2021/10/30 のログ
ご案内:「スラム」に神代理央さんが現れました。
神代理央 >  
人工の灯すら乏しいスラム。
貧困の坩堝と化したその街に、軋む様な駆動音と地響きが大地を揺るがす。
スラムの住民は、もう慣れたものだ。嵐が通り過ぎるまで。
或いは、暴風雨へとならない様に。
身を潜めて、息を潜めて、暗がりに潜む。

「……厳密には、此の辺りでは無いらしいが…」

巨大な多脚の異形を率いて此の街を闊歩する。
それだけで、或る程度の抑止力になればいい。
或いは、刃向かってくれても良い。そうすれば、明確な敵として戦うことが出来る。

無数の砲身を、スラムの全てに向けながら。
少年は、異形の群れを引き連れた"パレード"の真っ最中であった。

神代理央 >  
怨嗟の視線で睨まれようが。
憎悪と悲哀の視線を向けられようが。
気にする事は無い。気に留める事は無い。
感情を向けるのは勝手だ。それを、行動に移さなければ――

「……全く、勇気と蛮勇をはき違えているのは、どうかと思うがね」

小石が、飛んで来た。
かつん、と音を立てて鋼鉄の異形へ石が当たる。
ぎぎぎ、と音を立てて異形が停止し、砲身が軋む。
小石を投げた少年に、砲塔が向けられる。

「…墓に入れる肉片も残らぬぞ?それが分かっていて、私に石を投げたのかな」

痩せこけて、飢えた少年が石を投げたままの体勢で固まっていた。
そんな少年へ向ける視線は――冷え冷えとしたもの。

神代理央 >  
 
 
そして、砲声が響いた。
 
 
 

神代理央 >  
「……これに懲りたら、二度と風紀委員には刃向かわぬ事だ。
或いは、小石などではなく。より大きな力で私に立ち向かいたまえ。
今の貴様に出来る事は、小石を投げつけるだけ。
それでは、私には届かぬよ」

異形の砲撃は、石を投げつけた少年から少し離れた場所へ。
舗装もされていない道に、巨大な穴を穿った。

「暫く、支援活動の為の車も通れぬな。
まあ、頑張って歩く事だ。溝鼠らしく、這い回る様にな」

呆然と立ち尽くす住民達に、小さく肩を竦めてみせた後。
再び、異形達と共にゆっくりと歩きだす。

神代理央 >  
巨大な組織。強大な武力。ヒトとモノと金。
それらが揃っていても尚、未だ落第街と違反部活を滅ぼすには至っていない。
それはまあ、学園が本腰を入れていない…というよりも、そういった存在をも許容しているから、だろうけど。
これはある意味、実際の国家の問題に捉える事も出来る。

どんな超大国であろうとも、スラムだの貧民窟だのを全て"処理"する事は出来ない。
そもそも、この様な場所は社会を維持する為にも必要ではあるのだ。
だから自分も、強硬派ではあるが落第街の存在そのものを否定している訳では無いのだ。

「消えて欲しい、とは思っているが…難しいところだな。
愛憎入り混じるとまでは、言わないけど」

歩みを進めながら、小さく苦笑い。
地響きと共に進む異形の足音によって、そんな独り言は何処にも届かないだろうけれども。

神代理央 >  
やがて、少年の姿はスラムの闇の中へと。

ご案内:「スラム」から神代理央さんが去りました。