2020/06/11 のログ
北条 御影 > 「あはは、相手が鳥類でも褒められるのは嬉しいですね。何か良い声ですし」

目をつぶって聞けば悪くないのでは??
と思ったが、目をつぶって鳥類に褒められて悦に入るのは人としてどうなの、と我に返るだけの理性はあった。

何処となく嬉し気に見える、気がするカモ・ソ・ノモノにくすり、と頬を緩ませたが、
次に聞こえてきたノイズ染みた言葉に思わず眉根に皺が寄った

「え、と。何ですって?名前、全然聞き取れないんですけど―」

と、もう一度聞きなおそうとしたところで予鈴が鳴った。
そういえば今は「昼」なのだ。
時間を確かめたわけではないけれど、きっと「昼」だ。
だってそう言っていたのだし。
ならば昼休み終わりの予鈴が鳴るのもまぁ当然のことで。



「っと、そろそろ行かなくちゃ。
 またね、カモさん。貴方の友達、北条御影のこと、忘れちゃダメですからね?」

そう言い残し、ぱたぱたと校舎へと駆けていく。
彼女が何を解き放ってしまったのか。
解き放たれたカモらしき何かがこの島に何をもたらすのか。

そして、人と違う記憶野を持つであろうこの鳥類に、彼女の異能はどのような効力を持つのだろうか。

彼女自身は考えてもいない様々な疑問と、カモらしき何かだけがその場所に残されるのだった。

ご案内:「訓練施設」から北条 御影さんが去りました。
A.昼 >  
「おお、俺も声が褒められるのは嬉しいもんだぜ」

 お互い嬉しいならそれが異種間であっても問題ないのではないだろうか。
 問題しかないのではないだろうか。

「おう、やっぱり聞き取れねえのか。
 ならまあ、人にはよく[アヒルさん]と呼ばれるが……ま、[カモさん]でも構わねえな。
 好きに呼んでくれや」

 と、予鈴が鳴ったところで少女が顔を上げると

「昼だよ」

 と、脈絡なく発せられた。
 すると、なぜだか妙に今が「昼」であると確信的に思い込めてしまうだろう。

「おう、恩に着るぜ嬢ちゃん。
 いや、北条御影、御影の嬢ちゃんだな。
 このお礼はそのうちするからな、またどこかで会おうや」

 かけていく少女の背中を見送りつつ、鳥類は若いっていいもんだと元気のいい様子を見て感慨深げに頷いた。

A.昼 >  
「……さて、外に出られたのはいいんだが」

 きょろきょろと、周囲に視線を巡らせる鳥類。
 しかし、てんで見覚えのない場所である。

「ここ、どこだ?」

 右見て、左見て、上も下も見るが、見覚えがあるのは自分が入れられていたコンテナだけだ。

「とりあえず、こんなもんがここにあったら邪魔になるだろうな。
 しまっておくか」

 と、言いながら、鳥類は片翼で覆うようにコンテナに翼を伸ばすと、「なぜか」瞬きの間にコンテナは翼の下に収納されてしまった。
 いや、視覚としては「消えてしまった」というのがふさわしいだろう。
 だって、鳥類の二倍はある大きなコンテナだ。
 どうやったって収納できるはずがないのだから。

「さて、とりあえずここがどこか調べないとな。
 どこでもいいっちゃいいんだが、あまり迷惑をかけるのもよくないしな。
 郷に入っては郷に従えって言うからな」

 それに先ほどの少女にお礼をするためにも、とりあえず無難に生活できるだけの基盤はどこかで築かねばなるまい――はて。

「そういや、さっきの嬢ちゃん、なんて名前だったかな」

 確かに聞いた覚えがあるのだが、どうにも思い出せない。
 が、この鳥類、そのくらいでは深く考えない。
 なにせ、鳥頭だから!

「まあ、顔は覚えてるし構わんだろ。
 縁がありゃあ、また会えるってもんだ、必然的にな」

 そして鳥類も施設の外へと歩き出すだろう。

「昼だよ」

 と、一風変わった鳴き声を上げながら。

ご案内:「訓練施設」からA.昼さんが去りました。