2023/07/17 のログ
ホロウ > 「そもそも私は本当に人間になりたいのでしょうか」

私は機械でありながら人間に近い感性を持っている。
しかし、だからと言っても人間を目指す必要はあるのだろうか。
原点回帰ともいえる疑問が少女に巡る。
任務遂行に必要と判断されて与えられた頭脳(AI)と人型の義体。
それは果たして本当に人間に成るのに十分かつ差し支えない要素なのか…

「考えるだけわからなくなりますね…」

瞳の中の十字もすっかり動きを止め、駆動音も心なしか弱まっている気すらした。
再大きなため息を吐き気を紛らわせる為にその場をぐるぐると回り始めた。

ホロウ > 「…現時刻13:00。魔力残量100%。機体に異常なし」

無駄に時間を過ごしたという後悔に似た感覚と、答えの出ないもどかしさ、逃げに走った思考への追及が少女の中に渦巻く。
感情をまだ多く知らぬ少女を蝕む悪感情にあり得ない筈の嘔吐感と言える感覚すら抱きながら、過補充となる前に再び飛び立とうと腰のジェットを展開する。

(…飛んで、どうするのでしょうか)

これからまた惰性のままに観測をし続けるであろう自身にどこか呆れと失望の入り混じった黒い感情すら巻き起こる。
丸一時間夏の日差しを浴びても汗一つかかないこの身は本当に人たり得るのかすらもわからないのに、意味のあるのかわからない、上手くいくかもそもそも可能なのかもわからない模倣を続けるのは本当に意味があるのか。

「いえ、答えを出すにはまだ早計です。思考と試行を続けましょう」

無駄に考えるだけ足と翼が重たくなるだけである。
そう重たい思考を振り払えば、少女は赤光と共に飛び上がる。
立鳥跡を残さず。重たい思考を振り落としたそこには、少女の居た痕跡など何も残されていなかった。
まるで、この時間は何物でもなかったかのように、何もなかった。
そのまま少女は学生街とは逆方向へと飛び去って行った。

ご案内:「スラム」からホロウさんが去りました。