2021/07/28 のログ
■サティヤ > 「決断ですか?
そうですね、いつかはもう覚えてないですがもう済ませてしまったので。
あとはその決断の正しさを確認できれば、それでいいと思ってます」
ーこれは規格内ー
言葉に詰まることなく、台本に記されたセリフの一つを口にするように応じる。
少女の煽るような発言に怒るでも悲しむでも見下すでも恐れるでもなく、平坦なままだ。
少女が思うような愚かさを指摘するでもない。
「自分にとってはマシな場所、というだけで……
普通に暮らす分には外の方がいいとは自分も思います。
自分がここから出たくない、それだけなんです。
ところで、逆に聞いてもいいですか?
”あなたにはここで暮らす理由が無いように見えますがどうしてここに住んでいるんですか?”」
ここが居住地として最低なことは理解している。
この世界に来る前に住んでいた国、最後に辿り着いたあの国でさえもう少しマシだったと思う。
ただ、そう。
この人型にとっては、ここから出ることは間違った道に自分から踏み入るようなものなのだ。
”それだけ”という言葉にはわずかな恐れと、”0かマイナス”しか自分には許されない悲しみがわずかにあった。
少女への質問には純粋な興味しか込められていない。この興味も、当然のごとく...
■黛 薫 >
「そーゆートコ、なんだよなぁ」
いっそ憤りでもしてくれれば良かったのに、と
内心で嘆息する。軽蔑されても良いから心からの
言葉を引き出せたのなら……寂寥にも似た蟠りを
感じずに済んだのだろうか。
『愚か』などと口にしてはいるが、彼女の中では
それは『間違いを選ぶこと』を指すのだろう。
対となる賢しさ/正解を選ぶ行為もきっと無くて、
今ではない過去の中にいる。
「せめて『出たくない』が本心であって欲しぃと
あーしは思いますけぉ。……いぁ、勝手でしたね。
ま、クズの言い分なんざ忘れてもらえればと」
会話の合間、箸は進まない。
無意識のうちに止まっている手を動かして、
黙々と味わうこともせずに食べ進める。
「そりゃ好きでいるワケじゃねーですから。
ココに留まる理由だってあるんだかないんだか。
ただ……居たかった場所にゃ、居られなかった。
逃げてきた先がココで、ココからさらに逃げる
場所が見つかんねーんですよね」
■サティヤ > 「すみません。」
愚かですみません。
少女の感情をなんとなく感じ取り謝る。
これは、社交辞令であり、言わなかった部分を含むなら自分への謝罪だ。
「では忘れることにします。
ですが一つ補足するなら……
自分が”出たくない”と本当に思ってないと思ってるようですが。
自分は本当に外に出たくないと思ってます。
今愚かだからってこれ以上の愚かさは受け入れがたいですから」
訂正出来てそれが今後を円滑に進められるなら正さない愚をおかすのは見逃し難い。
言う事も一種の愚ではあり、正解はわからないが妥協として少女の勘違いをただした。
「逃げる先が見当たらない、ですか。
これは、あくまでも選択肢の提示でしかないですが。
死ぬという手は考えたことはないんですか?
あなたがそう思ってるかは知りませんが……逃げ道がない状態で逃げ先がない状態でいるのは愚かなのではないでしょうか。」
ためらうこともなく、平然と自ら死を選ぶ選択肢を口にする。
そこにあるのは悪意に類するものではなく、むしろ善意ですらあった。
逃げ先が無いのなら、なぜ死なないのかという疑問と、それを打破する提案をする善意。
当然、死ぬことは愚かであるのだが...どちらにしろ愚かであるなら、今とれる手段を提示する。
ただそれだけで他意は無い。
■黛 薫 >
「今の会話、他の人に聞かれてたら10人中8人は
あーしの方が謝るべきって言うと思うんすよね」
謝る必要はなかった、しかしそれを直接言うのは
貴方の誠意を受け取らないことになる。だから
持って回った言い方をするしかない。彼女なりの
優しさと解釈するか、面倒なことを考えていると
受け取るかは貴方次第。
「受け入れ難いってのは選ぶ余地が無ぃってコト
じゃねーですか。そんなの本心も何もねーでしょ。
いぁ、本心かどうか決めようがなぃって言ったら
悪ぃってか、違うんでしょうけぉ。他が無ぃなら
あーたの口から聞く意味も無くなるから……」
指先から滑り落ちた箸がお米の上に落ちる。
拾い上げるのも億劫で、一旦食事を中断した。
「逃げるってのは、嫌だとか苦しいとか怖いとか、
何かしらの理由があるからなんすよね。あーしは
痛いのも苦しいのも嫌だし、死ぬのは怖い。
そーやって色々怖がるから逃げなきゃなんですが、
怖がるから死には逃げられない。あーたの言葉を
借りるなら『愚かだから』になるのかな。
頭じゃ他に道なんかないって分かってるけぉ、
『愚かだから』他の道を期待して彷徨ってる」
「だから、あーしはこーやって突っぱねもせずに
ネチネチあーたに絡んでるワケ。頑なに『愚か』を
