2021/04/07 のログ
ご案内:「スラム」に神代理央さんが現れました。
神代理央 >  
雑多な人種、雑多な民族、雑多な種族。
多くの多様性を内包した此の島では、様々な宗教も乱立している。
基本的に此の島では宗教を取り締まったり、当局――所謂学園都市――が弾圧することはない。

一般市民に害を及ぼさなければ、ではあるのだが。

「散々祈る時間は与えたと思うのだが…どうかな?奇跡やら神の降臨とやらは起きたかね?」

雑居ビルの一室。半分崩れ落ち、部屋と部屋とを隔てていた壁は吹き飛ばされている。
元は信者達が集まる大広間だったであろうその場所は、無数の金属の異形が蠢き、其処居らに死体が転がる地獄絵図と化していた。

そんな異様な空間で対峙するのは、二人の男。
方や、小綺麗なコートと制服に身を包み、風紀委員の腕章が無ければ学生街のボンボンかと思うような出で立ちの少年。
方や、淡い群青色のローブに身を包み、不可思議な文様が描かれたマフラーを無数に巻きつけた壮年の男。

男は既に息も絶え絶え。肩に刻まれた銃痕からは、真っ赤な血が流れ出している。
それでも、強い意志を持った瞳で男は何かを叫ぼうとしたが―

「時間切れだ。残りの布教は転生してからやり直せ」

少年が投げかけた言葉と共に、金属の異形から数発の弾丸が放たれる。
後に残ったのは、死体と瓦礫の山。其処で退屈そうに溜息を吐き出す少年一人のみであった。

神代理央 >  
この新興宗教は、多幸感を与える薬物の原料を栽培し、信者達に配布していた。
尤も、法外な金を取っていた訳でも、中毒者を乱造していた訳でもない。
貧しい人々に少しでも救いを与えようという名目だった…らしい。

何にせよ、風紀委員会が『違反部活』だと決定したのなら、それまでの事だ。
死人に口なし。彼等の元に、神は現れなかった。それだけのこと。

「…私だ。目標の殲滅が終了した。薬物と原料は残しているが、押収する様な武器は何もない。早く後処理の人員を寄越してくれ。以上」

淡々と任務完了の報告を入れると、近くに転がっていた椅子を起こして深く腰掛ける。ぼんやりと部屋を眺めるが、視界に映るのは死体と瓦礫と己の異形のみ。

「…余り愉快な風景では無いな。雅さの欠片もない」

懐から取り出した煙草は、少しだけ折れ曲がっていた。
小さく溜息を吐き出して火を付けると、甘ったるい紫煙が口内に広がり、硝煙で傷んだ喉を傷める。

神代理央 >  
戦闘によって煤けたビルに多くの異形を展開し続ける訳にもいかず、紫煙を吐き出しながら少しずつ数を減らしていく。
無論、最低限自衛の為の戦力は残してはいるが、異形によって床が抜けた等という間抜けな事態には陥りたくは無い。

「これだから室内戦はやりたくないんだがな…。外から撃ち込んでいる方が気楽で良い」

今回は幾分小型の異形を召喚して挑んだ任務ではあったが、やはり本来の戦闘スタイルに合わない戦い方には気苦労が絶えない。
碌な武器も持たず、拳銃どころかそこいらの棒きれで抵抗してくる様な連中だったから良かったものの、次は接近戦の得意な部下を連れてくるべきかと再び溜息を一つ。

神代理央 >  
そんな風に黄昏れていれば、階下から響く人の声と足音。
どうやら、後詰と後処理の部隊が到着したらしい。

「さて、と。本庁に戻れば書類仕事が減っている…と良いんだがな」

帰りがけに甘いココアとお菓子でも買って帰ろうと心に決めつつ、コートについた埃を払って立ち上がる。
漆黒の装甲服を纏った部下が死体の山に辟易とした雰囲気を纏うのに苦笑いを浮かべつつも軽く叱責して、後を引き継いだ少年は神を崇めていた神殿の残骸から立ち去っていった。

ご案内:「スラム」から神代理央さんが去りました。