2020/09/27 のログ
ご案内:「廃研究施設」にアストロさんが現れました。
■アストロ >
此処は廃研究施設。地上部分に人の気配はない。
そう、偽装されているだけだ。予測は確信に変わった。
施設の前に立つ少女は、水たまりの上にいる。
水面を経由して、この建物の地下の方に水の動きを感知した。
転移しようと思えば出来そうな水もある。
ご案内:「廃研究施設」にクロロさんが現れました。
■アストロ >
魔術的な防御も施されているのか、覆い隠されていて感知できない部分もある。
見える範囲の配管を調べて、建物の構造を読み取っていく。
「……」
この液体は……培養槽だろうか。
何らかが内側に封じられているようだ。良からぬ者の予感はする。
水としては純度の低いものであるため、その中身までは読み取れない。
「……」
こっちの水槽は……ただの水だ。こっちは利用できそうだ。
何に使う水だろうか。配管を辿れば……ああ、冷却用水か。
どうやら発電設備も中にあるらしい。電気を封じる手は使えない。
■クロロ >
研究区。此の島の北側。
クロロにとっては忌々しい場所だ。
別に自分が目が覚めたのは此処ではなく、落第街だが
如何にも研究者と言うものには、いい思い出が無かった。
では、何故こんな場所に訪れたのか。
……半分は仕事、半分は"虫の知らせ"だ。
手元に握った仮面をクルクル指先で回しながら闊歩している最中
その脚は気づけば、慣れた気配の方へと向いていた。
自分にとっては嫌な水気。水たまりの中央に佇む少女の姿を目視出来た。
「…………」
敢えて、声は掛けなかった。
集中しているのを邪魔したくは無かった。
だから、黙って事の成り行きを水面に触れないように見守っていた。
■アストロ >
「ッ……!」
火の気配。集中しているが故に、それが何なのかを感づく前に、思わず身構える。
手には何かを握っているようにみえるが、その形は見えない。
・・・・
「って、なんだ、クロロ君か。こんな何もないとこに何用?」
構えを解いた少女は、笑っていない。
■クロロ >
「お前こそ何してンだ、アストロ。
何もない場所で、ンな大掛かりな事すンのか?」
何時もと違う雰囲気なのは、火を見るより明らかだ。
訝しげに眉を顰め、金色の瞳は少女を見やる。
何をしていたか、まではわからない。
だが、彼女に限って"何もしていない"なんてことは、ありえない。
「何もねェ、な。コレが?よく知ッてンな。つか、何持ッてンだ?」
視線を少女の手元へと落とし、それを見やった。
■アストロ >
「何って、下調べだけど」
これ以上は言う必要もない。伝わらなければ、それまでだ。
相手は阿呆ではない。伝わると思ってはいるのだが。
「そして、これは……切り札だよ」
軽く空を切るように振るうと、風切り音と、水しぶきが少し飛ぶ。
魔術的に光の屈折をいじって見えなくしているが、
それが刃物であるとわかるかも知れない。
「それで?私の質問の答えは?」
鋭い目つきの金が、金を見据える。
■クロロ >
「……で、下調べの成果は?」
大よその事は理解した。多分、彼女と因縁深い研究所の事か。
だとすれば、此処が連中のいる場所だろうか。
だが、彼女は"何もない"と言った。
言葉のままに鵜呑みにすれば、ここはもぬけの殻と言う事になるが……。
「……、……何時になくお前、キマッてンな。ガキが持つモンでもねェ」
文字通りの懐刀か。いや、わからない。
魔術的なもので姿を見えなくしている獲物か。
深く聞くつもりは無い。ただ、何時になくその態度は攻撃的。
それに気圧される事も無く、平然と手に持った仮面を軽く浮かしたりと弄び、涼しい顔をしていた。
「オレ様は半分は仕事だよ。"ジョーホーシューシュー"だ」
弄んでいた仮面を指先で回転させ、ポケットにねじ込んだ。
何時もと変わらない。煌々と輝く金がアストロを見下ろしている。
■アストロ >
「6割」
