2021/12/15 のログ
ご案内:「落第街 路地裏」に紅龍さんが現れました。
■紅龍 > 【前回までの紅龍おじさん!】
違反部活『蟠桃会』の用心棒、元軍人の紅龍は。
『斬奪怪盗ダスクスレイ』の情報を集めるために探偵の『ノア』に仕事を依頼する。
『怪盗』との遭遇を警戒する中、懐かしさを抱かせる少女『マヤ』と出会った。
『生きててよかったね』
少女の言葉が耳から離れない。
自分の命の見積もりは、殊更に誤りやすいもの。
風紀委員『芥子風菖蒲』の戦い方に眉を顰めつつ。
『生きててよかった』と思えるように、今日も過ごすのだった。
■紅龍 >
この街にはこの街なりの『日常』がある。
それは、表に近い通りでの、薄暗い平穏だけじゃない。
表通りから入り込んだ暗がりで、ヒトの目の少ない場所で。
暗く繰り広げられる『日常』ってのもある。
「――逃がさねえよ」
路地裏に銃声というには重たすぎる音が響く。
70口径の銃口から吐き出された700NE弾が、『ソレ』の頭を吹き飛ばした。
巻き散らされる血と脳漿。
見慣れたもんだが、気分がいいもんじゃねえ。
「――『トランキライザー』、標的を制圧」
ヘッドギアを通して通信を送る。
雇い主との専用回線だ。
「――ああ、わーってるよ。
処分と回収だろ――ああ、問題ねえ」
命令は大したことじゃない。
逃げ出した『実験体』の処分と回収だ。
この手の任務は昔から慣れたもんだ。
「――つーか、管理ぐらいしっかりやれよ。
後始末する身にもな――」
通信中、ヘッドギアの動体センサーが反応した。
『ソレ』が起き上がっていた。
頭がないまま、ゆらりと――
■紅龍 >
――起き上がる前に、脚を打ち抜いた。
二発の銃声と、砕ける脚。
支えを失えば当然、再び地面に転がる。
が、まだ足りない。
さらに二発、両肩を撃って腕を吹き飛ばす。
念のためにもう一発、心臓に叩きこんだ。
「――おい、どうなってんだ。
頭を飛ばしても動きやがったぞ!」
オレの知ってる『実験体』は、頭を砕けば活動をやめるはずだった。
だが、こいつは頭を砕いても動く――なんなら、手足を失っても蠢いてやがる。
「――新型だぁ?
馬鹿野郎! そういうのは先に伝えんだよ!
ああ――『種』を回収すれば止まるんだな?
――クソったれめ」
処理の方法を聞くと、さっさと通信を切った。
ただでさえ気分の悪い仕事だ。
これ以上、不愉快な声は聞きたくねえ。
未だに蠢く肉体を押さえつけるように、屈みこむ。
この体は、元はこの辺の娘のもんだった。
年頃は『マヤ』とさして変わらねえだろうに。
『実験体』にさえならなけりゃ、今もそれなりの『日常』を生きれた事だろうが。
――運がなかったな。
それで済まそうとする自分に、反吐が出そうだった。
ご案内:「落第街 路地裏」に藤白 真夜さんが現れました。
■藤白 真夜 >
「う~ん……コッチ、思ったよりも平和~」
またしてもアテもなく落第街をぶらぶらとうろつきながら、ちょこちょこ立ち止まっては何事かと目を輝かせる浮いた女がひとり。
一応目的はあるものの、落第街を一人で歩いている一般らしき生徒、という時点である種の警戒を周りに抱かせるのもあったのかもしれない。
何も考えていないゴロツキなら襲いもしたかもしれないが、女から漂う血の匂いが危機感や生存本能というものを刺激したのか、あるいはただ間が悪かっただけなのか。……それがどちらにとってのものかはともかく。
「ひま~」
女は暇だったのだ。しかも空腹。
わざわざこっちに来て血を調達しようと奔走しているのに――
「……おー?」
路地裏から響く銃声。だがそれよりも先に、私の感覚は“出血”を感じ取っていた。
流血沙汰。それだけで私には、介入する理由になる。
果たしてどんなコロシアイか、どれだけ血が出てるのか、どこまで私を満たしてくれるのか。そう思いながら歩みを進め覗き込んだ路地裏には――、
「あー!おじさんだー!
