2020/06/23 のログ
日ノ岡 あかね > 「ほんとに?」

夜の瞳が。

「ねぇ『本当』に?」

ゆっくりと。

「『本当』に……『円滑に進める為』?」

近づく。
近づいてくる。

「これは『円滑じゃない』でしょう?」

もう鼻先が突きそうなほど……目前にまで。
傍目からみれば、男女の逢瀬にしか見えない。
年頃の男女の睦言にしか見えない。
事実、あかねの顔は。

「遊戯盤に……強いカードを叩きつけているだけ」

まるで、恋する乙女のように。

「勘違いしないでね、リオ君……私、アナタの事はとても評価しているの。アナタみたいな人は体制に何人かいなきゃいけないの。いなければ説得力がないの。アナタの役割は必要な役割……例えどんなに唾吐かれても、例えどんなに詰られても……阿っちゃダメ。妥協しちゃダメ。自分を一本の武器と定義したのなら……徹底しなきゃダメ。アナタはそれが出来ている。だから……私、アナタのこと」

まるで、瑞々しい桃のように。

「……好きよ?」

……薄く、紅くなっていた。

「だから……聞きたいの。どうしてこんなに……」

日ノ岡あかねは、身を寄せて。
宛ら、逃げ遅れた少女がそうするかのように……身を寄せて。

「『危ない』事をしているのかしら?」

……硬い『何か』を、理央の腹に押し当てていた。
先端が尖った、何か。
互いの身が近すぎて見えない。
あかねの顔の遥か下。
理央の下腹部に当たった『何か』。
あかねが右手に持った……『何か』。
まだ、当たっているだけ。
それだけ。
何の害も与えてはいない。

「ねぇ、リオ君」

今なら……砲撃は簡単だろう。
だが、無論理央ごと吹き飛ぶ。
あかねは勿論、全てが灰燼に帰す。
……恐らく、この仕事すらも……有耶無耶になってしまう。
それも知ってか知らずか、日ノ岡あかねは。

「教えて?」

嫣然と、楽しそうに。
――笑った。

神代理央 > 夜が迫る。
日が陰り落ちて、周囲の風景を飲み込む様に。己の視界は、彼女唯一人に専有される。

「…くどい。そうだと言って――」

何回も同じ事を――と繋げかけた言葉は、眼前に迫った彼女の唇から零れた言葉によって防がれる。
強いカードを叩きつける。それは、反論しようがない事実。異能という暴力に限らない。資産、両親の地位、立場。あらゆるモノは、常に自分の手札であった。
他者に対抗する為のワイルドカード。理想も思想も捻じ曲げる力。

「…評価、評価か。それは光栄だ、とでも喜べば良いかね?それとも、私の思想を理解する者が現れたと歓喜して見せれば良いか?」

桃源郷に咲く華の様に。仙女が弄ぶ果実の様に。
僅かな紅に染まる少女を、感情の籠らない瞳で見つめる。
落第街の逢瀬。しかしそれは、睦言と言うよりも、甘美な毒の香りすら漂う様なモノ。

「貴様に好かれたところで、私の目的が円滑に進むとは思えんな。風紀委員会に対する好意としてならば、投書でもして貰った方がマシと言うものだ」

その毒を。甘ったるい毒を振り払うかの様に告げる言葉。
彼女が己に身を寄せ、互いの躰が密着する様な距離になっても尚。いや、だからこそ。
此の場所で出会ったその時よりも。ほんの数分前よりも。瞳に浮かべる猜疑と警戒の色は、より強く、深く。

「……決まっているさ。それが一番手っ取り早いからだ。やってみせねば、ソレを実現出来るのだと示さねば、他者は続かぬ。
先駆者になろうなどと驕りはしない。しかし、人は誰かが踏みしめた道を歩きたがる。先例を欲しがる。ならば、それを与えてやれば良い。水路を作ってやれば良い」

そして、下腹部へ感じる固い感触。
鋭いナニか。その感触に僅かに瞳を細めると、愉快そうな笑みを僅かに零して口を開く。

「だから。こうして他者に討たれるとしてもそれは仕方の無い事だ。私の選択が間違えていたのなら、それは認めざるを得ない過ちだ。
だが、選択も行動もせぬ儘まんじりと生を終えるくらいなら、誤った選択の末に果てる方が余程、マシだ」

其処で初めて彼女という存在に興味を持った、とでも言う様に。
漫然と伸ばされた掌が彼女の頬を撫でようとするだろうか。

日ノ岡 あかね > 「じゃあ、こんな事はしちゃダメよ」

くすくすと、あかねは笑う。
目前で。互いの髪の香も分かるほどすぐ傍で。
日ノ岡あかねは……嬉しそうに笑う。

「アナタは水路を作る者。アナタは先達。アナタは既にそれになっている……安心して、アナタはアナタの役割を十全に果たしている。だから、私はアナタが好きなの。『風紀委員らしい風紀委員』のアナタが好き。『異能者らしい異能者』のアナタが好き……だけどね、だからこそ、考えて欲しいの」

