2021/07/25 のログ
ご案内:「スラム」にサティヤさんが現れました。
サティヤ > 灰色のコートに身を包んだ人が、機能的で簡素な短刀で目の前の男の首を横に切り裂く。
叫ばれたりしないように男の口を抑え、男の死が確信できるまで短刀を持つ方の手で抑え込む。

ここは裏道を行ったスラムのさらに裏道。
土地勘がない者であれば前後を見失ってしまうような場所。
夏の真昼の陽の光でさえも照らしきれない場所。
死が日常である場所。

「もう死んだかな」

確信したように、中性的な声で小さくつぶやく。
死を自覚出来なかった男の体が抵抗を試みるが、すぐに力が抜けていきその場に崩れ落ちそうになる。
短刀を収め、崩れ落ちそうになっている男の遺体を音をたてないようにその場に横たえる。
そしてその場に屈み、横たえた男の死体を漁る。
何か金目の物はないかと、金になりそうなものはないかと靴底から髪の中まで、ゆっくりと探っていく。
周囲の警戒は怠らない。ミイラ取りがミイラになるような事態は絶対に避けねばならないのだ。

サティヤ > 「いいもの持ってるじゃないか。
ダメ元で聞いてみて正解だった」

靴底でもなくかつらの裏でもなく、男の上着のポケットの中には小さい宝石が入っていた。
小さいとはいえ、これが一つあれば人間一人買うぐらいには十分なのではないだろうか。

「依頼主の言っていたお姉さんのなれの果て……じゃあないといいね」

そう言い自身のコートの中に宝石を仕舞って死体漁りを再開する。
が、男の所持品はあとは薬物か酒がいくらか買える程度。
依頼主の青年から受け取った報酬の三分の一にも満たないぐらいだ。

「まあ……楽な仕事だったしおいしい部類かな」

遺体を漁り終え、小さくため息をつきながら立ち上がる。
短刀を取り出し、布切れで付着した血をふき取りながら適当に壁に凭れ掛かって空を見上げる。
死体の処理はしなくてもいいかな、なんて適当に考える。

サティヤ > 「それにしても……わかり切ってたけど
やっぱり愚かだなあ……
あの青年も、この男も」

空を見上げたまま何でもないかのように呟く。
見下すでも呆れるでもなく、事実を再確認しているかのように、例えるなら「空は青いなあ」と言っているような。
半開きの瞼を閉じ、拭き終えた短刀を再び収める。

「それにしても、本当に良かったのかな。
殺すだけで。
まだ生きてるかもしれないのに」

受けた依頼は、姉をさらっていった男を殺して欲しいというものだった。
報酬は前払いで特に契約書や魔法や異能による縛りもなかった。
感情に任せて何も考えずに依頼した。
そんな感じが実にありありと伝わってきた。
報酬の持ち逃げでもされたらどうするつもりだったのか。

「自分は別にいいけど。
わざわざ言ってあげる理由もないから。」

依頼の報酬がちゃんともらえて、日々生きていられるなら。
別にそれでもいいのだ。
依頼主の事情なんてどうだっていい。
短くため息をこぼし、肩の力を抜いた。

サティヤ > 「さて……成功報告に行こうかな
死体は……ほっとこう」

壁から身を離し、コートをはたいてその場を歩いて去っていった。
後に残された死体は多分誰かが処理してくれるだろう。

依頼成功の報告を受けた青年は実に満足そうだった。
その後どうなったかは知るところではない。

ご案内:「スラム」からサティヤさんが去りました。