2022/08/07 のログ
ご案内:「落第街 路地裏」に異能食らう蜘蛛さんが現れました。
ご案内:「落第街 路地裏」に川添 春香さんが現れました。
川添 春香 >  
私の持っている未来の携帯デバイスは。
時々、調子が良くなってデータベースに繋がる。
なぜ、どうして。それはわからない。

ただ、私にわかるのは!! わかったのは!!
今日、この時間帯!!
落第街で!! 巨大な怪物が現れて!!

……人が大勢死ぬ、という惨劇の未来。

「惨劇の未来は要らない……私が絶対に止める!!」

異能で身体強化しながら落第街の屋根から屋根へ駆け抜ける。
路地裏に差し掛かる。
データベースに詳細な場所は乗っていなかった。

どこだ……どこにいる!

異能食らう蜘蛛 > その化け物は、すぐに視界に映り込む事だろう。
何せそれは異様に大きい。そして異物であると一瞬で理解できる構造をしていた。
八本の足を蠢かしながら軽々とコンクリートや鉄筋を軽々と打ち砕く。
川添春香が屋根から見下ろせば…いや、見下ろすではない。
見上げれば。その大きな蜘蛛の7つ目が付いた頭部がそびえているのが見える。

路地裏の人間にはこの島で認められている人権や生存権といったものが一切ない…
それを理解しているのか、
この蜘蛛はこのあたりの人間だけを食おうとしていたのだ。

異能者を食えば蜘蛛の力は益々肥大化し、
惨劇が新たな惨劇を呼ぶことになるだろう…!

川添 春香 >  
影が自分に落ちる。夕方にしても、不自然な。
それを見上げれば、巨大な怪物。その姿。

「蜘蛛か………!!」

怪物の正体は蜘蛛ッ!!
こんなことならコーヒーか殺虫剤でも持ってくるべきだった、と自虐する。
怖い。怖いけど。

「目の前の災厄を放って自分だけ安穏と暮らせなんて……」

長い髪の毛がざわめく。

「パパは教えてない!!」

髪の毛を砕けた瓦礫に巻き付けて。
蜘蛛の怪物に向けて投げつける。

まずは小手調べッ! 相手が傷つくならよし、そうでなければ…

異能食らう蜘蛛 > 瓦礫が蜘蛛の体に迫る。
…大分と巨体なせいで、距離感が狂うかもしれない。

ガランッ…

飛んで行った瓦礫は蜘蛛の表面に当たるが、まるきり攻撃で損傷を受ける様子もなく…

しかし、明確に自らに向かってきた今日の「食い物」をしっかりと認識するきっかけには十分だった。

「ギシィャァァァァァァアァァ…」

辺りがその妙な鳴き声だけで震えあがる音波を発して、川添春香の方へ向く大蜘蛛。
意外にもその身のこなしは素早く……一瞬で方向転換をすると同時に、
やってきた食い物を絡めとらんと口から粘着質な塊が吐き出される。
それは蜘蛛の糸のようなもの。

それに触れればみるみる体がくっついて、糸ごと口まで引きずり込まれて美味しく頂きます…

………という事になるかは、相対する川添春香の行動次第。

川添 春香 >  
瓦礫はノーダメージ。
この程度の攻撃では蜘蛛を倒せない、という明確な基準がわかる。
それにしても……常人なら戦闘不能なんだけどね。

「!!」

相手の耳障りな叫び声に全身が震える。
人の原始的な恐怖心をくすぐる悪魔の咆哮。

上半身を半分に折るように仰け反って寸前で相手の粘着質な塊を回避。
超軟体。あんまり使いたくないけど。

そんなことを言ってて勝てる相手じゃないッ!

