2022/01/26 のログ
ご案内:「落第街 路地裏」に五百森 伽怜さんが現れました。
■五百森 伽怜 >
「た、大変なことになってるッス……!」
路地裏の壁に背を預けながら、カメラについた望遠レンズに
指を添えている少女が一人。
息を潜めて様子を見守る新聞同好会の一員、五百森である。
落第街大通りは、蜂の巣をつついたような騒ぎとなっていた。
やれ殺人鬼だのダスクスレイだの、
巻き込まれまいと大慌てで駆けていく人々。
世間を騒がせる怪盗――ダスクスレイの登場。
ならば、何の不思議もあるまい。
辺りを見回す。
同業者はまだ現れていないようだ。
ならば、これは。
めっきり売れない新聞同好会の売上をバッチリ増やす
絶好のチャンスになるだろう。
当然、全て計算づくでこの場に陣取ったのだ――
などと格好良く胸を張ることができれば良かったのだが、
生憎そんな頭脳や勘は持ち合わせていない。
ただいつもの如く、道に迷っただけである。
逃げ遅れている人は居ないか。
ジャーナリズムよりも人命、それが五百森のモットーである。
故にそんな所に目を光らせつつ、表通りの様子を窺う――。
■五百森 伽怜 >
「み、見たことないおじさんも居るッス……!
風紀委員……じゃないッスよね、あの見た目は」
ダスクスレイと相対する男。
違反部活の人間、だろうか。
果敢にも交戦の形に入ったらしい。
先に動いたのは、ダスクスレイだ。
その手に握られているのは――
「あ、あれが『虚空』……!」
他の新聞部や同好会が写真に収めていたものは見たことがある。
だが、本物を見たのは初めてだ。
レンズ越しなのに、背筋が凍りつくような感覚に手が震える。
一体どれだけの血を啜ってきたのだろうか。
喉から下す唾が、やけに重たく感じた。
鉛でも飲み下しているかのような感覚だった。
「ホンロン……?
ダスクスレイに立ち向かってるおじさんの名前ッスかね」
傍にあったドラム缶の上に慎重に――とっても高価なものなのだ
――カメラを置けば、懐からメモ帳を取り出し、名前を記す。
そうしてすぐにカメラに手をやり、
二人がしっかりと写真に収まるように、シャッターを押していく。
……背後から誰かが声をかけようものなら、
素っ頓狂な声をあげてしまいそうな熱中ぶりである。
ご案内:「落第街 路地裏」に八坂 良彦さんが現れました。
■五百森 伽怜 >
「ちょっと! 何ッスかこの超人バトルは……!?」
思わず拳を握りしめるサキュバスが一人。
刃は確かに振るわれた。
無論、少女の目に捉えられるものではなく。
何か行動をしなければと迷っている内に
一撃は放たれたのである。
噂に聞く『虚空』の切れ味を以てしても貫けない――
とんでもない防刃性能を誇る装備でも着込んでいるのだろうか。
「でもって、あれはリボルバー……!?
え、え、ちょっと! 撃つッスか……!?」
振り返ってみれば。
こんな物騒な現場をカメラで捉えるなど初めての経験だ。
いつも五百森が追っているモノと言えば、
ちょっと万引き犯が出ただとか、
いつも活躍している風紀委員や生活委員、
その他委員会の日常だとか。
そんな程度である。
『ジャーナリズムより人命』などと
大層なモットーを掲げてはいるものの、
実際にそのモットーを掲げる現場など目撃したことがないのだ。
「……むむむ」
生死を賭した現場に立つのは、これが初めてだ。
興奮の最中で鈍っていた感覚が次第に棘を表し、
ぶるりと身体を震わせる。
それでも、ここまで来てしまったのだ。
カメラのシャッターを押す、押す、押す。
最後までこの戦いを――
■八坂 良彦 > 夢中でシャッターを切る少女に、背後で響く小さく細かい何かが破裂するような音が聞こえたかどうか。
何回もその音が響いた後に、少女に声がかかる。
「こんな危険地帯で何呑気に写真撮ってんだ、お前?」
少しイラついたような、男というか、少し幼い感じもする声が掛けられる。
ふりむけば。少女よりも小さい、10歳程度の少年が、常世学園の制服に風紀腕章を巻いて立っている。
ビルの扉なども開いておらず何処から来たかは不明。
■五百森 伽怜 >
「うひゃあッ!?」
思わずカメラを取り落しそうになり、
その場で踊るように手をばたつかせたかと思えば、
地面スレスレ、何とか両手で掬い上げる形でキャッチに成功する。
「や、やめてくださいッス!
