2022/10/11 のログ
ご案内:「落第街 路地裏」に紅龍さんが現れました。
ご案内:「落第街 路地裏」にモールディングベアさんが現れました。
■紅龍 >
――ドスン、と灰色のどでかいアタッシュケースがボロいコンクリの上に落とされる。
『注文の品っす。
言われた通りに用意しときました』
「おう――たすかる」
アタッシュケースを持ち上げる。
重量は数十キロくらいあるか――スーツ着てくりゃよかったかな。
『え、ちょ、検品しないんすか!?』
「こんなとこで検品なんかしてたら、誰に見られっかわかんねえだろ。
お前も随分、表に馴染んだみてえじゃねえか」
黒いローブとマスクで顔も体格も隠した相手は、焦った様子を見せるが。
オレは少しでも早くその場を去るために踵をかえす。
「お前はもう、裏の武器商人じゃねえ。
立派な職人としてやってんだ――さっさと帰ってやりな」
『――ありがとうございます!』
そんな声を背中に受けて、路地裏を奥へ奥へと歩いていく。
やたらと重いケースを、ドカン、と道に置いて。
転がってた古いコンテナを転がして、その上に腰を下ろした。
「あーくそ、重てえ。
やっぱ生身で来たのは失敗だったな」
ケースの上に足を載せて、懐から『タバコ』を取り出す。
火をつけて、煙を吐いた。
■モールディングベア > タバコの煙が揺らぐ。
近くにあった大きな影が、ぬうっと動いたのだ。
「あれ、おじさんだ。 ここで何してるの?」
小さな人形……よく見れば気絶した幼い少女…を抱えたまま、
小首を傾げて問いかけるのは、見知った獣人だった。
2mを超える体躯にボロのローブを纏ったその人物こそ、
テルミナスセブンの一人、モールディングベアである。
ぽい、と少女をその辺に捨て置いて、大きなケースに眼をやる。
のっしのっしと近づいて見下ろした。
「おいしいもの入ってたりする?」
ケースから持ち主…おじちゃんへと眼をやり問いかける。
顔に『お腹がすいた』と書いてあった。
周囲を見回す。 このケースを運ぶような台車であるとか、
車であるとか、そういったものは見当たらなさそうだった。
「おじちゃんが運ぶの?」
自分にとっては大したことはなさそうだが、彼にとっては重たそう。
ケースを指さして、もう一度確認。
■紅龍 >
近くにいた気配が動く。
無警戒だったわけじゃないが――知ってる相手だ。
「ん、よう、嬢ちゃん。
お人形はいいのか?」
転がされた少女は、すっかり怯えて震えているように見えるが。
まあ――嬢ちゃんの能力を考えたら、うん、わからなくはねえな、うん。
「上手い物は入ってねえが――ああ、あった。
食いかけだが、いるか?」
懐から、開封して一割ほど食べたクッキーの包みを取り出す。
嬢ちゃんの空腹を満たす量はないだろうが、ないよりはマシだろ。
「そうだよ、おじちゃんが運ぶの。
ちょっと取引してきた所でな。
――興味あるか?」
どんどん、と踵でやたらでかいケースを叩く。
いや、ほんとはこんな雑に扱うと危ないんだけどな?
さすがにこれだけ良いケース使ってたら、中身に影響がある事もねえしさ。
■モールディングベア > 「うん。遊んだからだいじょうぶ。」
放っておいた”人形”に一瞥もせずに答える。
彼女…彼も立派な落第街の住人だ。これぐらいなんてことはない。
たぶん。おそらく。
ふんふんと鼻を鳴らして食べ物の匂いを確かめていたところで、
差し出されたクッキーの包みを見て眼を輝かせる。
「ありがとう!」
もりもりとクッキーを口に運ぶ。容赦なく食べていたところで、
相手のことを思い出した。
「そういえば、助けてくれてありがとう!
