2021/10/14 のログ
神代理央 >  
此方の感情を読み取ったかの様な彼女の言葉に、にこりと穏やかな
笑みを浮かべる。
否定はしない。何故なら、その通りなのだから。

「伊都波先輩は……伊都波凛霞は、違反部活に誘拐された」

穏やかな声色の儘、言葉を続ける。

「大凡の居場所は掴めているが、それだけだ。
何処が彼女を誘拐したのか。何が狙いなのか。
全く以て不明。情報が足りない。
こうして、落第街の住民を救う為に活動しているというのに…
残念なことだな」

つらつらと、言葉を並べる。
此方の感情を読み取った様な彼女に、隠し事をするつもりはない。

「だが、怪異である君ならどうかな。モノ。
私達よりも深く。私達よりも迅速に。
彼女を助ける為に、動き出す事が出来るのではないかね?」

浮かべる笑みは、先程と変わりない。

「正直に言おう。君は戦うには厄介な相手だが、味方にすれば
"使える"と判断した。
だから、伊都波凛霞を救出する為の一つの手段として
組み込めればと考えている」

嘘はない。『モノを利用するつもりだ』と正々堂々と宣った。

「それが私の本心だ。どうかね、モノ。偶然出会った怪異の少女。
自分をヒトだという、怪異。
君は、自分が利用され力を振るう事になっても、伊都波凛霞を
助け出したいと思うかね?」

モノ・クロ > 「…ふーん?」
その言葉を聞いて、ただ、それだけだった。

「理屈とかはよくわかんないけど…まぁ、それを聞いて助けに行くのは確かにそうだけど。巻き込んでも文句言わないでよね?」

自分に抱かれている感情はわかっている。だからこそ、好意的には接せない。
「力は振るう。『あなた達の都合は関係無い』。あなただってそうでしょう?」
つまりは。

自分も救出には向かうがいいなりになるつもりも無ければ、必要があれば風紀とも敵対する、と言うことだ。

「クロがあなた達に従うとは思えないしね」

神代理央 >  
「従う必要などない。それに、此方の都合を考える必要も無い」

愉快そうに、嗤う。

「どちらも御互い様だ。最終的に、御互いの目的が一緒なら
私は別にそれで構わない。
ただ、伊都波凛霞は『風紀委員会』の人間だ。
それだけは、忘れないでいて欲しいものだ」

懐から、煙草を取り出す。
火を付ければ、余ったる紫煙が二人の間に漂うだろうか。

「極論、伊都波凛霞を攫った連中をかく乱してくれるだけでも
構わないのさ。私としてはな。
それさえしてくれるなら、それ以上のことは言わない。
風紀委員会として、君に何かしら命令しようとも思わないよ」

モノ・クロ > 「…まぁ。出来るだけ気をつけるようにするから、そっちも言い含めておいてよ。
あなたから見たら怪異なんでしょう、私?」
要らぬ争いは好むところではない。争ったところでお互い痛い目にしかあわないのだから。
それに、理央の言葉で思い出したが、凜霞お姉さんは風紀委員なのだ。なら、仲良くしておけば普通に会うことも出来るかもしれない。

「襲って欲しいところ教えてよ。効果的な場所、知ってるんでしょ?」
頭脳労働は得意じゃない。利用されるって言うのは癪だけど…凜霞お姉さんの為だし、割り切ることにする。

「一応、念を押すけど。やられたら『やりかえしちゃう』からね?」

神代理央 >  
「勿論だ。私の部下には言い含めておこう。
但し、他の風紀委員については約束しかねる。
怪異との交渉というのは風紀委員内部でも難しい問題故な。
だから…"私の部下以外"については、最低限気を付けるだけでいい。
私の部下には、君を見たら攻撃しない様に言い含めておく。
逆に、攻撃してきた風紀委員会については『やり返しても』構わない」

仲間を見捨てた訳ではない。
怪異相手に、言葉の鎖で縛ろうというのがそもそも無理な話なのだ。
それに、少なくとも彼女は『出来るだけ気を付ける』と言ってくれた。
ならば、それを尊重して、それ以上は求めない。
それだけの、事だ。

「懸命な判断に感謝しよう。
現在、彼女の居場所と目されているのは落第街の最奥。
風紀委員会でも手の及ばぬ所が多い場所だ。
何より、伊都波凛霞は相応の手練れだった。
それを攫った連中だ。武力、策謀共に優れているだろう。
奢らず、事に当たることだ」

