2020/09/05 のログ
ご案内:「スラム」にアストロさんが現れました。
アストロ >  

 小さな水たまりがある。

 

アストロ >  
突然ばしゃりと水が真上に撥ねると、そこに少女が現れる。

「……ここが噂の島……」

見渡せば、ボロボロのいわゆる違法建築や、バラックが並んでいる。
絵に描いたようなスラム街の様相。
下調べしていた"常世学園"には無かった情報だ。

アストロ >  
「ふふ……これは面白そうね」

対外的には存在しないとされている、どうみても治安の悪い地域。
なんなら、掃き溜めというべき場所だ。
教師がサポートしながら、基本は学生だけで回していて、
特に問題も起きていないと聞いていたから、どんなものかと思えば、
臭いものには蓋をされている、といった様子。
真っ先に此処に出れたのは、僥倖かもしれない。
普通の町並みを見て、此処にたどり着かなかったら、
つまらないものだと捨てていたかも知れない。

アストロ >  
「さぁて、誰かいないかな?」

最初の出会いを求めて、ふらふらと歩き出す。

こんなところを根城にしている住人にはあまり期待していないが、
内側の、さらに最底辺で得られる情報。
ちょっとでも得られれば、今後の行動指針、
自分の立ち位置を定めるには有効に働くだろう。

こんな所だ、役に立たなければ腹いせに消してしまっても
困らないだろう。そんな事も思う。

アストロ >  
ふと視線に気が付いて、くるりと振り返る。

「あら、こんにちは。何か用?」

そこに居たのは、薄汚い格好の子供が数人。
自分よりは少し小さいぐらいか。本当にここは底辺らしい。
手には石を持っている。
察するに、小綺麗な格好の私を敵とみなしたのだろう。
盛大な歓迎をしてくれそうな予感がする。

