2023/06/26 のログ
ご案内:「スラム」に照月奏詩さんが現れました。
照月奏詩 >  闇の中、スラムの街中をマスクを付けた男が歩く。
 歩いている男を気にする男などこの街にはいない。大体が下を向いているのだから。

「……まだこっちまでは来ていないか」

 最近、学生の流入が激しいと聞いた。それもこちらに流れ着くわけではない。興味本位でやってくるという話だった。
 自分達の組織としてそれが正しいというべきか間違っているというべきか……正直判断に困る所はある。
 だから実際に街に出て調べてみよう。それが今回の目的だった。それによって起きるこの街の影響を。
 しかしふぅと息を吐く。

「下手に違反組織や風紀が暴れるよりやりにくい」

 力には力で持って制圧すれば事も無し。
 しかしこういったケースの場合力で制圧するわけにもいかない。はてさて、何か問題が起きていたとしてどう対処するべきか。

照月奏詩 >  とはいえ、中々見つからない。それも当然と言えば当然だ。大部分は問題を起こさず終わるかもしくは来た事すらわからないままに闇に消えていくのだから。
 前に偶然話題に出た。その程度の話だった。そう考えても問題はない。
 しかしだからといって放置出来る案件でもない。自分達はこの街―つまりは、掃き溜めとしてのこの街―を守るのが仕事。言ってしまえばほいほいと容易に来れる場所になって表と完全にくっ付いてしまうというのはそれはそれで問題なのだから。

「……囮、って意味じゃ十分だとは思うが」

 実際、自分はこの街にしては綺麗な身なりにしてきた。つまり同じ表から流れてきた奴からしてみれば話しかけやすい奴。そしてそれを食い物にしているような奴らからしてみれば良い的になるようにしている。
 その状態でこのスラムを練り歩いているのだ。もしどこかで自分を見かけたのならコンタクトがあるかもしれない。
 無いなら無いで自分の考えすぎだったというだけの話だが。

照月奏詩 >  
 適当な壁にもたれかかって作戦を考える。
 そもそも、なぜ興味を持ってここにいきなり来るような事が起きた? 基本的に表の方が面白いはずだ。
 時々紛れ込むのはいるが……やはりその類だったのだろうか。
 それが偶然目立つ所でここの住人に見つかった。だから、騒動になって偶然耳に入った。それが1番落ち所としては自然な構図だった。

「それなら助かるんだが」

 1人愚痴る。実際ホントに流入が始まっているとなると色々と面倒極まりない事態だ。
 そもそも解決方法が思い浮かばない。流入している元がこの街の話を聞いての興味本位では、自分達で止める事等出来ない。
 それこそ風紀に取り締まりを強化してもらうしかない……が、それは自分達の首も絞めるわけで。

ご案内:「スラム」にアリシアさんが現れました。
アリシア >  
一人の少女が街を歩いている。
ただの街ではない。
公式発表で一部、治安の悪化が認められる歓楽街の一部区域。

落第街、そのスラム地区だ。

どうにも身綺麗な格好をした男性に近づいていく。
彼がこの地区に迷い込んだのなら、大変なことだ。
その一方で、仮面をしており只者ではない空気を持っているのもわかる。

「日本語は通じるか?」
「あまり安全性の高い地域ではないが、大丈夫だろうか」

そこまで言って自分の衣服を見る。
闇に染まるような黒の衣服。しかし裏の匂いもしない身なり。

どう考えても私のほうが危険そうに見える。

「私は……その、大丈夫だが…」

照月奏詩 >  
「……あー」

 予想外の展開だった。まさか身を案じられるとは思っていなかった。
 しかし相手の恰好はどう見ても裏の人物というわけではない。
 能力は使わない、素の声のまま少しだけ低めの声で話す。

「俺も大丈夫。少しだけ迷子になった以外は」

 と少しだけ肩をすくめて見せる。
 マスク越しで少し大人しい青年……を演じておく。

「自分は大丈夫って事は、君は……風紀とかそういう人ではないか。服装が違うから。じゃ、この辺の人か?」

 裏の人という言い方を避けそう問う。
 とはいえ、相手も相手でこの辺の人間ではない事など見抜いている。なにせ服装が綺麗すぎるから。
 だから逆に所在が分からなかった。もし興味本位で覗きに来たという可能性もあるが。

