2020/11/11 のログ
ご案内:「スラム」に日下 葵さんが現れました。
■日下 葵 > 「なんていうか、ここの警邏も久しぶりな気がします」
端末を開いて時刻を確認すると、耳に押し込んだインカムから本部へ、
警邏を始める旨を伝える。
続いてマップを開いて警邏の担当ブロックを確認すると、
端末をポケットに押し込んだ。
「すっかり寒くなって、この辺もさみしくなりましたねえ」
夏場はよくこの辺を警邏したものだが、
その時期に比べると随分とさみしく、静かになったように思う。
路上でその日暮らし、なんて輩は、
もっと暖かくて寒さをしのげる場所に移動したのだろう>
■日下 葵 > 「何はともあれ、事件や事故が起こらなければこちらとしては御の字ですけど」
そう呟いてスラムの中へ。
人のいなくなった廃ビルやマンション。
それらを行き来するための通り。
つい2,3ヶ月前なら、昼間の間にたっぷりと熱を溜め込んで、
月が明るく暗闇を照らすような時間になっても蒸し暑かったものだが、
今となっては廃ビルの間を吹き抜ける冷たい風が、
頬や耳に吹き付けて痛く感じる。
「巷では先日までハロウィン、そして今はクリスマスと騒いでいましたが、
この辺にはそういうイベントは関係なさそうですねえ」
良くも悪くも、イベントの影響を受けない街だ。
大小さまざまな犯罪が毎日起きては消えていくこの場所では、
当たり前なのかもしれない。>
■日下 葵 > 「人間の作り出した場所なのに、恐ろしいほど人間味がない」
ハロウィンも、クリスマスも、ここの人間にとっては関係ない。
今日を生きるのに手いっぱいで、明日のことなど考える余裕なんてない。
そんな掃きだめみたいな場所だ。
「私も、立場がなければこういう場所に住むことになるのでしょうか」
ここに住む者たちは、なぜここに居続けるのだろうか。
島の外でも、ここよりはいくらかまともな暮らしができるだろうに。
「いや、よくないですねえ。
よくない。私がそんなこと、言える立場じゃあない」
私だって、先日までつまらない呪いに縛られていた身だ。
ここの者たちだって、きっと何か理由があってここにいるのだろう。>
■日下 葵 > 「何かしてやれることなんてありませんし、
むしろ恨まれ役の風紀委員ですが」
――嫌われ役を買って出るのも、私の仕事だろう。
時々こちらに向けられる敵意溢れる視線を感じながら、そんなことを考える。
ここに住む者同士て争って消耗されるくらいなら、
私のような不死者がその代わりを務めるのも、
また一つ私の仕事なのかもしれない。
人間が作り出したのに、人間味のないこの場所。
ない方がいいに決まっているが、そこにあるのだ。
何か意味があるのだろう。
なら、その”今”を守るために、今日も仕事に励むとしよう。
楽しそうな笑みを浮かべて、
安全靴が地面を踏み鳴らす音が冷たい風に乗って響いていく。
そうして、紅い制服を纏った風紀委員が一人、
スラムの中を練り歩いていくのだった>
ご案内:「スラム」から日下 葵さんが去りました。