2020/06/10 のログ
ご案内:「訓練施設」にA.昼さんが現れました。
■A.昼 >
学生たちが自らを高めるための訓練施設。
座学で学んだことを実践するための、また学生同士が切磋琢磨するための施設。
しかし、そんな場所に例によって忽然と。
瞬きをする程度の間に、無骨なコンテナが出現した。
いつからそこにあったのか、気が付いたらあったとしか言いようがない不審物だ。
施設を利用する学生がいれば、「あれ? こんなものあったっけ」と思うような異物感だ。
ぱっと見た感じ、装飾もない金属製のコンテナだが、外から開ける分には簡単に開きそうな構造だ。
中からはなんの気配も物音もしないが、しばらく様子を見ていると時折――
「昼だよ」
――と、中年男性のような声が聞こえる。
中になにか、入っているのだろうか。
ご案内:「訓練施設」に北条 御影さんが現れました。
■北条 御影 > こんなものが訓練施設にあった覚えはない。
鍛錬のための施設に似つかわしくない、というわけでもないが、
やはり見覚えのないコンテナがあるとなれば気にならない筈もない。
「…いや、別にここの利用者ってわけでもないんだけどもね?」
誰に向けるでもなく呟く。
たまたま通りがかっただけの自分が果たしてこのコンテナに関わっていいものだろうか。
誰かが取り寄せた訓練道具が入っているのかもしれないし、
はたまた学園側が用意した施設整備のための道具でも入っているのか―
「いや、喋ってたし」
軽く頭を振り、自分に言い聞かせるように思い浮かべていた「このコンテナがここにある理由」を霧散させ―
「昼、ですか?」
と、何とも間の抜けた問いを投げてみた。
要は、謎の喋るコンテナという如何にもこの島らしい謎アイテムに好奇心を抑えきれなかったのだ。
■A.昼 >
なるほど、確かにこんなものがあれば若い好奇心は刺激されるに違いない。
え、いやほんとにそうだろうか?
こんなものに関わってもいいのか?
猫だって好奇心で●ぬらしいですよ。
「昼だよ」
問いかけたら案の定、コンテナの中から声が返ってくる。
やはり中に何かいるのかもしれない。
■北条 御影 > 成程確かに人の声だ。
「昼だよ」と、確かにそう言った。
そうか、昼か。
別に確認するまでもなく今は昼なのだが、改めてそう教えられ、何故だか感慨深いものを感じた。
「あー…と。昼なのはまぁ、そうなんですけど。何でこんなコンテナの中に居るんです?
この蒸し暑い中で密閉されて、汗だくだくになって興奮するタイプの方でしたら、退散しますけど」
万が一の可能性に言及しておいた。
これが彼(?)の自由意思によるものであれば、邪魔するのは申し訳ない。
九割九分そんなことはないだろうと自分の中の常識が語り掛けてくるが、この島でそもそも常識など邪魔なだけだ。
だからこそ、こういう気づかいは大事である。
彼女は学園生活の中で、この島に着々と毒されていた。
「そういうわけでもないんでしたらー…。出て、お話でもしません?」
ともすれば飛んで火に入る夏の虫。
雉も鳴かずば―
とならないようにする注意深さもまた、彼女は学園生活で失いつつあるのだ。
「ほら、私友達いないんで。寂しいんですよ」
なのでまぁ、特に深く考えずお誘いしてみたのだった
■A.昼 >
「あー……外に誰かいるのか?
いやそんな特殊性癖持ちの変態おっさんじゃないんだなあこれが」
中からはどう考えてもおっさんの声がする。
ひとまずは、ただの変態というわけではなさそうだ。
「外に出たいのは山々なんだがなー。
困ったことに蓋があかない。
たまった涙の水圧じゃないのは確かなんだが、これそもそも外からしか開けられないらしいんだよなあ」
鉄パイプもって助けに来てほしい気持ちでコンテナに詰まっていたようだ。
「お、なんだ、声からすると嬢ちゃんか?
友達いないのかあ。まあそんなこともあるよなあ。
俺が友達になってやりたいところなんだが、ここから出られないとどうにもならないんだよな」
コンテナは特別、鍵や複雑な構造は見られないようで、側面にはL字の取っ手が付いている。
これを捻って引けば簡単に開きそうだ。
■北条 御影 > 「それが聞けてちょっと安心しましたよ。もし中に居るのが変態さんなら、私はこの後若い操を散らしかねないところでしたので」
思ったよりフランクな回答だった。
僅かに残っていた警戒心がやんわりと薄れていく。
どうせこの場でどんなやり取りをしようが、明日にはまた「はじめまして」なのだ。
だったら好きに話してしまえばいい、というのがここ最近の彼女の割り切り方であった。
「ほほう?それではこの扉を開けてしまえば、私は晴れて友達が出来るというわけですね」
ふふん、とわざとらしく笑うと分かりやすい取ってに手を掛けて―
「あ、一つ約束してください」
ぐ、と力を込める前に一呼吸。
「こうして出してあげて、折角友達になるんですから―私のこと、忘れちゃ嫌ですよ?」
念のため。
願掛け染みた言葉を口にして、彼女はその閉ざされた扉を開け放つ。
果たして中に居たのは―
■A.昼 >
「若い娘さんなら怪しいもんに近づくのはよくないと思うんだが、と怪しいものが言ってみるぞ」
その言いようは、妙に親しげで近所のおっちゃんのようだ。
「お、そんな約束ならお安い御用だな。
記憶力には自信があるんだぜ、鳥頭だけどな」
まったく信用できない軽い調子で返ってくると、コンテナが金属音を出しながら開かれる。
扉は想像以上に分厚く重たいだろうが、それでも開けられないことはないだろう。
そして、その中から白くて丸っこいものが転がり出てくる。
それはにゅっと首を伸ばし、黄色いくちばしを少女に向けると、片翼をひょいと上げた。
「昼だよ」
その姿はカモ科のマガモを原種とする家禽に酷似していた。
■北条 御影 > 「―いやカモでしょ」
咄嗟に言葉が出た。
昼とかどうとか、そんなことはどうでも良い。
友達になろうとか、忘れないでねとか、ちょっと雰囲気出してしまった自分がバカみたいではないか。
そう思うほどに、目の前の存在が完膚なきまでにカモであった。
「―いや、まぁ。この島だし…」
何があってもおかしくはないけど、と呟いて溜息一つ。
苦笑いしながら頬を掻き―
「ま、とりあえず。初めまして、これからよろしくで…いいのかな?」
ん、と取り合えず手を差し出してみた。
姿が何だろうと、まぁ友達は友達だ。
自分を覚えていてくれる可能性がある相手は、幾ら居てもいいのだから
■A.昼 >
まあどこからどう見ても、カモかアヒルかその辺のなにかだ。
余談ですが、カモ肉は脂が多いですが美味です。
「おお、声の通り爽やかな別嬪さんだな。
こちらこそよろしくな。
久しぶりに外に出れて助かったぜ」
ぐっと首を伸ばし、大きく翼を広げ気分がよさそうだ。
表情は鳥顔なので読めないが、まあどことなく嬉しそうなのは伝わる……のか?
ひとしきり体を広げると、「ところで」といった様子でこの鳥類は首を傾げた。
無駄にしぐさが人間くさい。
「カモってなんだ?
俺は□●▽××●だぞ」
その言葉は、まるでチューニングの狂ったラジオのような、ノイズにしか聞き取れなかっただろう。