2020/06/30 のログ
ご案内:「スラム」に227番さんが現れました。
■227番 > 丑三つ時。
流石にスラムも静かになる。……無音、とまではいかないが。
なんだか急に外を歩きたくなった。
それだけの理由で、寝床を離れ、外を徘徊する。
■227番 > 年単位でやってきた習慣は、ここ数日の出来事で、もはや原型をとどめていない。
ゴミを漁っていた毎日から、ゴミは触れるべきではないものになった。
すぐにでも逃げるべきな他人は、少し様子を見るべき存在となった。
そして、少女の生活にまた変革が起きようとしてる。
外への勧誘。丁寧に道案内まで付いて。
少女は、それに手を伸ばすつもりだ。
……ただ、1つだけ、少女には懸念があった。
もともと、いくつかの出会いによって、『外』への憧れを抱いていた。
憧れに背を押され、手を引いてもらって1歩踏み出した、あの日。
そこで見た、あの自分を見る影の正体が、わからない。
ただ恐怖心に飲まれ、身動き1つできなくなった。
自分は考えた。怖い理由……それが、何かわからないからだと思った。
だから、今から向き合おう。
■227番 > 数日前は建物があった通りを抜ける。
落第街から、歓楽街を見据える。
つばを飲んで、1歩ずつ足を踏み出す。
怖い。
乱暴そうな人とかとは次元が違う、あのおぞましい視線。
きっと乗り越えないといけないもの。
それでも、1歩ずつ。着々と歩みを進める。
■227番 > 明るい通りが間近になる。
「……っ」
足が竦む。
……誰かに付き添いを頼むべきだったか。
あまりに無計画だったかもしれない。
……ここまで来たんだから、頑張ろう。
「……la-la-la lu-la-la」
頼りにしている人に、教えてもらった歌を口ずさむ。
それは、気持ちを持ち直すのに力を添える。
足が動く。
やがて、先生に連れられてきた場所にたどり着く。
この場所だ。
周りの人の気配を確認する。
■227番 > こちらを気にする人は、居ないようだ。
後1歩。これを踏み出せば、きっとあの視線が来る。
「すぅ……はぁ……」
深呼吸をして。もう一度つばを飲んで。
「……わたしは、わたしの、意思で……」
一歩を踏み出す。前を睨む。
■227番 > 「あれ……?」
何も起きない。場所は間違えていない。
どうして?
手のひらを見つめて、握って、開いて。
何も変わらない。ただ夜中でも明るい場所でしか無い。
横に1歩動いてみる。何も起きない。
拍子抜け、と言う言葉は知らないが、そういった感覚になった。
今の覚悟は何だったのだろう……。
これじゃ、影の正体が、掴めない。困ってしまった。
■227番 > 仕方がない。外の人に目をつけられる前に、帰ろう。
少女は踵を返す。
あっという間に落第街の路地裏の暗闇に溶けて消えていった。
ご案内:「スラム」から227番さんが去りました。
ご案内:「スラム」に園刃華霧さんが現れました。
■園刃華霧 > 「ヤー……噂以上ってカ? すゲーすげー、ボロボロじゃン。
やベーなー! なンかさっきはヤバそーな雷とか見えタし」
驚きの声を上げつつ、あちこち崩れた廃墟のような場所を歩く。
見れば、瓦礫だか壊れた材木やらが転がっている。
元からそうだったのか、それともそうなってしまったのか。
もはや区別がつかないものではあったが。
「まー、どーセ大将とカあの辺の連中が直すンだローけド……ン」
コツン、と何かが当たった。
それは、石。
「おい、かぎり! おまえらのせいだぞ!」
「ふーきいーんのせーだ!」
「いえをかえせ!」
コツン コツン コツン
それは、そこで生きていた子どもたちが投げつける石。
■園刃華霧 > 「……」
そういや、このガキどもの家……いや、家とも言えないようなボロ住まいもこの辺だったか。
吹けば飛ぶような代物だったけれど、まあ吹かれて飛んだんだろうな。
そんなことを考えている間、子どもたちは変わらず罵声を浴びせ続けながら石を、瓦礫を、投げつけている。
「なんとかいってみろよ!」
「ひとでなし!」
コツン コツン コツン
なにかが変わったのは、子どもの一人がつい、大きめの瓦礫を手にした時。
意外な重さに、つい力が入ってつい勢いよく投げて――
ゴツッ
鈍い音ともに、風紀委員の額からどろり、と赤いものが流れ出る
「ぁ……」
子どもたちが硬直する
■園刃華霧 > 「……ヤっちマったナぁ?」
ニタリ、と笑った、
赤い赤い血が流れるその顔は、禍々しい獣のようだった。
「天下の風紀委員サマに、こーンなこトして……許さレるとデも?」
「ぁ、ご、ごめ……」
「ば、ばか、にげろっ」
「うわあああ」
各種各様。
思わず逃げる者、思わず謝る者、そして、思わず座り込む者。
「逃がスか、ヨっと!」
しかし、如何なる魔法か。逃げた少年の目の前に突然現れた華霧は少年たちを捕まえる。
「さテ……どウしてやローか?