あのあとちょっと布生地が手に入るようになったよ。
まだまだ足りないけど…。 んんー? 興味はー…。
あんまりないんだけど、今クッキーもらったし、お礼もあるし…手伝う?」
相手のキックを食らったケースは、重たい音で答える。
中身は相当重たいらしいし、相手の態度から見ても
軽々運べる代物でもないのだろう。
恩義のひとつも返そうと思いついて、相手に提案する。
相手も運びづらそうだし、自分が手伝えるなら手伝おう。
そんな単純な善意であった。
■紅龍 >
「――ああうん、同情はしてやるよ。
帰っていいってさ」
その『人形』に声をかけてやると、よろよろと、這うように離れていった。
嬢ちゃんのお遊びはなんというか、色々と精神的にキツそうだなあ。
「ん、ああ。
その事なら気にすんな。
オレにもちゃんと利益があったからな。
なんなら面白い話もあるぜ、お前さんの服飾デザインを買い取りたい――みてえなのとかな」
服飾系の部活――特に違反部活ともなると、流通もだが、なによりデザイナーが不足するらしい。
個性が強すぎて、真っ当に『可愛い』デザインが出来るデザイナーがいないとかなんとか。
どこも人手不足は変わらないもんなんだねえ。
「あー、おてつだいか。
うん、そいつは、ありがてえな」
なにしろ、重い。
これでもそれなりに鍛えているんだが――片手で運ぶにはデカいし重い。
「ま、その前に検品だな。
この辺なら邪魔者も入らねえし」
それも嬢ちゃんのおかげだ。
テルミナスセブンのモールディングベア。
そいつが『お楽しみ』をしてる所になんざ、誰も近寄りたくはねえだろう。
巻き込まれたら堪ったもんじゃない。
がつん、と蹴りを入れるようにケースのロックを外すと、重い音を立ててケースが割れるように開く。
中には、緩衝材が敷き詰められ、多数の箱がこれでもかと言うほど詰め込まれていた。
■モールディングベア > 「ええー、買い取り…。 すごい! すごいけどー。
でも買い取られたら困るな~。 いっぱい服作りしたいし、
誰かに服のデザイン買ったから作っちゃだめなんて言われたら…。」
のんびりとした調子で答えながら悩む。
自由自在にやりたい自分は、きっと契約でモメそうな気がする。
とはいえ、きちんと作ってくれるなら悪い話ではない。
うんうんと頭を抱えて悩んでいたけれど、
ケースがぱかりと開くのを見ると悩むのをやめた。
「これはー、なにー?」
緩衝材。たくさんの箱。 そしてこれらは重量物。
頭の上に?マークをたくさん浮かべながら問いかける。
「美味しそうな匂いはしないし、布みたいなもんでもない…のかな?
うーん…なんだろう…。 食べ物じゃないんだよね?」
全く隠す素振りがない『おなかがすいた』というアピール。
たくさん遊んで満足していたわけなのだし、お腹も空いているのだ。
うろうろとケースの周りを回るようにして中身を眺める。
とはいえ、勝手に手を出したりはしない。
知らないものに対しては極めて慎重なのだ。
■紅龍 >
「興味があるなら、契約は仲介してやるぜ?
お前が自由にやれるようにさ――嬢ちゃんはクリエイターなんだからよ。
余計な事に煩わされない方がいいだろ」
とはいえ、金銭の収入は必要だろう。
その収入の確保に関わる、煩わしい契約なんかは、オレが肩代わりしたってかまわない。
仲介業ってのは、かなり金になるんだよな。
「そうだなぁ、美味いもんじゃねえな。
ただ、飯のタネにはなるもんだ」
言って、一つ箱を取り出して、フタを開ける。
そこには、円錐状の金属がずらりと並んでいた。
「ほら、見てわかるだろ。
銃弾ってやつだ。
ここに入ってるの、全部そうだな」
ケースの中に在る、色分けされた箱。
弾種によって分けられている。
口径も性能も全部が異なる、オレの愛銃専用の特注品だ。
恐らく、全部で数百発って所か?
「――てか、嬢ちゃんちゃんと飯食ってんのか?
