2020/06/18 のログ
ご案内:「訓練施設」に城之内 ありすさんが現れました。
城之内 ありす > 異能の制御。きっとそれは、多くの生徒にとって大きな課題だと思う。
そしてそれは、この少女にとっても例外ではない。
初めてそれを発動させてしまってからずっと、それを抑え込んで生きてきた。
けれど、この学園の授業で教わったのは、全く別の考え方。

『抑え込むのではなく制御する。』

数学や理科は苦手だし、そもそも勉強はあんまり好きじゃない。
でも、異能の授業だけは、しっかりと受けた。

城之内 ありす > 異能の訓練、なんて、これまで考えたこともなかった。
抑え込んで、隠して、誰にも見られないようにして、誰にも迷惑を掛けないようにして…。
この島に来てもそれは変わらなかった。むこうでもこっちでも、どうせ一人なんだから、と。
でも今は、少しだけ前向きな気分になっている。

「………誰もいないから、今ならいいよね。」

体育館のような,広めの空間。
ここならある程度まで身体が大きくなっても,大丈夫だろう。

城之内 ありす > 出来れば、誰にも見られたくはない。
けれど鍵を掛けて独占するわけにもいかないから、仕方がなかった。

『抑え込むのではなく制御する。』

だから、何も感じないように、何も考えないようにしている自分を、今だけはやめてしまう。
いやなこと、苦しいこと、ムカつくこと、不満なこと。
思い出せばキリがないくらい、沢山ある。

城之内 ありす > 自分で意識して異能を発動するなんて、初めての経験だった。
けれど、抑え込んでいた感情を表に出しただけで…視界が少しだけ、高くなった気がした。

事件を起こしてしまってから、私の居場所は無くなった。
私のせいじゃない。
そう言っても、誰も聞いてくれなかった。
みんなが私を馬鹿にして、みんなが私を怖がった。
私のせいじゃないのに。

…気付いた時には,視界の高さはいつもの倍くらいになっていた。

ご案内:「訓練施設」に紫陽花 剱菊さんが現れました。
紫陽花 剱菊 > そんな訓練場にふらりと迷い込んだ男が一人。
あてどなくふらふら彷徨っていたら、またとなく此処に迷い込んでしまった。
武に生きていた者として、やはりこう言った場所は無意識に足を運んでしまうようだ。
果たして、今日日誰かいるだろうか。
静かな足取りで、奥へと進む。

「…………。」

いた。此の島の学園の生徒と見受けられる少女だ。
……心なしか、その身は徐々に大きくなっている気がする。
立ち止まったまま、くすんだ瞳が少女を見上げていた。

城之内 ありす > 普段なら、人との関わりを避けるためにも周囲に気を配っている。
けれど今は、そうではなかった。
自分でも十分に理解できていなかったが、身体の大きさは、精神にも影響を及ぼす。

「あぁもう!!何で私だけこうなのよ!!!!」

3mはあろうかという少女は、それを見ている男性が居ることになど気付かず、抑え込んでいた怒りを吐き出した。
感情に任せて、置いてあったベンチを蹴り飛ばす。

運が悪ければ、それは男の方へ飛んで行ってしまうかもしれない。

紫陽花 剱菊 > 「…………。」

大きな大きな少女が叫ぶは激情、怒り。
それは、内側にため込まれていたものなのか。
憶測は幾らでも出来る。無造作に少女が蹴り飛ばしたベンチが、空を切り自身へと迫った。

「────……。」

だが、それが到達する事は無い。
男に触れる前に、ベンチが両断され、男の左右を二つとなったベンチが抜けていった。
左手に握られているのは、黒く艶やかな刀身をした刀。
瞬く間に自身の異能で生成し、両断したのだ。
左手から離せば、それは霞となって消えていく。

「……失敬。不躾ながら、何故其の方は怒りを燃やしている?人か、世か、或いは己か……?」

大きな少女に、声を張り上げて問いかける。
くすんだ黒色の瞳と違い、問いかける声は張っていても穏やかさがある。

城之内 ありす > 蹴り飛ばしたベンチの行く先をみて、男に気付いた。

「あ…、駄目っ!!!!!」

声を上げるも遅く、ベンチは男に向かって飛んでいく。
けれどそれが男を傷付けることは無く、まるで映画のシーンのように、2つになったベンチが転がった。

良かった…。と、そんな思いは言葉に出せず。
少女はその場に、へたり込むように座り込んでしまった。
それでもまだ、視線の高さは男より高いのだが。

醜態を晒してしまった恥ずかしさで、謝ることも出来ずにいたのだが…穏やかな声を掛けられて、

「……………わかんないよ、そんなの………。
だって、私のせいじゃないけど、私のせいなんだもの……。」

絞り出すように、大きな少女はそうとだけ答えた。

紫陽花 剱菊 > 確かにそれは、大きな体だ。
しかし、何処となく弱気な言動が等身大の少女であると告げている。
此の巨大化作用は、異能によるものか。
へたり込む少女へと静かに近づき、動かなければその隣で胡坐を掻くだろう。

「…………是非では無い。自らを責めるな。貶めるだけ、千々に心が乱れるだけだ。」

慰めは言わない。
だが、あだ情けとも言うつもりはない。
静かで、穏やかな声音のまま、男は言葉を続ける。

「……卒爾では有るが、何故自らを貶めまいとするか、語ってみてはくれないか?委曲を尽くせ、とは言わん。お互い名も知らぬ、たった今顔を合わせた者同士だ。語るに及ばずと言うなら、其れでも良い。私はただ、其方の力に成れるのであれば、と思っただけだ。」

