼女のこと。
きっと何か理由があるのだろう。
疑問を追及する言葉を飲み込んで、顔を顰める。

「…適した場所かはわかりませんけど、俺が住んでる寮なら…
 しっかりと暮らす場所が見つかるまでなら、匿えるかと…」

血が出るほど拳を強く握って。
歯を食いしばりながら彼女に告げる。

きっと、彼女が逃したい人は大切な人なんだろう。
何で大切な人と引き裂かれなければならないのか。

一体、戦争の原因は何なのか。
もし、その原因を突き止めて…
もし、俺がその原因を解決すれば…

(…もしかしたら、戦争を…)

そんなことを考えるが、直後に甘ったれた考えであると自覚して
首を横に振って、その考える振り切る。

フィーナ > 「…難しく考える必要はないですよ。助けられるのは、手の届く範囲だけ。貴方がそうしてくれるのなら、私は助かります」
血が出るほど握りしめる拳を見て。
この人は、『いい人』なんだろうな、と感じた。

「好奇心は猫をも殺す、というのは有名な諺ですね。あまり、出過ぎた真似はしないようお願いします。死んだら元も子もありませんから」

最大限の、忠告。生きてこその物種なのだと。厄介事に顔を突っ込んで首を切られることは無いのだと。

霧島 孝介 > 「……はい、絶対に貴女の大切な人は救います
 その人の名前は?」

彼女の言葉に対して、彼女の大切な人だけは救うと誓いながら
真っすぐと前を向き、問いかける。

自分は違う。
最強の異能力者の血を引いているわけじゃない。
無敵の師匠に稽古をつけてもらったわけじゃない。
自分は『全員』を救える存在じゃない。

俺は主人公じゃない。

それが、悔しい。

「…わかっています。でも……
 死ぬ必要が無い人が死ぬのは、他人でも悲しいじゃないですか」

自分でもお人好しな発言なのはわかっている。
でも、それでも、と言葉を紡ぐ。

フィーナ > 「まず、『黛薫』。それと…『フィーナ・マギ・ルミナス』。この、二人。もし見かけたら、助けてあげて」

必ずしも孝介の所に行ける訳ではない。だから、見かけたら、でいい。
確実ではないものに負担を掛けさせるのは、良くないから。

「そう。誰だって死にたい訳じゃない。でも、私はこうやって貴方に頼むことで…誰かの命を救えるかもしれない。貴方に教えたことで、救われる人が増えるかもしれない。」
これは、ヒントだ。自分一人では救えない。なら、誰かの助けを借りればいい。一人じゃ無理でも、二人なら、十人なら、百人なら。

「君は、表の人間なんだろ?なら…駆け込める場所が、あるはずだ」

霧島 孝介 > 「黛薫さんと、フィーナさんですね。
 …はい、必ず見つけ出して、助けます」

その二人だけは自分の手で助ける。
そう決意を固めて、告げられた名前を心に刻む。

「…えぇ、俺にも頼ることの出来る人はいます。
 まずはその人たちに相談してみます」

悔しい気持ちを押し殺して、深呼吸をする。
自分は一人ではない。真っ先に思い浮かんだ二人の友人に相談をしようと考える。

「それに、俺の手は、貴女にも届きます
 だから、二人を助けた後は待っててください!」

決意を固めたのか、はたまた友人の存在を思い出して安心したのか
笑顔を彼女に向けて、親指を立てる。

フィーナ > 「…期待せずに、待ってるわ」
彼は、驚くだろうか。困惑するだろうか。混乱するだろうか。

いずれにせよ。

自分が彼に救われるわけにはいかない。怪異を手助けしたと知れ渡れば、彼に累が及ぶ。

それだけは、避けねばならない。

「じゃあ、そろそろ帰れる?」
話し込んでいて、気付けば歓楽街の前だ。

自分は、この先には、行けない。

霧島 孝介 > 「はは、そこは期待してくださいよ!」

歓楽街の前までくれば、見知った建物が見えて。
ちょっと気が楽になったのか彼女に笑顔を向ける。

「はい、ここまでくれば…
 本当にありがとうございました。
 あと否定するかもしれないですけど…貴女は、いい人だ」

あ、人じゃないか?などと自分で訂正をしつつも
手を振って歓楽街へ向かって歩き出す。


(…俺は…)

掌に小さな蒼い光を出す。
自分が異能を持っている意味をもう一度考えて

真っすぐと、街の中に消えていった―――――

フィーナ > 「………」
期待は出来ない。
どういたしまして、も言えない。
否定することも、しない。
何も言わず、手を振って見送る。

見えなくなるまで。

ご案内:「落第街 路地裏」からフィーナさんが去りました。
ご案内:「落第街 路地裏」から霧島 孝介さんが去りました。
ご案内:「落第街 路地裏」に『虚無』さんが現れました。
『虚無』 >  
 妙だ。
 夜の路地裏。そこを1人の男が歩いていた。別に見た感じではいつも通りの落第街だろう。だが、明確に違う。

「風紀委員はどこだ……?」

 潜入調査員。この街に隠れるように潜んでいたであろうそれはパッタリとその姿を消している。
 もちろん自分が見た限りではというだけであり、どこかにはいるのかもしれない。しかし、いつもならばすぐに見かけるようなそれはどこにもいないのだ。

「……嫌な予感がするな」

 嵐の前の静けさとでもいうべきだろうか。風紀委員が一斉に撤去するなど考えられる理由は2つしかない。ひとつは必要な情報を手に入れた……だがこれはあり得ない。この街では犯罪者など吐いて捨てるほどいる。それらを全て捕らえないといけないのに情報を全て集めたなどあり得ない。となればもう一つ。
 巻き込まれないように。何に? ……大きな騒動に。
 そう、いつぞやの様に。

『虚無』 >  
 そこまで考えが行きつくと壁をたたきつける。能力も何も使っていない拳では壁に傷ひとつつくことはない。それどころか拳が傷つき血が拳から滴り落ちる。

「……ふざけるな」

 どっちもどっちだ。戦争を覚悟で風紀に挑む違反組織も。それに答えてこの街を破壊しようとする風紀も。
 もちろんそれで確定した訳ではない。考えすぎであれば何よりもうれしい。勝手にイラついて手を怪我した自分を馬鹿にされればどれだけうれしいか。
 だが、状況は、今までの流れはそれを明確に否と突き付けてくる。
 連れ去られた風紀委員。それに対する報復攻撃。
 その準備が始まり風紀委員は最低限の人数を残し撤去。もう少しすればここに死が蔓延する。
 その流れが、構図がもはや手に取るように見えてしまうのだ。

『虚無』 >  
 大きく息を吸い込み気を落ち着ける。
 
「まぁ、もしそうなるなら……やることはシンプルだ」

 そう、正直言ってしまうと今のようにどっちを裁くべきかなど考える必要はない。
 やることは一気に減り2つにまで減る。
 スラムをはじめとした明らかに無関係な人たちを助けるという事。そしてもう一つこれが1番シンプルになる点だ。
 もしそうなった場合……風紀も敵対する違反組織も双方がこの街の秩序を乱す敵だ。

「皮肉だな、最悪な場合が1番やりやすくなる」

 ポケットに手を突っ込むとその道を進む。
 どちらが正しいとかどちらが正しくないなど関係ない。
 戦争などどちらともが悪なのだから。だからこそやりやすい。
 違反組織も風紀委員も……かかわるのならすべてを均等に闇に葬る。
 シナリオはシンプル……違反組織と風紀委員は戦いの末同士討ちをした。そんなシナリオだ。

ご案内:「落第街 路地裏」から『虚無』さんが去りました。