ここは敵地。しかも自分の感覚を忍ばせている。
察知されれば無駄になってしまう可能性もある。
いくら気がしれた相手だろうと、油断はしない。
「……こればかりは遊びじゃないからね」
見えない形とはいえ、切り札を表に出している。
不意の自体にも対応できるように。
それだけ全力で事に当たっているのだ。
「そう、それじゃ、仕事を続けていいよ。
こっちの情報はあとで分けてあげるから」
仮面なんて付ける趣味あったのかな、とは思うが。
■クロロ >
「ほォ、中々じゃンよ」
思ったよりもスムーズに進んでいるようだ。
何時から此処にいたかはわからないが
6割もとれていれば、十分だろう。
「ソレもそーだな。……アー、どーせ此処も調べる気でいたし
ついでだ、手伝わせろよ。オレ様だッて、一通り色々使えンだぜ?」
職務放棄と言う訳では無いが
気に掛けた相手をこのまま放っておくのも気がかりだ。
それに、後で情報を分けてもらうよりも、こっちで手伝うついでに確かめたい事もある。
腐っても魔術師の端くれ、探知位は使える。
「つーか、此の研究所……もしかして、ケッコー広かッたりすンの?」
■アストロ >
「そうでもない。肝心な所は魔術で阻害されてて見えない」
6割は面積であり、各設備を重み付けしてみれば4割も行っていない。
破ろうと思えば破れる魔術ではあるが……その選択はできない。
「別にいいけど、干渉して感づかれるかも知れないから気をつけてね。
折角のチャンスが台無しになったら、いくらクロロ君でも許さないから」
視線をを外し、集中する。
違う属性の気配を考慮して、魔術を最初から綿密に組み直す。
廃施設に見える敷地監視カメラも多数ある。それが魔術を読み取らないとも限らない。
それにすら気づかれてはならないのだ。
「地上部分と同じぐらいはある」
見える施設は2階建て。それなりに広い。
■クロロ >
「……流石にそうトントンビョーシッてワケにはいかねェか」
流石にそう言う連中の守りは硬い。
常世学園、と言うよりは財団のお膝元だからか
或いは余程見られたくない事をしているのかはわからないが
思ったよりも難航してそうだ。気だるそうに後頭部を掻いた。
「ンなヘマするかよ、オレ様を誰だと思ッてやがる」
確かに綿密な行動は面倒臭がるが、出来ない訳では無い。
普段の印象ならそんなものか。彼女は……水を媒介にして探っているようだ。
監視カメラに見つからずに、魔術阻害にも"バレないように"動く。
……まずは、確認だ。
「広さは大体わかッた。阻害魔術の強度と、読めなかッた場所はどの辺だ?」
「それと……お前、なンだ。怖いものとかある?」
また突拍子の無い質問をしたが、表情は真剣だった。
■アストロ >
「出来ないと思ってるわけじゃないよ」
……会話しながらではやはり最大の精度には出来ないか。
ギリギリを攻めるのはやめておこう。
「昔牢ががあった区画、それから最奥。
発電設備はまだ見つけられてない。それから入り口」
目を閉じる。周囲の気配にも気を巡らせる。
接近するものがあれば、対処しなければならないから。
防護魔術は例えるなら回転する網。突破しようと糸を伸ばせば絡まることだろう。
見せないことよりも、侵入を検知するためのもののようだ。
「怖いもの?別に思い浮かばないけど」
目を閉じたまま答える。
■クロロ >
「出来てねェなら同じだろ。慎重になッてる手前、一人で強がンなよ」
何れ不可能では無いだろうけど、これは相当時間がかかりそうだ。
相当集中しているのは見ればわかる。
障害となる魔術も動く侵入検知となれば、中々厄介だ。
針穴に糸を通すよりも繊細だ。……だとすれば、"アイツ"か。
記憶にある深淵の知識。記憶は全て、定かではない。
"使い方を知っているだけ"だ。フルで使うには、ここは"狭い"。
彼女は特に思い浮かばないと言った。
……一応、信じておくか。神妙な顔つきのまま、両腕を組んだ。