殺さないで欲しいッス……!
あたしはただ――」
そうして声がした方向へ目をやると、
そこに居るのは10歳程度の少年に見える人物であった。
「――アレ?」
風紀委員? 殺されない? 助かった?
黒い瞳に、濃い青の髪。
そして自分以上の小さな身長。
趣味で綴っている『風紀委員まとめメモ』を見るまでもない
この特徴が該当するのは――
「風紀委員の、八坂 良彦先輩ッスね!?
八坂流合気術の使い手!
一見身体能力に寄っていないかのような印象を裏切るように、
鍛え抜かれた肉体に秘められた戦闘力ッ!
風を操ることもできると聞いたこともあるッス!
ということで、お噂はかねがねッス!」
グッと拳を握る。
風紀委員マニアらしい。目が輝いている!
■八坂 良彦 > 「おおう、知ってるなら話は早い、てか…あぁ、なんか大通り洒落にならない事になってるな」
勢いに驚きながら、一瞬大通りをみれば、中々に派手な戦い。
「と、それより…えーと、とりあえず流れ弾とかの危険もあるかもだし、避難してほしいんだが、えーと、名前は?」
非難の呼びかけと、名前を知らないと話しづらそうに名前を聞いてくる。
ある意味そんな場合ではないのだが…。
相手は、望遠レンズを付けたごついカメラを手にしている少女、他に特徴的なのは鹿撃ち帽か。
とっさの動きに、何かしらの武術なりを修めているような気もするが、今は気にしている場合でもないと、頭を振って。
「見た感じどっちも狙い外しそうではないけど、万が一があるから、な」
■五百森 伽怜 >
「そうッスよ! 今ちょうどあのダスクスレイが現れて、
ホンロンー、とかいう謎のおじさんも現れて、
何だかトンデモなことになってるッス……!」
と、懸命に説明しようとしつつ、ハッとして
眼前の風紀委員から視線を逸らす。
安くない薬で抑えているとはいえ――
魅了の魔眼の効果が完全に殺しきれていないこともある。
基本はふわっとした好印象を与える程度なのだが……。
従って真正面から顔は見ないようにしつつ、
話を続ける。
「あ、名前は五百森 伽怜ッス……!
五百に森って書いてイオモリッス!」
びし、と敬礼をしつつ。
「仰る通りで……風紀委員の先輩に言われちゃ
従うしかないッス……」
戦いの行く先は気になるが、カメラを手に
大通りから離れる。
内心しょんぼりしつつ、ちょっとホッとしつつ。
■八坂 良彦 > 「ん、あぁ…遠目で見てもおかしいレベルだと思うな、あれは興味は尽きないだけどなぁ、俺も」
説明を聞きながら、ちらっと大通りを見て、苦笑して。
視線を外した相手に、ん?と首を傾げながら。
「いおもりな、んじゃ五百森…此処に来るとき何処から登ったんだ?」
本人が通った場所なら戻るのも問題はないだろうと考えたのか、そう尋ねながら。
「素直で助かる…人によっては、こっちのいう事聞かない相手もいるからなぁ。
さっき撮ってた分で……ん、なんであの二人撮ってたんだ、参考にするなら、動画の方が良いと思うんだが」
動画なら、俺も欲しいんだが、と何やら呟く。
■五百森 伽怜 >
首を傾げられれば、たははー、と苦笑しつつ。
「あー、ちょっとあたしの持ってる面倒な力の問題で……
あんまり目は合わせない方が良いんスよ」
それだけ説明をしながら、さて。
何処から登ったかと聞かれれば。
「あー、あたしは空中に足場を作る魔術が得意なんスよ。
それを使ってここまで登って来たッス」
そう、ここはビルの屋上だ。
写真を撮るのであればベストスポットだろうと思い、
五百森はここを選んだのだ。
「新聞に載せるなら、やっぱり写真ッスよ!
カメラで撮れば、くっきりはっきり撮れるんスから!
だから、残念ながら動画は撮ってないッス……!」
先輩の呟きを聞いて、
ちょっと申し訳なく感じて肩を落とす五百森。
「まー、偶然だったんスけどね、ここに来たのは。
ぽけーっと歩いてたら道に迷ったのが
きっかけだったんス。女子寮を目指してた筈なんスけど……」
そう、思いがけぬ偶然で大スクープをゲットした訳だが、さて。
帰り道が分からないのであった……。
■八坂 良彦 > 「ん、そうなのか…んー?