子どもたちはというと、先手を打つ前に声をかけられ、
返事もできずに戸惑っている。

「それで、何をしようとしていたの?」

少女は爽やかな笑顔で子どもたちを見る。

アストロ >  
子どもたち達は完全に沈黙したまま、こちらを見ている。
話せればちょっとは何かを聞けるとおもったのだが。

「ねぇ、答えてくれないと私わかんないなぁ~」

笑顔のまま、1歩踏み出す。
それに応じるように、子どもたちは1歩ずつ後退りしていく。

それを数歩繰り返した時。

コツン。

1個の小石が飛んできた。それは少女の頭にあたった。
子どもたちは、投げた少年を見て、やっちまった、という顔をしている。

「ふふ、勇気はあるみたいだね」

少女は笑顔を崩さない。

アストロ >  
「でも、私としてはお話してくれたほうが嬉しかったんだけどなぁ」

少女は、笑顔を崩さないまま、少年を指差して

《ウォーターボール》

魔術を行使する。少年の頭を覆うように水が現れ、少年の呼吸を封じた。
それをみた周りの子どもたちは、慄いて散るように逃げてしまう。

「まぁ、随分と薄情な……」

散った子どもたちには目もくれず。
手で口を抑えてもがく勇気ある少年に、ゆっくりと近寄っていく。

「どう?お話する気になった?」

水の球の中で顔を真っ赤にしている少年は、必死に頷いた。

アストロ >  
「はーい、よく出来ました」

パチン。指を鳴らすと水の球は弾ける。
少年は膝をついて呼吸を整える。
それぐらいは待ってあげる少女。
特に急いでいるわけではない。ただ話を聞きたいだけ。

ところが少年は立ち上がるなり……逃げ出してしまった。

「……ああ、手足の一つでも縛っておくべきだったなぁ」

少女はため息をついて逃げる少年を指差す。

《アイスニードル》

魔術を起動し、氷の針を数発発射した。

アストロ >  
氷の針は少年の足をとらえ、地面に縫い付ける。
かなりの痛みもあり、当然その場で転ぶ少年。
出血はない。その場で凍りついてるから。

「お話するまでは殺す気はなかったんだけど……
 気が変わっちゃった。君はもういいや。」

足を縫い付ける氷に触れて、追加の魔術を起動する。
少年に刺さる氷が、更に冷気を強めていく。
それから、近くの座れそうな場所に腰掛けて。

「さっきの子たちの誰かでも良い。
 誰かが君を助けに来たら見逃してあげる」

スラムの子供にそんな人が居るとは思えないが。
役に立たないなら、楽しませるぐらいはしてもらえないと。
そういう思惑で、少年の怯えるさまをじっと見つめる。

ご案内:「スラム」に日下 葵さんが現れました。
日下 葵 > 「穏やかじゃないですねえ。
 その辺にしておいてあげてください」

担当を回されたスラムを警邏で回っているとばったりと”現場”に出くわしてしまった。
最初は子供同士の戯れかと思っていたが、
少女側が異能で少年の動きを封じてから穏やかではなかった。

違反部活やそういう大規模な組織の動きがないかぎり、
このスラムで活動することなんてほとんどないが、
目の前の状況を見過ごすほど腐っているわけでもなかった。

離れたところから声をかければ、ゆったりとした足取りで少年少女の元へ向かっていく>

アストロ >  
冷気が少年の体温を奪っていく。
誰も助けにくる気配はない。
ここが本当に最底辺で、警察のような機構もろくに機能していない。
そういうことがわかるには十分だった。

そう思った矢先。

「おお、誰か来たね。約束通り見逃してあげるよ」

パチンと指を鳴らすと、氷が解けて冷気もろとも消滅する。
怪我はそのままだ。
凍傷になっているかもしれないが、知ったことではない。
すでに少年への興味を失っていた。

「話せそうな人が来て嬉しいな~」

さて、何者だろうか。

日下 葵 > 「……こんな街に住んでるんです。
 少しは”生き方”を学んでください?」

逃げる少年とすれ違いざま、
彼をとっつ構えてそう念を押すと、さっさと逃げろと言わんばなりに手を離した。

「さて、現場に首を突っ込んだ以上、
 名乗る義務があるので自己紹介をしないといけませんね。
 私は風紀委員会刑事部の日下葵です。
 これ以上介入するつもりもないですし、
 そちらがこれ以上目立つことをしないというのであればここで見逃してあげてもいいです」

存外あっさりと少年を開放した少女。
特別彼に対して恨みつらみや目的があったわけではないように見える。
となると無差別な行動なのか、それとも別に何か目的があるのか。
面倒ごとにだけはならないでほしいなぁと願いながら風紀委員の手帳を見せる>

アストロ >  
少年に一言話す様子もあまり興味がなく。
ふらふらと去っていく少年には目もくれていない。

「風紀委員……葵さんね。私は……そうだなぁ、アストロでいいよ」

ふふ、と少女らしく笑う。

「う~ん、そうだねぇ、私、この島の事なぁんにも知らないから。
 目立つことか……その基準とか、
 教えて貰えないとまたやっちゃうかも?」

不法入島者であることを隠しもしない。
今度は手を口元に添え、悪戯を企む少女のように妖しげに笑った。

日下 葵 > 「アストロさんですね」

なるほど、なるほど。
そう相槌を打ってメモする。
後で報告書を書くためだ。

「この島には来たばかりなんですね。
 そうですねえ、例えば意味もなく人にめちゃくちゃ手を出したりとかでしょうか」

正直この街で人を一人二人殺めたところで、
風紀委員に追われることなんて殆どあり得ないだろう。
しかしそれが度を越えてスラム全体、
あるいは表の世界に広がるようであれば対応する必要が出てくる。

特に彼女は見たところ不法入島者。
この学園、あるいは島にとって脅威になりえるなら対処するほかあるまい>

アストロ >  
「そうだよ~。"今"来たばっかり。
 こんなトコがあるなんて思いもしなかったけど」

笑い方をころころと変える。

「意味もなく、かぁ。
 役に立たないものを処分するのは当然のことじゃないかな?
 さっきの子も、石投げてきたし、何も教えてくれないから、
 もういいかなっておもったんだけど」