軽く、『何か』の先端が押しあてられる。
微かな圧力が……理央の腹部に加わる。
もう少しでも、力を籠めれば。
それは……想像に難くない。
恐らく、互いに。

「『そんな偉大な先達』が『あっさりと凶刃に倒れたら』……あとに続く人達は、ちゃんと恐れずアナタの後を歩めるかしら……?」

それでも、あかねは。
日ノ岡あかねは。

「『その末路』を知ってまで……勇気を振り絞れるかしら?」

ただただ、笑う。
楽しそうに。嬉しそうに。可笑しそうに。
笑う。
笑う。

「リオ君アナタはもう……風紀の象徴(アイドル)なの」

――笑う。

「それが……『異能も使えない違反学生』のせいで『不幸』にあったら……本当に今の風紀は滾れるかしら? 弔い合戦をできるかしら? 異能に名前があるくらい強い人達はいいかもしれない……だけど」

あかねは、理央の目を見て。
その目だけを見て。
他の何も見ないで。

「『名も無きその他大勢』は……アナタの『末路』に続けるかしら?」

日ノ岡あかねは。
神代理央に。

「アナタはもう……有名になりすぎちゃったの。そう思わない?」

そう……問うた。

神代理央 > 「…随分と過大な評価だな。私に続く者が。私の背を追う者が。果たして今どれ程いるものか。貴様の好意は素直に受け取るにせよ、それでも足りぬ。振るう力が。示すべき範が。他者に力を振るって、人々を守るという組織がどの様なモノであるべきか。
私自身が未だ未熟なのだ。先達になったなど、驕りはせぬ」

夜を纏う少女が笑う。
かつて彼女自身が所属する組織を壊滅させた組織に準ずる己を。己の行動を、とても嬉しそうに笑う。

それは何とも非現実的な光景ですらある。
寧ろ、腹部に押し付けられる物質の感触だけが、奇妙な程に現実感を伝えているかの様。
生命の危機とやらに際して、脳が自己防衛でも起こしているのか。

「……確かに、貴様の言には一理ある。しかし、その程度で臆する様な連中は、そもそも私の後に続かぬだろう。
先達は、先に行く者は何れ倒れる。だが、その屍は踏み越えられてこそ意味がある。屍の元迄至らぬ様な者など、単なる有象無象。従えるべきモノであっても、導くべき者達ではない」

そうして、笑う彼女に唇を歪めるだけの笑みを返す。
己が倒れる程度で臆する様な者など、最初から己の踏みしめた道を行く勇気すら無いだろう、と。
とはいえ、彼女の言葉に頷くべき部分もある。笑みを浮かべながらも、その瞳は思案する様に僅かに細められて――

「……ハッ。何を言うかと思えば、私が風紀の象徴。アイドルとはな。随分と血生臭い偶像もあったものだ。恨みつらみが過ぎて、銅像が立つやも知れんな。建てた後に踏み付ける為だけの」

だが、此方を見つめる彼女の瞳を見返す己の瞳は決して笑ってはいない。続く彼女の言葉が耳を打てば、浮かべた笑みも次第に薄まるばかり。

「……成程。つまり、此処で私が討たれても。異能を持たぬ何者かに哀れに討たれたとしても、それは無意味な死であると貴様は言うわけだ。水路を引き終えぬ儘私が死んでも、それは使われず、彼果てるだけだという訳だ」

静かに答える己の言葉には、既に尊大さや高慢の色は無い。
淡々と事実を確認するかの様に。感情を露わに見せる彼女とは対照的に事務的な口調ですらあるだろうか。

「有名になった、とは思うさ。貴様の言う事も、正しいと理解はする。それでも、私が危険から身を引けば。暴力装置の象徴としての風紀委員という役目から降りれば。それでは何も変わらない。変化は、訪れない」

「ならば、無意味な死であれ見せつけねばならんだろう。どれ程の怨恨を背負おうと、示し続けなければならないだろう。
既に歩き始めた道だ。今更引く訳にもいくまい」

そして、僅かに身を傾けて彼女へ更に身を寄せようと。
それは事情が知らぬ者が見れば、単なる逢瀬の続き。しかして、己の行動はそんな香炉の様な甘さは持たない。
身を寄せれば当然。腹部に加わる圧力が。押し付けられる『何か』が更に己の躰に食い込む。場合によっては――

それを理解した上で。分かった上で。それでも己の道は己自身が進まねばならないものだ、と嗤い、身を寄せるのだろう。

日ノ岡 あかね > 「ほんと……男の子ってバカよね」

押し付ける圧力で、『それ』が理央の身に沈み込む。
強かに。確かに。

「それは『無責任』よ、リオ君」

最早、無害ではない。
明白な『痛み』を……理央に齎す。

「アナタは驕ってる。自分を高く見積もるだけが驕りじゃないわ……自分を必要以上に小さく見ることも、立派な驕り……アナタはまだ自分が『他に影響を与えない人物』だと、自分を過小評価している。アナタはもう責任を負わなきゃいけない立場……アナタが選ぼうと選ぶまいと、アナタは既に恐怖の象徴(アイドル)……アナタを『言い訳』に前に出られる人もきっといるのに。アナタを『盾』に決断できる人もきっといるのに。なのに、それを全部見ないで……『やることはやるけど責任は取らない』なんて……」