「……誰にもバレずに、1……いや、2ヵ所ぐれーなら、多分見つけられる……と、思う」
若干歯切れの悪い言い方だが、その言葉に"嘘"はなかった。
「お前にとって重要なのは何処だ?」
■アストロ >
「ちがう。クロロ君が出来ないと思ってるわけじゃないって話」
相変わらず集中を乱される。
概ねマッピングは終えたから、失敗を防ぐべく一旦止めることにする。
「なにか策があるんだ」
水に関わらない魔術も使えないことはないが、効率が悪い。
知らない魔術もまだまだ沢山ある。
「そうだね……入り口と。
生き物が検知できるなら牢を、
そうじゃなければ相手の心臓部である発電を、
最奥はまぁ……なにもないかもしれないからパス」
■クロロ >
「……そりゃ、悪かッたな」
少し言い過ぎたか、ばつが悪そうに自身の首を撫でた。
その辺りの失態は行動で示すとしよう。
まずは、深呼吸。金色の双眸が、施設の方へと向いた。
「オレ様に"見れないものはない"が……一つだけ頼みがある」
宙で指先が大きく円を描く。
もう一度、呼吸を整える。
既に、余り顔色がいいとは言えない。
正直、"あれ"の手は借りるな、と本能が警告している。
だが、背に腹は代えられない。
「オレ様にちょッとでもおかしい所が見えたら、"殺すつもりで殴れ"」
彼女の言葉を聞けば、それだけ言って強く目を見開いた。
『淀みの底<Abyss down>』
詠唱が、始まる。
『次元の角<Dimension acute angle>』
何時もと違う声だった。
何故か、鼓膜を揺らすクロロの声には"ノイズ"のような雑音が混じる。
『悪意の大君主<Malice lord>』
辺りに嫌な静けさが漂う。
此の世にないとは言えない、あらゆる"角"から"視線"が蔓延る。
それは、明確な悪意と薄ら寒さを以て、クロロとアストロを覗いている。
『外なる一柱<Outer god>』
呼吸が、乱れる。自分でも理解している。
自分でも触れてはいけない深淵を呼び起こしている事を。
自分の中の白紙の記憶が、何かが警告している。
それでも、今更止める気は無い。
風すら吹かない静けさのまま、悪意の視線がクロロへと集中した。
『招来<Call──さァ、オレ様の呼び声に従え──>』
見開いていた右目が、赤く、赤く、血のように赤く、染まっていく……────。
■クロロ >
『──────猟犬の王<Mh'ithrha>』
■クロロ >
その名を、呼んだ。赤く染まった右目の瞳孔が、獣のように細くなる。
瞬間、クロロから何かが飛び出した。本当に一瞬だった。
もし、それを視認出来たのであれば、かろうじでそれが"狼"の姿をしていたのは理解出来るだろう。
但し、皮は腐り果て、悪臭を撒き散らし、針のような舌とかぎづめを持った不浄の存在。
その精神が人に近しいのであれば、本能的に"居てはいけないもの"だと理解出来るはずだ。
"ソレ"は施設の"角"へと消えただろう。クロロは膝を付き、頭を抑えた。
膨大な情報が、脳内で渦巻く強い頭痛に声なき嗚咽を上げ
みっともなく舌を出し、何も出ない真似た口内から見えない何かを吐き出すように、嗚咽を繰り返す。
……そのクロロの右目は、ある"存在"とリンクしている。
鋭角に潜む、次元の悪意。それを統括する者。
魔術の網には恐らく引っかからない。文字通り、違う"次元"から施設の中を見ている。
向こうにも"同じ力"を行使できる連中がいたらわからないが、クロロが知る限り
この"悪意"を探知するのであれば、同じ別次元にいなければまず誰も探知は出来ないだろう。
目まぐるしく移動する"ソレ"を操り、施設の中を直接的にみるという算段だ。
「ッ……まずは、入口……と、牢、だな……?発電施設は……」
集中力を切らすな、魔力を巡らせろ。
これは、呼び出したものを"縛る鎖"だ。
アストロの望むものを、映し出せ。
さて、その目には一体何が映る────?
