2021/01/17 のログ
ご案内:「特能研・ロビー」に雪城 氷架さんが現れました。
■雪城 氷架 >
「………ん」
ロビーに並べられた長椅子の一つ
その上で、少女はゆっくりと、その青い瞳を開く
ぼんやりとした視界に捉えるのは、受付のカウンターにある大時計
──気を失ってから、3時間程経ったらしい
「……ふ、う」
手を突っ張って、身体を起こす
ロビーには人通りがあり、それなりに忙しい様子
しかし誰も、少女がそこで眠っていることには気を留めなかった
■雪城 氷架 >
あまりにもそれがいつもの光景であるから…というのもあったが
此処の職員達が特殊である…というのが、大きな理由だろう
一部の室長など立場のある人間以外はファミリアと呼ばれる、詳しくは知らないが…どうも普通の人間ではないらしい
見た目も、受け答えも普通の人間との差異は感じられないのだが、どこか仕事をしている彼らは少女には無機質に見えた
「…いて、てて……はぁ」
椅子で寝ていれば肩なんかも痛くなる
大人しくベッドを借りればよかったかな、なんて思うが…
今日の実験は調子が良かった。父もいつもより多く笑顔を見せてくれた
だったら、あまり心配をかけさせたくない…というのも娘心である
■雪城 氷架 >
そんなこんなで、父の実験を終えた後は大体、こうやってロビーで小休止しているのだ
来ないわけではないとはいえ、滅多と一般生徒や外部の人間は顔を見せないし、気にすることもなかったのだが
「(…まだアタマ痛い……少し、使いすぎたのかな)」
奥から響く鈍痛に、俯き顔に手を当てる
ひんやりとした自分の手の感触が心地よい。少し、熱も出ているのかもしれない
"制御薬"のおかげか、『常識的な範疇』なら、殆ど自在に力を使えるようになった
身体への負荷も、明らかに以前程ではない
『もう、あんな事件は起こしたくないだろう?』
自身の力を思うたび、脳裏に残ったままの誰かの声が聞こえる
■雪城 氷架 >
"あの時"は奇跡的に首謀者以外の犠牲者は誰もでなかった、と…後々で聞いた
"その前"は…‥思い出すたびに怖気が走り、血の気が引いていく。犠牲者は…自らの母親だった
『利用された』『自分のせいじゃない』『私は悪くない』
言い訳はいくらでも立つし、周囲もそれを認めるだろう。でも──
"自分が異能の力を制御できていれば絶対に起こらない出来事だった"
この事実だけは、絶対に覆らない
「……」
抱えていた頭をあげて、じっと手を見る
僅かに、赤黒い汚れがついている
そういえば、実験の後に鼻血出たっけ…なんて思い出して、枕がわりにしていたバッグからコンパクトを取り出して自身の顔を見る
■雪城 氷架 >
まぁ、冷や汗もたくさんかいけど元々薄化粧だからそこまで崩れはないけれど
やや疲労が残る顔をしてるな、と自分で思う
とりあえず鼻血の跡なんかは残ってない、キレイ、カワイイ。よし
コンパクトを仕舞って、掌の上に意識を集中…
ほんの僅かな氷の粒が生まれ、そしてそれが溶け出して、ぱたぱたと水の雫が掌へと落ちる
そしてその水の雫は暖かなお湯へと変わり…
ハンカチを取り出して掌を拭えば、とりあえず手もキレイになる
「っ…痛……こんな程度でもダメか」
刺すような頭痛に、思わず顔を顰める
実験の後…というよりは制御薬の効果が切れたのだろうか
そのタイミングで異能の力を使うと、頭痛に襲われることがしばしばあった
■雪城 氷架 >
服用しはじめの頃はこんなこともなかった気はするけれど
……まぁ、それは父に報告した上なので、今更どうこうでもない
少なくとも自分で自分の異能の制御がままならなかった頃よりは…
"テメェ…セカンドステージか…!!"
いつだったか、言われた言葉
あの頃は学園に来たばかりで、自分の異能の分析なんかもまだ終わっていなくて、
その言葉の意味も全くわからなかったけれど
再び、自身の手を見る
この手を振るって念じれば、簡単に人を凍死させることができる。建物を炎上させることができる
それは懐に隠し持ったナイフやピストルなんかよりも、遥かに恐ろしいものだと自覚した
異能の力は、金属探知機にだって引っかからない
特待生、という実質研究部預かりの監視対象のような扱いも納得する
だからこそ、父の研究にはできるだけ、力になりたい
……もちろん、他意もたくさんあるけれど
「…ぼーっとしてても、仕方ないか」
少しだけ、フラつきながら立ち上がる
ふと時計を眺めれば…目覚めてからそろそろ一時間も経とうとしていた
■雪城 氷架 >
足がフラつけば、次は軽い目眩。貧血気味なのかもしれない
よたよたと壁に手をついて、大きくため息
虚弱な自分の身体がやや恨めしい
相変わらず頭痛もするし
「……はー…、頭痛薬の量。増やそっかな……」
とりあえず外に出ればバスはある
おぼつかない足取りで、少女は研究所を後にするのだった
ご案内:「特能研・ロビー」から雪城 氷架さんが去りました。