やっほー、生きてる――?」
能天気な挨拶はその現場を見て少し固まる。
男が、倒れた歪な女の前に屈み込んでいた。
私の目が、情報を集めるように視線を動かす。
まず、血の臭いがする。
で、おじさん。硝煙の臭い。
次に、倒れた女。死んでる?生きてる?変な雰囲気。
「――もしかして、お取り込み中?」
その女の年頃も、おそらく男が撃ったであろうことも気にも留めず。
ちょっと見ちゃイケないとこ見ちゃったかなみたいな軽い気まずさを浮かべた程度の表情で。
以前と変わらず、場の空気を読まずに……いや解った上でなんとも思わず声をかけていた。
■紅龍 >
蠢く肉塊からは、まるで失った場所を補うかのように、黒ずんだ植物の根が凄まじい勢いで成長している。
これまでの『種』とはまるで再生力――いや、成長速度が違うな。
それでも、このまま抑え込んで『種』を抉り取っちまえば。
養分が足りずに枯死するはずだ。
「――あ?」
短刀を振り上げ『実験体』を解体そうとした時、聞き覚えのある声がした。
それが誰か、確認するまでもない。
「ばっかお前――!」
見られた。
――その時、オレは焦ったんだろう。
「――見たな」
70口径を迷わずに、『マヤ』の額へ向ける。
目撃者の始末もオレの仕事だった。
片手にはハンドキャノン、片手には短刀。
なら、『実験体』を抑える手は――?
――答えは、人間の手は二本しかない、だ。
成長した『根』が瞬時に伸びる。
このスーツの唯一の弱点、ヘッドギアとスーツのつなぎ目。
要するに――首を締めあげようと、幾本もの根が絡みつこうとしていた。
■藤白 真夜 >
「――!」
おじさんに銃口を向けられる。
正直な話、それは少し……嬉しかった。
あの優しそうに見えたナイーブおじさんが、仕事のためなら私を殺せるのかどうか。
ほんの少しの驚きと――
「……ふふ」
――口元に、笑み。
まるでダンスに誘うように、手を差し伸べる。
向けられる銃口を、出迎えるように。
女のカラダから赤い霧のようなモノが染み出していた。
差し伸べた手から、赤い光を伴って閃く。
それは、刃だ。
30センチ程度の、小さな。
――しかし、人間の命を十分に奪える大きさの、凶器。
血の異能の発露は、にじみ出た空中の血を凝固させ刃を作り上げる。
速度を重視したそれは異能を駆り、空を滑るように奔り、男の銃へ赤い光とともに交錯し――
――男の首に触れようとしていた『根』を描き切った。
「おじさん、仕事があまいんじゃなーい?
“標的”から目を逸らすなんて、ね?」
ソレに撃たれれば文字通り穴が開く銃口を向けられていても、女は微笑んだままだ。いやむしろ、男の失態を誂うようにあざ笑っているのかもしれない。
「……それとも、私も撃ってみる?
私、ソレみたいにグロくて出来の悪いカンジにはならないよ?」
女は見たところ無防備だ。撃てば銃弾は届くかもしれない。
しかし、カラダに纏う赤い霧はやはり展開したまま。いつでも、さきほど見せた刃を飛ばせるようにしている。
その実、女は男をさほど見ていなかった。視点の場所は近かったが。
――伺うように、もはや死体とすら呼べないであろう根の生えた肉塊を見つめながら。
■紅龍 >
――仕事が甘い。
まったくだ、返す言葉もない。
「――撃たねえよ」
短く返しながら、短刀を『実験体』に突き立てる。
ハンドキャノンを収めて、スーツにサポートされた膂力で暴れる『根』を抑え込みながら引きちぎり、切り離し、解体す。
「こんな、遭遇戦で、お前が殺せるか、よ!