■アストロ >
「……そういうのを使うんだ。分かった」
その言葉にも怖じることはない。
自分だって使うものだ。どういうものかは知っているが──
「ッ……」
"次元の角"と聞いた時、反射的に自分を水球で覆った。
魔術としては知らないが、思い当たる存在はある。即席で出来る対策を行ったのだ。
視線は感じる。まだ潜っていたら、不意の事態に大きな失敗をしていたかも知れない。
「……」
飛び出したものは、見なかった。見る必要がなかった。知識として持っているから。
それは"使役"できるものではない。尋常じゃない負担がかかっていることだろう。
しかしここで止めたところで、呼び出すのに使った"コスト"は取り戻せない。
彼のやったことを無駄には出来ないだろう。
アストロは静観を選択した。
まず入り口だ。
正面に見えているものは偽物で、真の入り口は正反対側にある。
正反対の入り口も魔力の網が張り巡らされているようで、
普通に侵入を試みれば当然のように察知されることだろう。入り口の情報は、これだけだ。
そして牢。
10ある部屋に6人ほどの人間の姿が一人ずつ居るのが確認できる。
男女バラバラ、子供から青年まで。部屋の入口には3桁の数字が書かれている。
そして発電施設を探すのだろうが──
「欲張らなくていい。コントロールを失ったらもっと困るから」
そこでアストロの声が割り込む。水球はすでに切っている。
■アストロ >
そして、牢に居る子供の一人と視線が合ったような気がする。
■クロロ >
「……ッ、カッ……!」
この体は、飽く迄炎が人の形を模しているだけだ。
人間としての機能はほとんどない。
機能を呼び戻すには、"裏技"位しかないが、それでも尋常ない程"持っていかれる"。
下っ端ではない、確実性を期すために王を呼んだ。
それが如何なる存在かわかっていようとも
彼女の為なら、身を削る位安いものだ。
奥歯を食いしばり、渦巻く魔力を必死に制御する。
「────ッ……ゥ……」
見えてきた。入口はこっちじゃない、向こう側。
魔力の網も、当然ある。牢屋の方には老若男女。
6人ぐらいか?よくわからない。発電施設は────……。
「……!」
アストロの声が、意識に割り込む。
同時に、子どもと視線が合った。
『────退散!<カエレ!>』
それは、一種の反射だった。
指先で空を切り、退散の節を口にする。
視界のリンクが切れ、周囲に普段通りの静けさが戻ってきた。
もう、角に潜む悪意は何処にもない。
「ハッ……!ハッ……!」
息を切りながら、其の場に膝を付いた。
あの子供は、一体何だったんだ。
ともかく、彼女に報告しよう。
「……入口は、向こう側。当然防護魔術も貼られてたな。
牢屋もあッたぞ。ガキから男まで色々いたわ。なンか、三桁暗い数字あッたけど……」
「……一人、ガキと目が合ッた。まさか、バレたのか……?」
■アストロ >
「……無茶しちゃって」
しかしそれを責めるつもりはない。それ以上は何も言わなかった。
"帰ってきた"クロロをじっと見る。相変わらず笑っていない。
「反対側……?正面はフェイクだと思ったけど、そうか……」
むしろ単純すぎるとまで思うが、まぁ場所は重要ではないのだろう。
当然のようにセキュリティは張り巡らされているらしい。
正面からも裏からも堂々と入る気はないのだが、経路の存在は把握しておきたい。
「そう、6人……恐らく全部被検体だね。私にも番号があった」
まだ研究は続いているらしい。少しだけ悲しい気持ちになった。
しかし、6人。自分の時は4人だったが、安定した個体が増えているのだろうか。
そうなれば厄介だ。敵には回したくないが……
「目が合った……?アレが見えるの?──偶然……とは思わないほうが良いか」
にわかには信じがたい。
信じがたいが、その研究内容を鑑みれば、どんなのを持っていてもおかしくはない。
「少しだけ、話してあげる」
■クロロ >
呼吸を、整える。酸素を送り込まないと、"鎮火"する。
送りすぎもだめだ。人の形を保てない。
ゆっくり、ゆっくり、呼吸を整え、大きく吐息一つ。
「ウルセーな。テメェがマジになッてンだ。オレ様だッて、マジになる」
そうでなきゃ、"スジ"が通らない。
彼女が本気なら、それに手を貸すし
その道が危うければきっと正し、助言もする。
右目を片手で抑えながら、アストロを見やった。
未だに右目が妙に痛む。痛み何て感じない体だったのに、嫌な話だ。
「……嫌な後輩が出来ちまッたッて事か。連中は、敵だと見た方が良いのか?