喰っちマうか? こンな風に」
ニヤァと邪悪な笑いを浮かべ、先程自分の額に当たった瓦礫を拾い……
ゴキリ、とそれを食らった。
ご案内:「スラム」にキッドさんが現れました。
■キッド > 子どもの悲鳴に紛れるように、周囲に白い煙が漂い始める。
臭いこそしないが、煙なので当然吸いこめば煙たい。
煙の下を辿れば、長身の少年が煙草を咥えていた。
目深に被ったキャップで目元は見えないが、口元はニヤけていた。
そんな少年が、華霧の背後からわざとらしく大きな足音を立てて、近づいてくる。
「ンン……!よォ、随分と仕事熱心だなァ。」
これまた、わざとらしい咳払いだ。
仰々しく両腕を広げれば、子どもたちを一瞥する。
「いけないなァ。レディがそんなモン食ってると腹壊しちまうぜ?
ディナーの用意が欲しけりゃ、何時でも誘ってやるのにさ。」
「……で、今日のメインディッシュはそのガキ共って事かい?」
■園刃華霧 > 「ぁア?」
突然の煙。
漂う先を見れば……ああ、うん。
ギロリ、と睨みつけるような表情でそちらを見る。
「なンだ、見りゃわカんだロ?
こレからちょ―ット覚悟と頭ノ足りナいガキどもをおイしくいたダこうッテすんぽーなノ!
こンなふーニな」
また、わざとらしく瓦礫をかじる
■キッド > 睨みつけられた所でこの男が動じるはずも無く
肩を竦めておどけてみせた。おお、こわいこわい。
「その割にゃァ前菜が多いなァ、アンタも。レディの胃には入らねェんじゃないか?……ふ。」
脅しにしては随分と古典的だが
子どもには中々の大ダメージだ。
男は歩みを止める事無く、避けなければ丁度華霧の肩に手が置かれることになる。
「やめときなァ、幾らスラムだからって、今頃女子トイレは満員御礼だぜ?」
■園刃華霧 > ったく、動じないなコイツ。
まあ、どうせわかってんだろうけど
クソこっ恥ずかしいぞ
「アタシは、悪食、大食いで有名なノ。
今度見せテやルから、奢レよ。」
ゲゲゲ、と悪い笑いを浮かべる。
なんとなくだが、邪悪である。
「アー? んジャあ、このガキどもは、ドーしろッテんだ?」
あえて避けもせず、肩に手を置かれながら見返す。
ついでに、ちょっとだけ子どもたちを睨みつけ悲鳴を上げさせる。
■キッド > 「三ツ星レストランにするんだ。悪食大食らいでも、ドレスくらいは着てきなよ?相棒。」
「二度も三度も"恥"かきたかねェだろ?……ああ、恥じらうアンタは物珍しそうだから見てみたい気もするがね。」
其方が邪悪というなら、いけすかなさ満点だ。
キャップの奥の碧眼が可愛らしい顔立ちを一瞥した。
「ふ、知らないのかい?稚魚のまま食っちまうのは、犯罪なんだぜ?とっとと放してやりな。」
くつくつと喉を鳴らしながら、膝を曲げた。
丁度子どもたちと視線を合わせる形だ。
「……おう、坊主共。あんまりムキになるモンじゃねぇぜ?
この姉ちゃん、怒らすと怖いからなァ。枕元に化けて出るタイプだぜ?」
適当な事をニヤつきながらほざいている。
「良い男になりたきゃ、理由も無しに女に石を投げるもんじゃねェ……それに……」
煙草を二本指で挟み、なんと敢えて子どもたちへと煙を吐きかけた。
煙草特有の臭さこそないが、煙たい。
「その姉ちゃんに、爆弾なんて扱えねェよ。火をつけたのは俺さ。見ての通り、煙草の火が欲しかったんだよ……。」
煙と合わさって、その心を煽りたてる。
■園刃華霧 > 「おーット、マジか? 素寒貧になっテ泣くなヨ?