避けてる、嫌ってる、恐れてる?どれでもいーけぉ、
あーた自分でそーゆーの考えてくれなそーだもん」
■サティヤ > 「これ以上愚かになる理由はないじゃないですか。
さらなる愚かさに手を染める事を自分から選ぶことを避けるのは至極当然ではないのですか?」
この人型にとってはそれが本心でありこれが妥協案。
選択は出来る、愚かになる選択肢をとることは出来る。
そこに明確なデメリットなどなく、むしろここから出て外で暮らすメリット……それなら明確にいくつか挙げられる。
それでもここから出ないのは、自身の選択の結果であり、その選択をしたのは本心なのではないだろうか。
「……その期待はやめた方が楽だと思います。
やめろとは言いませんが……あなたがよっぽど長寿でもない限り逃げきれずに死ぬと思います。」
この人型にとって、200年の旅路は、結局愚かなものだった。
200年の重みが、少女の今までの言動や考えのうちただ一つ、それだけは、期待することだけは愚かだと確信させた。
少女にとっても、これまでのうち最も重く、心の底から響く意思であり、言葉であり、視線。
そう感じ取ってもおかしくない。
「避けてるのはそうですが嫌ってるわけではないです。
それが”普通”でそれしかないのですから。
出来るだけ避けては通れますが嫌っていたらもうとっくに命を断っていると思います」
200年の旅路が、”自分の愚かさ”を正してくれる賢さを、正解を探した旅路が。
愚かさが世界を支配しておりこの世にそれしか存在しないことを証明してくれた。
■黛 薫 >
「そりゃあーたの選択が理性的な判断の結果と
一致してるからそう思うんでしょーよ。合理が
本心と一致してるのか、合理以外に懲りて本心が
理に寄り添うようになったのか、なんて勘繰りは
失礼なんでしませんけぉ。
あーしは心に振り回されてるんで、判断と決断が
一致するとは限らない。それが愚かなんだろって
言われたらまー否定はできませんが。突き詰めた
合理が愚に行き着くコトもままあるワケで。
高い場所目指して下るのを避けてたら、谷の先の
山頂には登れない、ってな。まあ言い訳ですが」
何となく、相手の言わんとする『本心』の形が
見え始めた。その上で相手は相手、自分は自分と
割り切って話を切り上げられないのも自分の心故、
『愚かだから』に尽きるのだろう。
残った弁当の中身を口に押し込み、お茶で流し込む。
これ以上引っ張ると食べられなくなると、食欲とは
無関係な感情による妨げを感じていた。
「だからあーしはこんなにもあーたの『普通』に
噛み付いてるワケだ。要は単なる気持ちの問題。
嫌なら言ってくれたって良ぃって建前であーたに
嫌って言わせたかった、なんてな。
んで、同じ気持ちの問題で『やめた方が楽』……
いぁ、敢えてやめた方が『賢い』とか言ってみるか。
とにかく、あーしは愚かな方しか選べないんだよな」
貴方もそうだったのか?とは、聞かなかった。
■サティヤ > 「正直なところ、覚えていません。
昔の自分がどういう思想を抱いていたかは……時の流れと共に忘れてしまいました。
どちらから寄り添ったのか……少なくとも今は合理的な答えを知っているから自分の本心はその答えを望んでいます。
昔からそうだったかは、先ほども言った通り覚えていませんが。」
旅の終点を迎えた時の喪失感は、今の自分を今の人格にした大きな要因であり……
そして、諦めているという感情が平常心と同水準となった要因もある。
そんな喪失感は、過去の思想を合理に染め上げ消し去るに十分すぎた。
人型の記憶や認識もだますほどに。
「ちなみにですが、そのたとえ話をお借りして……
下らなければならないなら、下る以外の方法を探します。
それでも方法が見つからなければ……自分はそこで諦めます。」
”賢さ”とは、一切愚かでないことを指す。
下っていては賢くはないのだ。
「……つまりこの時間は愚かだった……?」
深刻そうな表情と感情と声色。
視線は少女からそらされ地面を見つめていた。
お互いが割り切るという妥協を選ばず、自分は気づけず。
お互いのスタンスを示しあう。
これは……愚かなのではないだろうか。
きもち的に楽なのであれば、それを選ぶべきなのでは??
一言の疑問形であるが、少女の返答次第ではこの人型はまた愚かさに染まり、諦めた愚かさが一つ増えることになる。
それぐらいこの人型にとって愚かであることは重大なのだ。
■黛 薫 >
「一度下れば山頂に向かえるのに下らず行ける道が
ないなら諦める、なんて行為が愚かな訳無いだろ」
しれっと言ってのける。
その口元は少しだけ笑っているように見えた。
相手の葛藤も、理解したなんて傲慢なことは
言えないながら、推察した上でそう言った。
「ただ、そーだなぁ。あーしが愚かだからって
付き合わされてるあーたまで愚かだってコトには
ならないと思うんだよな。愚か者の考えなんで?