城之内 ありす > 逃げ出したい気持ちでいっぱいだった。
それ以上近付いてくるなと心の中で男を睨んでいた。

「……あなたに何が分かるって言うのよ……!」

すぐ近くで胡坐をかいた男を見て、その言葉を聞いて、ありすは両手で顔を覆ってしまう。
踏み込んでくるな、という怒りはあった。
何で自分はこうなんだろう、という悲しみもあった。
だから身体の大きさは、大きなままで、変わってくれない。

「…………………。」

けれど聞こえてくる声は妙に穏やかで、少しだけ安心させられるようだった。
黙ってそれを聞いているうちに、自分でも気づかないうちに、怒りは収まり、その身体は徐々に小さくなっていく。

「………これが、私の異能なの。
怒るとどんどん大きくなっちゃって…自分ではどうしようもなくって…。」

そしていつしか、少女は少女らしい大きさに戻っていた。

「……ここに来るまでは、みんなが私を馬鹿にして、その度に…怪我させちゃったり、色々壊しちゃったりした。
だから、みんな私を怖がるようになった……当然よね。」

紫陽花 剱菊 > 怒声を浴びても、男は臆する事は無い。
声音と違って、眉一つ余り動かなさい不愛想な仏頂面。
くすんだ黒い双眸は、何処となく空虚さを感じさせるかもしれない。

「……何も分からない。識らない。故に、言問うた。」

はぐらかす事もない、素直な言葉だ。

「……済まなんだ、私は如何やら、心の機敏に疎いようだ。此の前も似たような事を言われた。」

路地裏で出会った道具と称する女性。
自らの転機の時。今でもずっと、あの瞳は印象に残っている。
大袈裟かも知れないが、男は謝罪の後、深々と頭を下げた。

「…………。」

そして、頭を上げ、しかと少女の言葉を耳朶にしみ込ませる。
気づけば、少女の体は年相応の大きさへと戻っていた。

「感情の高ぶりと、身体が連動する異能……力も大きさに比例し、理性の枷も外れる様子と見た……。だから、此の場へ……?」

合点が行く。
先ほどの荒ぶりようを見る限り、意図せずして人を傷つけた悔いは本物のようだ。
異能の制御。
異能者にとっては、宿業とも言えるものだ。
少女の言葉に頷けば、くすんだ目線を其方へと向ける。

「……罵詈雑言を気にする必要は無い。気にすべきは、"己自身"。異能もまた、己自身。そして、軛を得ぬ力は今の有り様。……先ず、其方は如何様に訓練に望む?力を制御し、何とする?目標が無ければ、其れは叶うまい。」

其方は如何なんだ?と、男は静かに問いかける。
厳しい物言いかもしれないが、其処に彼女責める念は一つもなかった。

城之内 ありす > その言葉が堅苦しいし、ところどころ難しい。
けれど穏やかな口調のまま謝られれば、少女も顔を上げる。
少女が男を見上げる形になっているだろう。

「……私のほうこそ、ごめんなさい。
でもよかった…もう少しで、怪我させちゃうところだったから。」

少女も自分の行いを謝って、それからまた、男の言葉を聞く。
普段と同じように、心を落ち着かせて…。

「気にする必要はない…って言われても、やっぱり、気になるから……出来るだけ何も起こさないように、怒ったり悲しんだり笑ったりしないようにしてるの。」

だからこの少女にはほとんど友達が居ない。
それでも、仕方ないと思っていた半面、この島に来れば何かが変わると思ってもいた。

「……力を制御できたら………
……みんなと、一緒に遊んで、笑ったり、泣いたり、怒ったり……みんなと、同じことがしたい。」

紫陽花 剱菊 > 少女の謝罪に、静かに首を横に振った。

「些末な事だ。あの程度で怪我する事は無い。」

言い切った。
武に生きていたからこその男だ。
少しばかり尊大な態度に見えるかもしれないが、男はありのままに事実しか言わない。
現に、其れを二つとなったベンチが語る。

「…………。」

元の世界で戦に生きた人間だ。
"人"としてではなく、"刃"として生きた男。
太平の世を静かに願い、人並みの感情を欲する男には
彼女の気持ちは、痛いほど共感出来た。

「……少女の謝罪に、静かに首を横に振った。

「些末な事だ。あの程度で怪我する事は無い。」

言い切った。
武に生きていたからこその男だ。
少しばかり尊大な態度に見えるかもしれないが、男はありのままに事実しか言わない。
現に、其れを二つとなったベンチが語る。

「…………。」

元の世界で戦に生きた人間だ。
"人"としてではなく、"刃"として生きた男。
太平の世を静かに願い、人並みの感情を欲する男には
彼女の気持ちは、痛いほど共感出来た。

「……"異能"とは、己を映す鏡なれば、けだし成りて己と向き合いさせすれば、其方の願いも叶うだろう。異能に悩むのは、きっと其方だけでは無い。人は時に傷つけ合う生き物だが、其れが其方の本音ではあるまい。」

「……其方は、優しい子だ。そうでなければ、人を傷つける事を後悔はしないだろう。……良い、此処から始めれば良い。"もう我慢する必要ない"。」

此処からだ。
そのために来たのなら、此処だから。
皆と一緒に笑い、泣き、怒り、共に過ごすのであれば、其の様な我慢は必要ない。
男は強く頷けば、立ち上がった。

「……微力ではあるが、助言程度は出来るだろう。私は紫陽花 剱菊(あじばな こんぎく)。如くも無いような男では有るが、其方の日常の為に、力を貸させて頂きたく思う。」