2020/07/30 のログ
■山本 英治 >
「……へへ」
素直じゃないな、羽月さん。
だけど、そういうのが羽月さんらしい。
木皿に乗った桃山を一つ口の中に放り込む。一口だ。
アイスティーを飲めば、乾きが潤って甘い香りになる。
「俺だって感謝しているさ」
誰に、とは言わなかった。
俺もまぁ……素直じゃあないんだ。
その後は、俺は普通に敬語に戻った。
普段通りに話して。出村の遺体とヒメを撃った銃を受け取り。
それらを空間から引き出す方法を聞いて。
感謝の言葉と和菓子を口にして。
それでも。俺は俄然、羽月さんを好きになった。
そういう日だ。
■羽月 柊 >
「……あぁ、山本。」
青年の帰り際に柊は口を開いた。
思いだしたように。
「…君は、慰霊祭には、行くのか。」
■山本 英治 >
「はい」
振り返って、答える。
羽月さんの顔を見ながら。
「行きますよ、親友を……未来を想う大事な行事なので」
■羽月 柊 >
「そうか、君は親友想いだな。」
男はそう言うだけだった。
英治が去っていくのを見送る。
己の異能の件はこれからだ。
条件にしても、これから逐一調べて行かなければならない。
こういう時、学園に居れば少々楽なのかもしれないが…。
そうして、英治が見えなくなった後で、
男は右耳のピアスを外し、手の平の上に乗せて桃眼が見つめる。
「……全く…山本の方が、ずっと強いな。
………今年は、行かねばなるまいか…――死を、見すぎた。」
未だに彼女の死を認められなくても、立ち止まってはいられない。
自分が取りこぼした命を、見送る為に。
ご案内:「研究施設群 羽月研究所」から羽月 柊さんが去りました。
ご案内:「研究施設群 羽月研究所」から山本 英治さんが去りました。