2021/08/26 のログ
ご案内:「黄泉の穴」にフィーナさんが現れました。
■フィーナ > 「さて、と」
魔術バリケードをまた不法侵入して、黄泉の穴を覗く。
強固に張られた障壁を眺める。
あの少女と出会って、色々な知見を得た。
出会わなければ、思うがままに貪って、思うがままに力を振るっていただろう。
今、そんな事をする気は起きない。迷惑がかかるから、と。私の中の何かが訴えるからだ。
ご案内:「黄泉の穴」に若杉 浜三郎さんが現れました。
■フィーナ > 懐から、フォルダを取り出す。
その中から、複数の紙を取り出す。いくつもの術式を描いた、スクロール。
多重の、強固な結界を張るための。
以前、ここの結界を解析して、自分なりに改良し、多重にし、強固にしたもの。
それを、今、ここで張ろうとしている。
被害を増やさないために。
■若杉 浜三郎 > 「旦那、この辺であっしはそろそろ…」
「おう、ありがとな。気を付けて帰れよ」
角刈りの男が、障壁に近づいた。
猫背の男がすたすたと歩いて離れるのと対称的に、その歩みは重く、何かを覚悟したような足取りだ。
と、その歩みがぴたりと止まる。男はまるで今気づいたように、少女に向かって声をかけた。
「おい、嬢ちゃん。この辺は危ないって聞くぞ。
自由研究にするには過激な場所だと思うんだがなあ…」
そう言いながら、わずかに身を屈め、即座に踏み込めるような姿勢をとる。
見た目では判断できない化物が無数に存在するのがこの学園だ。警戒はし過ぎるということはないばかりに。
■フィーナ > 「…あぁ。ちょっと探しものをしているものでして」
振り向き、答える。
それだけすると、興味がないように自分の作業に戻る。
穴の周囲に先程取り出した紙を置いていく。丁度今ある障壁を覆うような形で。
■若杉 浜三郎 > 「探し物、かい。俺も探してる物があるんだよ。
この穴の奥に、俺のシマを荒らしたやつがいるって聞いてな。
一つぶちのめしてやろうと思ってたんだが…嬢ちゃんは奥に用はないのかい?」
障壁を覆うように紙を置く少女。男にはまるで意味がわからない謎の文字の羅列が刻まれたそれに魔術的な意味があるとは思わず、好奇心から一枚を拾い上げてしまった。
■フィーナ > 「………まぁ、奥に用はあるっちゃあるけど…あんた、余計なことしないほうがいいわよ。その紙切れ1枚がズレたおかげで大量の人間が死ぬかもしれないんだから」
拾う音に気付き、睨みつける。
術式は繊細なのだ。複雑なものであればあるほど、少しのズレが大きな剥離へと繋がり、大災害をもたらす。
ここで起こったことのように。
「自分の食い扶持荒らされて気に食わないのはわかるけど。それで自分の食い扶持消し去ったら元も子もないでしょう?」
■若杉 浜三郎 > 「……それは悪いことしたな。俺はこの島に来たばっかりで、ニュースでしかこの辺りを見たことがなかったんだ」
拾った紙をゆっくりと元の位置に戻し、少女に視線を戻す。
手足に刺青を施していることから、異界からの人間だろうか。
だとするなら、魔術に詳しいかもしれないと思って男は質問をしてみることにした。
「なんだい嬢ちゃん、見た目より随分道理を分かってるみたいだが…
もしかして同業者かい?それともこの穴ができちまった原因の関係者か?」
■フィーナ > 「どちらもノーよ。その同業者に利益供与している身ではあるけどね。」
戻された紙を、正確な位置に戻す。
「そういえば、シマを荒らされたって言ってたわね。何があったのかしら?」
興味本位。同業者でなくとも、そちら側に身を置く者として、知ってはおきたい。
■若杉 浜三郎 > 少女の口調は、見た目からは想像できないほど大人びている。
大人にならなければなかったのか、それとも大人なのか。
その疑問を横に置いて、少女の質問に男は応えた。
「どこぞのマフィアの鉄砲玉が、組がケツモチやってる店に特攻してきやがった。
被害を聞いたら呪いがどうたら魔術的にどうたらとかで、業者を呼ぶまで当分営業できないと言いやがる。
それで鉄砲玉に呪いとやらを洗いざらい吐いてもらおうと思って場所を探ってみたら、この穴の中だと聞いたのさ」
ふう、とため息を一つついて近くにあった大きな石に男は腰掛ける。
「それで入ろうと思ったら、嬢ちゃんがいて声をかけたってわけだ。
そっちは何してるんだ?魔術がどうたらこうたらって奴か?」
■フィーナ > 「まぁ、そんなところですね。目的の為に必要な書物がここにあるはずなので。あと、一応言っておきますけど。多分その鉄砲玉さんめちゃくちゃデタラメ言ってますよ…この穴、封印されてるんで簡単に出入り出来ないはずなんですけど」
そも解呪ぐらいならそれが出来る能力を持つ奴を呼べばいいだけなのだ。
まぁ、それが出来ないということなのかもしれないが。
「貴方にその手の知識があるのなら話は別ですが…無いのなら骨折り損のくたびれ儲けですよ。多分どれが何なのかわからないし、厄介なのが出てくるでしょうから」
■若杉 浜三郎 > 「そうなのか?情報屋だの占い屋だの色々聞いて回ってみたが、どの連中もここにいるとしか言わないもんでな…
封印されてるのも聞いてはいたんだが、専門家がいないと開けられないぐらいなら…」
顎に手をやり男はしばし考えて、やがて閃いたように目を見開いた。
「いや待て、鉄砲玉を捕まえさせないためにここに放り込んだのかもしれねえ!