日ノ岡あかねは。
強かに、確実に。
理央の腹部に沈み込めた『それ』を捩じって。抉って。

「そんな、『ダッサい』真似……私は赦さないわよ?」

薄く――笑った。

「アナタ達は……風紀委員会は……私に手を掛けた組織。私を身請けした組織。私ね、他の人はどうだか知らないけど……」

理央の目を見る。
夜の黒が、鮮血の赤を覗き込む。
日ノ岡あかねは引かない。
日ノ岡あかねは譲らない。

「私を必要以上に『安い女』にするような真似は……気に入らないのよね?」

神代理央が……そうするように。
それでも。
日ノ岡あかねは。

「その席に座ったなら……あんまり無茶しちゃダメよ?」

華のように……満面の笑みを零した。
右手を離す。
硬い『それ』が理央の腹部から離れる。
その右手に握られていたのは。

「折角の良い男なんだから……男を落としちゃダメ」

ただの、ボールペン
キャップがついた、どこにでもある……普通のボールペン。
腹部をいくら押したところで、届く痛みは鈍痛程度のもの。
鋭い刺突の痛みなどではない。
残ったところで……せいぜい青痣。
その程度のもの。

「青さは確かにアナタの魅力だけど……それを全部許して貰える立場じゃないんだから……少しは弁えなきゃダメよ?」

身を離して、あかねが笑う。
いつも通りに。いつかカフェで会った時のように。
朗らかに、笑う。

「まぁでも、そう言う事なら、アナタの意見は分かったし……私も決めたわ」

そして。
まるで、学校の通知表でも見せるかのように。
まるで、テストの答案でも見せるかのように。

日ノ岡 あかね >  
 
「私も――風紀に入るわね?」
 
 

日ノ岡 あかね >  
日ノ岡あかねは、笑いながら。
『それ』を見せた。
それは……風紀の一部、赤坂薫子などが若干『その存在』を知っていた……風紀委員会の新案。

『元違反部活学生の威力運用』

それへの……同意書だった。

「アナタが無茶をするなら、私が代わりに無茶するわ。いいわよね? もう、許可貰っちゃってるんだから」

神代理央 > 「……それは…いや、そうなのかも知れんな。無責任であるとは決して言わぬ。私は、私の行動に責任を必ず持つ。捨て置きなどしない。
……だが、私自身の周囲からの評価というものに無頓着であったことは認めよう。それがどのような影響を及ぼすものであったのか、考えが至らなかった事も認めよう。
――よもや、それを貴様から御教示頂けるとは思ってもみなかったがね」

捻られ、己の躰に穿たれる『何か』
ソレが与える痛みに僅かに顔を顰めながら、面白そうに。愉快そうに再び笑みを浮かべる。

「成程?それが貴様の矜持か。貴様の拠り所を潰した我々が。貴様の手に縄をかけた我々が。怠惰と融和の安寧に沈む事を許さぬか。
案外、可愛げがあるじゃないか。そういう矜持は、嫌いでは無いよ」

交わる瞳に、決して陽光は灯らない。
深淵の夜と、鮮血の紅は、互いに嗤い合う。

「…知らなかったのか?男と言うものは、大概そんな生き物だ。その点に関しては、私も深く否定はせぬよ。
……心配されているのか。それとも他意あっての発言なのか、今一つ
首を傾げたくなるところだな。だがまあ、我が身はもう少し大事にするとしよう」

僅かに肩を竦めるその仕草には、最早猜疑と警戒の色は浮かんでいないのだろう。

「…とはいえ、何度でも言うが私は世辞は好かぬぞ。真っ当な評価であれば喜んで受け取るがね」

離された右手。そこに握られたボールペン。
まさが文具で脅されていたとはな、と今度は心底愉快そうに。クスクスと零れ落ちる笑みを止めようとはせずに。

「……まあ、派手に動いて行動が阻害されるのは好ましくない。ある程度は自重しよう。しかし、完全に止める事は――」

そこで。決めたと告げる彼女に小さく首を傾げる。
いったい何を彼女は決断したのだろうかと、浮かべた疑問符は直ぐに解消された。

「く……ハハハハハハハ!そうか。まさか、そういうカードを持っていたとはな。しかも、その案。随分と秘蔵されていた筈だが…いや、最早出所も、貴様が何処でそれを知り、其処に至ったのかも深くは聞かぬさ」

「私の代わりに無茶をする、というのは好まぬ。私は、他人を代わりに使って理想を成し得ようとは思わぬ。
だから、精々励む事だ。私が死なぬ様に。偶像が凶弾に倒れぬ様にな。アイドルの管理も、貴様の仕事の内になるのだろう?」

