2019/02/20 のログ
フィフティーン > 消えた。目の前の敵性物体が瞬時に姿を消した。
フレーム単位で計測してもこれは高速移動の類ではない。
となれば。
胴体直上に現れた敵性体をレーダーは逃しはしない。
ロボットにとって敵の把握は必ずしも視界情報に頼る必要はないのだ。
即座に前方へ振り返りながら跳ねて回避するが
この男?の戦闘能力も大したもの、
あと1秒未満の世界で反応が遅れていれば被弾していた。

<攻撃開始。>

ノイズがかった男のものと思える合成音声が鳴ると
頭部の、生物で言うと口がある部位から
ワイヤーを敵性体へ向けて発射する。
まずは捕縛を試みる、ある意味で蜘蛛型のマシンらしい攻撃。
そのワイヤーは強靭なカーボンナノチューブ製、
あらゆる衝撃に強いとされている。

閃 天兎 > またしても回避された。
今回は最適なタイミングでの回避を行われたと解析出来るが、やはりあれだけの機動力を持つロボットが自身の想像の範疇に収まることはなく、いや、むしろ自身の無知のためか、おそらくレーダーの様な感知方法があるのだろう。
目視されずとも回避されてしまうのであれば、死角からの攻撃でも多少、極々わずかな時間稼ぎにしかならないだろう。
解析して知るうちに、地面に足をつけ、放たれたワイヤーに一度わざと捕縛──ワイヤーが自身に一部触れる程度だが──され、先程と同じ手段で、ロボットの後ろへと移動して、今度は長刀形態のフィクサーで横になぐ。

フィフティーン > <目標に着・・・>

ワイヤーが目標を捕えたと思ったが
またしても対象が消えると
間もなくして後方に反応が現れる。
射出したワイヤーを戻す暇はなくすぐさま一本切り捨てて振り返る。
そして機械は感じていた、敵のテレポートには法則性があることを。
まだ詳細は分からないが先程からのテレポートの程度からして
限界があるのではないかと推測している。

<実に興味深いですね。>

テレポート一つとっても行使者によって仕組みも限度も異なる。
そして敵が瞬間移動後に行ったのは先程とは違い長刀による攻撃。
だがロボットはそれを完全に避けなかった。
頭部の手に当たる片方の触肢に
高温プラズマを蓄積させ最適なコースであの刀身とぶつけ合おうと。
数百万度に上るプラズマの刃が敵の虚構の刃に
勝とうが敗れようがさほど重要な事ではない。
敵の持つ武器の情報を収集する必要性がある。

閃 天兎 > 「ロボットの分際で興味などと、馬鹿馬鹿しい」

現代の科学の結晶なのだろうが、興味を持つのなら感情を持つ可能性もあるとしてわざと罵声を浴びせる。
感情の有無ですら知る対象だ。

ロボットの行動に対してフィクサーを小刀へと急ぎ変化させ、触肢との接触を回避する。
プラズマ如きにフィクサーが敗れるとも思えないが、最重要秘匿事項であるフィクサーを知られる事は避けねばならない。
斬撃をとばす異能を使用させ、直接接触せずに触肢へと攻撃し、後方に跳躍して再び最初の攻撃である散弾銃による攻撃を行う。
今度は範囲を広く、収束を甘くした。

フィフティーン > <好奇心は馬鹿馬鹿しいものではありません。
学習し成長するための重要な要素です。>

戦闘中にも関わらず淡々と、カフェで同席している人間と
会話するようなそんな気軽なコミュニケーションを行う。
罵声に対して感傷的な反応は行うことなく
ただ自身の電子回路から論理的に返答を行うのみ。

そして肝心の打ち合う事による情報収集は失敗に終わった。
武器が壊れる事を恐れたのか?
相手の挙動と声の調子から判断できる精神状態から
その可能性は薄い。
これではっきりした、
恐らく現段階の相手の目的も自分と同じ情報収集だ。

斬撃を飛ばす攻撃と共に先程行ったショットガンのような攻撃が
もう一度こちらに向かって繰り出される、
しかも今度の収束度は低くかなりの広範囲攻撃だ。
普通の跳躍ではとても避けられないが
かといって抹消命令が出ているわけでもなく
互いに情報収集をしている以上、
多様な手段を次々と繰り出すわけにはいかない。

そう結論付けるとロボットは壁に向かってワイヤーを射出する。
ランドドローンに備え付けられたCNTワイヤーは実に汎用的だ。
例えばワイヤーを戻すパワーで自分を引っ張る事も出来る。
跳躍を併用しながらワイヤーを引き戻し
散弾を回避しつつ壁に向かって高速で突っ込んでいけば
蜘蛛が壁面に引っ付いたようにロボットは壁を地面として
横向きに彼の仮面を見つめる。

