2020/06/28 のログ
■227番 > 「私に、わかることなら、なんでも……なにか、用事?」
言い掛けて、また今度と言われて、やめる。
無防備な格好の理由など知る由もない。
青い瞳で見つめた後、頷いて答える。
「わかった。また、今度」
断る理由はない。微笑みを浮かべて、次を楽しみにする。
■雨見風菜 > 自分だけが襲われるならまだいい。
他人が、そういう目的でないのに巻き添えになるのは困る。
「ええ、それではまた会いましょう、ふつなちゃん」
風菜も微笑みで答えて。
そうして立ち上がり、スラムの夜の闇へと歩みを進めていくのであった。
■227番 > 「うん、きをつけて。またね、ふーな」
小さく手を振って、その場でその姿を見送る。
ご案内:「スラム」から雨見風菜さんが去りました。
■227番 > 人と話すのは難しいし、苦手だが、楽しい。
少しずつそんなことを思えるようになってきた。
そろそろ帰る頃合いだろう。
来た道を戻るように、歩き始める。
ご案内:「スラム」から227番さんが去りました。
ご案内:「スラム」にハルシャッハさんが現れました。
■ハルシャッハ >
――大きな『仕事』があった後や、特にスラムが荒れている時。
そして、時には気まぐれに、男はここで食料と水を配り歩く。
保存の効く缶詰や、米、保存食。
そして、新鮮な水や、異種族向けの血のボトルであったり、
死体の肉をパックしたもの。
それらをこうしてスラムの赤貧の民に施すのは、
『盗賊』という職業がスラムにおいて市民権を得る理由であり、
同時に、昔ながらの盗賊としての功徳の一つだった。
『誰かを助けよう』などとは思わない。
全員を助けるなど到底不可能であることなど、
男がよく知っているし、
これを巡って奪い合いが起きるのもよくある話であることも承知だ。
――しかし、それでも赤貧の民からすれば重要な食料の一つであるし、
ささやかでも誰かの日常が流れていて、それを助けてやれるなら。
それでいい。男からすれば、十分だ。
『――お恵みを』
お決まりとも言える言葉を投げかける道端の男に、
男はそっと物を施して去っていく。
その光景は、そっけないながらもどこか温かみのある、
クズなりの人情味の有る動きでもあった。
■ハルシャッハ >
――最も、食料を配り歩くこの行動。
これでさえも慈善事業だけであるわけはない。
当然、見返りもないわけではない。
一つは、スラムにおける『抜け道』の利用権。
緊急時に脱出するための隠しルートであり、
乞食やホームレスたちが利用する、
『秘密の抜け道』というべき道のりや穴場であるルートを利用させてもらう事である。
それは、功徳と信頼がなければ教えてもらえることはない。
暗殺者が突然現れて消えていく、そのからくりはここにも存在する。
もう一つは、『情報網』の利用権。
乞食たちに情報を教えてもらうならば信頼と報酬が絶対に必須である。
彼らは、風のうわさやそうなる前の知識を広く蓄え、
そして適切な報酬と信頼が有るなら、聞けば情報を教えてくれる。
盗賊の遠目と早耳の情報網の始原的なものだ。
――最も、今はインターネットの発達で、
それさえも危うくなりつつ有るものでさえ有るのかも知れない。
しかし、男はこの土地に生える草のような情報の強さを知っている。
土着の情報だからこそ、ネットで真似できない事も多々あるのだと。
傍から見れば正直なところ。これさえ奇形、いびつにさえ見えるうわさ話だ。
それを確実に『聞き分ける』には知識が当然必要となる。
図書館、インターネット、そして持ち前の経験。
すべてを生かさねば、そのうわさ話を活かすことは難しい。
――食べ物を配り歩きながら、時々周囲に耳と目を配る。
襲撃もときに警戒しながら、どことなく自然体で。
スラムという土地における、『本職』の振る舞いだった。
■ハルシャッハ >
「~♪」
鼻歌さえ軽く交えてスラムという土地を悠々と歩く。
騒ぐ程度ではないが音を出し、
白のローブというあえて目立つ格好で敵意を表さないのも作法の一つだ。
影から襲う者が当然とされる土地だからこそ、
格好と振る舞いにおいて敵意を示さないのは礼節でもある。
どことなく陽気で、穏やかなクズ野郎である男は、
ゆるく、ラフなノリで求められれば食料と水を渡し、
知っている中で貧しい家の前にはノックだけして食料と水を置いていた。
相手は貧民であるだけで、物乞いではない。
そのプライドを傷つけないには、という気持ちの問題は付いて回るが、
それでも、まずは物があればヒトは生きていける。
日常という流れに棹をさすつもりが毛頭ない男ならではの、
流れへの身の任せ方だった。
■ハルシャッハ >
――食料と水をそれなりに配れば、スラムの空気が緩くなる。
ヒトは空腹だと諍いの種を探し出すが、まず食べて落ち着くと、
それをやめて建設的な事をしだすのが性質であるからなのかもしれない。
もっとも、全員が全員に行き渡るわけでもなんでも無い。
一番この貧民街に必要なのは、金という施しだ。
文明における血液とも言うべき金が、行き渡らない貧血の状態。
それがこのスラムという殺伐とした、時に暴漢を生む地獄のような土地を生む。
最も、そんな難しい理屈など知る由もない男でも、
肌感覚でそれは理解していたのかもしれない。
誰しもに持つ本能的な感覚と、社会に生きるにはゆるすぎ、
かつ『法』を守るという感覚が薄い男は、
その点においてはどこか敏感だったのかもしれない。
社会不適合の度合いの違い、いや。方向性の違い。
誰しもが持つクズさという面において、男は少しそれが強いだけだ。