本気とも冗談ともつかぬ言葉を、心底愉しそうな笑みで。
遠く煙る砲煙の香りが燻る落第街に相応しく無い様な喜色と愉悦の交じった笑みで、彼女に言葉を投げかけた。

日ノ岡 あかね > 「ふふ、リオ君こそ私に『管理されるつもり』なんて……甘えてくれるじゃない? 私、男の子のそういうところは大好きよ」

くすくすと笑いながら、大事な恋文でも抱きしめるかの様に……両手でその紙切れを持って。

「まぁでも、アナタの強情は分かったから……好きにしていいわよ? おねーさんが全部何とかしてあげるから」

それこそ、部活の先輩のようにそう胸を張って……優しく笑う。
柔らかい笑み。仕方ない後輩を心配するような顔。

「ほんと、リオ君は……しょうがないなぁ」

どこにでも普通の先輩の顔で、あかねは笑いながら溜息をつく。
遠くで燃える災火を背景に。
ただ降りしきる月の光を浴びながら。

「ま、安心してお世辞じゃないし、矜持……とかも、よくわかんないけど、何もアナタの心配だけじゃないわ。勿論それも大事だけどちゃーんと他にも……『やりたい事』があるからね」

そう、あかねは笑って……夜空を見上げる。
その遥か向こう。遥か遠く。
砲火に染め上げられ、紅く燃え上がる落第街の一角。
茜色に染まる夜空を見上げながら。
日ノ岡あかねは。

「今ね、この街にね……面白い子達がいるの」

滔々と、語りだす。
薄笑みを浮かべて……語る。

「……『私達』よりずっと真っすぐで、『私達』よりずっと純粋で、『私達』よりずっとわかりやすく……『この世界』を変えようとしている子達が」

路地裏で出会った、名も無き仮面の誰かを思い出す。
落第街で知った、胡乱な噂を思い出す。
悪を裁く悪。
悪を断ずる悪。
悪がなす、悪の物語……そう、語った『誰か』を思い出して。

「だからね、私」

日ノ岡あかねは。

「……あの子達と、遊んでみたいのよね?」

少女のように。
新しい玩具を与えられた子供のように。

日ノ岡 あかね >  
 
「知りたいのよ……『楽しい事』を」
 
 

日ノ岡 あかね > ただただ、笑って。
夜に消えた。
別れの言葉などない。
振り返ることもない。
そんな必要、どこにもない。
だってもう。

……きっといつでも、会えるのだから。
 
 

ご案内:「スラム」から日ノ岡 あかねさんが去りました。
神代理央 > 「散々に持ち上げてくれたのだ。多少は楽をさせて貰わねば、神輿でいるメリットも無かろう?」

同意書を握り締める彼女を眺めながら、軽く肩を竦めて首を振る。

「おや、随分と頼りになる事だ。後輩思いの先輩を持てて幸せだよ。それが真意であれば、尚の事喜ばしいとは思うのだがね」

疑っている訳では無い。しかし、信じている訳でも無い。
溜息を吐き出した彼女を見つめる己の表情は、再び傲慢さを滲ませたものへと変化する。寧ろ、先程よりも強固な。己の立場を理解したが故の傲慢な笑み。

「ほう?聞こうじゃないか。元違反部活生の貴様が、態々風紀委員会の門を叩いて迄したい事とは何なのか。興味が尽きぬところではあるが――」

其処で、夜空を見上げる彼女に釣られる様に視線を動かす。
燃え上がる貧困と奈落の街。その焔の中に浮かび上がった彼女は、微笑んでいた。

「……私利私欲の為に、風紀委員会の権勢を振るう事は程々にすることだ。だが、それが正しく風紀委員会の理念に適う行為であるのなら」

「止めはせんよ、日ノ岡。望むが儘、思うが儘に愉しめ。私を焚き付けた礼だ。好きな様に、だが私の砲火に撃たれぬ程度に、その欲望の儘に歩むが良い」

そうして、薄暗い廃屋の街へと消えた彼女を、此方も追い掛ける事はしない。別れの言葉も、探りの追い打ちも必要無い。
彼女は、今宵から"同僚"なのだ。のんびり、仲良くしていけば良いだろう。

しかし、彼女に目をつけられた「あの子達」とやらは――
――いや、此れ以上は無意味な思索なのだろう。少なくとも己は、他者を哀れむ程出来た人間では無いのだから。

ご案内:「スラム」から神代理央さんが去りました。
ご案内:「スラム」に持無 童男さんが現れました。
持無 童男 > 「ゴミ拾いでござる」
と、大きいなかごを背中に背負いながらゴミをかごに入れながら

