2021/12/17 のログ
雪景勇成 > 跳ねるような足取りは、何処か気だるそうにゆっくり歩くこちらとは対照的なイメージだ。
こちらの周りを回るような動きに、赤い瞳が緩やかにその影を追い掛けつつ。

「…あっちはちょくちょく足を運んでるからな。
それに元々、”こっち側”の人間だったから空気が合うんだよ。」

元・二級学生で生まれも育ちもこの街だ。土地勘があるのも慣れた空気もこっち側。
別に歓楽街を含めあちらがつまらない、という事は無いが自然と暇が出来るとこちら側に来る事が多い。

「…悪いコト探し、ねぇ。…そんなの幾らでも転がってんじゃねーのか、こっちだと。」

そう答えるが、彼女の探している悪いコトの基準も分からないので我ながら適当な返事だ。
先程から彼女の言動や挙動を眺めているが、緊張感は無く無防備だ――それがブラフか否か。

(――なんて、考えるのは面倒臭いしな。)

仮に、ここでザックリ不意打ちされようが何だろうがその時はその時だ。
腹の探り合い、駆け引きじみたのは戦闘だけで十分。普段からそんな面倒はしたくない。

ハインケル >  
「そーなの?」

こっち側の人間だと言えばもともと大きな瞳を更に丸くする
此処に住んでいる人間なら楽しいコトなんてあんまりないことくらいは…
あ、だから探してるのかなーなんて勝手に自己解決

「そう、悪いコトいっぱい。
 って思ってお散歩してたんだけどなんか表は静か~って感じでー。
 しばらくぶりに来たもんだからちょっと寂しいよねー。キミに会えて良かったー♪」

少女の声色はあくまでも明るく、年頃の元気な少女であることを感じさせる
それが逆にこの場所では浮いて見えているかもしれない

「なんかちょっと前に派手なコトがあったみたい?
 それでみんなあんまり表で悪いことしてないのかな~」

雪景勇成 > 「…つっても、今は正規の学生だけどな。まぁ、それでもこっちの方が馴染みはあるんだよ。」

だから、暇な時間が出来るとこちらの方へと足が向きやすい、というのは本当だ。
楽しい事、と口にはしたが実際の所、面倒臭いが口癖の男はその基準が自分でも分かってはいない。
少なくとも――退屈しない事、であると勝手に解釈はしている。退屈は人を殺すのだ。

「――ちょっと前に風紀の過激派に属する部隊とこっちの組織でドンパチが派手にあったからな。
まぁ、そんなに前って訳でもねーから影響は結構まだ残ってんだろーよ。」

――そのドンパチの一翼を担ったのは自分だが、初対面の相手に吹聴することでもない。
そもそも、今は非番…つまりプライベートな時間だ。仕事の話なんぞしたくないし。

先程から、仕事柄もあるが少女を観察していた限り妙な素振りなどは窺えない。
天真爛漫というか能天気というか、いっそこの路地裏には似つかわしくない明るさだ。
だからこそ、逆に浮いているような気もするが…。

「…まぁ、そんな訳で割とここ最近は大人し――くもねぇか。
何か仮面被った辻斬りっつぅか怪盗?が出没してるみてーだぞ。
…そっちの口振りからして最近戻ってきた、って感じみてーだが気をつけろよ、一応。」

と、世間話のように口にして。手近な壁に背中を預けるようにして煙草を蒸かしつつ。

ハインケル >  
「へぇ~、じゃあ学園にも通ってるんだー?アタシもがくせーだし、向こうでも会うかもね~」

正規の学生
それはつまり自分のような偽造学生証ではなく、正規の手順で学園に通っているということを意味する
つまりは、この街から離脱した存在である…というコト

「馴染みかぁー。…案外未練あったりとか?」

この退廃的な雰囲気、危険な空気感
常に生を意識する、明日命が消えるとも限らない街
そんな独特の緊張感なんかは、きっと向こう側にはないものだろうから
もしかしたらこの街で生きてきた人にとって、平和は退屈なのかもしれない

