2022/02/07 のログ
ご案内:「落第街 路地裏」に伊都波 凛霞さんが現れました。
伊都波 凛霞 >  
此処しばらくは静けさを感じる落第街
実情はそうでないにしても、大きな事件──目立つ何かが一段落するとこの街にも一旦の平穏らしきものは訪れる
無論それはほんの一時の話で、すぐにこの街の日常は戻ってくるのだろうけど

そんな、少しだけ静かな路地裏をいつもどおり、放課後に警邏に訪れて
物騒な雰囲気もなく、見かける住人にはあまり遅くまで外にいないようにねと声なんかもかけながら、歩いていく

「………」

そんな途中でふと足を止めて見るのは、ほんの少しの範囲を乱雑に複数の鉄板で覆われた路地の一角
言葉は発さず、ゆったりとした足取りでそこへと向かって

そっと、路地の壁へとその掌を添える
ひやりとした感覚とともに、かつてそこで起こった出来事の、記憶の残滓が脳裏へと流れ込んで来る──

伊都波 凛霞 >  
あの日、とある連続強盗殺人犯を此処で追い詰めた
もう一歩、ほんのもう一歩で逮捕できるところだった

脳内に鮮明に映し出される記憶の残滓は
壁面から見た客観的な視点で、当時の自分と──斬奪怪盗を映し出す
予想し得ない逃走経路。まんまと…と言ってしまえばそれまで
知ってさえいれば対策のしようはあったのかもしれないが、彼とはその後出会うことはなかった
それは、彼が行方を晦ましたということではなく、逃げ果せたということでもない

壁から手を離し、空を見上げる
路地の狭い空からでは、かの電波塔は見えもしない

胸元から白い造花を一輪、取り出して乱雑に重ねられた鉄板の上にそっと置く
献花ならば、共同墓地にするべきだ
だからこれは…献花ではなく、
自己満足と言ってしまえばそれまでの
けれど彼と関わった人間の一人として、刃を交えた一人として
たとえ数々の騒動に飲まれていったとしても『忘れない』という意思の表明だ

伊都波 凛霞 >  
「──あの時もしも私が貴方を捕まえてたら…」

彼は死なずに済んだ?
過ぎ去ったことにIFはない
けれど自分が彼を取り逃がした導線の一つが、最後の結果に繋がったことに変わりはない
別の未来になったところで結果は同じだったかもしれないし、彼にとってその最後が良かったのかもしれないし、
それが自分の責任だなどという烏滸がましいことを言うつもりもないけど

「……我ながら女々しい」

──凛霞の中では何よりも重いものが、人の死である

『記憶』に関する異能の持ち主であること、
身近な人の死に多感な時期に触れたこと…

ただそれらの何よりも、"全ての可能性を終わらせる"『死』を、少女は嫌った
たとえこの街ではそれがどんなに近く、軽いものでも

「……次に活かすね」

そう呟いて、踵を返し背を向ける
再び、路地の壁に手を触れ、目を瞑る
次に活かす為にも、忘れることのないように

伊都波 凛霞 >  
女々しいタイムは終了。こういうのも必要だったりする
悲観も大事、憂いも大事、一通りこなせば後には開き直りが残る、ええ独善的で結構
開き直らないとやってられないじゃないですか

死んで良かったね、なんて絶対に思えないし
それがその人にとって唯一の救いだったとしても知ったことじゃない
残りの人生に絶望しか見えなかった?そんなの自分と出会ってなかったからだぞと言えるようになりたい

トゥルーバイツの事件の時も同じことを思ったし、今も思ってる
死んだ方々が勝手なことを言うなと憤るなら、どうぞ蘇って殴りに来てくれればいい

「──よーし、続き行きますか」

はぁっと掌に白い息を吐きかけ、歩き出す
まだまだ続く寒空の下…一つの事件の終わりに熱を灯した少女が、落第街の路地を征く──

ご案内:「落第街 路地裏」から伊都波 凛霞さんが去りました。