「この資源がなかなか、リサイクル屋に売ると、お金になるでござるからなぁ」

とさえばしで、資源をかき集めながら、ゴミを取っている。

持無 童男 > 「なかなか重いでござるな。だけどその分キレイになってれば、良きでござる。」

それに鍛えられるでござるからな。

「さてもうちょっと頑張るでござるか」

持無 童男 > 「げっふぅ!!」
土壇と後ろに転がり、飲み物を飲みながら。
「なかなかハードでござるな。だがしかし!これもまた鍛錬でござる!」
と言いながらビニール袋の入ったかごを持ちながら、ゴミをかごに入れている。
「こういうところはすぐに汚くなるからかごを持ちながらの鍛錬に最適なのでござる」
(それに、こういうところこそキレイにしなければ、なんか心が嫌なんでござる)

持無 童男 > (結構きれいになってきたでござるな、一角だけだけでござるが)
何十にも積み重なれた袋のかごを背負いながら。
「(よし、まだ大丈夫でござるな)」
(病の原因にもなるのでござるので。不衛生はダメでござるよなうん)
かごを揺らしながら、
(この行動が、ここが清潔になる一環になればいいのでござるが。なかなか難しいでござろうな。だが諦めぬでござる。)

持無 童男 > にっ!と笑い、「さてここからでござる!」
「頑張るでござるよ。」
と言いながらゴミを集めている。

持無 童男 > (よしこんな感じでござるな。)
ではこれで袋を入れていっぱいにしてリサイクルショップに行った!50円くらいだった!。

ご案内:「スラム」から持無 童男さんが去りました。
ご案内:「スラム」に伊都波 凛霞さんが現れました。
ご案内:「スラム」にアーヴァリティさんが現れました。
伊都波 凛霞 >  
落第街の警邏
さすがに慣れたものだけど、相変わらずこのあたりは雰囲気が暗く、重い
他のお仕事で来た時は明確な目的があったから気にならなかったけど、
いざこうやってやってきてみると…あちこちから視線を感じるし、どうも落ち着かない

「──とはいえ、ちゃんと怪しいことしてる人がいないか探さないとね…」

他の風紀委員二人と、スリーマンセルで此処まできたところで、散開する

件の組織とやら、そして賽子の情報集め…
此処落第街ではやるべきことが沢山ある

ぐっと背伸びをして、ゆらゆらとポニテを揺らしながらスラムを歩き始めた

アーヴァリティ > 「あれ?あれってもしかして凛霞ちゃんかな?」

先日、名前を聞き忘れたアフロの風紀委員から聞いたことだ。

ー僕が風紀委員会に指名手配されているー

ここ数日、それが楽しみでずっと、他の戦いを我慢して体力と魔力を温存して、ずっとスラムの外周、高めのところをずっと回り続けたりしてたんだけどー

スラムを歩く見覚えのある人影が目に入る。
こげ茶のポニーテール、肉付きのいい体。
目の前でみたのだ、ほぼ間違いない、僕の視力だし間違いない。

「ああやっぱりそうだ!凛霞ちゃんだ!」

切人をお見舞いに行った時に会った風紀委員会の凛霞ちゃん。
僕はあの時、彼女が強いかどうか見極められなかったけどー

「襲ってみれば...わかるよね?」

なんて、ニヤッと口元を歪めれば彼女の背後数メートルに音を立てて着地してー

「こんばんは!僕のこと覚えてるかな?」

なんて、挑戦的な笑みを彼女に向けるであろう。

伊都波 凛霞 >  
それは、自分に向けられる複数の視線に交じる一つ
その一つに気付けなかったのは、むしろ凛霞が全方位に警戒心を向けていたからだろう

だから、背後に着地する軽い足音と、かけられた声、に対して──
やや、驚いたような表情で、振り向いていた

「──貴女、は」

当然、以前戦いを監視していたこともあって、見覚えはある
と、いうよりは…此処へとやってくるならば当然、警戒すべき対象

「黒蝕姫っ…!?」

笑みを向ける小さな体躯の持ち主
短く後ろへ飛び距離をとるのは、瞬間的には戦闘態勢が取れない証拠
咄嗟に出てしまう、武術を嗜む者の習性──と、言い換えても良い

アーヴァリティ > 「そうそう!黒触姫、アーヴァリティ!
久しぶりだね!凛霞ちゃん!」

なんて、何でもないことのように、当たり前の挨拶のような何気ない日常の1シーンのようなセリフ。
そして、それと真逆の非日常を醸し出す触手が、左右に展開された。
そしてそこから伸び、両手に絡みつく触手が蠢き出す。

「さあ!君もやっぱり強いのかな?!」

なんて、当然の動きのように後ろへと飛んだ彼女を戦えると判断して触手の絡みつく右手を後ろへと引けば、身体強化なしの踏み込みで彼女へと襲いかかり、その右手を彼女へと撃ち込んだ。

伊都波 凛霞 >  
「名前を覚えてもらっていて光栄だね。
 …山本くんをやった、って聞いたけど…本当かな?」

ややその眼を細めつつ、対象的に静かに問いかける
その身体から触手が飛び出し、蠢いている様子を、見据える──

「──ッ、いきなり…っ!!」

飛びかかってきた少女へと合わせるようにして、その身を僅かに後ろへと沈みこませる
この速度は、十分に捉えられる速度
突き出された少女の右手に凛霞の手が絡みつくように添えられ──

