2022/02/12 のログ
アーヴァリティ > 「ぁ」

口の中に食べ物の匂いと、同時に熱さが口の中で暴れだした。
熱さに、声にならない悲鳴をあげて手足をばたつかせようとするが、長く動かしていなかった手足は美味く動かず、藻掻いただけとなった。
自身の口がちぎれていることにも、特に気づいていなかった。
しかし、熱さにもすぐ慣れた。
熱さに混乱した状態が解かれ口の中に野菜炒めの味が広まった。
何がどう美味しいとか、どの素材の味がとか、そんな細かいことはどうでもよくて、ただただ

「ぉいしい」

顔をあげ、目の前の女性の微笑みに対してそうつぶやいた。

「もっとたべたい」

食への欲求。
三大欲求を持たずに生まれた身ながらその欲求を口にするほどに
久々の食事は感動的だった。

清水千里 >  
「あ、熱かったか?」

 さっきの異様な出来事に対して、悶絶してもがく少女を見て、今度は少し慌てる。
 外から見れば、さぞ滑稽に見えることだろう。だが、

『ぉいしい』
『もっとたべたい』

 そう、少女が欲するのを聞いて、笑みが戻る。

「ああ、どんどん食べていいぞ」

 食べさせてあげている、とか、作ってあげた、とか、そういう気持ちは一切なかった。
 もしかしたら少女が口にしない、あるいは、盆をひっくり返されていたかもしれない。
 そういう可能性は十分にあったのだ。
 でも、それでもよかった。うまくいかないかもしれなくとも、やらなければならないときというのはあるものだからだ。

 だからこそ――彼女が『おいしい』といってくれたことに、『もっとたべたい』といってくれたことに。
 清水は、ただただ食の偉大さというものを深く感じいるしかなかった。
 

アーヴァリティ > 食べてもよいと言われた瞬間、瞳に生命の灯がともったのが見て取れるだろう。

ーーありがとうーー

普段口にしない言葉であること、あまり口を動かしていない事。
それらの理由からだろうか言葉にはならなかったが、口の動きは確かに「ありがとう」と言っていた。

本当なら手を差し出してお盆を貰いたかったのだが、手はやはり動かない。
ならばと、触手を伸ばして盆を受け取ろうとするだろう。

ご案内:「スラム」から清水千里さんが去りました。
ご案内:「スラム」からアーヴァリティさんが去りました。