「組織同士のドンパチなんて表だっては最近なかったのにねー。
 や、最近なかったからこそ、なのかなー?」

見聞きした知識だけだけど、どういうことがあったか輪郭くらいは把握している
無論、結果がどっちに傾いたのかも

「あっはは、辻斬りー?仮面かぶってるって、面白いねー♪
 ふふ、でもそれって此処じゃ別に珍しくもないコトだし。うんうんー気をつけるー。
 出会ったばっかりのアタシに忠告って、やさしーんだね♡キミ」

悪意の欠片も見せないような少女は屈託なく笑っていた

雪景勇成 > 「…あぁ、学生だったのか。まぁ、どっかで会う事もあるんじゃねーか?」

もっとも、正規の手順ではあるが実際は”取引”によるものだ。
元々、こちら側の人間だったのは変わらないし、仮に学生を辞めたなら迷わずこちらに戻るだろう。
――裏を捨てて表に行った、と言えばそれまでだが…別に完全にあちら側になったつもりもない。

「…さてな。正規の学生なっておいてこっちに足をこうして運んでんだ。
未練たらたらか、ただの物好きか、…まぁ、さっきも言ったが『楽しい事』探しかもな。」

(――つまりは、中途半端って訳だ。)

僅かに自嘲気味に内心で呟きつつ。
平和は退屈、と確かに感じるがそれはそれで別に悪い事ではないだろう。
ただ、根本的に馴染めない…順応しきれない、というような所は確かにあって。
それでも、未だにこうして正規の学生身分やってるんだから己は中途半端だ。

「まぁ、小さいイザコザは日常茶飯事っていやぁそうだが。
あそこまで規模が中々デカいのは割と久々じゃねーか?」

既に男にとっては過ぎた事だ。結果は言うまでもなく、後に残ったのは爪痕と遺恨だけだ。

「…仮面、つぅか顔を隠してあれこれする奴はこっちじゃ珍しくもねーだろうしな。
…優しい?…どうだろうな。自分じゃそこはあんま意識した事ねーわ。」

肩を竦めつつ、短くなって来た煙草を取り出した携帯灰皿に押し込んで。改めて視線を彼女に戻す。

ハインケル >  
「ふぅ~ん?」

どこか言葉を濁した少年の回答
じーっと見上げるような視線はなんだか悪い子仲間を見つけた子供のようにキラキラしていた

「うん。抗争のほうはねー♪ んっふふ、やさしーよ?
 もともと此処の人でしょ?初対面のヤツに気をつけろよーなんて言う人、そんなにいないでしょー」

優しい優しいー、と持て囃す少女

視線を向けられてもなんら態度を崩さず
見た目以上に幼さ…というよりは無垢な雰囲気を醸しながら、少年を見上げていた

「ちなみに最近その『楽しいコト』、見つけた?」

雪景勇成 > (…何か気のせいか目が凄い爛々としてないか?)

じーっと見上げられればこちらも視線を返すのだが、何か同類というか仲間を見つけた子供みたいな。
あまりそういう視線を向けられた事が無いのか、微妙にこの男にしては気まずそうだが視線は合わせたまま。

「――そうでもねぇよ。こっちの人間からしたら多分俺は『ロクデナシのクソ野郎』だ。」

裏から表に渡っておきながら、風紀の過激派の部隊に所属し――仕事と割り切って破壊を振り撒く。
そうして、古巣或いは故郷とも言える場所に牙を剥きながら、オフの時はこうして足を運んでいる。

無論、いちいち周囲の目を気にする事は無いが――自分が優しい、とはどうにも思えない。
だから、その純粋さというか無垢な雰囲気は――実は結構刺さるものがある。
不快とか嫌悪ではない。ただ――自分の中途半端さが抉られるようで。

「んー…少なくとも刺激的な事はあんまし。そっちは何か楽しそうな事でも見つけたか?…あー…。」

尋ね返しつつ、そういえば名前を聞いていなかったのを思い出して。
ややあってから、付け加えるように口を開いた。

「…まぁ、これも何かの縁っつー事で名乗っとくわ。
2年の雪景勇成…ユキとかイサナとか呼ばれてるが好きに呼んでいい。そっちは?」

ハインケル >  
視線を返されると、おっと…と少し帽子を目深めに被る
顔に内面が出やすいのが少女の長所であり短所でもある
あくまで自分は表の人間、表の人間
そう言い聞かせておかなければならない
似たモノ同士の可能性を見つけるとついつい、同調しそうになってしまう