ちなみに誰も来なければ来ないで、この辺りは警察機構は
機能しないという情報を得られたので殺すつもりはなかった。
しかし、それを相手に伝える気はないようだ。
挑発的に笑ってみせる。

日下 葵 > 「まぁ、役に立つかどうかは人によって意見が割れるのでここでは議論しませんが。
 うん?そうなると私の受け答えも訂正する必要がありますか。
 ”意味もなく”ではなくて”必要以上に”というべきかもしれません」

笑い方がころころと変わる彼女とは対照的に、
こちらはニコニコとした表情が張り付いた様に微動だにしない。

「ぶっちゃけここら辺の人がどうにかなる分にはどうでもいいんですが、
 ”殺し”はいただけないなぁと」

連続殺人なんて話が出回れば私たちが動かざるを得ない。
そう言葉を続ける>

アストロ >  
「人によって……そうだね。
 葵さんは役に立ってるよ?今のとこはね」

少し考える素振りを見せる。
それから、続く言葉にははっとした様子で。

「あっ、風紀委員ってこの島じゃ警察なんだっけぇ?
 そっかぁ、じゃあ殺したの気付かれたら良くないか。
 こっそりやんなきゃね。気をつけまーす」

わざとらしく曲解した返事をする。
くすくすと笑ってみせる。
こいつはやりかねない、と思わせようとする。

日下 葵 > 「お役に立てているのであればそれは何よりです。
 そうですねえ、本土で言うところの警察のような組織ではありますが、
 まったく同じかと言われるとそれは少し違いますかねえ」

事実公安という組織もあるし、
警邏や事件の解決だけが仕事というわけでもない。

「できればこっそりでもそんなことをしないで大人しくしていてほしいんですけどねえ」

随分と曲解するなぁと困ったような表情を浮かべる。
いずれ我々の仕事が増えるのではないだろうか>

アストロ >  
「似たような物ってわかれば何でもいいかな。
 私みたいなの、捕まえなきゃいけないわけでしょう?」

この場ではそうでなくとも、少なくとも目を付けられることになる。
それはきっと楽しいことになると考えている。

「それはできるかわかんないなー。
 言葉を借りるなら"必要"になったらやっちゃうかも」

あくまで自分の基準であると語る。
法を知らなければ、守りようもない、といった素振りだ。

「それよりさ、もっとこの島のコト知りたいんだけど。
 おすすめの場所とかない?」

日下 葵 > 「……本当にこの島のことわかんないんですか?」

倫理観の欠落もさることながら、
この少女は本当にこの島のことを何も知らないのだろう。
だとするとこの少女――アストロが問題を起す前に対応する必要がある。
というか、その責任がある。

「では必要にならなければやらないんですね。
 あまり面倒は起してほしくないので好き勝手するようなら、
 今すぐ拘束することも考えますが……」

それはさすがにアストロさんも嫌でしょう?なんて。

「とりあえず必要か必要じゃないかを判断してもらうために、
 この島のことを知ってもらう必要はありますかね。
 おすすめの場所……何を知りたいかによってお勧めする場所は変わりますから」

少なくともはっきりとした悪意を持っていないなら、
そういう方向に向かわないよう誘導するほかあるまい>

アストロ >  
「知ってることは、そうだねぇ。
 常世学園が外に向けて発信してることだけだよ」

調べられる範囲では調べたつもりだ。
結論としてはほとんど得られていない。
だからこそ、興味が湧いたのだ。

「拘束ね。フツーに考えたらそれが正しいよねぇ。
 嫌と言えば嫌だけど……出来るものならやってみてもいいよ?」

また悪戯を企む顔で怪しく笑った。

「なんでもいいよ~?私は葵さんのオススメが聞きたいんだ。
 おいしい食べ物、楽しい遊び、難しそうな研究、面白(つよ)い人……。
 あ、でも学校自体は興味ないかも。どうせつまんないし」

