2020/11/22 のログ
ご案内:「スラム」にサクラさんが現れました。
サクラ >  
「…♪ ~♪♪」

スラムの一画、奥まった路地の手前の木箱に腰を下ろし、手鏡を手に化性をなおす
身奇麗な格好といい、不穏な空気の流れるスラムにはやや似つかわしくない存在だろう

が、翡翠色の瞳は綺麗なようでどこか濁り、鏡の中自分へと向けられている
薄くルージュを引き終えれば手鏡を仕舞ってその視線をゆっくりと、路地の奥へと向ける

──路地の奥からは粗野な男子生徒達の、罵声にも似た声が響く
少なく見積もって5、6人はそこで一集まりになり"何か"をしているようだった

「アッタマ悪そーな女だったけど、"そういう"役には立つよねぇー♪」

化性ポーチを仕舞って愉しげな声を路地の奥の闇に向け、投げかける

「ムカつくヤツらなんでしょー? 写真とかも撮っちゃえば?」

木箱の上で足をぶらぶらと遊ばせながら、取り出した腕章を指先でくるくると踊らせる
その腕章の持ち主が、路地の奥でなんらかの仕打ちを受けているのは明らかだった

サクラ >  
「…だいたいチョーシに乗りすぎなんだよね。
 おかげで近頃まともに商品も捌けないし…お小遣いなくなっちゃうじゃん」

ひょいっと身軽く木箱から飛び降り、路地の奥へと声を続ける

「もうちょっとここらで生計立ててるヒトのことも考えてもらわないとね。
 アタマもマタも緩いんじゃ、これくらいしなきゃ身に染みなさそうだけど…」

路地の奥からは聞こえる男たちの声に、小さく女性の嗚咽のような声が交じる
それを聞いてサクラは愉しげに口元を歪めた

「人間サマの遺伝子たくさん打ち込んでもらえりゃちっとは知能つくかもねー♡」

くるんくるん、指先で玩んでいた風紀委員の腕章を足元に放り捨て、踏みつけ、踏み躙る

サクラ >  
そこまでして、サクラは路地の奥の連中に対して興味が失せる
商売…というかお金の収入源がうまく働かなくなった、単純な腹いせ
多少なりストレスが解消できれば別にそれ以上の欲求も、感情もなかった

「まー、こんなことしててもあいつらが表に出てくるわけじゃないし…
 どうしよっかなー、ブランド物とか結構溜まってきたんだけど…」

男に貢がせた数々の品物をそこそこの値段で買取り、流通させる違反部活
彼らがちょうどいい収入源となっていたのだが、ここ最近の落第街の騒動で丁度ピンポイントでそいつらが被害を被ったらしく
地下に潜ったのか、表にさっぱり出てこなくなってしまったのだ

「質屋だと身分証明要るし面倒くさいっていうのに…」

はあ、とクソデカ溜息をついて歩いてゆく
もはや路地の裏で起こっていることはどこ吹く風、勝手にヤって、勝手に連中が始末するだろう

サクラ >  
「(…クソ面白れーツラしてたけど、一瞬で飽きたな……)」

興味を失えば後はただただ帰り道、退屈の極みだ
金も手に入らないんじゃ遊んで帰る気にもならない

他人の不幸は愉しいし、最高の娯楽だとサクラは思っているが、
そういったものはどうにも持続しない、すぐに楽しい気持ちは冷めてゆく

「またクスリの売人でもやるか…?バカ騙して売りつけるだけだから楽なんだよな…」

物騒なことをぼやきながらスラムの路地を歩く
もっとも今のこの街の状況じゃ、そんなブツの流通すら満足に表でやれるのかどうか
まったくやりづらい

ご案内:「スラム」に神代理央さんが現れました。
神代理央 >  
落第街の最奥。スラムの片隅。
先程迄、見目麗しい少年が声を投げかけていた路地裏に――重々しい、ずしん、という何かが大地を踏み締める音。
そして、嬲る側であった筈の男達の――驚愕と、悲鳴と、駆け出そうとする足音と。
そして、数発の銃声とばたばたと何かが倒れる音と。
随分と物騒な音が、サクラの耳に届いただろうか。


「……私の同僚を、随分と可愛がってくれた様じゃないか。
色々と気は済んだかね?君の友人である男共は皆、色々と残念な状態の儘来世にかける事になったから、無念は晴らせていないかもしれないが」

音が止んだ路地裏から、サクラに投げかけられる言葉と、近付く足音。
かつり、こつり、と。革靴が地面を叩く音が近づいてくるだろうか。

「まあ、話をしようじゃないか。それとも、話をする気も失せる程…風紀委員が、嫌いかね?」

煙草の甘ったるい紫煙を纏い、唇に咥えたそれを、蛍の様に明滅させながら。
路地裏の奥から現れた、皺一つない風紀委員の制服を翻す少年は。
穏やかな笑みを浮かべ、サクラに首を傾げてみせるだろうか。

サクラ >  
「──は?」

震動に気を取られて足を止め、続く銃声に振り返る

──…自身が辿った足跡の伸びる先、奥まった路地裏に通じる場所
砂埃と硝煙の合間から、その女顔の少年は投げかける声と共に現れた

サクラは小狡い人間である
"そいつ"が、此処で何をして、何を見て、
自分を"当事者"と見て歩み寄っていることには、声をかけられる前には気づいていた

──が、実際に少年がどこから何を見ていたか、まではわからない
どうせなら小芝居を打とうじゃないか──

「……よ、良かったぁ…!」

赤い髪をふわりと靡かせて、サクラはその場にへたり込む
まるで緊張の糸が切れたようにも見えるそんな様子で

「違うの。私、あいつらに脅されて見張らされただけで…でないとお前も同じ目に合わせるって…」

それで風紀委員を嫌っている素振りをして、合わせていただけだと──
翡翠色の瞳に嘘の涙をたくさん溜めて、そう訴えかけていた