2020/10/14 のログ
焔誼迦具楽 >  
 単なるエネルギーのやり取りであれば、互いに奪い合うだけで事足りる。
 少年の能力がどこまでできるのか、力比べをしてやろう――その程度の気持ちだったのだが。

「――あーあ、痛そう。
 でもまだ生きてるのね」

 周囲を地響きで震わせながら、少年に近づく。
 何があったのか、少年は収奪の魔術を完遂できなかったようだ。
 肉体は胴体の大部分を消し飛ばし――幸いか、傷痕が焼けているため失血死には至らないだろう。

 これだけの損壊を受ければ助からないだろうが、さりとて、簡単に死ぬ事も出来ないだろう。
 ショック死しなかった事が哀れなありさまだ。

「さて、と」

 屈んで、倒れ伏した少年に触れる。
 体温は消えていない――そして触れればわかる。

「ああ、アナタ――私の力と相性悪かったのね。
 と言うよりは、埒外魔力、エネルギーの性質と、かしら」

 どうやら少年は、自分の中に残留していた『異質な力』に動揺したようだ。
 ただ迦具楽の放った熱エネルギーと魔力の混合物にも、同種の力が含まれているため、いずれにせよ少年は拒否反応を引き起こしていただろうが。

「さて、それじゃあ。
 生きてるうちに食べちゃおうかしら」

 そう言って、少年の首に手を掛ける。
 そこから、自分の体温が、熱が――そしてより生命の根幹、根源に近いモノが徐々に奪い取られていくだろう。

「――さようなら、『鉄火の支配者』さん」

 そう、憐れむように、蔑むように言いながら。
 少年の熱と、『魂』を喰らいつくそうとする――。
 

神代理央 > セーブ!
ご案内:「スラム」から焔誼迦具楽さんが去りました。
ご案内:「スラム」から神代理央さんが去りました。
ご案内:「スラム」に神代理央さんが現れました。
ご案内:「スラム」に焔誼迦具楽さんが現れました。
神代理央 >  
――さて、神代理央の生命は滞りなく終了する事となる。
今生きているのは、生命力の残滓。それは果たして、生きていると言えるかどうか。
その僅かな生命力ですら、彼女に奪われていく。もう、意識というモノもあやふやな、生と死の狭間。
何方かと言えば冥府よりではあるが。


案外、あっけないものだ。
いや、自分が奪ってきた命もこんな感じだったのだろう。
己の死を実感出来るだけ、まだマシというものか。
思考が妙にクリアなのは、走馬灯の代わりに脳細胞がどうにか生を引き延ばそうとしているのか。
医学は詳しくない為、胡乱な知識ではあるが――

だが、その意識も徐々に薄れていく。
靄がかかる様に。眠る様に。
こうやって死ねるだけでも、まあ、己の選択は最善では無いが最悪では無かったと思う事に――

神代理央 >  
 
『闘争は終わらぬ。汝に休息の時は無く。永劫に闘争の焔に焼かれよ』
 
 

神代理央 >  
刹那、彼女は感じるだろうか。
奪い続けていた少年の生命力が、その灯が途切れる寸前で『消えた』事を。
死に至った訳では無い。まるで、何処かに"移された"かの様に――少年の魂の存在は消え失せて――

――そして、代わりに少女が感じるのは。
喰らうのでもなく、吸収するのでもなく。
ただ、呑み込もうとするかの様な、感覚。

焔誼迦具楽 >  
 少年は間違いなく死ぬはずだった。
 迦具楽が喰らわずとも、その命はすでに失われたも同然。
 直ちにこの島の医療を受けられれば、わずかな可能性もあっただろうが。

 だから、少年が今際の時に浮かべた記憶を読み取りながら。
 その半生に哀れみを感じて、一息に食らいつくそうとした。

「――――えっ?」

 その瞬間、ふいに少年の存在が消える。
 先ほどまで消えかけていた魂が跡形もなく消失した。
 代わりに現れたのは、強烈な不快感。

 少年から手を放し、思い切り後方へ跳ぶ。
 ガリガリガリ、と地面を削りながら後ろへ大きく滑り、離れて。
 嫌悪感を隠そうともせず、少年『だったもの』を睨みつける。

「『オマエ』――なんなの」

 不快そうに言いながら、即座に意識が臨戦状態に切り替わる。
 少年に対した時とは違う、『戦闘行為』のために。

 巨大な砲身を《創造》し、左手で掴む。
 己のエネルギーを熱に変換、先ほどとは比較にならない熱量を収束させ始める。
 目の前に現れた『なにか』を一息で焼却するために。
 

神代理央 >  
むくり、と少年の躰が起き上がる。
起き上がった少年の瞳は何処か力無いものであり――それでいて、意志の強さを持つものであった。
少女が大きく後方へと滑る様に離れていけば、少年の周囲に訪れた変化に、直ぐに気付く事が出来るだろう。

――少年の周囲に、金属が集中し始める。
それは、撃破された異形の残骸であったり。
スラムから引き寄せられた物であったり。
少年の周囲から湧き出る様に現れたものであったり。

膨大な金属が、まるで繭の様に少年の躰を包む。
金属同士が擦れ合い、ぶつかり合う不快な音が、周囲に響き渡る。
そして、少年の声に金属の擦り合う音が混じった様な不愉快な言葉が、少女に投げかけられる。


『ワタシが何なのか、という質問に具体的な解を持ち得ない。ワタシは、此の世界に於いて未だ定義されぬ存在である』

『故に、ワタシは神代理央である。器に名前がある以上は、そう呼ぶのが妥当であると愚考する。此れを以て、其方への解答とする』


場違いな程に、生真面目な解答が投げかけられる。
少女が砲身を《創造》し、此方へ膨大な熱量と共に向けていても。
"答える事が義務"だと言わんばかりに、金属音のノイズ交じりの言葉が紡がれるだろうか。

焔誼迦具楽 >  
 少年だったモノは、意思のない――けれど意志のある視線を向けてくる。
 その視線は――あまりにも不愉快だった。

「器、そう。
 やっぱり『中身』は別物なのね」

 周囲の金属が無差別に寄せ集まり、また、湧き出ては少年へ結集する。
 『アレ』は好くないものだと、頭の中で聲が騒ぎ立てる。
 こんなに騒がしい『聲』は久しぶりだった。

「なんであっても構わないけど。
 オマエの存在は――この世界には『不適切』よ」

 収束された熱は、すでに自然界に存在するあらゆる鉱物を融解させるほどまで高められている。
 『ソレ』へと向けられた砲口は、躊躇われずに火を噴いた。
 打ち出された瞬間から、周囲の空気や地形を沸騰蒸発させながら、必滅の熱量が煌めく熱線となり『ソレ』を滅するため迫る。