それとも、お前みたいに全員反抗心とかもッてンのか?」
一応、聞くだけは聞いておいた。
何処まで進んでいるかは知らないが、クロロが研究員の立場なら
"洗脳"でも何でもして、手ごまにしておいた方が安全だ。
敵の数は少ない方が良い。気だるそうに、溜息を吐いた。
「冗談キツいな、バレねェようにトップ呼ンだのによ……」
偶然であってほしかった。
仮にも"神"とも言える存在だ。完全ではないとは言え
それを見破られるとは思いたくはない。
「…………」
アストロの言葉に、耳を傾ける。
聞けば聞くほど、眉間に皺が寄る。
「気に入らねェな」
憤りを吐き捨てた。喧嘩するには、十分な理由だ。
「……なァ、アストロ。お前はその、"外で売られたガキ"なンか?」
■アストロ >
「……ありがとね」
小さくつぶやいた。
「そんなとこだね。敵かどうかは……どうだろうね。
私もかなり昔のだから、何処までいってるかわからない。
これだけ魔術をつかってる所だから操り人形の可能性もある」
コントロール出来ないものが兵器として成立するとは考えにくい。
自分は失敗作だったので、それを受けていないだけの可能性が高い。
「まぁ、何であるかが分かったとも限らない」
何かが見ている、という感覚は別におかしいものではない。
そもそも、アレを直視したら、平気では居られないはずだ。
それで相手の手駒が減ってると助かるが、複雑な気持ちにもなる。
「私は孤児院で買われたものだよ」
■クロロ >
ニヤリと口角が釣り上がった。
「ヘッ、何時になくしおらしいじゃねェか。その方が可愛げがあるぜ?」
なんて、からかい言葉を言ってやった。
ゆっくりと立ち上がれば、衣服についた埃を払う。
「ま、兵器としちゃそうだろうよ。オレ様だッてそうする」
奴等の事を許容した訳では無い。クロロは魔術師だ。
"効率"を考えれば当然行き着く思考だ。
軽く空を仰げば、ふぅーと一息吐いてアストロを見やった。
「それもそーか。とりあえず、後でメンドーにならなきゃいいか」
軽く伸びれば、何時ものように手を伸ばした。
水面に浮かぶ少女。そこは、決して自分が立ち入れないような場所。
深淵から、生ける炎が手を伸ばす。
「そーか。ま、その辺の詳しいのは後で聞かせてもらうけどよ……。
この辺は、オレ様が好きで協力してる事だから何も言いやしねェ。
けどな、"ケジメ"付けたら、あとは自由なンだ。後ろ暗い事に囚われンなよ?」
お互い決して、いい御身分とは言えない。
それでも、彼女には、彼女にも、過去に囚われるような真似だけはしてほしくなかった。
だから、何度でも手を伸ばす。例え光の差さないような場所からでも
彼女の"先"へとなる、暗闇を照らす"篝火"に成ると信じてるから。
「行こうぜ、"リルム"。今日もベッド貸してやるよ」
敢えて、その名で呼んだ。
今日も歓楽街のホテルが待っている。
■アストロ >
「……そこは私らしくないって言って欲しいな」
はぁ、とため息をつく。
「まぁ、可能性は捨てないようにするとして」
意識の片隅には置いておかねばなるまい。
失敗する要素は極力避けなくてはならないのだ。
「気持ちはありがたいけど……どうだかね。
此処が本体だとは限らないんだから」
そもそもここが壊滅しても、繋がっている組織が関わってこないとも限らない。
何処までも過去は追ってくるものである。
そして、伸ばされた手を取ろうとして。
「バカっ、ここでその名前を──」
言葉が終わる前に、少女の姿は水たまりに引き込まれた。
■クロロ >
「……ハ?」
思わず、素っ頓狂な声が漏れた。
何が起きたか一瞬わからない。
ただ、慌てて手を伸ばした。その水面に手が触れ
音を立てて消火されて消え失せても
水面を見下ろす、金色の瞳が震えていた。
「オイ、オイ!?アストロ!?リルム!?オイッ!!」
声を張り上げても、水面に映るは波紋ばかり。
虚しさだけが、響き渡った──────。
ご案内:「廃研究施設」からアストロさんが去りました。
ご案内:「廃研究施設」からクロロさんが去りました。