2022/09/10 のログ
ご案内:「落第街 路地裏」に異能食らう蛇さんが現れました。
ご案内:「落第街 路地裏」に川添 春香さんが現れました。
■川添 春香 >
私、川添春香は未来の人間だ。
過去に来てから調子が悪い携帯デバイスをいじる日々。
そして今日、未来の携帯デバイスがまたデータベースにつながった。
……また、あの機械纏う巨躯の怪人かと思ったけど。
違う。
「今日ッ! この場所に!!」
髪の毛を編み上げて作ったワイヤーを飛ばして建築物から建築物にスイングしながら。
「謎の怪物が現れて、人が死ぬ……それも前の蜘蛛ではない存在ッ!」
時折。異界から現れる怪物は。
人を襲うことがある。そして、今回も───
■異能食らう蛇 > 異界から来た化け物は一匹ではなかった。
丁度以前、蜘蛛を討伐した場所のすぐそばだった。
勢いよくやってきた川添春香が目にしたのは…一目でこの場に相応しくないと感じさせるだけの異物。
その異物は長く真っ白で生物的で、まるで生きていて動いているよう…
そして辺りには既に蹂躙された痕がある。
……だが、まだ幸いな事に人が襲撃された様子は、なかった。
先まで目を送れば、その巨体の中でも特に何か大きな塊が目に出来るだろう。
■川添 春香 >
白く巨大な蛇ッ!!
ウロコの滑らかさが生物が持つ生理的嫌悪を刺激する。
もともと、生き物は蛇を恐れる。
原始の恐怖が身を竦ませる。
「それでも!!」
ここで引くのはちっとも私らしくない!!
風紀委員に任せて安全な場所で震えてるだけなのは!!
ちっともかっこよくない!!
「お前の相手は、私だ!!」
上空から蛇の頭上に飛びかかり、飛び蹴りを浴びせる。
私の重量は大したことなくても、このスイングの軌道から
跳んで蹴りつければそれなりの威力になるはず!!
■異能食らう蛇 > 「「「「「「「ビシャアアアアーーーン!!!!」」」」」」」
しかし、頭部を見れば恐らく川添春香の恐れは更に刺激される事だろう。
ただの蛇だと思って頭までかけて飛び上がった春香を待ち受けていたモノは、
到底蛇のソレとは思えない形状だった。
「「「「「「ギュギギギチギチギチギチギチ」」」」」」
そこにあったのは、あらゆる生き物の 口 を大量につぎはぎして貼り付けたような、
歯と舌が蠢く冒涜的な塊。それが無数の音を奏でている。涎を垂らし、
開閉し、唸り…
「「「「「「「「「ギョギェギェギェーーーー!!!!!!!!!!」」」」」」」」」」」
川添春香を認識した途端、強烈な殺意を明確に向けて急速に振り返り…
……その口に携えた大量の歯を銃撃のように飛ばして飛び蹴りの速度を殺しにかかる。
「「「「「「グアアァァァアン…!」」」」」
軌道を変えずストレートに蹴りかかってくるなら…そのまま蹴りつけてきたところを、その大量の口のいずれかが食らいついて食い殺そうと待ち、口の中でも特に大きなモノを…まるで水面に浮かべるように頭部で移動させて…大きく開き川添春香から突っ込んでくるのを待っている。
■川添 春香 >
頭部にあったのは、蛇の定義に当てはまらない異形。
まさに異界の蛇。
それは……
「っ!!」
背筋が凍る、恐怖が心に刻み込まれる。
次の瞬間、絶叫と共に射出される牙。
音の壁に気圧され、そして牙に全身を引き裂かれ。
「くっ!!」
髪の毛のストリングを咄嗟に飛ばして空に逃れる。
これは物理でやるのは厳しいかも知れない。
だったら!!
