2020/06/20 のログ
紫陽花 剱菊 > 「……そうだな。私からの施しを受けてくれるなら、私は助かる。」

「私は其方に"生きて欲しい"と願うよ。出来る事なら、良き事を学び、其方が笑顔で暮らせるように……。」

かつて、己の世界では"人"ではなく、男は"刃"として生きた。
結果として多くの命を斬り捨てたが、本質としては誰かの救いへとなりたかった。
その願いは今でも変わる事は無い。
少女に健やかに生きて欲しい。
そのために、見返りなど求めるはずもない。
男の、ささやかな願いの一つだ。

「……話せる人間に、か……、…………。」

まるで、総当たりでその"誰か"を探しているようだ。
彼女の会いたい人物とはいったい誰なのか。
其れを少女に聞いても仕方ないだろう。
ともかく、その言伝はしかと受け取り、頷いた。

「承った。……嗚呼、時に、其方の寝床では在るが……不用意に人に教えてはいけない。……そうだな、とりあえずは、私で教えるのは最後にしてくれまいか?」

こんな場所だ。
善意で近づいてくる人間のが稀だ。
少女を不要に傷つけないための措置を口にする。

227番 > 「……わかった。頼まれ、る」

完全に納得したわけではないが、227は受け入れることにした。
いずれはわかるようになるかも知れないが……。
「……うん」

伝言も伝えた。これについては、これ以上話すことはないか。


「それって……外で寝るより、危ない?」

それまでの生活を基準にしているため、基準がおかしいが、
そうだと示せば納得するだろう。

紫陽花 剱菊 > 「……忝い。」

少女へと静かに頭を下げた。
今は全てを理解しなくてもいい。
ともあれ、此れで少女の食糧難は少しは改善できそうだ。

「……そうだな。危険だ。今はしてないやも知れないが、寝る時は預かった寝床で寝るように……其の方が、危険な目に合わずに済む。」

其れは間違いない、と言わんばかりに頷いた。
ただでさえ前進してきた生活を、他者に荒されてはたまったものではないだろう。
成るべく穏便に、静かに、少女の暮らしの安全は守っていかねばならない。

「……ふむ、そうだな。私も今や根無し草。其方の安全を守るという対価で、時折寝床に居座っても良いか?」

常時とはいかないが、暇な時は彼女の面倒を見てやれる。
何とも世話焼きな男だ。

227番 > 「……わかった。気を、付ける」

はっきりと言われて、ならば気を付けなければ、と心得る。
ちゃんとした場所で寝れるというのは、ここ最近では一番の収穫なのだ。

続けて、提案を聞けば。

「いいけど……あまり広くない、大丈夫……?」

自分の縄張り、というのを持ったことがなかったため、その辺りも抵抗がない。
ついでに今後食事がもらえることになったため、
単純で食い意地の強い227は一気に心を許したようだ。

紫陽花 剱菊 > 「うむ……。」

とりあえずは安心だ。
しかし、このような子までいるとは、思ったよりもこの落第街の治安は良いとは言えないかもしれない。
流されるままに生きていたが、此の島も一枚岩では終わらないようだ。

「……問題無い。気になるなら外で寝る事も厭わない。私は本来、そう言う使い方をする人間だ。」

夜の番には慣れている。
戦に生きた人間成れば造作もない事だ。
ゆっくりと立ち上がれば、そっと右手を少女へと差し伸べた。

「さて……早速だが、案内してはくれないか?道すがら、何か買っていこう。其方の腹の具合も気になるからな。」

227番 > 「外は……危ない?」

さっきそんな話をした気がして。
慣れでいえば、こっちは数日前までは地べたや箱の上で寝ていたのでかなりのものだ。
強そうな人だから大丈夫とか?といろいろ思考を巡らせる。