アリシア >  
「この辺りは暗がりは避けたほうがいい」
「昨日は一般生徒がリバティストリートで“カツアゲ”されたという話もある」

少し発音が怪しいカツアゲの部分。

「テルミナスセブンのスティールバイソンとモールディングベアが動いているんだ」
「大丈夫……ならいいんだが」

そうすると自分に言及が行く。
雨が降ったら水たまりができるというくらい当然のことだ。

「異邦人街の人間だ、この辺りで……その」
「怪異の気配を感じて来ている」

……胡乱な人物に見られそうだ。
もし自分が小さな子にこんなことを言われたら、
迷わず追い返すか正気を疑うだろう。

ううむと悩む。

照月奏詩 > 「この街じゃよくある事だな」

 カツアゲと聞けば少しだけ笑う。別に何時もの事だ。
 とはいえと少しだけ眉を潜める。

「なるほど、テルミナスセブンか」

 話は聞いた事がある。本当に噂程度だが、それなりに強力な集団……だったはずだ。
 とはいえ大きな情報はない。違反組織とか違反部活というよりは文字通りの集団……というよりは集まり程度だろうか。
 噂になったのはその事件が原因かと1人で納得する。
 しかし怪異と聞けば首を傾げる。

「怪異?この辺りで?」

 自分達ですら掴んでいなかった情報を聞いて首を傾げた。

「……それはそれなりに噂になっているレベルなのか?」

 彼女が特殊な立場の人間で感知しやすいだけなのか、表で噂になっているのか。
 それが彼にとっては重要だった。胡散臭いとかそういった考えはない様子で。

アリシア >  
「よくある事か……この辺の大通りでもそんなに犯罪が横行しているのだな…」

考え込む。
敵対的怪異を討伐しながら人間社会に馴染めとしか言われていないが。
悪を見過ごすのは良くない気もする…

「ああ、暴力で無辜の民を傷つけているらしい」
「怪異は………」

手のひらでサイズを作って。
150cmくらいの人型を手で表現する。

「ひょうすべと呼ばれる怪異がこの辺りにいる」
「この辺りでは人形供養があまり行われていないらしく」

「その中のボロボロになった人形の一体が怪異化して人を襲っている」

と、言ってから。

「この辺りの人間が真っ白いヒトガタを見たと言っている」
「十中八九ひょうすべだろう」

携帯デバイスを見る。
布を被せられている呪殺された住民の写真。
表情を歪めた。

照月奏詩 > 「むしろこの辺の大通りなんて、無防備で歩いていたらカツアゲしてくれと言っているような物だ」

 色々な意味で問題が集まるのがこの辺りなのだから。
 考える素振りを見せていれば真面目だなと笑って。

「ひょうすべか」

 彼女の話を聞く、そして見せられた死体を見て。
 彼女に目線を向ける。

「本当にこれが怪異の仕業なのか?普通に首を吊らされてるだけにしか見えないが」

 表情をゆがめている彼女と対象。こちらはいたって自然な顔で逆に問い返す。それが彼女にどう見えるかはわからないが、少なくとも動揺はしていないように見えるだろうか。
 それは同時に死程度で感情が揺らがない人物という意味でもある訳だが。
 そこまで聞いて少し考えて。

「……もし本当に怪異なら。あまり良い事態とは言えないな。風紀も何もないこの辺りじゃ、怪異に抵抗できない存在が多すぎる。もしなんとかできるなら道案内程度はする。この辺りは良く知っているからな」

 これは組織としても明確に敵と言える。もし緊張状態の組織同士の間で怪異が原因で上が死んだら?考えただけでゾッとしない。
 だからそれを調査に来たという彼女に協力する姿勢を見せるだろう。