っと、悪い…言われたのに」
言われると気になるのは人の性で…少し下から少女の顔を覗き込み。
一瞬、何かに惹きつけられるような感覚を受け、すぐに視線を外す。
「あぁ、俺が来たのと似た感じか、それならそれで戻れるか?
魔力きつけりゃ、補助するか、持っていくけど」
細かい破裂音は、少年が風を足場にしていた音らしい。
「新聞ね…写真てことは紙媒体か?、最近電子新聞とかが多い気がするけど。
あぁ、いや…責めてるわけじゃないんだが、というか、もしかしてそのカメラアナログだったりするのか?」
デジカメなら動画で撮って後で良い場面を使えば済む筈と、ふと気づく。
ちなみに、新聞は全く読まないので、多い少ないは何処かで聞いた程度で。
「いや、どうやったら女子寮目指して落第街にくるんだ?」
間に異邦人街や歓楽区もあったはずだが、と驚き・
「はぁ、女子寮もどるなら送るぞ、ああいう事件が起こってるし、それなりの時間だしな」
そう提案してくる。
■五百森 伽怜 >
「いやいやいや、見るのはダメッス……!
やめてくださいッス……!」
大慌てて視線を外す。意外とアグレッシブな人なのだな、と。
『風紀委員まとめメモ』に記すことを決めたのであった。
しかし、この力は本当に……嫌いだ。
「……ごめんなさいッス」
そうして拒否するのは……事前に忠告を入れたとは言え、
何だか申し訳なくなってしまって、しょんぼりとしつつ
謝罪する。
「魔力はそんなに使ってないから大丈夫ッス!
で、そうッスね、カメラはアナログッス。
出してるのも電子新聞じゃなくて、紙媒体ッス。
今のご時世だからこそ、
こういうのが逆に新鮮で良いと思ってるッス!」
グッと拳を握って力説する五百森。
「いや~……方向音痴は生まれつきで……
先生からは「100万人に1人の逸材」って言われたことが
あるッスよ……」
たはは、と困ったような笑みを再び。
「……いやはや申し訳ないッス。
それじゃ、お願いするっすよ、先輩」
一人で女子寮に帰ろうとしたら、もう数日くらい
かかってしまうかもしれない。
ここは提案にありがたく乗らせていただこうと思ったのだった。
■八坂 良彦 > 「いや、こっちこそ悪い…と、これは謝りあう流れになるな。
というわけで、今のはお互い気にしないって事にしといてくれ」
だーっと頭をがしがしとかいて、気にしないで行こうと、言い切って。
はぁ、っと大きく息を吸い込み、吐き出す。
「うし、そんじゃ一緒に降りるか。
はー、アナログカメラなんかあんま見た事ないけど、そのレンズもあるとごついんだな。
そうなのか。そんじゃ今度紙の新聞読んでみるかね。
寝る自身があるけどな」
降りるのは問題ないな、と微笑み。
望遠レンズのついたカメラは、凄いなと驚き。
新聞に限らず、活字呼読んでるとねるんだけどな、と苦笑。
「それは、逸材なのか…というか、此処まで何時間、どんくらい迷ったんだ。
んで、もしかして腹減って無いか?」
凄まじい迷子だというのは伝わったらしく、少しの呆れと驚き。
そして、ポケットから取り出した小さな紙袋を放ってくる。
「腹減ってたら、食ってくれ」
中身は、クッキーの様子。
■五百森 伽怜 >
「わ、分かったッス……!
確かに謝りあいになるのも良くないッスからね!」
というわけで、提案を受けたので五百森も謝罪をストップ。
「そうッスよ。結構ごついんスけど、まぁこのずっしり
重たい感じも……悪くないもんッスよ!
……って、寝ないで欲しいッス! 一生懸命書くッスから!」
目の前で寝る自信がある、と言われるとトホホ、と
悲しむしかないのであった。
何とかして、活字が苦手な人でも面白い記事を書いてみせたいッス。
「お腹……そッスね、結構減ってるかもッス……」
言われれば、はっと気づく。
確かにお腹の辺りに妙な虚無感。
「……じゃ、じゃあありがたくいただくッス。
ありがとうッス、八坂先輩!」
恥ずかしいやら申し訳ないやら。
いろいろな感情を抱きながら、先輩に連れられて
女子寮へと向かうのであった――。
大スクープの写真を、しっかり胸の内に抱えて。