準備して、も!
怪しいもん――だあ、鬱陶しいな!」
しつこく絡みつこうとする『根』を何度も引きちぎる。
切り離された『根』は数秒ほどのたうつが、その後すぐに枯れていった。
■藤白 真夜 >
「うえー……これなにー……?
植物系の異能とか、そんなカンジ――じゃないね」
銃口を向けられた直後なのに、今度はやっぱりぴょこぴょこと近づいて興味深そうにその解体を見つめていた。
おじさん、それやっぱムキムキなの?とか茶々をいれたり。
引っこ抜けたかと思えば、ぱちぱちぱちなんて拍手をしてみたりしながら。
「あ、ごめん。見ちゃダメなんだっけ?
んー。
……まあ。
外的要因からのアプローチで不死性の実現とか、それこそバケモノしか作れないだろうから興味無いんだけどね。
馬鹿だよね~、人間なんて弱いものに何かを付け加えようなんてのが間違いなのに」
女はその肉塊を見つめていた。
溢れる血痕も、今回は消えることはない。
どこか蔑むように見下しているようにも、憐れむようにも――その引き抜かれた“うろ”を見つめていた。
「……あ。そうだった。
ねーねー?見たらどうなるの?見たからには生かしておけない……ってヤツ!?」
女の表情はころころと変わる。
自分が口封じに殺されるかもと知ってか。あるいは映画や小説で見る展開の現実に浮かれる少女のように、嬉しそうに男へと問いかけていた。
■紅龍 >
「異能の類ならまだよかったけどな」
それなら持ち主を殺すだけで片が付く。
――にしてもはしゃぎ過ぎだろ、この娘は。
「見ちゃダメなんて今更だっつの。
ま、バカだってのには全く同意だな」
肉塊からは、『根』を引き抜くたびに、肉を切り分ける度に血が溢れ出す。
が、そこら中に巻き散らされている血も、消える様子はない。
血液系の超常だとは思ってたが――なんでもいいってわけじゃねえのか?
それとも、ただの好みか、気分の問題か。
「あー、まあな。
目撃者を始末すんのも、仕事の内だ。
で、その仕事をしねえとオレの身内が死ぬ。
だから殺す。
――殺せるなら、だけどな」
正直なところ、どれだけ装備すりゃマヤを殺せるのか見当がつかない。
異能力、超常能力ってのは、基本的に唯一無二だ。
同種の似通った傾向は合っても、完全に同じものは無いと言っていい。
血を使う超常はいくつも殺してきたが、マヤを殺すには情報が足りない。
――いや、言い訳だなこれは。
「――くそ、面倒くせえな!
どこに埋まってんだ?」
随分と切り刻んだはずだが、『種』が見つからない。
――何か見落としてるのか?
■藤白 真夜 >
「……そっかー。
人質を取られた殺しとか、つまんないだろうねー……。
おじさんも大変だねー」
かと思えば、今度はつまらなさそうにその腑分けめいた光景を眺めていた。
何故かと言えば、同情だ。
男の人質が取られている状況より、だからこそ殺しがつまらなくなるだろう、という点で同情している。
……いや、おじさん自身を慮る気持ちもちょこっとはあるんだけどね。
「……まあ。私に見られたのは大丈夫だよ。
“こっちの私”、存在しないことになってるはずだし。
私、記憶力悪いからどーせすぐ忘れるしねー。昔されたこと思い出して気分良くないし。
……おじさんが殺したいなら、私はいつでもいいけどね?」
解体する男を覗き込みながら、しかし溢れ出る血には避けるように足を浮かせたりちょこちょこ位置を調整したりしていた。
実際のところ、“コレ”が不死性を求めたものなのかは、当てずっぽうだった。
私の居たところの目的がそれで、似たようなアプローチを見たからそう思っただけのこと。
バケモノを作り出す実験ならむしろ限りなく成功しているだろうし。
この島の生体実験で、何が起き、何が使われるか。
私はそれを実体験として既に知っている。
過去の記憶を呼び覚ますからでもなく、もはや肉塊となった女を憐れむでなく。
ただ、何が入ってるかもわからないものを口にしたくないだけのことだった。
「おじさんやっぱり仕事甘いんじゃない……? おじさんみたいなミドルは、そんな面倒くさがらずにコツコツと確実に仕事進めてったほうが好感度高いよ?」
相変わらず、おじさんを生暖かい誂うような目で見つつ。
「こーゆーのって、頭とか心臓とか胸に宿らせるモノなんじゃないの?んー、脊髄とか?