……要するに、少女は貰える情報で相手を値踏みしようとしている。

日下 葵 > 「あぁ、なるほど?」

なるほど、裏の部分に興味を持ったのか。
だとしたら彼女がここにいるのも、
彼女が少年をとっ捕まえていたのも合点がいく。

「やろうと思えばできるんでしょうけど、
 それは面倒なのであまり気が進まないんですよねえ」

現状、特別あなたが何か犯罪をやらかしたわけじゃないですし。
つまり捕まえる正当な理由がないのである。

「”私の”おすすめですか。
 そうですねえ。私は常世公園という場所が好きです」

何もないあの平和な雰囲気が好きです。
特に何がある訳でもない無難な場所。
他にもアグレッシブな場所はあるが、大抵は面倒ごとの巣窟か立入禁止の場所だ。
風紀委員の私が教える義理もあるまい>

アストロ >  
「ここならこっそり入った人もお咎めなしなんだぁ?
 ……ああ、いや、証拠がないのか、じゃあ仕方ないねぇ」

不法入島者であれば摘発対象なのだが、
本人がそう言ってようが、証拠がなければどうしようもない。
彼女が持ち帰って照合して初めて分かることなのだ。
次会った時が楽しみだ。そもそも照合もしないかもしれないが。

「常世公園?名前からしてここで一番大きな公園かな。
 たしかに、そこなら面白い人に会えるかもねぇ。
 探して行ってみようかな?ありがと~」

今度は少女らしく無邪気に笑う。
裏の情報はたしかに欲しいが、表に潜む暗い情報にも同様に興味がある。
表の人がよく利用するランドマーク。覚えていて損はないだろう。

日下 葵 > 「曲がりなりにも組織ですから。
 疑わしいというだけで捕まえるのは無理なんですよね。
 捕まえてもらいたいなら自首という形で出頭してもらうくらいしか」

兎角、上陸の瞬間を見たわけでも、
データベースをきちんと参照したわけでもない。
だから彼女に私ができることは観察と説得くらいなものである。

「そうですね。いろんな人がいますよ。
 何よりもあそこは何の変哲もない”日常”があって私は好きです」

談笑するように話しながら、
彼女の特徴や言動を記憶していく。
後でちゃんと報告書にまとめたほうが良いかな。
なんて、普段報告書を避けるクセに思うのであった>

アストロ >  
「自首はしないよ。へんな枷つけられるのもやだし。
 するぐらいならこっそり帰る~」

不法の存在であるアピールは欠かさない。
本当は遊びたいのだ。けれど相手が乗ってこないので、諦める。

「いいね。この明らかに世界から浮いた場所にある日常」

ニヤリと笑う。
その中に持っている思惑は、まだ見せない。

「……んー、満足。
 そろそろお暇してもいい?」

島に来て初めての接触としては上出来だ。
警察…風紀委員に自分の情報が渡って、表のスポットも教えて貰った。

日下 葵 > 「……遊んで欲しいなら残念ですが、私は仕事中ですから。
 今はお相手できそうにないですねえ」

私から手を出すのを待っている。
そんな様子を汲むとなおのこと手は出せない。
もし遊ぶのであればもっと周到に用意してから……

「この島にとってはこの場所が浮いた場所ですよ。
 ――そうですね、私もまだ回らないといけない場所がありますから、
 わたしもこの辺で。
   また――会うことになるでしょうかねえ」

心の内がまだ読めない彼女を見ながら、踵を返した。
立入禁止の場所に人がいたのとは違う。
明らかに異質で、得体のしれない彼女のことを、
珍しく報告書という形で記録するのである>

アストロ >  
「あは、分かっちゃった?
 また会うときを楽しみにしてるねぇ」

わざとらしく、煽るように笑う。

「じゃあ、またね?葵さん」

水たまりの方に歩いていき、そのまま踏み込む。
ばしゃりと水飛沫が真上に撥ねると、少女の姿は見えなくなった。

ご案内:「スラム」から日下 葵さんが去りました。
ご案内:「スラム」からアストロさんが去りました。