魔導書『非時香菓考』を取り出す。
「201番目の記憶!」
「干からびて無くなりつつある湖の底で!!」
「二匹のナマズがあらん限りの語彙を尽くして談笑している!!」
333ある魔導書の呪文。
完全なる殺し技ゆえに使うことはないと思っていた201番目の詠唱。
「ハンガー・リゼントメント!!」
空中で発動したそれは、相手から水分を奪う。
これだけの巨体、決定打にはならないかも知れない。
それでも人なら即死するだけの呪詛を黒い呪力波として浴びせた。
■異能食らう蛇 > 「「「「「「ガガガガガガガ…ピー…ンヂュギュ…」」」」」」
開いた口が乾燥してガビガビになって割れていく。
呪力を浴びた頭部はまるで腐り落ちるように水分を失って朽ち果て、
そして川添春香を食らおうと開いた口も同じだった。
ただ、巨体故に呪力は全身に届くことはなく、一部は綺麗に残ったまま。
空高く飛び去った春香からすれば、それは頭を失って倒れたかに見えるだろう。
実際、そうとしか見えなかった…。
だが…
ソレは水分の残った部分だけバラバラに崩壊し、まるで輪切りにされたように思い思いの方向へ散らばっていく。
円筒状になった複数のモノが分かれて…転がって。
生きている。
一つ、その場に残った最後尾…尻尾の部分が唐突に川添春香を絞殺さんと伸びてきた。
■川添 春香 >
「やった!?」
頭部が崩れて生きていられる生き物はいない。
けど、それは。
この世界の生き物のルール………だった。
バラバラに崩壊して散っていくそれらに。
私は心の底から恐怖した。
瞬間。私は尻尾の部分に締め付けられる。
「う、あ……!?」
血が口から流れる。
拘束、なんてぬるいものじゃない。
私が身体変化系の異能じゃなかったら即死していたであろう攻撃。
未来の魔導書が足元に落ちた。
■異能食らう蛇 > 「ビ、ビビビ…」
切り落とされたかのような尻尾が川添春香を縛り上げる。
その巨体での締め付けは、恐らく普通の人間なら潰れていた事だろうか。
それを耐える春香。
…砕けて散らばっていった蛇の欠片が一個ずつ集まって再形成されていく。
一度切り落とし、水分不足で腐り落ちた頭部がない。尻尾もない。
ただの円筒のような体がとぐろを巻いている。
……失った頭が、少しずつ生えてくる。
口が一つずつ、円筒だけののっぺらぼうのような外見に、穴が開くように開いてくる。歯が生えなおされてくる。
目の前で、まるで再生能力の異能を見せつけているかのよう。
■川添 春香 >
異形が再生していく。
限界すら踏み越えた生命。
いや、違う。これは……αタイプの身体再生異能の…?
こいつは。
既に人を食っている。
あの蜘蛛と同じように、異能を持つ存在の肉を取り込んでいるんだ。
そんなの。
そんな存在を。
「うぅああああああああああああぁぁ!!!」
許しておけるはずがないッ!!
全身を使う。力任せに少し、ほんの少し拘束を緩ませ。
その隙間を超軟体ですり抜ける。
「お前は!! ここで!! 死ねぇぇぇぇぇ!!」
怒りのままに右拳を巨大化させる。
パパが言っていた。
この技を極めれば、ドラゴンくらいぶん殴れると。
「鬼角ッ! 龍! 撃!! けええええええええん!!」
鬼角龍撃拳。
質量攻撃に等しい巨拳を高所から異界の蛇に叩きつけた。
■異能食らう蛇 > 「グゲェェェェァアアアアアアアーーーッッッ!!!!!!!!」
蛇の頭部の回復が完全な状態ではない。
しかし、目の前の圧倒的な力量に抗うように、
蛇の頭部が巨大化する。
自らの肉体再生能力だけでない。肉体強化の異能力も持っている。
川添春香の鬼角拳が来るのをまるで知っていたかの様に、
その蛇の頭が大きくなる
戦いが始まった最初にお互いが打ち合ったように、
上空からの攻撃を食らい殺す一撃で迎え撃つ。
巨大化した拳ごと、川添春香を食い殺そうと襲い掛かる、肥大化した大きな口。
一本一本が人体をミンチにしてしまわんばかりの大きな歯。
「グボォォォォオォ…!!」
その歯すらもへし折らんばかりに強力な質量を、歯を折られながらも川添春香を食らおうと、両者が衝突する。
恐らく、これで完全に殺しきれるだろう。
……お互い、そう確信した一撃がせめぎ合う…!!!