今の機械的にさえ感じる現代的社会、
そして元の世界の都市の空気において、それがただ合わなかっただけで。
地区の合間合間に、声なくただ震え、
食料に飢える子供がいれば、すぐ食べられる食料と水を出し、
そしてただ食べるのを軽く目配せして去るだけだ。
雑音もそんなに無い、ただ穏やかで静かな空気が、このスラムに流れていた。
■ハルシャッハ >
「――こういう空気の日が、いつも続けばな……。」
ぼそりと。 男はそんな言葉をつぶやく。
血の絶えぬこの土地で、それが抑えられることが望ましい事、
それは武力をそれなりに持つ、この男が一番理解していた。
ただ力のままにそれを振るえば、ヒトは外道に落ちる。
盗賊という法の上においての悪党である男が、
外道でなくクズとしてそこにいられるのは、善性とマナーというべき、
掟の存在が故なのかも知れない。
ゆるく、そして今は静かで、穏やかなこのスラムの街の空気。
それは、どこか優しさに、満ちていた。
バックパックがそれなりに軽くなった男が、
スラムという街を悠々と抜けていく。
それは、少し後のお話――。
ご案内:「スラム」からハルシャッハさんが去りました。
ご案内:「スラム」にル・ルゥさんが現れました。
■ル・ルゥ > その日の『食事』を終えたル・ルゥは、久方ぶりにスラムの表路地へと顔を出した。
手には赤黒く染まったクシャクシャの紙を持っており、辛うじて読めるのは『風紀委...反部...運......申請...』という文字。
哀れな犠牲者が持っていたもので、ル・ルゥには何のことだかさっぱりであったが───
この用紙を見かけるようになってから、落第街とスラムの空気が少しだけ変わったように感じる。
「なにかが始まろうとしているのかしら。
食いっぱぐれるような事にならないなら、なんでもいいけれど」
汚れた紙は食べられない。
その辺の道端に放り投げて、何か面白いものがないか探し回ることにした。
ご案内:「スラム」にアーヴァリティさんが現れました。
■アーヴァリティ > 「うーん...なんかへんな空気だよねえ」
雑に剥がされてボロボロになった張り紙の隣をすれ違いながら一言。
どうにも昨日から雰囲気が違う。
どことなく落ち着きがないというか、なんだろう。
ただ、流れが変わったように思える。
「やっぱりこれのせいなのかなあ...何なんだろ」
異空間より取り出したのは昨日拾ったチラシ。
捨てられていたため少し汚れているが、風紀のとある部隊へとの参加申請のような。
うーん、と首を傾げつつ道なりに進めば、曲がった先でル・ルゥのいる通りへと出るだろうか。
■ル・ルゥ > 「……あら?」
曲がり角に差し掛かった辺りで、角を曲がってきたあなたと鉢合わせるような形になった。
あなたの対面に立つのは、肩まである紫色の髪で目元が隠れた白いワンピース姿の少女。
背丈はほぼ同じくらいだが……互いに年相応とは言えない雰囲気を感じ取るだろうか。
「危ない危ない、ぶつかるところだったわ」
くすくす、と笑いながらあなたに道を譲ろうとする。
■アーヴァリティ > 「ああ、ごめんごめん。このチラシって何かなって夢中でね」
道を譲るのは今の自分と同じぐらいの身長の少女だけど...まあこんなところ歩いてる少女なんて怪しいんだけど...それでこんなにあっさりとしてるってことは、やっぱり人外かなあ、なんて思いつつ、その手に持ったチラシを少女に見せて。
一応危ない時のために対策だけは考えておかないとね、と魔力だけはいつでも使えるようにしておこう。
■ル・ルゥ > 白銀色の少女が手に持っていたのは、先ほど放り捨てたものと同じ紙。
やはり広まっているんだな、と思いつつ。その出所に少し興味が湧いてきた。
「それなら、わたしもさっき見かけたわ。なんなんでしょうね?
大人のひとにも訊いてみたけれど、よく分からなかったの」
"釣り上げ"ついでに訊ねてみたが、この島を牛耳る組織が関わっていることしか判らなかった。
自分はなるべく彼らと関わらないようにしているので、そういった情報は耳に入りにくい。
表通りで目立たないよう、スカートの下で蠢くものたちは大人しくしている。
「きっと、わたしたちには関係のないことだわ。
そんなことより、向こうでわたしといっしょに遊ばない?」
───そう、表通りでは。
空腹を満たした後は"娯楽"が欲しくなるものだ。
■アーヴァリティ > 「風紀が舞台増強しようとしてるのか、それか新しい部隊作ろうとしてるのかは知らないけど
まあ、ろくなことじゃなさそうだけどね」
これで集まる連中なんてどうせ烏合の衆になるだろうけど、と心の中で付け足して...
まあそのうち風紀の誰かに聞けば良いかな、なんて後回し。
情勢が不安定なら戦う機会も増えるだろうからね。
「ん?良いよ良いよ遊ぼ!」
ああやっぱり、何をして遊ぶのかは知らないけど、僕と同類かな。
興味あるし、行ってみようかな。
なんて、ル・ルゥのいく方へとホイホイついて行くだろう。
■ル・ルゥ > 「わたし、この場所を出たことがないの。だからフウキっていうのもよく知らなくて」
興味が無いとも言える。
分かっているのは、下手に"食事"をしすぎると目を付けられて厄介ということくらい。
まぁ、その時の相手は既に腹の中なのだが。
「ええ、とっても愉しいコト。こっちよ、ついてきて」
快諾したあなたを先導して細い路地へと入っていく。
体躯の小さな二人がなんとか通れるような狭さで、踵を返すのにも苦労するだろう。
そんな路地をル・ルゥは足取り軽く歩いていく。
後戻りのできない、スラムの奥の奥深くまで進んでいく。