その背後のプレハブへと、少女の勢いを加速させて投げ飛ばす

アーヴァリティ > 「あのアフロ君のことかな?!凄かったよ!
あんなに綺麗な動きしててあんなに強いのに 普通だった!」

へえ、山本君って言うんだ。名前聞けてなかったから聞けて嬉しいよ!
何て言いながら後ろへとぶん投げられたけど、ここまではただのお試し。
大人しく投げられてあげよう。
なんて、余裕こきながら彼女の動きに従い投げられ、体をひねらせて着地して振り向けば凛霞の方に向き直って。

「ねえねえ。
君たち風紀ってアフロ君みたいな人ばっかりなの? みんな僕の拳を砕いちゃったりするの?」

楽しくてたまらない、最高だ、なんて思いながら、歪んだ笑みを林家に向けつつゆっくりと彼女へと足を進めていく。

伊都波 凛霞 >  
「……そう、間違いじゃないってことだね」

彼が遅れを取る、ということは…
…少なくとも、なんの準備もなしでは戦闘を一手で収めることができる相手ではない…ということ
加速度をつけて背後へと放り投げ、器用に着地するその様子を眼で追いながら──

「──どうかな。
 私としてはお互い傷つかないうちに拳を収めるのがいいんだけど、
 ……どういう意図かは知らないけど、君が風紀委員を潰しまわってるなら、それはできないからね」

する、と片手でポニーテールを撫でるように
キュルルッという小気味良い音が聞こえ、凛霞の周囲にキラキラとした小さな銀光が反射する

「拳が砕かれる程度で辞めて欲しいなら、大人しく捕まったほうがいいよ」

アーヴァリティ > 「すごいアフロだったよ!
ついつい拳合わせちゃってね!魔力全部込めて負けるってびっくりだよ!」

楽しかった、と。ただただそれだけを彼女に伝える。
彼女がどう取るかなんて考えてない。この怪異はただただ、「楽しい戦いであった」とだけ言っているのだ。

「もしみんなそうだったり、それ以上だったら...僕はすごく嬉しいなあ」

凛霞の5m程手前で足を止め、両手をバッと左右に広げ、歪んだ笑みを一層歪ませてー

「君も僕の拳を砕いたり脚にヒビを入れてくれるんだったら!最高だね!」

そう叫べば、両手の触手の10本前後が凛霞を捕まえんと両手、両足へと勢いよく伸ばした。
その勢いは容赦無く、下手に捕まれば人間の手足など一溜まりもないだろうし、かすっただけでも傷をつけるのには十分すぎるだろう。

伊都波 凛霞 >  
「…どうしてそんなコトをするのか、少し聞いてみたくもあったけど。
 ──ロクでもない理由な気もするしなら、聞かなくても良いかな」

勢いよく伸ばされる触手
先程こちらへ突っ込んで来た時の速度とは、比較にならない

「(これだけ多いと、全部を見切るのは困難──)」

トンッと地面を蹴る
軽やか、かつスピーディーに、路地の曲がり角…コーナーへと移動する
壁を背にし、ここから後ろへは下がれない、が──

「──…ふっ」

キュキュン──!
鋭い、何かが空気を切り裂く音と共に、
位置の都合上移動経路を正面90度の角度に制限された触手達を分断──
…否、溶断した

凛霞の指先から、時折光を反射するような極めて細い、白銀の糸が揺らめく
ポニーテールの中に隠しているそれは、所謂ヒートストリングス
触れるものを溶断する不可視の鋼線だ

「…縛るだけ、もできるけど……熱いよ」

そうつぶやいて、指先を踊らせれば再び空気を切り裂く音と共に、銀線がアーヴァリティへと向かう

アーヴァリティ > 「へーなるほどね。面白いもので纏めてるんだね。
どう言う仕組み?」

凛霞を追い、コーナーの方へと逃げ込んだ彼女の動きに背水の陣かな、なんて簡単な当たりをつければ、コーナーの入り口あたりで脚を止める。
そして、触手が目線の先で切り裂かれたことを視認すれば、全てを一度自分側へと寄せ、半数を再生させながら残し半数の断面を確認する。

「熱線かな?糸を操る人はいたけど僕の触手を溶かすような糸を使う人は初めてだよ!
面白いね!」

先程の銀光は髪を纏めていたのか髪に隠していたのか、どちらでもいいが熱線の光だろうか。
面白いところに武器を隠し持っているな、なんて思いつつ、こちらへと迫る音と細い光を視認すれば。

「こんなのはどう?」

何てニヤリと笑って見せれば、指先に小さな竜巻を作り出せば糸の辿るであろうルートに局所的かつ短時間で消滅する竜巻を投げつけた。
竜巻は糸を散らせばその勢いを周囲へと撒き散らすだろう。