「わかった……えっと、あっちの、裏の方」

そう言って、指を差してから、差し伸べられた手を見て、また首をかしげる。
なにか要求されている気がするが、それが何なのかわからない。

紫陽花 剱菊 > 「……無防備で寝るのは危険だな。特に此処では、褒められた行動ではない。」

置き引き程度なら可愛い方だ。
一種の無法地帯。
人攫い、暴行。あるいはそれ以上の蛮行に出会うかもしれない。
彼女をそんな目には合わせたくはない。
だからこその忠告だ。

「……向こうか……今宵は共に行こう。はぐれぬように、手を取ってくれないか?無論、強制ではない。」

今宵は満足の行く眠りを彼女に提供すると決めた。
差し伸べた手は、迷わぬために、彼女を護る為の手だ。
暫し、そのまま静止しているが、とらぬのであれば黙って下げるだけだろう。

227番 > 「……?」

無防備じゃない寝方も有ると理解したので、これ以上は何も言わなかった。

「手……」

言われるままに、小さな手で、差し伸べられた手を取る。
それから、指差した方へ歩き出すだろう。

隠れ家は2つの路地裏が十字に交差するようになっている所にある
入り口のような物は見当たらないが、227は壁の方にまっすぐ向かっていく。

紫陽花 剱菊 > 手を取ればそのまま優しく握り返す。
鉄のように冷たく、硬い男の手だ。

「うむ……。」

少女に追従する形で動いていく。
道すがら、露店などを見つければそこで幾ばくかの食料などを買っていった。
何が欲しいのか、少女にも尋ねるだろう。

程なくして、ついた先は壁だ。
ただの寝床ではなさそうだ。
黙って男は、少女に追従する。

227番 > 記憶にある範囲で、欲しい物を選ぶ、というようなことはなかった。
そのため、欲しい物を訪ねても要領の得ない返事が有ったことだろう。

「この壁を……」

ノックを2回、間を置いてもう1回。
そうすると、鏡が割れるような音が響いて、壁に穴が現れる。

電気は通っていないのでかなり暗い。

紫陽花 剱菊 > とりあえず食べれそうなものは買っておいた。
微妙な返事でも、男は特に気にすることは無い。

「……隠れ家か。余程気前の良い人物のようだが……。」

果たして、自分のように善意で行ったのか或いは……。
その辺りは、進んでいけばわかる気もする。
いこう、と少女の歩幅に合わせて、暗い横穴を通り抜けようとする。

227番 > 中も変わらず暗いが、夜目が効く227はあまり気にしていない。

そこには保存に向いた食料──それらはいくつか開けてある──と、簡易ベッドが置かれている。
休憩も取れる、備蓄保管庫といった様相だ。

「要らないから、もらってくれって、たのまれて」

積まれた食料は、いずれ無くなるだろうことは予想出来るし、
まだしばらくは保存ができそうなため、手を付けなくて済むのであれば、
なるべく残しておいたほうが良いと227は考えている。

紫陽花 剱菊 > 暗闇で幾度となく修羅場をくぐり抜けた。
とは言え、男は獣では無く、人の範疇にある。
目を凝らし、何があるのかを何となく、感覚でしか理解していない。

「……成る程。不要になったものか……其の方の名は、記憶にあるか?」

本当に不要になったのか、どうか今一わからない。
食料に毒……は、なさそうだ。
かくも、買ったものをとん、と少女の前に置いた。
蓋を開ければ、温かいスープなどの軽いものだ。

