2020/11/24 のログ
ご案内:「スラム」に園刃 華霧さんが現れました。
■園刃 華霧 >
ただ、久しぶりにこの街の空気を吸いたくなった。
それも、風紀委員として、ではない。
ただこの街に育った者として。
嫌なものばかり見てきた街だが、それでも一種の故郷のようなもので
だから、つい、足がむくのだろう
「アー……」
それほど離れていたわけではない。
それこそ僅かぶりの訪問である。
それでも、この空気、この肌触りこそが……
「……ちがウ……」
わずかの間に、違ってしまっていた
自分が変わったのか、とも思ったが、そうではない
この街を支配する空気感が違う
無秩序でいて、一定の秩序があり、
どこか落ち着いたところもある、あの街が
「……聞イた、とおリ、か……」
噂には聞いていた、風紀委員の行き過ぎた取締、とやら
アレのせいだろうか
それを仕切っていたのは……
そして、その彼も今や――
「クッソ……なンだってンだ、ほんト……」
思わず吐き捨てるように口にする。
「ァー、もー……チェルにも顔合ワせ辛いシ、どースっかナ……」
やっと落ち着いた、と思ったところでコレだ。
盛大にため息をつく
■園刃 華霧 >
「……は、ァ」
頭の中に、先日吐きかけられた言葉が渦巻く。
自分の今までやってきたことは――
「ァ―……あのクソ侍にゃ、いいヨーに言わレたケどなー……
傷つけテも、まタ笑イあえル、か……」
そう
確かに、そうではあろう
悩みのタネの一人は、そうあってくれるだろう、と……勝手な信頼をおいているけれど
けれど――
「でも、ナ……何人も絡むト、な……ドーにも、こーニも、だナ……
はァ……いっソ、アイツに首でも差し出セたら、話は早いンだろう、ケど」
それはきっと、相手が許さないだろう
あの相手は自分を罰するとするなら、そんな一思い、などと簡単に済ませるわけがない
現に、今だって真綿で締めるように苛むつもりでいるのだろう、と想うときがある
それでも
贖罪、なんて高尚なことができもしない自分にはそれを甘んじて受けるより選択肢はない
そして だから
相手の最も大事なものに触れることも、許されないのではないか
そう想うと――
「アー……ッ!!!」
思わず呻いた
■園刃 華霧 >
いっそ、生き方を変えてみるか……
この街で生きてきたときのように、襲い、奪い、蹂躙し……
「……それは だめ」
小さいつぶやきが漏れる
それは封印した生き方
それはもう必要ないとした生き様
「……そーイや、どーシてこうナったんだっけ、なァ……」
苛烈なソレを捨て去って、今のような生き方になったきっかけ
それは――
「ンー……教育、を受けタとき、ダったっケか……」
真面目なんだか不真面目なんだかわからない、歳だけはとった男が
教育係、としてついた……あの時
「……っと、いカんナ……思い出ニ浸るヨーじゃマジでやバいナ……」
また、ため息を付いた
■園刃 華霧 >
「……とりアえズ……散歩、カな……」
ふらり、と立ち上がる
変わり果ててしまったようで
何も変わっていないような
我が故郷
この街の闇はなんでもかんでも受け入れて
新しいカタチに変えていくのだろう、とは思う
「……ま、今ヲ知るノも悪く、ナいか……
後でアイツに文句の一つもツけなイと、ダしな……」
足取りはしっかりと
しかしそれでいてどこか落ち着きのない様子で
歩みをすすめる
■園刃 華霧 >
「しッカし、ナー……ソろそロ、やバいよナぁ……」
別に避けているわけでもないが、なんとなく彼女に対してよそよそしい……というか、
あまり深く関わらないような態度で接しているのだ。
流石に、こう……色々と、よくない、気がする。
気がする、が……自分もどうしていいか、わからない。
普通に接することだけならいくらでもできる
でも、それが正しいのか、わからない。
なにもかもがわからない
「……」
考えごとをしながら、ただぼんやりと歩く
■園刃 華霧 >
「……ヤっぱ、だいぶ萎レてンな……
ま、ドーせヤばい連中は、陰に隠れテんだろーケど」
ぼんやりと歩いてはいるが、なんとなく様子は見ている。
何もかも許容する、とはいっても……やはり一時の疲弊は隠せない
コレが戻るのはどのくらいかかるだろうか
「っタく、サー……」
ブツブツと呟きながらあるき続ける
しかし、お陰で頭を支配していた悩みは……
少なくとも今このときだけは、僅かばかりかき消されたと思う。
■園刃 華霧 >
「……ま、少しはマシになっタか、な。」
ため息を一つ
「……そーイや……」
脳裏に流れる声
――『続けるしかない』んだ。一度、始めてしまったことは。
「あぁ、ソう。そウだった、ナ……
『続けるしかない』ヨな」
薄く、笑う
「……なラ、やルしかナい、か……」
ぼんやりとした足取りに力が戻り……
そして、女はその場を後にした
ご案内:「スラム」から園刃 華霧さんが去りました。