2021/11/03 のログ
ご案内:「スラム」に伊都波 凛霞さんが現れました。
■伊都波 凛霞 >
"いいでしょ、散歩くらい"
監視の眼がついてくるのを承知の言葉は、案外とすんなり通った
スラム近くでの、少女の"一つ目の仕事"を済ませ、襟元を正しながら言った言葉
怪訝な顔もされなかったのは、見張りにとって『その気持ちくらいは理解る』といった一種の哀れみだったのか、あるいは…
「──………」
スラムに吹き込む秋風も冷たくなってきた
落第街に住まざるを得ない者にとっては、厳しいだろう冬が近づいている
■伊都波 凛霞 >
「(柊さんは、大丈夫かな)」
監視の眼がある以上はこちらからの連絡は避けたほうがいい
けれど、気になる
彼の…自分への執着は他とは違っていた気がしたから
チクリと胸が痛む
彼の提言に乗った形、ではある
それでも、彼が何か色の違う感情を見せていたことには気づいていた
それが何なのか、具体的に理解っていたわけではないけれど
……利用、したような気持ちになって、気が重い
じゃあ、彼の気持ちを無碍にすることが正解だったのか、といえば…
「…むずかしい、なぁ……」
足を止め、天を仰ぐ
■伊都波 凛霞 >
秋風に雲は流され、晴天が広がる…秋晴れ
蒼く澄み切った空は、開放感すら感じるもののはずだ
同じ空でも、学園で見上げる空と、落第街で見上げる空は…違うものに感じた
可能性、自由、高み…
別の世界、羨望、届かないもの
こんなにも、イメージが違う
違反部活、犯罪組織は許されてはならない
しかし
"好き好んで犯罪を行い、落第街を根城にする者"と
"学園側で生きられず已む無く犯罪行為に身を落とし落第街でしか住めない者"は違う
…はじまりは、失態からだったけれど
その部分は、以前から結論の出ない部分として自分の中で燻っていた
■伊都波 凛霞 >
秋風が、纏められていない髮を攫う
棚引く髮の中に、キラリと光を反射する髮が一本
──蜥蜴に捕まった時に、彼らが見つけられなかった唯一の武装
ただ、強行を行えば、彼…羅刹は自分に有効な手段を知っている
一般の生徒を人質を取られた時にどう対応するか
こちらが彼との約束を破れば、彼も約束を守る理由はなくなる
「他の風紀の皆なら、ああいう時どうするんだろ…」
落ちていたドラム缶をぺっぺと叩き、座る
同僚達の顔を浮かべながら、同じ状況を簡単に想像してみた
……あれ、意外と人質とか気にしない人もいるかも
■伊都波 凛霞 >
「(……でも、当たり前か)」
一般生徒一人の命と、風紀委員が犯罪組織に捕縛されること
与える影響やリスクは…比較するまでもない
機械のように冷徹に、自身の感情こそを抑え込んで
時には非情に徹し、最善の行動を選択する
一般生徒一人を犠牲として、風紀委員は場を脱出
捕縛されていた間の情報を持ち帰り、犯罪組織を叩き潰しにかかる
結果、未来の犠牲や命が多く救われることになる
それ、出来る?
自嘲の笑みが浮かぶ
■伊都波 凛霞 >
シャンティさんを人質にしたあの流れは、明らかに自分に対して"効果があるだろう"と想定されていた
彼は、もしかしたら多少はこちらが食い下がると思ったのかもしれない
人質の無事と天秤にかけ、ギリギリまで、犯罪組織の条件など呑むものかと
多少なり、そういった反応を予想していなければ、あの見せつけるような状況は作らない
それを天秤にすら掛けず、すぐに折れたことは意外だったのだろうか
動転していなかったとは言わない
けれどすぐにでも、彼女を汚す行為を、傷つける行為を止めさせたかった
それについては後悔しているかといえば、まるでしていないのだから救いようがない
"約束"で縛っているのは、何も自分だけではないということ
───でも
■伊都波 凛霞 >
"次"も、同じことを繰り返すようなら、それこそ終わり
再び無関係な誰かを巻込み、似た状況が作られたなら…
………
『覚悟』をする"覚悟"は、胸に決めておく必要がある
ただし、もしそれを現実に行ったなら───事態が好転したとしても
…腕章を机に置くことにしよう
「……ふぅ」
小さく溜息を吐くと、見張りの構成員が端末を手にこちらに向かってきているのが見えた
「…あー…、はい、はい…。次のお仕事、ね……」
少しだけげんなりしつつも、立ち上がる
もう一度、天を仰いで見ると空はすっかり曇っていた
これだから、秋の空は
ご案内:「スラム」から伊都波 凛霞さんが去りました。
ご案内:「スラム」に黛 薫さんが現れました。
ご案内:「スラム」から黛 薫さんが去りました。