2021/12/20 のログ
■伊都波 凛霞 >
殺意と共に伝わってくるのは──
その刃と、己の技への、絶対の"自信"
その気概、剣士としての奥義に対する思いは
古流武術を嗜む少女、凛霞にも十分に理解できるところだろう
宣言と共に放たれるその奥義は、神速の連撃
起こりを見てから、ではまず対処は不可能
おそらく逃げすらも、間に合わない
──しかし
型破りでなく、小細工でなく、奇を衒わない、その攻撃は──
「───いくよ」
少女は、地を蹴り、前へ出た
そしてその神速の剣筋を、全て"知っていた"様に、紙一重で掻い潜る
時に制服の端を掠め、薄く頬を掠め、毛髪の数本を闇に散らして
その懐へと、飛び込まんと、前へ──
凛霞の中で芽生えつつあった、もうひとつの異能
目に見える全ての物体を三次元的に捉え
完璧に近い精度で相手の次の動作を高次予測する──無論、知っているからといってそれを避けられるのは、その身体能力の賜物だろうが
「…っく」
それでも、避け切れはしない
後に跳んどけば良かったかな、と一瞬迷ったものの
避けられる保証もなし、逃げられるかもしれない
だったら、急所さえ最低限躱せれば──ある程度その身に掠らせながらも、最短で最も安全な圏内(セーフティエリア)…懐へと辿り着けと
「っ──」
「せええええッッ!!!」
刃を抜けた先に懐に辿り着いたならば
裂帛の気合と共に地面を踵が叩き、肩と背中をド正面から相手の体に叩きつける、体当たり
──"入身・破山衝" 少女の持つ古流武術の技の中でも、零距離における威力に最も特化した、一撃
■ダスクスレイ >
「!?」
八連流星は見えぬ零番目の太刀が存在する。
それは『事前に斬ると宣言をすること』だ。
相手に只事ではないと警戒させ、判断を狭くする。
それが奥義の根底を支えることもある。
だが。
だが……その上で。
斬られれば骨まで断つこの刃の嵐に。
身一つで突っ込んでくるとは─────
「っぶ」
そのくぐもった声が遥か前方に置き去りにされ。
瓦礫に背中からブチ当たった時にようやく自分が無様な悲鳴を上げたことに気付いた。
わからない。
理解を超えている。
死ぬのが怖くないのか!?
「貴………様ッ……」
肺から空気が逃げていく。
誰一人として逃れた者のいない奥義を。
零距離(キルゾーン)に入ることで防いだ奴なんて。
私は……知らない。
この剣の記憶にも一人として存在しないッ!!
「くっ……!!」
足元を円形に刳り抜く。
この真下に地下水路があることは知っている。
私は捨て台詞すら置いていくことすら忘れて。
水路を走り。
逃げの一手を打っていた。
■伊都波 凛霞 >
───……
「……はっ、…はぁ……っ…」
流石に冷や汗ものだった
如何に刃が奇怪な動きをしようと、手にしているうちは人間の関節の可動範囲以上の動きは取れない
如何に切れ味鋭かろうと、その刃の刃渡りと刃幅以上に身を斬られはしない
と、自分に言い聞かせて突っ込んでみたはいいものの……
制服はあちこち斬られ見る影もないし、僅かに躱しが浅かった右の逆袈裟は危うく脚を持っていかれるところだった
浅く、とまではいかないくらいに刃の滑り込んだ感覚を感じた左腿からはぱたぱたと紅い雫が地面に落ちていた
しかし、それでも一手、確実に打ち抜く一打を決めることが出来た
この程度の負傷なら、このまま追い込むっことが出来る───はずだった
「…っな、…あっ!」
吹き飛んだ先の男の姿が円形に斬り裂かれた地面の穴へと消えてゆく
慌てて走り、穴を覗き込むと、そこには勢いよく流れる地下水路…
「──やられた」
風紀委員に事前に配置についてもらったのは、全て地上の逃走経路になりそうな場所のみ
…まさか、こんな逃げ方をするなんて
そして自然に流動的な水に流されていったのでは、サイコメトリーによる追跡も不可能…と
「……伊都波です。…はい、逃しました。……詳しいことは、後で…。
現地の風紀委員と合流して、帰還します」
ポケットから取り出した端末を繋ぎ、簡潔な連絡を済ませると、大きく溜息をついて、ずるずると座り込む
「……痛っ…いたた。…はぁ」
幾人かの風紀委員に続いて凛霞もまた、斬奪怪盗の捕縛にまでは至らず
少女にしては珍しく、やや悔しげな表情を浮かべていた
ご案内:「スラム」からダスクスレイさんが去りました。
ご案内:「スラム」から伊都波 凛霞さんが去りました。