2020/08/04 のログ
ご案内:「スラム」に殺し屋さんが現れました。
殺し屋 >  
道化の面を付けた男が、路地裏をうろつく。
バラックの並ぶ廃棄区画。
『居ない事』にされている者達の住まう場所。
わざとらしく綺麗にクリーニングされた制服に袖を通し、男は丸腰で歩き回る。

「さて、次の手を打つか。時間をかける理由はなくなった」

殺し屋 >  
もう、ターゲット……神代理央に対する情報工作は意味をなさない。
そもそも、あれだって『一回だけ』だから効いたのだ。
どんなスキャンダルだって二度も三度も流せば、どんどん効果は薄れていく。
一度目のアレも少し身を引いて見られたら、全く大したことじゃあない。
『いつものこと』だ。
だからこそ、風紀委員会は大して動いていない。
神代理央の関係者にだけ少しばかり影響が波及しただけだ。
その影響だけで十分な精神的揺さぶりをかけることは出来たが……その効果もすっかり減じた。
七十五日を待つまでもなく、噂は風化する。

「かといって新しいネタもない」

『アレ』を喰らっても神崎理央は通常業務を問題なくこなしている以上、むしろこれ以上下手に悪評を流しても逆効果だ。
やっかみにしか見えない。
これ以上かましたところで、『鉄火の支配者』健在なりとイメージの強固さを後押しするようなものだ。
それを利用して引っ込みがつかなくなるまで徹底的に叩くという手もないでもないが……それでは余りに悠長だ。

殺し屋 >  
「何より、余裕を持たれたら何の意味もない」

張りつめさせ、罪を自覚させ、緊張を強いることで精神的に磨耗させることが目的だった。
それだけで人は死ぬ。
息継ぎの余裕を奪うだけで、人は死ぬ。
前後不覚になった人間は実に脆い。
どんな強力な異能を持とうと、自分を信じられ無くなればおしまいだ。
むしろ……その力が強ければ強い程、持ち崩した時に内に向かって牙を剥く。
だからこそ、神代理央に期待したのは『それ』だったのだが。

「非番を楽しむ余裕がもうあるってんじゃあなぁ、いや、一筋縄じゃいかねぇな」

溜息を吐く。

ご案内:「スラム」に刀々斬 鈴音さんが現れました。
刀々斬 鈴音 > 「ねえあなた?悪い人?それか頭の悪い人?
 こんなところをそんな恰好で歩くなんてどっちかしかいないでしょ?」

どちらであっても間の悪い人。

この少女の制服も今のこの場所とは程遠い匂いがする。
洗ったばかりの匂い。そこに腐ったような血の匂いが混ざってくる。

「ねえあなたはどっち?鈴音に斬られる前に教えてくれてもいいよ?」

赤黒い刀を突き付けてニヤニヤしながら相手に問う。

殺し屋 >  
「お誂え向きなのが来たじゃねぇか」

落第街の片隅……そこに血臭を纏って現れた少女に、道化の面が向けられる。
男は大袈裟に両手を広げてみせる。
非武装だ。
赤黒い刀を向けられても、抵抗する様子は見せない。

「俺は『悪い人』さ。お嬢ちゃん、人を斬るのが好きなのかい?」

刀々斬 鈴音 > 「うん!好き!!
 特に弱い反撃してこないような相手を斬るのが一番好き!」

…なにも持っていない相手が何もしてこないことはない。
異能に魔術、銃よりも強い武器を誰が持っていてもおかしくない。

「…悪い人なら気にせず斬れるから斬ってもいいよって事でいいの?
 それとも改心していい人になるからいい事しようと思って鈴音に斬られてくれるの?」

どちらにしても彼は既に斬っていい対象。
何でもないように普通に歩いて距離を近づける。刀が首に届く距離。

殺し屋 >  
「俺を斬ってもつまらないぜ。痛くも痒くもないからな」

そういって、横髪を少しどけてみせる。
そこには……耳が無かった。
あるのは痛ましい傷跡だけ。
今でも血が滲んでいる。

「俺は痛みを感じないんでね」

また髪で耳元を隠す。
距離を詰められても、調子は変わらない。

「まぁ、アンタには関係ないかもな。刃々斬鈴音」

そう、名前を読んだ。
落第街で活動しており、尚且つ上に『何故かお目こぼしされている誰か』である彼女のことを、男は知っていた。

「アンタ、強い奴と闘うのは多分興味ないんだよな? 
 それも絶対勝てそうにない相手とかはよ」

確認するように尋ねる。

刀々斬 鈴音 > 「確かにあんまり面白くなさそう…。
 あなた斬っても豚肉斬ってもあまり変わらなそうだもん。」

斬っても叫ばない相手、恐怖しない相手、痛がらない相手はあまり…。
いっぱい叫んだり驚いたりしてほしいし情けなく逃げてほしい…。

「鈴音ってばやっぱり有名人!」

胸を張る。ここで鈴音の名前を知っている者などゴマンといる。
良くも悪くも刀々斬鈴音の名前は知られている驚くべきことではない。

「えー…絶対勝てそうにない相手とか鈴音パスだよ…あと、血を流さない相手も嫌いかな…まあ…鈴音より強いヤツなんてほとんどいないけどね!