「そうなのかな~?
 ロクデナシのクソ野郎くんから、あんなお優しい言葉出るー?
 あっ!えっとね!楽しいコトねー、見つけたよ、ほら!」

そう言いながら、少女は少年を指差した
こうやって初めて会った人と話してるだけで楽しいコト、なのかもしれない

「アタシはハインケル!3年生だから一応先輩だー!
 雪景勇成くん、なんて呼ぼ……あ、じゃあイサナで!」

アタシのことも好きに呼んで~、とあくまでノリ軽い少女

雪景勇成 > 少女が被っていた帽子を少し目深に被り直せば、自然と目線が合わなくなる。
それにホッとした反面――ちょっとだけ残念に思ったのは自分でも理由は分からない。
少なくとも、彼女が自分に何か似たものを見出したのだろう…勘違いでもそう思っておく事にした。

「…別にこのくらいの気遣い?みたいなのは一般的で珍しくもねーだろ。……あ?俺?」

少女がこちらを指差して。一瞬不思議そうな面持ちになるが、要するに『出会い』が楽しいのだろうと解釈する。
まぁ、確かに初対面同士の相手には好奇心やら興味が疼いたりする気持ちもあるだろう。

「…ああ、俺の呼び方はそれで構わんが。…あー…んー…じゃあ、ハイン…先輩?」

ハインケル、という響きは男性的にも思えたので、もうちょっと女子っぽい呼び方を彼なりに考えた結果のハイン。
最後が何故か疑問系になったのは、○○先輩という呼び方に単純に慣れてないせいだ。

ハインケル >  
「自称ロクデナシのクソ野郎くんが一般的な気遣いが出来る。ギャップ萌えってヤツだね♡」

帽子の下から楽しげな瞳が覗き見る
その眼に見える色はやっぱり楽しげ、悪戯っこめいた顔をしていた

「そ♪
 知らない人とお話するの、楽しいコトじゃない?
 特にキミ…イサナみたいな子」

微妙に自分を低く見ているようで、根の素直さが伝わってくる
なんだかいかにも人間らしい、男の子らしい…そんな少年との出会い
素直に少女はそれを喜び、楽しいというオーラをこれでもかと振りまいている

「あはははは♪いいねー先輩呼び♡
 アタシ学園ほとんど夜間で言ってるから、あんまりこーはいいないんだよね~」

慣れていなさそうな呼び方に声を出して笑う
薄暗い路地には似つかわしくない明るさ

雪景勇成 > 「いや、ギャップ萌えとか勘弁してくれ…つーか、そうじゃねぇ。」

帽子の下から覗く瞳は楽しげだ。あ、からかってやがるなと直ぐに察して。
その表情はまさに悪戯っ子のそれだ。…けれど不思議と不快にはならない。
彼女の気質か人徳か、そういう楽しげなノリだからなのだろう、おそらくは。

「…まぁ、自分と違う考え方や意見、あとは…人生観?は流石に小難しいか。
取り敢えず、自分と似通ったり逆に全く違う奴と話をするのは退屈はしねぇだろうな。」

元々、…いや、今でも基本は面倒臭がりだ。それでも、少しずつ変わり始めている。
男自身はまだそんなに意識はしていないし、きっと外部から見ないと分からないだろう。
彼女の全身からオーラの如く感じる楽しい、という空気は…きっと、この街では貴重なものだと思う。

「…あー、ハイン先輩は夜間学級みたいな感じか?まぁ、そういう奴も少なくねぇとは思うが…。
…じゃ、貴重な後輩の一人っつー事で以後お見知りおきを。」

考えたら、あまり多くない知人友人連中は同級生か年下が多いような。
年齢、ではなく単純に学年的な意味ではあるが。

ハインケル >  
楽しげに話す少女は勇成が話すタイミングになると何度も頷きながら興味深く頷いていた
その様子もやっぱり楽しそうで、人とお話することそのものが好きなのだということがわかる