そして、その中で自分の周囲を簡単に触手で糸検知用に大雑把に囲い動かしだす。
そして、その中で右手を振り上げる様子がみて取れるだろう。

伊都波 凛霞 >  
髪は纏めたまま、髪に隠していたと見るのが妥当だろう
メカニズムは、極細のチタニウムナノチューブを満たす水銀に極めて高い圧力を欠けることで高熱を発生させる──というものだが
どの道、一学生が持っているような代物ではない

「──触腕の切断ではダメージを受けない…?」

自身の一部のようにも見えたが、そういう類のものではないのか、もしくは痛覚が存在しないのか──

楽しげに笑う少女へとやや睨めつけるような視線を送るが、
続く行動と発生する竜巻に放った銀線は巻き上げられてしまう

「ッ…!!」

咄嗟にストリングスを引き戻す
小さいとは言え自然現象の持つエネルギーをそのまま相手どるのは……
ミシ、とその細腕、右肘へと負荷を受ける

「今の竜巻…魔術…?
 どのみち、そう簡単には、捕まってくれないってコト──」

少女の周囲を囲う触手
それはまるで、主を守る盾のようにも見える
それら全てを溶断して中心に辿り着くか否か、先程の竜巻による妨害を考えればやや期待値は薄いか

「(──でも、やる!)」

だからこそ、やる
銀線を再び放ち、アーヴァリティの周囲を巡らせ、中心へと絞め上げるように操作する──と、同時
左の袖から滑り落ちるようにしてその手に握られた、手裏剣三枚、連ねて投げ放ち、自身もまた跳躍すると壁を蹴って、
怪異の少女へと一気に距離を詰めんとす

アーヴァリティ > 「僕相手に中距離を仕掛けるのは大間違いかなー」

何て、小さく呟く。
おそらく彼女はこの振り上げられた右手が何を示すか知らない。
それもそのはず、この「右手」は切人には意味を為さないし、アフロ君には向けこそすれどこの使い方はしていない。
となれば、彼女はこの魔術を知らないだろう。
そう、僕のもつ魔術の中でも有数の殺傷能力と汎用性を持つ魔術ー跳戟を斬撃の形で放つべく、振り上げた手を回転しながら横に、若干上から下へと振った。
その斬撃を避けるべく退避させた触手の盾が上下に割れ、半球二つとなる。
そして、そこから飛び出た魔術の刃が彼女の糸を弾き返し、糸の収縮が荒れ、彼女の操作を離れて自由になり、斬撃の衝撃に空中を舞う。

そして手裏剣は盾となる触手に二枚阻まれ、最後の一枚は躱すべく頭を傾けるが頬をかする。
頬から流れる鮮血と鋭い笑みに表情を歪めるどころか、歓喜で笑んで見せればその顔を、こちらへと迫る凛霞へと向ければコンマ数秒遅れ、左手の指先を彼女へと向ける。
その指先には、先ほどよりは弱いが、肉をねじ切るのには十分な突風が圧縮され、彼女へと向けて銃弾の如く放たれた。

伊都波 凛霞 >  
一ノ矢、鋼線は何か──魔術の刃、と一瞬では認識できない──に阻まれた
二ノ矢、連ねて放った手裏剣もまた阻まれ、避けられる

人は同時に三つの動作を出来ない…という前提に置いての攻めの構築だったが、
人の形をしているとは相手は怪異

「っ…!!」

接近し、互いの表情が容易に視認できる距離
歓喜に歪む黒触姫の笑みにゾクリとしたものを感じ、即座に全身に警戒信号を送る──

まるで銃弾もかくやといった衝撃と共に放たれたそれは、凛霞の髪を縛っているリボンを弾き飛ばす
──ギリギリの回避、一歩間違えれば…と安堵するには早い

潜り抜けたなら、その勢いのままに入身、身体を回転させ、右肘を少女の腹へと目掛け──打ち放つ
所謂浸透勁であるとか、鎧通しであるとか、そういった呼ばれ方をすることもある
背なへと強烈に衝撃の突き抜ける一撃──

アーヴァリティ > 「近距離も間違いだよ!」

アフロ君みたいなただ肉体を用いて近距離攻撃してくる相手なら、こんなことしないけれども。
彼女の間合いと言うことは、同時にそれは僕の間合いでもある。
盾を擦り抜け、その肘を撃ち込むつもりなのだろう。普通に手で受け止めてやろうにもギリギリ間に合わない。ただただ防いでも引かれるだろう。
ならば、勢いをそいで受け止めてやろう。

ただのシールドを凛霞の肘と僕の腹の間に作り出す。
このシールドは魔力なんてほぼ込めていない、ただの脆い壁。
彼女の肘とこのシールドは赤子と障子のような。破れるがその勢は大きく削がれる。
だけど、貫ける。そう思わせるようなシールド。