断定するには難しいけぉ、それは置いといて。
例えば愚か者と話すとき、目線を合わせるために
一旦下に降りるのと、降りるのが愚かだからって
上から見下ろして話すのを比べたら、愚かなのは
どう見ても後者じゃねーの。
だからあーしは谷底から足を引っ張ってんだよな。
そーすりゃ愚かじゃない方を選びながら降りられる。
降りられたなら今度は山頂が谷の向こうにあっても
また登っていけんだろ。
繰り返しになるけど、だからあーしはあーたに
絡んでたんだ、ってな。とんでもない愚か者に
捕まった、って諦めたらいいんじゃねーの」
屁理屈を捏ねながら、空になった弁当箱に合掌。
『いただきます』は命を頂く食材への感謝。
『ごちそうさま』は食べ物が手に届くまでに
関わった全ての人への感謝。
殆ど飲み下すような、感謝から程遠い食べ方しか
出来なかったから……せめて気持ちだけでも、と
丁寧に手を合わせる。
■サティヤ > 「……自分は自分のことも愚かだと思っています。
あなたは私が高いところにいると思っているようですが……
自分は谷底にいる自覚があるだけで谷底から抜け出せないでいるただの愚か者です」
隣に座る少女は、自分は自分が賢いなどとうぬぼれなどという言葉では収まらない愚を犯していると思っているのだろうか?
無知の知は愚かさを避けるうえで最上の手段であり最低限の条件といっても過言ではない。
それすらなっていないと、そう思われているのかと、人型は感じ取った。
初めて人型が不快感を示した。
極一瞬であるが、あからさまな不満を抱いた人型は首を傾け、少女の頭部を見つめた。
一瞬であるが、不満は視線越しに伝わっただろうか。
「自分は愚か者です。
死にたくないからと一族から逃げ出し、欲求を満たすために恩人から逃げ出し、200年もの歳月をかけて旅をしたのに、愚かさの証明しかできなかった。
だから自分は愚かです」
事実を淡々と述べていく。
周囲が何と言おうと、どう感じようが、人型にとってこれが事実。
不変な過去が裏付け、諦め呆れた真相。
「もしかすると今はあなたの方が愚かではないかもしれませんね」
本心から、そう言って見せた。
まあこれもただの推測であり感情の存在はない訳だが。
■黛 薫 >
「やっとでちゃんと『話して』くれたな?」
視線に込められた感情が微かに揺れる。
満足げに……と表現するには些か自嘲気味な
笑みだったが、そこには仄かな安堵があった。
「自分の愚を自覚するのは賢くないと出来ない。
けど前提として自分が愚かじゃなきゃいけない。
愚かじゃないなら自覚じゃなくて卑下になるけぉ、
自分を卑下するヤツが愚か者じゃないワケない。
なあ、あーたは何を避けてるんだい?」
空になった弁当箱を手に立ち上がる。
殆ど減っていないお茶はカバンに捩じ込んだ。
「あーたも、こんな悪辣な言い方しかしなかった
あーしなら下に見て良いってのにさ。そゆトコが
あーたの言う愚かさで、あーしはそれを愚かって
言って譲らないあーたに意地悪してんだよ。
あーしだって頑固者の愚か者さ、分かるだろ」
この場で待てば、きっと貴方は整然とした答えを
返してしまうだろう。だから黛薫はひらりと手を
振った。返事を待たない別れの挨拶。
更なる愚かさに手を染めないため、という理由で
愚かさを積み上げる頑固者へ。逃げる先も逃げる
道もない己のどん詰まりを指摘された意趣返しと
ほんの少しの祈りを込めて。
ご案内:「スラム」から黛 薫さんが去りました。
■サティヤ > 少女の言葉に首をかしげる。
少女の笑みもであるし、とにかく少女の気持ちがわからなかった。
「愚かなことを愚かとわかっていてする意味が……
そんな賢く無くて意味がないようなことをどうして?
愚かにしか在れないから開き直っている……?」
平坦に疑問を口にし、首をかしげるアクションと共にわずかに唸る。
もしかするとあの少女は自分より長く生きていて自分のような愚かな経験とは違う経験を得ているのかもしれない。
「自分は愚かで……愚かであることを自覚するには賢くないといけない。
でも自分は愚かだから賢く無くて、賢ければ卑下しないから……私は愚か……?」
無限ループ二週目を始める前に思いとどまる。
問題は解決しないが、この問題は今は解決できない気がしたのだ。
諦めることは愚かだが、混乱はほかの愚かさを及ぼす。
そう自らを制し、ゆっくりと頭を左右に振りゆっくりと立ち上がる。
すっかり姿が見えなくなった少女の言葉を反芻しながら、どこぞへと歩いて行った。
居が近しい者同士、また何れ会うときが来るだろう。
それまでに少しでも愚かでない答えを用意しておこう、そうしよう。
ご案内:「スラム」からサティヤさんが去りました。