「……ともかく、腹が減っているのなら食うと良い。用が無ければ、今宵は無理に出る必要はないだろう……。」

227番 > 「明かり、あればいいんだけど」

慎重に動いてるのに感づいた。しかし、どうすることも出来ない。

「えっと……カナ?」

自信なさげに言う。
フルネームを名乗っていた気もするが、覚えていない。

「……あ、ありが、とう」

路地裏生活を初めてこのかた、温かいスープなど飲めるはずもなく。
それはそれはきらきらとした目で頂くのだが、暗いのでそれは伝わらなさそうだ…。

紫陽花 剱菊 > 「……明かり、か。確かに、些か暗いな。今度明かりでも買ってくるか……。」

人が暮らすには暗い。
ふむ、と思いながら周囲を散策するように、右へ、左へ、右往左往。

「成る程……。」

カナ、覚えておこう。
そのまま静かに、暗闇の中を歩いていく。

「……ナナ。明かりをつけてもいいか?」

男は徐に訪ねた。

227番 > 暗闇の中で動く様子を目で追っていると……

「いい、けど……あるの?」

特に拒否する理由はない。自分はどっちでも問題がなかった。
スープを手に持ったまま、答える。

紫陽花 剱菊 > 「……間に合わせではあるがな。」

因みにスープは所謂インスタントなコンソメスープだ。
暖かく、特に舌が肥えてなければ不味くはない。

さて、そう答えた男の右手元には小太刀がいつの間にか握られていた。
自らの異能。刃を生み出す力。
鈍い銀色の刃を躊躇なく、左手に押し付けた。
刃が手に食い込み、鈍い痛みが走った。
だが、男は顔色一つ変えず、しとしとと赤い血が溢れ始める。
優れた嗅覚なら、その血の臭いを簡単にかぎ取れるかもしれない。

227番 > 「……なに、を?」

びっくりして手がとまった。血の匂いは流石に気付く。
困惑と怯えの表情を浮かべつつ、相手の方を見る。
しかし阻止をしようとはせず、じっと様子をうかがっている。

紫陽花 剱菊 > 男はさも気にすることは無く、垂れる血を指先でなぞり、天井に、壁に、血でなぞっていく。
男は自らを勘定に入れないタイプだ。
人の為なら、自ら体を傷つける事を厭わない人間だ。

さて、数ヵ所に血をつければ、指先を二本口元の前で立てた。

「─────明。」

男が口走ると同時に、ボゥッと宵闇をかき消すような明かりが数ヵ所灯った。
男の血でなぞった部分に、煌々と輝く熱を持った光の球体。
戦の為に収めた術ではあるが、こういうのにも役に立つ。
男は静かに少女の方を見ると、はっとした。

「……驚かせてしまったか?」

227番 > 「大丈、夫?」

対価に血が必要とは知る由もなく。
ただ、魔術のやそれに類するものは条件が特殊なのだろう、とも理解は出来た。
そのため、怪我したところを気にかける。

「不思議……」

それから、浮かんだ明かりを見つめる。やはりよくわからないものの、
自分で今はわからないままでいいとした。

紫陽花 剱菊 > 「……問題無い。其方が気にする事ではない。」

血を流す程度、何の障害にもならない。
小さく首を横に振り、切れた傷を隠すようにぐっと拳を握った。
自らの心配は微塵もしない。
そう言う男だ。

「……血を代価に明かりを灯した。熱はあるが、火傷はしない。私の命の光だ……。」

「……程なくして、何れ消える。今は食事に勤しむと良い。私は此処で、其方を見守っている。」

男は静かに腰を下ろし、入口へと座り込んだ。
静かに呼吸し、微動だにせず、唯一の入り口を護る為に。
会話くらいには応じるだろうが、少女が目覚めるその時まで、男は静かに見守り続けるだろう。

227番 > 「……なら、いいんだけど」

不安ではあるものの、慣れている雰囲気もあったため、
今はスープに意識を向けることにする。

がっつくというほどではないが、冷める前に食べたいのだろう、ペースは早い。
あっという間に食べ尽くして、満足そうに微笑んだ。
見た目相応の、有るべき笑顔、とでも言うべきか。

「ありが、とう」

暗くなってから起きてきた227であったが、満足感からか、うとうととし始める。
やがて、簡易ベッドで丸くなった。

紫陽花 剱菊 > 「────……。」

どういたしまして、とは言わなかった。
手を翳せば、程なくして明かりは消える。
満足感に包まれたまま、男はその健やかさを、些細な幸せを護る為。
独り、何時ものように宵闇に黙し、辺りを払うのだった────。

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