2024/03/07 のログ
ご案内:「落第街 路地裏」にホロウさんが現れました。
■ホロウ > 危険地帯の観測において大切なことの一つは、当事者にならない事があると考えている。
勿論、時には当事者となるような大胆な行動が必要となるときもあるし、それに必要な機能は備わっている。
しかしながら、それはあくまでも任務としての話であり、有事の際に援護や救急のバックアップがあっての話だ。
今となってはそれをもたないヒューマノイド風情が訪れるにはかなり荷が重たいと言えるであろう。
しかしながら、好奇心に負けた人の可能性を持つそれは、赫耀が如く尾を引く躊躇いを湛えながら落第街へと降り立った。
「現在時刻20時15分。落第街の観測を開始する。」
腰のジェット機を折りたたみ、好奇と躊躇が混ざり合う複雑な一言と共に路地裏へと一歩踏み出した。
■ホロウ > 夜の落第街は暗い。
春が訪れ、陽が長くなってきたこの時期でも流石に20時は暗い。
それが落第街であれば猶更であり、加えるならば僅かに赤い残光を讃える少女は悪目立ちするという点だろうか。
目だってしまうそれは、本来ひかえるべき行動でもあるのだが、この危険地帯から即時離脱、もしくは防衛行動をとる為。
要するに防衛を第一に考えた行動としては悪くないだろう。
降り立つ時点で派手に赤い飛行機雲を残す身にステルスなど向かないのは明らかである。
「……それに、何者かとのコンタクトはむしろ望ましくもあります。
その方がー」
観測が捗る。
危険地帯で目立つのは危険だが、好奇心を埋めるための観測において接触は好ましいと考える事も出来るだろう。
独り言もその為とあらば少し大きく、周囲に聞こえやすいように。
弱小な存在はむしろ怯えを覚えるかもしれないが、それはそれで構わないだろう。
■ホロウ > 近頃常世の日常風景となりつつある少女もといヒューマノイドにとって目立つ事が相当リスキーなのは言うまでもないだろう。
一般生徒から二級学生、学園関係者から違法入島者までが彼女の事を目にしている。
しかしながら目撃されるようになってから随分と経った。
人々の興味も薄れつつあるが、勿論未だに狙っている存在もいる。
そういった存在に狙われる可能性は当然考慮すべきだろう。
「しかしながら、私の行動は何者にも予測できませんからね」
捕獲計画など立てられない。
その一点で高をくくっている点は認めよう。
自身の行動が原則不規則であり予測不能である点を把握し、意識して不規則性を保っている少女を捉える計画を立てるのは難しいだろう。
だが、今が捕獲する好機であるのもまた事実。
それを再認識した少女の噴出口の湛える光が一層強まった。
落第街を往くあゆみは遅く、しかしながら軽い。
好奇心に背を押され深く更に深く。
■ホロウ > とはいえ警戒してばかりでは接触も減ってしまうのではないか。
そんな事を考えていた少女に忍び寄る影を一つ検知した。
機体に備わるセンサーが捉えた影はすばやく、それでいて静かに少女の元へと近づいていく。
それを知りながらも、歩みを進める事はやめず。
少女の歩みが遅い分、距離はどんどん縮まっていく。
それでも少女は動かず、蠢く赤も揺らがない。
そして、影が手にした何かを少女の背中に押し当てようとした直後ー
腰の噴出口が突然背後を向いたかと思えば、その赤を鋭く放出した。
人間の急所を避け、飛び出た赤が影の全身を貫く。
赤光が落第街の一角を仄かに照らし、吹き飛び倒れた影を見下すがごとく少女は宙に浮かんでいた。
■ホロウ > 「あなたのことを教えていただけませんか?
同族のよしみで」
影はロボットだった。少女と同じように人の姿をしたロボット。
少女と違う点を述べるならば、感情の有無だろうか。
あくまでも推測の域を出ないが影、もといヒューマノイドには感情らしき表情は見てとれない。
感情を表現する機能がない可能性はあるが、これといって感情らしき所作はなく起き上がりも機械的なものだ。
そうこうしている間に、ヒューマノイドの傷口がふさがっていく。
焼かれた跡ごとゆっくりと再生していく様を見るに、少女と同じように魔力を持つヒューマノイドなのだろう。
しかしながら、魔力由来の機能は少女とは大きく異なるようだが。
「教えていただけないようですね。でしたら、あなたの体に直接お聞きするのが早そうです」
勝てる。それも、余裕をもって。
観測結果を信じ、勝負を仕掛ける事にする。
相手は暗殺に特化した機体のようであり、対面しての戦闘は得意分野ではない様子。
更に言うならば、この機体は既に魔力の大半を使い切っている可能性が高い。
そして、最後にこの機体は自爆機能を持っている。
相手が人造の存在である以上、この程度までなら観測で見て取れた。
ならば、自爆機能を作動させないように停止させる、もしくは情報のみを奪い取ればいい。
戦闘機でない少女には少々難しい事だが、不可能ではないだろう。
湛える赫耀が高まりを見せ、周囲を赤く染め上げた。
■ホロウ > 噴出口が分離し、左右併せて4つの砲塔となる。
そのうち左右1つずつが正面へと向けられ、甲高い音と共に赤く短い砲撃を放った。
ヒューマノイドがその砲撃を横に転がって躱す。
砲撃はすばやく、熱を持っている。
先ほど似た攻撃を受けているヒューマノイドはそれを脅威と判断し、緊急回避を行った。
そして、急ぎ視線を少女に向けたヒューマノイドの視線の先には僅かに残された赤い残光が二筋。
その残光をたどるように視線を動かした先に砲塔を向けようとする少女の姿。
移動自体はそこまで速くもなく、ヒューマノイドが視線を動かすのと少女が移動を完了するのはほぼ同時だった。
しかしそこから放たれる攻撃が早い。
回避行動をとったヒューマノイドの肩を砲撃が貫く。
そのまま回避行動を続けるヒューマノイドを追うように砲撃を放つ。
ヒューマノイドが負傷した事で計算が狂い、砲撃の半数程度が外れるがそれでもヒューマノイドが行動を停止するには十分な数の砲撃を当てる事が出来た。
■ホロウ > 地面に横たわりながらも再び再生を開始するヒューマノイドに対して砲塔からビームサーベルのように伸びた赤光がヒューマノイドの首を切り落とす。
そして、その首を拾えば、そのまま砲塔を噴出口へと戻し、その場から離脱する。
離脱しつつ、指先からのレーザーで手元の首を斬り抜き、記憶媒体のみを取り出す。
そして手元から零れ落ちた首と残された身体が派手に爆散した。
落第街の夜空を彩る爆発はその汚さもあって正に落第街の花火とでもいったところか。
「今日の成果はこれで満足としましょう。しばらくはこれの解析に時間を費やすことになりそうです。」
高度な解析機能を持たない少女にとっては近代の暗号化の進んだデータベースを解読するのは一筋縄ではいかない。
他を頼るのも手だが、そんな人脈もない。
「さようなら」
黒いキャンパスに、満足げな一言と一筋の赤を残して少女は去っていった。
ご案内:「落第街 路地裏」からホロウさんが去りました。