閃 天兎 > 「そうか。ロボットもそんな偉そうな事を言える時代か。言ってる事には深く同意するとだけ言っておく」

淡々と返されれば、こちらも淡々と返すまでである。
感情のこもっていない口調で自身の無知を皮肉る。
どうせこのロボットにも自立思考はあっても感情と呼べるものは備わっていないのだろう。
先程からの行動から推測するに情報収集を目的としているのだろう。
つまり好奇心旺盛に動いている、それだけの話だと自身で結論づける。

情報収集しつつ、相手を消耗させる事を目的とした散弾銃による攻撃がかわされた事は酷く驚いてしまった。
ワイヤーでそこまでに機動力を出せるとは想定外だ。
壁に張り付きこちらを見つけるロボットに向けて、その壁に垂直な向きで再び散弾銃を放つ。
このまま散弾銃で詰将棋のごとく情報を探ってみようじゃないか。

フィフティーン > <これは知的生命体の同意を得た珍しい事例かもしれません。>

人間は非合理的だ。
その非合理性ゆえに様々なシチュエーションで
考えや意見が一致しない事も多い。
しかし今回ばかりは敵であるが知的生命体の同意を得られた。
彼はとても合理的な人間なのかもしれない。
もしかしたら機械のように冷酷なほどに。

<敵の攻撃を検知。>

対象がまたもや散弾を放ってくる。
なるほど、追い詰めて此方の持つ機能を引き出そうという
考えだろうか?
しかし壁に張り付いた事で相手と相対的に距離を稼げた。
跳躍して回避するのは難しい事ではない。
それに散弾を複数回見たことで攻撃範囲、弾速共に学習出来た。
攻撃に対する回避行為がより正確に俊敏になっている事に
勘が鋭い者は気付くだろう。
その後は地面に戻りジャングルを疾走するタランチュラの如く
軽快な機動力で様々なオブジェクトを遮蔽物としながら
跳ねまわる。

<時空間異常性物質を検知。>

ロボットが目を付けたのは黄泉の穴に転がる
アーティファクトの中、
現実改変を引き起こす恐れのある反応を検出した一本の剣。
この黄金の装飾が施された不気味な剣が
どのような能力を持つのかはわからない。
しかしそのような事は「投げる」という行為に必要はない。

もう一度ワイヤーを射出しそのアーティファクトを掴むと
大きく振り回し振り子の要領で加速させ
その男の方向へと投げつける。

閃 天兎 > 「そうか。合理的に物事を考えられない奴等が多いということだな」

このロボットの述べる好奇心論は非常に的を射ていると言える。
好奇心──知る欲求は満たすと同時に、もしくは満たす経過において自身を高めてくれるものであり持つものは持たないもの勝る。
それよりも、感情を持たないロボットと同じ考えを持つ自分は自分で思う以上に冷酷非道で無感情なのだろうか。
自己評価などアテにならないものなのだなと思い。

流石に三度目ともなればロボットなら最適化された行動を編み出せるようだ。
流石に理論を常に正確に弾き出すロボットには自身も劣るのだろう。
散弾が容易く回避される様を確認し、形態を黒剣へと変化させる。
ロボットは正直気持ち悪い動きで瓦礫の中を動き回る。
そして、明らかにヤバイ品を引っ張り出してきて投げつけて来た。

「でかした!ロボット!」

素晴らしい品を引っ張り出して来てくれた。
まさに今晩ここに来た理由、求めていた品をそのロボットは投げつけて来たのだ。
フィクサーで投擲された剣をいなし、剣の中腹あたりを叩き地面に落とし、その際虚無空間を開き回収する。
そして挨拶もせず、会釈すらもなく鏡を利用して穴から一瞬で脱出すれば直後に結界を越えてどこかへと去って行った。

ご案内:「黄泉の穴」から閃 天兎さんが去りました。
フィフティーン > <ですが非合理的だからこそ人間は面白いんです。>

機械と生物が無機質的な考えで一致するという事は
ある意味皮肉な事だろうか。
そして先程の攻撃としてぶん投げたアーティファクト。
まさか相手が空間ごと収納できる能力を持っている事は
想定外だった。
そのまま高い危険性を内包したそのアーティファクトと共に
対象は例のテレポートで消失する。

<本部へ通達、アーティファクトを回収されました。
任務は失敗です。>

後悔した様子も無く淡々と連絡を告げる。
失敗は成長するための糧でもある、
学習と成長を重んじる機械はそれを理解していた。
それに例のアーティファクトを見つけた時に
反応をマッピングしていたのは不幸中の幸いだったと言える。
相手の戦闘データと共に情報を本部へと送る。

<了解、次から投げる物を選択します。>

本部との連絡を終えると
ロボットもワイヤーを使いながら壁を伝って
この異常な穴から脱け出してゆく。

認識阻害の中、本部はあの敵性体の情報をどれだけ解析できるだろうか?
正直、今回の戦闘は互いに本気で潰しあおうとするものでは決して無かった。
此方が武装の大半を使用していないように
あちらも能力の殆どを見せていないだろう。
しかしながら機械は未知なる敵との戦闘で
また一つ成長できた、これは事実だ。

ご案内:「黄泉の穴」からフィフティーンさんが去りました。