■川添 春香 >
右拳が弾かれる。
牙にズタズタにされ、血まみれになった拳を元の大きさに戻しながら後方に引く。
完全に右手は死んだ。
「私の拳はッ!! 二つある!!」
廃ビルの壁面にある明かりの灯らぬ篆刻看板、その上に着地し、跳んで。
「鬼角……双龍拳ッ!!」
再度、左手の鬼角龍撃拳を放った。
こいつに髪の結界は通用しない。
魔導書も落とした。
だからこれが私のファイナル・プロット。
そんなことが……引く理由になんかならない。
私は私の正義を信じる!!
私を信じてくれたレイチェル先輩のために!!
絶対に負けない!!
私の女伊達は、理不尽を相手には絶対に曲げない!!
■異能食らう蛇 > 「グギャァァァァァ……!!!」
一度鬼角拳を耐え忍んだ巨大化した頭部は、二度目の拳を耐える事はなかった。
嚙み砕くための歯は再生も追いつかず、拳がめり込んでその巨体がひしゃげていく。
それでも、どうにか川添春香を食らおうと食いつぶしに来る蛇。
まるで何があっても目の前の敵だけは殺してやろうという意思を感じる事だろう。
しかし、攻撃も防御も手段を失った蛇が無理に食らいつきにかかる事は、
相手の攻撃をみすみす受け入れ、逃げる手段すら持たないで無防備を晒す事に他ならなかった。
その人喰らいへの執念を打ち砕き、叩き潰すなら…今しかない。
■川添 春香 >
呼吸を整えて相手を睨む。
せいぎ
「あなたにはあなたの本能がある、そのことは理解した」
左足を地面に突き立てる。
そして右足で蛇を………遥か上空へ蹴り飛ばす。
左手を際限なく伸ばして地面に落ちた魔導書を拾い、手元に持ってくる。
333番目の詠唱、それで終幕だ!!
「最後の記憶!!」
「船に載せられた狂女が船上で一言、『雪が見たい』と呟いた」
「ひとひらの雪が彼女の眼の下につき、溶けて流れた」
「導きの終焉(ブックエンド)────!!」
大規模凍結を引き起こすこの魔導書、最大最強の魔術。
空中の異界蛇を巨大な氷塊の中に閉じ込めた。
左手で本を閉じてズタズタの右手の親指を下に向ける。
「地獄へ落ちろ」
氷塊が、轟音と共に誰もいない道路に落ちた。
■異能食らう蛇 > 頭がひしゃげた、蹴り飛ばされた蛇は、どこかで再び再生を始めるかもしれなかった。
その可能性すらもなくしてしまうように、終の魔法が蛇を凍てつかせる。
空中で…その巨体にも拘わらず。
魔法は蛇の全てを凍らせた。
ガラン…と、大きすぎる氷の塊が転げ落ちた。
それを最後に、もう二度と動く事はなかった。
■川添 春香 >
「さて………」
空を仰いで、道路を破砕して落ちてきた蛇の氷棺を前に。
「あとはこれ、どうしよっか………」
小さな声で呟く、風紀委員に連絡を取らなきゃ。
そんなことを傷だらけの体で考えたのだった。
惨劇はこうして砕かれた。
これは夏の終わりの戦い、その一部始終である。
ご案内:「落第街 路地裏」から川添 春香さんが去りました。
ご案内:「落第街 路地裏」から異能食らう蛇さんが去りました。