ついデだから、女の敵の成敗にモなるシな」
挑むような目つきで返す。
割と本気かもしれない。
「ハ、クソガキの放流ナんてシてモ、良いこトないゾ?」
しゃがみこんで子供と話すキッドを特に止めもせず。
しかし――
「あーノな。ついさっき怒ってタとこダろーが。
目、ついテんのカおまエ」
突っ込むところは突っ込んだ。
ソコは性分なんだろう。
『り、りゆうなら、あった……し』
『む、ムキに、なんか……』
子どもたちはバツの悪そうな顔で、しかし必死にキッドに訴えた。
■キッド > 「ヘッ、どうせ泣くならアンタの泣き顔のがよっぽど見てみたいね。ホテルの予約までしとくかい?」
女の敵と言われた傍からこの返し。
吐き出し煙と一緒に、まるで煙に巻かれているようだ。
「逆に言うが、そのクソガキの面倒を見る程の物好きなのかい?アンタは。」
それこそ時間も無駄というものだ。
一々相手にしてたらキリがないと言い返す。
「それに……御覧の通り、良く見えなくてね?ツバの向こう側から、アンタの可愛い顔以外よくみえなくてねェ。」
わざとらしく、目深に被ったキャップのツバをトントンと叩いてやった。
明らかにおちょくっている。
華霧に対する対応も大概だが、子どもの訴えにもハッ、と鼻で笑い飛ばした。
煙草を咥え直せば、トントン、と自信のコメカミを叩いてみせる。
「理由があったらやり返す、か。じゃ、ソッチの姉ちゃんに食われそうになってるお前等は
"石ぶつけられた"って正当な理由が出来ちまったワケだ。なのに、ビビるのはよくねェなァ……。」
「そこまで言うなら、男なら大人しく、やった事に"ケジメ"をつけるべきだと思うがね。」
子どもには難しい話かも知れないが、因果応報とはそう言うものだ。
厳しい口調だが、何処か穏やかな口調で子どもたちを諭していく。
「……ま、ガキなんてそれ位元気なのが丁度いいかもしれねェがな。」
だが、言った傍からとこは楽しげにくつくつと喉を鳴らした。
「だが、次は"相手を間違え"んなよ?風紀委員に喧嘩売る時は、俺だけにしときな。何故かって?ソイツは……フッ」
「俺が大よその黒幕だから、ってことさ。」
それこそ悪役っぽく、キャップの隙間から目を覗かせて言ってやった。
勿論ほとんど出まかせだ。だが、トーンは重め、重要そう。
子どもに対してはこれでいい。どうせ恨まれるなら、自分一人でいい。
「……ま、そう言うワケだからそっちの姉ちゃんに謝ってやんな。早くしねェと、腹の虫が鳴り始めるかもしれねぇぜ?そら、さっさと俺にぶつける石でも拾ってくるんだな。」
■園刃華霧 > 「クハは、悪ィね。アタシ、これデもメンクイで理想も高イんでネ?
クソガキお断リなんだワー」
はいはい残念残念、と大仰に肩をすくめて首を振ってみせる。
煙は巻かれず受け流していくスタイルだ。
「ハ、そリャ正論。 な―ラ、物好きじゃーナいキッドマンはドーすンのサ。」
ずいっとキャップに顔を近づける。
「ついデだカら、このウッざいボーシも外しトくかイ?
……あト、おまエも大概物好きだろ」
キャップに手をかけ外そうとする。抵抗がなければとってしまうことだろう。
ついでに、最後はボソリ、と相手にだけ聞こえる声で付け足す。
『……』
子どもたちはキッドの言い様に顔を見合わせている。
「バーカ、おマえみたいナんが黒幕とか、嘘っぽサ百点満点すぎだロ!
逆にガキどもが困ってンじゃンか」
ゲラゲラと笑いながら、後ろから余計な茶々を飛ばした。
とても楽しそうである。
■キッド > 「そりゃ残念。あんまり高根の花ばかり追いかけても、行き遅れるぜ。」
本当にああ言えばこう言う。
仮にも相手は先輩だというのに敬う精神はないのか?
ないからこそのろくでなしだ。
特に抵抗する事も無く、帽子はとられた。
金髪碧眼。整った顔立ち、何処となく育ちの良さを感じさせる。
フ、と鼻を鳴らせば煙草を二本指でとって、その辺にポイ捨てた。
「俺は俺で、好きにやらせてもらってるってことさ。
俺が物好きなら、大体の人間が物好きにならねェか?」
風紀委員のろくでなしガンマン。
物好きと言われたこと自体は、否定しなかった。
余程の数寄者でもなければ、そもそもこんなことに首を突っ込みはしなかった。
「おいおい、茶化すなよ……。」
折角決めたのにねぇ、と頬を掻いた。
ついに口元がへの字に曲がり、困り顔だ。
……実はちょっと自信があった。
新しい煙草を咥え、シッシッ、と子どもたちに手を払う。
「ホラ、とっとと行きな。こっから先はガキの見せモンじゃねェよ。」
水差された途端素気ない態度、大人げないぞ!
口元を両手で覆い、ジッポライターで火をつけた。
再び周囲に、白い煙が漂い始める。
■園刃華霧 > 「は、そういウおまえこそ、高嶺の花ばッカ追いかケてなイか?」
軽口上等、どうせ自分もいい慣れている。
不遜? 不敬? しらん、そんなもん。
面白おかしく生きるからこその不良だ。
「なラ、お互い様ってコトだナ。
少なクとも、ここジャ特殊ナ例だゾ?」
こちとら風紀委員の問題児。
好きなように警邏して、好きなように仕事して……
好きなように仕事をしない。
趣味の所業だ。
「お。割とマジで傷つイた?
ひひ、なら上等!
ったく、大人気ネ―の!」
後輩のちょっとした困り顔には心配、気遣いなどなく
むしろ大笑いだった。
酷い先輩もあったものである。