いや、知らないケドね。
私のときは心臓だったから」
……結局、付け加えようとしたものは呑み干すだけで何も役には立たなかったのだけれど。
■紅龍 >
「そうだな、殺しを楽しめりゃ、いくらかマシかもな」
だが、それはもう仕事じゃねえ。
畜生にも劣る仕事をしてると自認しちゃいるが。
それでも譲れない、ブレちゃいけねえもんがオレにもある。
自分が楽しむための殺しは、信義に悖る。
「――殺してほしいなら、本気でやってやるよ。
まあ準備に一月は欲しいところだけどな。
おい、その辺にも腕とか脚が転がってるから躓くなよ」
血を避けていく様子は――なるほど、こいつは嫌悪か、忌避か。
『その種』の超常だろうと、口にするもんは選びてえよなあ。
「あのなあ、おじさんお前みたいに右肩上がりの年頃じゃなくてねえ。
もうね、折り返し始める年頃なの、わかるか?
むしろこうして、面白くもねえのに女の身体まさぐってんだ。
手を止めてないだけ褒めてくれよ」
ひっくり返して、また腑分けして。
それでも『種』は見つからない。
『根』はまだ鬱陶しいってのに、どういう事だ。
「頭は粉々にした、心臓もだ。
脊髄――骨を外すのは、骨が折れるんだけどなあ」
くだらない事を言いながら、マヤの台詞が引っかかる。
――私の時は、ね。
面白くない話しだ。
ああ、まったく、面白くない。
■藤白 真夜 >
「――あはっ! 準備に一月? ……ふふふっ、ちょっとときめきそうになっちゃった」
この男が本気で殺そうとしたら、それはどうなるのだろう。
そもそも、正々堂々とした戦いからしてこの男の範疇ではない気がした。
卑怯だとかそういったものを何一つ意に介さない、“作戦”めいた闘争。
それは、すごく――胸が高鳴った。
でも。……それでも。
「……おじさんの本気は正直すっっっごく気になるけど。
おじさんが楽しくないなら、私は嫌だなあ。
私、絶対楽しんじゃうし」
実際のところ、勝ち負けや生き死にという段階で、この男と同じ土台に立てるかはわからなかった。
あの口径の銃は、カラダごとバラバラになるから結構負担がある。頭を抜かれたら流石に消費も激しい。
……けど、死なない。それが私だ。
かといえ、一度死ぬと数十秒は止まる必要がある。
それは死を覆すには出鱈目に短かったかもしれない。
でも、男の意味する戦闘の中では致命的な停止かもしれなかったから。
……うーん。やっぱり、おじさんと戦う妄想はちょっと楽しい。
でも、まだいーや。
「あはは。やっぱりお兄さんなのは厳しいって自覚あったんだねえ。
手伝ってあげよーか?私、バラすのは巧いと思う。
カラダの中にあるなら、私なら多分見つけられる。
あーでもあんまり触れたくないなあこれ……私今禁欲中なのになあ……」
血で血に触れるだけでも、少し残りそうな気がする。私は血の優先順位で負けることはそうそう無い。何が入ってるかによるけど、植物系は相性悪いし。
私が触れないと思えば、他の血が私の血に混ざることは無い。
そんなことより、殺しは止めてるのに死体を切り刻む真似をするのが禁欲に負けたように誤認するのが嫌なくらい。
むしろ、女をバラしている様を別になんとも思わず見つめているくらいなのだから。
「……そもそも。
ホントに、中に入ってるの?
何か見落としてはいない?」