忠告する程でも無いのだが。
まあ、尊敬する先輩の知人であれば、無駄に怪我をされるのも忍びない。
だから一応、念の為。気を付ける様に、と忠告しておくだろうか。

モノ・クロ > 「そうなんだよねー。凜霞お姉さんと鬼ごっこしたときも凄かったのに。」

思い返すように呟きながら。彼女の強さは身に染みて知っている。

「怪異だからって目の敵にするのは違うと思うんだけどなー。話せば案外わかりあえるのもいると思うよ?」

モノの知り合いの一人も、怪異である。分かり合えたかどうかはとても怪しいものだが。

「一応聞くけど。私が助け出しちゃっても構わないんだよね?」

神代理央 >  
「私自身としては、怪異と無益に敵対する事は避けたいと思っている。
君の様に、或る程度話が分かる者もいれば、友好的な者もいるからな。
とはいえ、それで全てを通せる程、組織というものは甘くない。
こればかりは、如何ともしがたいところだがね」

彼女の言葉に小さく肩を竦める。

「まあ、それでも君が私の話を飲んでくれたというのは
素直に嬉しく思うよ。私の様な風紀委員に喜ばれても
君は嬉しくはないと思うがね」

これは、本心。
小さな苦笑いを浮かべつつ。

「ああ、構わない。風紀委員会の美談に拘る程、私も悠長に
構えている訳じゃないからな。
情報はなるべく共有出来ればとは思うが…まあ、難しいかもしれんな。
先程も言ったが、私の部下にはしっかり言い含めておく。
君の邪魔をしない様に、とね」

モノ・クロ > 「嬉しくないって…そんなこと言われても、私貴方のことは知らないし。少なくとも手段は選ばないけど仲間思いっていうのはわかるよ。組織って難しいんだね」

そんな事を考えて。一つ、思い付いたことを口走る。

「ねぇねぇ、私も風紀委員になれたり出来るのかな?」
半分興味、半分打算だ。風紀委員になれば凜霞お姉さんと人目を気にせず会えるようになるのではないか、と。

神代理央 >  
「……今迄のやり取りは、少なくとも私は友好的に接したとは
思えないんだが。好印象は持たれていない、と思っていたんだがな」

と、仲間思いだと言ってくれた彼女に、きょとんとした様な
不思議そうな表情。
その表情は、ついで投げかけられた言葉に益々深まる事に成る。

「…まあ、必ずなれる、とは言えない。風紀委員の推薦や
試験。怪異となれば、面談だのなんだのと難しい事もあるだろう。
しかし、無理ではない。君が本当になりたいと思っているのなら
不可能ではないさ」

モノ・クロ > 「友好的じゃないのは仲間の為でもあるんでしょ?誰かのために必要なことをしてる、って言うの?

私、そういうの好きだよ」

笑ってみせる。人型の右半分は可愛らしいが、左半分がどうあがいても禍々しかった。

「んー、そっか…ちょっと頑張ってみようかな」
意気込みを見せる。

だが、彼女自身は人間であっても、その身は怪異と共にある。
その特性は、あまりにも。人間の『精神』にとって致命的であった。

神代理央 >  
「……怪異である君にそこまで評価されるとは思っていなかったな。
だが、まあ、そうだな。そう言われるのは、嬉しいよ」

何とも居心地の悪そうな表情、ではあるが。
ぺこり、と小さく頭を下げて感謝の意を伝えようか。
怪異に頭を下げる風紀委員。何とも不思議な光景。
少女の可愛らしさと、ソレに反比例する禍々しさも。
"少年にとっては"許容範囲内。他の風紀委員はどうか知らないが。

「……伊都波先輩の知人であるのなら、余り無理はしない事だ。
君に何かあれば、彼女も悲しむかもしれない。
まあ、期待している。ヒトならざる者であれば、ヒトより
多くの事を成し遂げられるだろう。
君自身の評価の為にも、な」

コホン、と咳払いを一つ。
そこで、鳴り響く通信機。

「……と、すまないな。私はそろそろ仕事に戻らねばならん。
また会える日を楽しみにしているよ。
君とは…モノとは、有意義な話が出来そうだからな」

30分経っても連絡が無ければ、という少年の言葉を心配した
部下からの通信。律義な事だ、と苦笑いしながら少女に背を向ける。

「事が上手く運べば、私からも推薦状を書いてやってもいい。
その為にも、余り風紀委員に手を出してくれるなよ?
ではな。改めて、君の活躍に期待している」

と、言いたい事だけつらつらと述べて。
相対していた時の様に、尊大な態度と口調で背を向けて。
少年は、少女の元から立ち去るのだろう。

モノ・クロ > 「お仕事、頑張って下さいねー。

よーし、私もがんばろっと!」

呪いを植え付けたまま理央を見送った後、呪紋を使って跳ね跳び、落第街へ向かった。


その後、理央が指示した落第街の最奥は、阿鼻叫喚の地獄と化した。

黙って自殺したならまだいい方で、発狂しほかの者へ無差別に襲う者もいれば狂気を伝染させるかのように叫び回る者もいた。
少なく見積もっても数十名が死亡、ないし発狂し、かりそめの秩序は崩壊したも同然だった。

証言を辿ればモノがやったことがわかるかもしれない。

帰路の彼女は満面の笑みだったそうだ。

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