蜘蛛に向けて指の骨を4、5発ほど指先から撃って牽制。
再生能力で骨を即座に戻しながら電線が切れた(銅線を住民に盗まれた?)電柱を。

「うわぁぁぁぁぁぁ!!」

力任せに引き抜いて。
蜘蛛に叩きつけにかかる。

「お前の相手はッ! 私だぁぁぁぁぁぁ!!」

異能食らう蜘蛛 > 「………!」

明らかに人ならざる動きを見せる蜘蛛は機敏に川添春香への追撃を試みようと………

「ごぶぅぅぅ…!!ずず、ずう…っ…」

………しかし蜘蛛の追撃は遅かった。

動きを上手く縫い留めるように指先から飛んだ骨の弾丸を食らい…そして、
まっすぐ飛び込むように電柱が蜘蛛の頭部を叩く。
凄い大きく奇妙な音が鳴り響き、脚が踏ん張って高いところにあった頭部がずり下がる。
この一撃はかなり効いたようだ…

「ギギギギギギギギ……」

「ド、ドガァ…ッ……オオオオオオオオオオオオオオ………!!!!」

突如として蜘蛛が奇声を上げると、蜘蛛を中心に衝撃波の渦が巻き起こされる。
それはまるで…所謂異能のように、理不尽で、突如として、辺りを破壊しながら電柱ごと川添春香を向こう側まで吹っ飛ばしてしまおうとすることだろう。

「ガジジジジジ………ビビビッ………」

蜘蛛の足の先端から蜘蛛の糸が放たれる。
………どうやら蜘蛛としても、川添春香を簡単に食える食い物から、
打ちのめすべき自分の相手だと認識を改めたようだ。
次に下手に近づいたら、いつでも絡めとろうと、多方からその巨体を生かして川添春香に狙いをつけ始める。

川添 春香 >  
この攻撃は通じるッ!
だったら、何度でもぶん殴って倒す!!
何十回でも、何百回でも攻撃を仕掛けるまで!!

「!!」

次の瞬間、衝撃波を浴びて後方に吹き飛ぶ。
背中からヒビの入ったコンクリート壁に叩きつけられる。
肺から空気が逃げ、強張った神経が全身の痛みを脳に伝える。

直後に蜘蛛が放つ糸、それを再び超軟体で回避しようとして。
一瞬、痛みで反応が遅れた左足が糸に捕まる。

「しまっ……」

直後、左腕の骨を抜き出して刀剣にする。
それで斬るのは、粘着質な糸じゃない。
自分の足首を斬って切断した。

「はぁ………はぁ……いったいなぁ…」

軽口を叩くこと。これだけが私の心を貪る恐怖を和らげてくれる。

「お気に入りの靴だったんだよ………私は怒りました」
「あなたの“食事”はもうおしまいだ……!!」

再生もまだ半端な左足、片足で体を支えて立ち上がり。

「あなたは絶対にここで倒す!!」

吼えろ。戦え。同じ異能を持つ私の父親なら───絶対にこうした!!

異能食らう蜘蛛 > 瓦礫の一打が通じなかった。
蜘蛛の糸がよけられた。

電信柱の一撃が通じた。
衝撃波がその体を捉えた。

お互い、この攻撃は通じるという事を理解しあった。
お互い、「こうすればこの相手に勝てる」という事が理解できている。

であれば。

この勝負に負ける道理はない。
少なくとも蜘蛛の側はそう考えているようだ。

…片足を失った相手。だが、それはまるで闘気を失っていない。
そして…少しずつ再生する体。なるほど、実に食いがいがあるではないか。

尽きぬ異能者の肉はどれ程甘美の味わいで、多量に食らう事が出来よう。
その為なら…これを相手するのも吝かではない。

極上の食事を得るためであれば、持てる力を全て振り絞ったって惜しくはないだろう…?

「ギシャァァァァァァァァ………!!!!」

蜘蛛が咆哮を上げる。彼女の叫びに重なるように、地響きを轟かせて。
立つ事すらままならぬ衝撃波を巻き起こし、蜘蛛が俊敏に宙へ飛び跳ねていった………

逃げた………わけではない。
獲物を狩る為の一撃を、空から見舞うつもりなのだ。

川添 春香 >  
跳んだッ!! 飛んだ、翔んだ!!
衝撃波の能力を持ち、巨体に頑強な表面。
なるほど、強力な相手だ。

じゃあ、逃げる?
その後に誰かが喰われるとしても?

「そんなの………全然カッコよくないよ…!!」

私はカッコよくなりたい!!
大好きな父親のように!!

なら、私は……絶対に絶望の未来から逃げない!!

残った右足を、膝を、腰を。
バネのように力を伝えやすい内部構造に変化させ!!
周囲の建物に何度も何度も跳ねて速度を増し!!

空中に跳んだ相手に向けて自分を射出させる!!

「川添孝一直伝…………!」

右拳を巨大化させ、蜘蛛を殴る!!