「イサナって難しいこと考えてるんだねえ~…
 もしかして結構理屈っぽい?」

考え方とか人生観とか
そういった感じのことを言う勇成を首を傾げて見ていた

「そうそうー、こう見えて忙しいの♪」

こんな時間にこんな場所を徘徊してたりするけど

「んふふ、こちらこそ~♡
 もしガッコであったら宜しくねえ~♪」

そう言って、片手を掲げ余った袖がぷらぷらさせていた

「っとぉ、今何時?いい時間ー?
 そろそろ行こっかなー、いーい出会いもあったコトだし♪」

雪景勇成 > 人と話すのが単純に楽しいだろう。そこに裏表は多分無いのだろう、と漠然と思う。
初対面の己でそう思うのだから、他の連中も同じような印象を抱くのではないだろうか。

「いや、全然。むしろ理屈とか小難しい話は俺は大の苦手。
…あー、時々そういう事も考えるけど、脳みそがパンクするからあんましたくはねぇな。」

と、肩を竦めて。首を傾げるハインにそう答える言葉は嘘では無い。
どちらかといえば、シンプルが好みだし直感で判断する事も割と多い。
――そもそもが、考えてから動くより動いてから考えるタイプに近いのだ。

「…で、そんなお忙しいハイン先輩は堂々とこんな場所を歩き回ってる、と。」

わざとらしく揚げ足を取るように口にするが、よく見れば僅かに口元がニヤついている。

「…おぅ。そん時はよろしく。…あ。でも勉学の力にはなれんぞ。むしろ俺が教えて欲しい。魔術方面とか特に。」

と、先にそこは言っておく。地頭は決して悪くは無いのだが成績はまぁトントンだ。

「…あー、もう深夜2時回ってるな。…んじゃ、俺も引き上げるとすっかな。
…こっちも面白そうな先輩と会えた事だしな。今夜出歩いた甲斐があった。」

携帯を取り出して時刻を確認すれば、ハインに伝えつつこちらも引き上げることにして。

「んじゃ、お互いボチボチって事でこの辺で。またな、ハイン先輩……あー、それと。」

先にこちらから挨拶をしてから歩き出そうとしつつ、一度振り返って。

「…初対面の後輩が言う事でもねーけど。アンタはその明るさを失わない様にな。…きっとそれに助けられる奴も多いだろうから。」

ハインケル >  
魔術方面の勉強を教えて欲しい、と言われればにっこり笑ってまかせなさーいと胸を張った
どうやらそっちの方面で授業を選択しているらしい
ただ普通にお話した以上の収穫を得た感じで、少女はとても満足そうな面をしていた

「うんー♪それじゃ、またどっかでねー♡」

学校で会うのかもしれないし、別のところで会うのかも知れない
こちらとしてもおもしろい子と出会えてとても良かった

じゃーねーとお互い背を向け歩き出す
相変わらず浮足立ったような歩調で去ろうとしていると、その背中に声がかかって…

"その明るさを失わないように"
おいおい、それがロクデナシの言う言葉ですかねー、なんて思いつつ

「ふふ、任せといてー。キミもその優しーとこ、そのままでいてねー♡」

そんな言葉を投げ返すと、跳ねるようにして、先程までとは打って変わって風のような速度で闇へと溶けていった
少女なりの照れ隠しだったのかどうか…は、わからない

ご案内:「落第街 路地裏」からハインケルさんが去りました。
雪景勇成 > それでも、自分がロクデナシのクソ野郎と思う気持ちは変わらない。少なくとも中途半端なままに変わりは無い。

(…ま、少なくとも。ただ壊して殺すしか能が無い奴よりは、その明るさの方が何倍も得難いもんだろ。)

そこに思惑や打算が仮にあったとしても、その明るさは眩しい程のものだったから。
――だから、きっとまだまだ世の中はそんな奴がきっと沢山居るのだと…思いたい。

「――いや、だから別に優しいとかじゃねーって…。」

と、口にするも既にあの少女は風のように闇の向こうに走り去った後で。
僅かに沈黙を挟んでから、苦笑交じりに一息零してから視線を前に戻し歩き出す。

「――ああ、アンタはそのままでいてくれよ…先輩。」

そう呟く言葉は柄でもないが願いにも似て。やがて、男の姿も路地裏の闇へと消えた。

ご案内:「落第街 路地裏」から雪景勇成さんが去りました。