服飾の材料費で食費削ってます、なんてやめろよー」
冗談まじりに笑いながら、一つずつ箱を開けていく。
注文通りの弾が、注文したよりどれも一回り数多く入っている。
まったく――これじゃあ赤字になるだろうに。
ついつい、苦笑が漏れちまった。
■モールディングベア > 「うーん。 うん。あとで考えるね。」
興味のありかは、今はケースの中だった。
飯の種になると聞けば期待しないわけにもいかない。
箱の中にたくさん並ぶ、円錐状のそれを見てぽかんと口を開ける。
「弾かあ。」
荷物にはあんまり興味がなくなったと言わんばかりの態度だった。
「うん、ご飯は食べてるよ。 安いところでいっぱい食べてるし、
時々他のところでご飯もらうよ。」
もちろん”もらう”といっても配給や仕出しなどではない。
相手の質問に大人しく答えながら、一緒に箱の中身を見ていく。
品物に興味はないが、中身を確認する相手には興味がある。
「なにかおもしろいことあった? どこにはこぶー?」
なんとなく苦笑する相手に首を傾げて問いかける。
■紅龍 >
「ああ、ゆっくり考えな。
先方にゃ、交渉中だって言っておくからよ」
我ながら世話焼きだとは思うが、どうもこの娘にゃ気がいっちまう。
多分あれだな、いい意味でも悪い意味でも、純粋なのが目に見えてるからだろう。
どうにも放っておけない。
「はは、銃には興味ねえか。
ま、可愛くねえもんなぁ」
嬢ちゃんの好む『可愛さ』とは無縁の、武骨な世界だ。
鉛玉を確認して、その箱の下にある、円盤のような物を三つ引っ張り出した。
「おいおい――地雷かよ。
注文してねえぞ、ったく」
まったく呆れたヤツだ。
サービスしすぎたっての。
「ちゃんと食べてるならいいさ。
一にも二にも、この街で生きるなら体が資本だからな。
衣食住はしっかりしてねえとな」
地雷をケースにしまい直して、少しだけ悩んで顎を撫でる。
そういやこいつ、どのへんで生活してんだ?
いや、流石にそこまでは肩入れしすぎ、か?
「ん、いや、注文してない商品まで入っててよ。
仲の良い取引相手なんだが――赤字になる出血サービスしてくれててなあ」
首を傾げる嬢ちゃんに、困ったように笑う。
さて、どこに運ぶか、か。
「うち――オレの隠れ家まで持ってくから手伝ってくれるか?
そしたらよ、うちで良いもん食わしてやるぜ。
おじさんの手料理だ」
にひひ、と笑って、どうよ? と訊ねる。
■モールディングベア > 「うん。」
短く答えてうなずく。 興味について聞かれると、
腕を組んで首を捻った。
「でも銃は好きだよ。 ホルスターとかベルトとか、あるいは銃そのものとか。
じっさいに使うのはあんまり好きじゃないかも。」
学生にしろ不良生徒にしろ、そこまで銃を頻繁に使うわけでもない。
あくまでも”ファッションであれば”好きという回答をする。
地雷と呼ばれるディスク状の物体を見ると、はへー、と気の抜けた声を上げた。
破壊力は抜群そうだけれど、なんだかトラバサミみたいであんまり好きじゃない。
「うん。 中華食べてる。 寝る所もあるよ」
廃墟になってるバー…テルミナスセブンのアジトのひとつが自分の寝床だ。
注文していない商品と言われると、なるほとと手を打った。
さっきから勘定と違うとかサービスとか話していたのはそのためだったのか。
「うん、運ぶよ! いっぱい食べさせてくれるならいっぱい働くよ!」
やっと自分の出番がきたとばかりに瞳を輝かせる。
鼻息荒く答え、腕をぐるぐると回して見せた。
「それにしても、いろんなもの持ってるんだねえ。」
おじちゃんの素性はよくわからないが、いろいろ銃とか弾とか持ってるから、
きっと物騒なのだろうけれど…気にするところはそれではない。
美味しいご飯をたくさんごちそうしてくれることと、生地を分けてくれる点が大事なのだ。
■紅龍 >
「ああ、アクセサリとしてはアリなのか。
そんなら、うちに色々あるぜ、見て見るか?」
ミリタリ系のデザインのインスピレーションになれば幸いだ。
一通り検品して、きっちりとケースを閉じてロックを掛ける。
そんで、ケースを嬢ちゃんの方にすべらせ――す、滑らねえ!
重すぎんだろ!
「ぬ、ぬ――お、おう。
中華好きなのか?
ならオレが本場の中華を食わせてやるよ」
これでも大陸は母国だ。
郷土料理ってもんも、あるにはある。
とは言えくっそ広いもんだから、地方色がとんでもねえんだが。
「んー、まあ元々軍人さんでね。
こういうのを使うのが専門なのよ。
――あ、持ってもらっていいか?」
情けないが、マジで重いわこのケース。
格好つけないで台車ごと貰って来ればよかったなぁ。
いや、でもさ。
見栄張りたいじゃん?
自分が世話したやつにくらいさ?
まあそれで、こんなお嬢ちゃんに助けてもらってりゃ世話ねえんだけどさぁ。