嬢ちゃんは魔術を知ってる。そんな嬢ちゃんが言う『厄介なの』はまともな人間ならコンクリで固めて海に投げ込まれるようなもんだろう。
鉄砲玉になるぐらいの人間なら、まともじゃなくてもそんなに強くはないはずだ…」
魔術の知識がなくとも、ある程度の推測ならば状況から考えることができる。
男は一つ大きく頷いて、少女に近づいた。
「ありがとうな、嬢ちゃん。もしこの通りなら、礼をしなきゃいけねえ」
■フィーナ > 「…まぁ、参考になったのなら、良かったです」
なんかすごい話が突飛になっている気がするが、まぁ突っ込まないでおこう。それこそこんなところに放り込むよりコンクリ詰めて沈めた方が手っ取り早いだろうに。
「…さて、こんなものですかね」
紙を配置し終え、術式の構築に入る。
刺青が、青白く光り始める。
■若杉 浜三郎 > うんうんと一人納得したように頷く男は、やがて目の前で輝く少女を見て驚いた。
魔術に未だ慣れていないというのもあったが、その刺青が光を放ったのが一番大きかっただろう。
「その刺青…趣味とかじゃねえのか…異世界の人間ってやつはすげえな…」
仕事柄そういった人間を見ることが多かっただけに、実用的な刺青を見た驚きはかなりのものだったようだ。
魔術の準備を始めた少女を、男はただ茫然と見つめていた。
■フィーナ > 「………よし」
術式が構築され、結界が張り巡らされていく。
元ある結界を覆うように。
そして、見知らぬ男性と、自分が隔絶される。
「一応聞いておきます。その人の人相とかあったりします?」
■若杉 浜三郎 > 男にはまったく感じ取れないが、少女は何かを無事に終わらせたようだ。
そして、自分と少女を隔てる何かを感じ取ったように立ち上がると、一歩進んで境界を調べようとする。
「あ、まあ写真ぐらいなら念写で撮ってもらったやつがあるが…
…こんなのでいいのか?」
少女に問われた男は境目に近づけた指を引っ込めて、スーツの裏側から一枚の写真を取り出す。
この時代には珍しい白黒の写真は、念写の異能を持った人間が作ったもの。
目つきの悪い男の顔が、はっきりと正面から映し出されていた。
少女が求めるなら、遠慮なく渡してしまうだろう。これはコピーなのだから。
■フィーナ > 「……あぁ、結界あるので触らないほうがいいですよ」
結界の反対側に居る男に言う。一応攻撃的なモノは積んではいないが、わからずに触れれば突き指したり骨が折れたりするかもしれない。
「ま、見かけたらとっ捕まえておきますよ。見かけたら、ね。」
本命の、元ある結界に触れる。
解析した術式を詠唱しながら、スブリ、ズブリ、と、結界を越えていく。
■若杉 浜三郎 > 「そうなのか?こう見えても身体は丈夫で…
……いっ、いってえ……!」
物は試しと右手の中指を思い切り突き出した男は、すぐさま返礼を受けることとなる。
跳ね返った衝撃は男に余すところなく伝わり、ぼきりと指が折れる音が響く。
「お、おう……ありがとな。
落第街で浜吉組って聞いたら事務所の場所はすぐ分かるからよ…」
しばらく痛そうに右手をさすっていた男だが、やがて何もなかったかのように右手を軽く振る。
するとそこには、すっかり元通りになった中指があった。
「嬢ちゃんに任せるのは男として恥ずかしいが…餅は餅屋って奴だな。
じゃあな嬢ちゃん!わざわざありがとうな!」
そうして少女が穴に入っていくのを見届ければ、男も立ち去ることだろう。
■フィーナ > 「…礼なんていいのに」
そう言って、全身を沈める。
穴へと落ちる。眼前に魑魅魍魎が跋扈する異界が見え隠れする。
杖を構え、そのまま落ちていく。
ご案内:「黄泉の穴」から若杉 浜三郎さんが去りました。