 何?鈴音に誰か斬って欲しいの?嫌いな人でもいるの?」

殺し屋 >  
「ああ、いるよ。話が早いな」

やっぱりそうだ、思ったより『話が分かる相手』だ。
だから、風紀委員会も公安委員会も刃々斬鈴音を『見逃している』んだろう。
いや、『問題にしていない』と言った方がいいかもしれない。
彼女は悪く言えば弱い者いじめが趣味の落伍者だが……良く言えば『物分かりがいい』のだ。
問答無用で無差別殺人に興じない。言動の印象より遥かに用心深い。
だからこそ、道化の男にもすぐに斬りかかりはしなかった。
まず、『対話』を試みた。

なるほど、分かりやすい『警鐘』なわけだ。

目に見える脅威。
『こんなところに来てはいけませんよ』と喧伝するための存在。
だから、『自分は弱い』と自覚がある一般生徒が『此処』に来る理由を……刃々斬鈴音という存在が奪っているのだ。
野放しの篩とでもいったところか、つくづくこの島は良く出来ている。

「なぁ、刃々斬さんよ。実は君に……『斬られたい人達』がいるんだよ。
 そいつらを紹介してやるからさ……俺と友達にならないか?」

刀々斬 鈴音 > 「ちょっと待ってね…ねえ…ちーちゃんどう思う?斬られたい人たちって鈴音のファンかなあ?」

『まず違うだろう…だが、無抵抗の相手を斬る機会だというのならば…。』

目の前の仮面の男を置き去りに自分の刀と相談タイム。
恐らく男にも聞こえるだろう声の大きさ。

「…じゃあ…仕方がないから鈴音が友達になってあげるから感謝してね。
 …先に言っておいてあげるけど、何かあったらすぐ友達じゃなくなるから気を付けてね。」

刀の先が男の腕を撫でる。
血は出ない、きっと痛くもない。
ギリギリ触れている、ギリギリ触れていない。

「で、どこにいるの?斬られたいっていう鈴音のファンを紹介してよ?友達さん?」

殺し屋 >  
「ありがとよ。じゃあ、コイツを持ってな」

そういって、通信端末を渡す。
酷く作りが単純なものだ。

「そのうち、そいつがアンタに斬られていい連中の場所を教えてくれる。
 まぁ、もしかしたら動かないかもしれねぇけど……別にいいだろ?
 普段と大してかわらねぇんだしさ」

普段の彼女の動きは言うなれば『釣り』のようなものだ。
いるかどうかも分からないターゲットを求めて歩いている。
なら、『もしかしたら』程度の代物でも、恐らくは『良い』はずだ。

「ところで、一つ聞いてもいいかい?」

刀々斬 鈴音 > 「ちょっと無茶すると壊れちゃいそうだね…これメールとかできる?」

…すっごいきな臭い。

「へえはじめっから動かないのはお得だね。…大丈夫?ちゃんと生きてる奴くれるの?
 はじめっから死んでるの貰って鈴音がやりました。ってなったりしたら鈴音イヤだよ?」

鈴音は人を斬りはするが、人の命はほとんど奪わない。
事故で死んでしまったものはいるがこの島に来てからは狙って人を殺していない。

「何?何が聞きたいの?鈴音ちゃんの誕生日?
 忘れちゃったからいつプレゼントくれてもいいよ?」

殺し屋 >  
「残念ながら俺と連絡を取る代物じゃあない、レーダーみたいなもんだ。
 で、聞きたいことってのはだな」

指を一本立てる。
道化の面から、囁きが漏れた。

「アンタ、風紀委員会の事はどう思ってる?
 嫌いか? 好きか?
 出来れば細かい感想があると嬉しい。
 何、個人的な興味さ」

刀々斬 鈴音 > 「レーダーね…あんまり家に持って帰りたくないな…。」

率直な感想。
顔も見えないこの男を信用することは出来ない。

「風紀委員?嫌いだよ?嫌いっていうか関わりたくない…。
 斬っちゃうと絶対に面倒臭いし…それくらいだよ。
 そもそもあんまり関わりないからこれからも表の方でがんばってて欲しい。」

事件がない限り普通の風紀委員はこんな方までまず来ない。
つまり、知り合う機会がほとんどないのだ。

だから関わったことのある風紀委員など落第街の中まで来るごく一部の変わり者ぐらい。

殺し屋 >  
仮面の内側で……会心の笑みを浮かべる。
やっぱり、『御誂え向き』だ。
アタリを引いた。
運がいい。

「ならいいんだ、だから、今後も『関わらないように』してくれ。
 俺とも、もう喋らない方がいい」

道化の男は人差し指を口の前に立てる。
そこで、小さく呟く。
 

殺し屋 >  
 
「俺も風紀委員だからな」
 
 

殺し屋 >  
道化の男はそれだけ囁いて、一歩下がる。
そのまま、路地裏の方へとゆっくりと移動して。

「……まぁ、信じる信じないは自由だけどな?
 じゃあな、『悪い事』は程々にな」

そのまま、路地裏に駆けて行く。
幾つもの路地を曲がって……男は姿を消した。
 
 

ご案内:「スラム」から殺し屋さんが去りました。
刀々斬 鈴音 > 「言われなくても…じゃあね、友達さん。」

関わらなくてもいいならば誰が自分から関わるものか…。

「風紀委員…。」

風紀委員が何故こんな仮面をつけて、こんなところで…。
斬って欲しい人がいるなどと…。

「……もしかしてこの島の風紀委員は皆、鈴音ちゃんの事の好きなの?頼りにしてるの?」

以前、知り合った別の風紀委員。
こんな奥の方にまで来ていた変わり者の事を思い出しながら元来た道を歩いて消える。

「…これから少し楽しくなりそう!!」

ご案内:「スラム」から刀々斬 鈴音さんが去りました。