「鬼! 角! けえええええええんッ!!!」

異能、狂悪鬼(ルナティックトロウル)。鬼角拳。

異能食らう蜘蛛 > 蜘蛛が飛んだ目的は、一つ。
空から最大級の衝撃波を勢いを載せて地表へ向けて叩き込む。

恐らく周りのものはただでは済まないだろう。
そして、これを食らい地面にたたきつける事が出来れば、川添春香も
一切の抵抗力をなくし倒れ伏すしかないだろう…!

少なくとも、蜘蛛の中ではそう思っていた。

だが………相手はそれを甘んじて待つような甘い食い物ではなかった。

衝撃波を身に纏い、辺りを粉砕せんと打ち込み落下してくる蜘蛛。

それを迎え撃つ巨大な拳。
ただの拳ではない。何度も勢いをつけて跳ねてきた、質量も速度もあまりに大きな拳。



蜘蛛の起こす衝撃が巻き起こる。
それならば空中で粉砕して食らい尽くしてやろうと口を開く………!
地表を破壊すべく溜め込んだ衝撃を全てその巨大な拳ごと川添春香全てを圧迫せんと向ける………!!!

蜘蛛と拳が宙でぶつかり合い、火花を散らす。

川添 春香 >  
鬼角拳は。衝撃波と体躯に拮抗する。
結果として私の攻撃は相手のやろうと思ったこととかち合う。
真っ向勝負だ。

「う、う………」

弱気に呻いても状況は変わってはくれない!!
今は!! 雄々しく戦うんだ!!

「うわあああああああああああぁぁぁ!!!」

直後。衝撃波に右拳を粉砕されて。
私は地面に叩きつけられた。

血が流れすぎた。
再生が追いつかない。
右拳と左足を失って。
負傷でまともに動く部位のほうが少ない。

でも。

「あなた…そのサイズで……ちゃんと蜘蛛の巣は作れるの…?」

倒れ伏したまま、残った左手を真上に向ける。
血が顔を流れてて、上手く見えないけど。十分。

「作ったことないなら………私が教えてあげるよ…………」

左手をぎゅ、と強く握り込む。
それだけ。

 
さっき飛び回った時に周囲に作った髪の毛の結界が。
着地した相手を捉えるだろう。

 
「地獄へ落ちろ」

本気を出せば一本で2トンの重量を支える私の髪。
鋭利なる髪が狭まり、蜘蛛を寸断せんと迫るだろう。

これが私の最後の作戦。

異能食らう蜘蛛 > 「ガギイイイイイ…」

拳を打ち砕いた。
地面に落とした。
そして蜘蛛も地面に飛び降りていく。

今。この場で。

勝敗がついた。
食い物を得られた。

蜘蛛は喜びのような奇声をあげながらゆっくりとその大口を開ける。

「ガガ………?ギシャァァァァァァァァ!!!!!!!!!!!!!!!!」

食い物にありつくその前に、何かに絡めとられる蜘蛛。
自らが何かを絡めとっているわけではない。
なにか、糸の様な、長く細く鋭利なものが体を絡めとっている。

落下する体が切り刻まれる。
狭まっていくたびにその巨体に髪の毛で作られた刃が撃ち込まれていく。

蜘蛛はその体から、今まで食い漁ってきた異能力を吹き出して崩れてバラバラになっていく。

川添春香の体の上に迫った蜘蛛は、
因果にも蜘蛛の巣のように張り巡らされた糸によって、
その人間を蹂躙してきた一生を終え、砕け散るのだった………

川添 春香 >  
「はは………」

倒れ伏したまま、再生しきらない体のあちこちから血を流して。
笑う。

「見たか……人の未来は誰にも奪わせない…」
「狂悪鬼(ルナティック・トロウル)の川添春香………」

「女伊達…………見せてやった、から……」

気を失う。
その後、駆けつけた風紀委員により私は保護、救急搬送される。

そこで私は蜘蛛が人を食い、相手の異能を奪っていたこと。
そして。

 
自分が魘されながら知っている風紀委員の名前……
レイチェル・ラムレイの名前を口にしていたことを知ったんだ。

ご案内:「落第街 路地裏」から異能食らう蜘蛛さんが去りました。
ご案内:「落第街 路地裏」から川添 春香さんが去りました。