当然の如く、シールドをその肘は打ち破るであろう。
しかし、そこに待ち受けるのは本来ギリギリ間に合わない僕の小さな右掌。
その右掌は彼女の肘を受け止め、それを指先へとスライドさせてゆく。
その肘を受け止め、もう片方の左手を彼女の肩を掴もうと勢よく伸ばし、もし掴むことができれば、触手檻の中、自らの体を横にずらし、左手で肩を支え、右手を関節が本来曲がる方向とは真逆の方向へと容赦無くへし折るだろう。

伊都波 凛霞 >  
間合いにも、タイミングにもミスはなかった
そこに障害物さえなければ
一呼吸の何分の一になるだろうか、僅かなズレ、僅かな時間の空白
少女の姿をした怪異の手は、そこに滑り込み──

ベキッ…

鈍い、肉に包んだ太枝が折れるような音

「──い、ぎ…ッ!!」

少女の姿からは想像もつかぬ怪力は、凛霞の細腕を枯れ枝を折るように圧し折る
噛み殺された悲鳴、苦痛にその表情が歪む、が──

「ッ…ああああああッ!!!」

解かれた髪が巻き上がるように流動する、自身の肩を掴む、右腕をへし曲げたその力を、自らの力に加えて──
所謂"合気"の要領で、その矮躯を強烈に弾き飛ばす

「──う、ぐ…っ」

再び離れたであろう距離、やや右腕を庇うような姿勢にはなってしまうが…
それでもまだ睨めつける瞳に闘志の火が消えていない

アーヴァリティ > 「大丈夫?まだ戦れる?」

バレーボールの模様を簡略化したような、最低限糸の感知の為だけに残した触手以外全ての触手を引っ込めながら彼女の方へと、小さく笑みを浮かべながら歩み寄る。
ただ心配してるような、親が愛しい我が子の擦り傷に気にかけるような。
そう言った言葉が、他の誰でもないへし折った本人から、被害者である凛霞へとかけられる。
その表情に当然の如く心配はなくー

「まだやれる?やるなら僕も喜んでやるよ」

なんて、見下すわけでもない、ただただ続行可能か、そう問いかけながら、触手を両手首に這わせて返事を待つだろう。

伊都波 凛霞 >  
「やらない、って言ったら見逃してくれるんだ?」

じゃあ、何のために襲うのか──やや、理解に苦しむ
激痛に脂汗が頬を伝う。けれどこれは一時的なもの
自律神経が激痛のショックによって混乱を起こしているだけだ

「でも。……──約束は、守らないとだからね…」

ぼそりと呟く
脳裏に過ぎるのは『お姉ちゃん、負けないで。勝ち続けて』という、最愛の…妹のあの日の言葉

「まぁ、まだ逃げないかな。
 風紀委員襲撃の件もあるし、君は見逃さず、捕まえる」

いくつ暗器を隠しているのか、左腕の袖から金色のトーチの柄のようなものが滑り降りる
その手に掴み、トリガーを引けば、ガスの噴き出すような一瞬の音と共に、光が灯る

ヒートストリングスは手放したが、これもまた用途はやや似る
アセチレンガストーチ、収束された灼熱のレイピアとも呼べるような形状の溶断武器だ

「ヒトの腕をもってったんだから、足くらい覚悟してよね…!」

苦痛を抑え、地を蹴る
真っ直ぐではなく、到着点を誤認させるようなポイントムーブ
死角から死角へと、人間の死角範囲ならば見失うだろう動きで以て、接近、可能ならばその脚を目掛け、灼熱の槍を振るう

アーヴァリティ > 「見逃すよ?結構楽しめたし、この後ここから対策を練ってくれたら次回はもっと楽しめるでしょ?」

僕はただ戦いたいだけなんだけど、もしかして風紀ってばそんなことも知らない?
なんて、あれ?と思っているが、この怪異が「戦闘狂です!」なんて言ったことがあるわけでもなく...

「そうやって思ってくれると僕は嬉しいなあ
こうやって君みたいに戦ってくれるってことでしょ?」

冗談でもなんでもなく、只々本心。こうやって風紀を襲えば次の風紀が僕を襲いにくる。それの無限の繰り返し。
たまに外部委託でもっと強い奴が来てもいいけど、やっぱり風紀は安定して強そうだから僕は大好きだ。

さて、彼女の取り出した武器は、一風変わったもので、ビームサーベルだろうか、なんて思いつつー

「待って何その武器?!ちょっとそれ欲しいかも!」

彼女が足ぐらい覚悟しろ、なんて言っているのは耳に入っていない。
戦闘狂の部分と好奇心の獣の部分が、この怪異の中で釣り合った。

この怪異も人間の形をとっている以上、其の死角は当然人間のものと同じである。
となれば、通常の手段では其の動きを視界に収められない。
そして、それに対する手段はー

単純な力押し。

彼女の動きに合わせて、首と目を動かし、死角となる範囲も常に視界に入れる。

しかし、其の視線が捉えるのは彼女の動きではなくて其のビームサーベル。
そして其の動きをしっかりと目で捉えながらー

「捕まえた!」

彼女の手ではなく、其のビームサーベルの持ち手を掴み取り、奪い取ろうと手前に引っ張るであろう。