アリシア >  
「そうなのか………」

自分も気をつけるべきだな、と真顔で受け答え。

「彼女は……サエコは。標準的なこの街の住民だった」
「決して希望に満ち溢れていたわけじゃないが」

「自殺するほど明日に絶望してもいなかった」

死体に慣れているのか。
彼に道案内を頼んでもいいのかどうかを熟考して。

「すまない、道案内を頼む」
「この辺りにあまり人通りのない十字路はあるだろうか」

「ひょうすべの別名だが……ガアタロの辻住まいという言葉もある」

頭を下げて頼んだ。
もう彼女のような犠牲者を見たくない。

照月奏詩 > 「自殺じゃない」

 とその説明を遮って。

「例えば敵対組織のナワバリにこうして捕まえて、眠っている間なり殴って抵抗できなくさせて第三者が首を吊らせておく。顔を隠しているのは想像しやすいからだ……次はお前の番だと。そうすれば今のお前みたいに相手に恐怖を与えられる」

 実際、相手に恐怖を与える為に木々に死体をぶら下げておいたり、串刺しにしたり。そういった事は普通にやるのが違反組織だ。
 だからそういった類の可能性はないのかと改めて問い直した。
 しかし案内を頼まれれば。

「返事は歩きながらで良い。怪異じゃない可能性もない以上はどちらにしても調査する……それと、人通りの少ない十字路なんて、この辺りじゃありすぎて候補が絞れない。まずはその写真の現場に行く。そこからはお前の気配便りだ」

 といって歩き出す。今度はさっきまでの囮モードではなくしっかりとした警戒モード。
 ただのマスクを被った青年という雰囲気は消え、周りからもカツアゲなり獲物なりとは思わせない雰囲気を放つ。 

アリシア >  
その言葉に振り返った。
人の悪意に触れるのは初めてじゃない。

しかし……祝福されて生まれた命が。
そんなことをするのかという驚きと悲しみがあった。

「こんな悲しみが続けば、人は星空を見上げることを忘れてしまう」

眉を顰めてその言葉を口にした。

「わかった」

そして歩き出す。
知人が殺された現場に行く。そういう気まずい沈黙がある。

現場に行くと、既に死体は片付けられていた。

「……怪異の気配がない」
「どういうことだ、じゃあ、本当に」

「サエコは人の悪意に殺されたのか……?」

心がざわめく。
つまりヒトガタなんていなくて。

混乱して鼓動が早鐘を打つ。

「姉様は人を守れと私に言ったぞ……」

照月奏詩 > 「その星空を全員に見せたくない強欲な奴が少なからずいるという事だ」

 少なくとも相手に見せたくない。だからこそ自分の下につけと、お前らを殺すと。
 そういう宣戦布告として運悪く見出されたのがそのサエコという存在……そういう可能性がある。
 現場まで案内すれば一応周囲に警戒をする。しかし彼女が調査を終えて、様子がおかしい事に気が付けば。

「結論は出たみたいだな。動揺する気持ちはわかる。だが……話をする前にさっさと離れるぞ。もし本当に誰か組織がやったなら。ここに長居するのは不味い」

 もしこれが怪異の仕業じゃないのなら……あの死には何かしらのメッセージがある。
 その現場に部外者である自分達がいるのは非常に不味いのだ。しかもお互いにこの街では目立つ格好だ。遠目からでもわかってしまう。
 だから動揺しているその手を引いて離れようとするだろう。

アリシア >  
「どうして………」

精神が揺れる音。
心に投げ込まれた石。
広がり続けるものは、波紋。

手を引かれながら去っていく。

後日、落第街の壁に彼女を殺した者の犯行声明と
組織としての明確な意思表示が行われた。

 
何もかも茶番に思えた。

ご案内:「スラム」からアリシアさんが去りました。
照月奏詩 >  
「……人を1側面だけ見て正解だと思うな。俺はそうして妄信した結果……全部を失った奴を知ってる」

 手を引きながら、彼女の声を思い出す。人を守れと言われたという声を。

「お前の言う姉が守れといった人はただの人間じゃない。そうして色々な面を見てそれでも守りたい人間。それを守れといった……俺はそうだと思う」

 動揺した彼女の迷いを少しでも振り払うように。そう話しながら手を引いて行っただろう。
 その後どうやって彼女が戻ったのか。それはこの街の闇だけが知る。
 しかしその後、犯行声明が出されればやっぱりかと反応をしたことだろう。だが、裏切りの黒はその程度では動かない。
 この街において威嚇行為としての殺人程度は”日常”の出来事なのだから。
 その心情を置き去りにしても、この街の”日常”は過ぎていく。

ご案内:「スラム」から照月奏詩さんが去りました。