2020/09/12 のログ
ご案内:「廃研究施設」にアストロさんが現れました。
アストロ >  

ざあざあと音を立てて雨が降っている。

 

アストロ >  
その飛沫の中に、前触れ無く少女が現れる。
少女がくるくると指を回すと、雨粒が少女を避けるようになる。

「……ここにあったのか」

少女が見上げているのは、閉鎖された研究施設。
入り口に立入禁止の札が立てられ、敷地を囲うようにテープが張られている。
ぱっと見、すでに稼働している気配はない、旧い施設だ。
当然何の物音もせず、誰かが居る様子も感じられない。

ただ、監視カメラは動いているようだ。
つまり……この施設は未だ通電している。

アストロ >  
少女は知っている。

この施設は異能を研究する施設であること。
異能を人体に"付与"するという技術を開発していて
非人道的な実験の数々を行っていることを。

少女は覚えている。

孤児院からこの施設に買い取られ、体を好き放題にいじられたことを。
自分が一度死んだことを。そしてゴミとして捨てられたことを。
自分の知る人も連れてこられていたことを。

アストロ >  
少女は知っている。

この施設の上側はダミーであることを。
今見ている場所が正しい入り口ではないことを。

少女は気づいている。


恐らくここは、今も秘密裏に稼働していることを。


「……」

仲の良かった誰かの姿を思い浮かべる。
あの子はまだ生きているのだろうか
それとも……今も玩具のように使われているのだろうか?

アストロ >  
"正しい入り口"を探そうと足を踏み出そうとして、はっとする。

「……」

何を考えているんだ。入ってどうする?
何の準備もなしに入ったところで何が出来る?

あの子がここでまだ生きていたらどうする?
奴らは私の正体に気づいたらきっとあの子を仕向けてくる。
戦って殺せるのか?それとも、また殺してもらうのか?
殺されないにしても、また捕まって玩具にされるのか?

今行くべきじゃない。触れるべきじゃない。

「…………はぁ」

最悪だ。気付かなければよかった。
気付かなければ、ただの悪い子として皆と遊んでいるだけだったなのに。

「……」

場所は覚えた。
準備を整えて。


いずれ復讐する。

アストロ >  

雨が降りしきる中で、少女の姿は消えた。

 

ご案内:「廃研究施設」からアストロさんが去りました。