2020/08/25 のログ
ご案内:「訓練施設」に伊都波 凛霞さんが現れました。
伊都波 凛霞 >  
訓練場内部
夏季休暇はまだ続いていて、それほど人は多くはない
されど程々に人はいるわけで…
サンドバッグに突きを打ち込む者や、トラックを走るもの、
各種トレーニング機器を使って体を鍛える者などなど
まぁ、中はそれなりに騒々しい

そんな訓練施設の一角
畳の敷かれた道場めいたエリアに、一人少女が正座する

双眼を閉じ、呼吸音すら感じさせない静かな佇まいで

伊都波 凛霞 >  
──瞑想、とは少し違う

心静かに、穏やかに
激動の日々を振り返って、自分と対話する…

感情と想いを巡らせて、俯瞰で自分の行いを見直す
見えてくるものは、多くの場合は、反省点だろう

自分の選んだ道を正解に導け
彼女はそう言ってくれた

だからこそ、反省はするが悔いをそこには残さない

伊都波 凛霞 >  
どうせ選ぶ前には戻れない
失敗だった、なんて言い訳するな。その汚点は一生残り続ける
どう足掻いてでも、自分で選んだ道は、なにがなんでも、正解にしろ

いやあ失敗だったよ、やめときゃよかった、なんて
その道を自分が選んだことで関わった全ての人間に対し失礼だ

現実を現実として、結果を結果として受け止め、前に進む
人生は選択の連続。そうやってしか、人間は先の闇へと踏み出せない

…うっすらと、鈍色の眼を開く

伊都波 凛霞 >  
レイチェル・ラムレイが目覚め、
鉄火の支配者、神代理央が現場に復帰
山本くんの復帰も、もう少しだろう

一時はどうなるかと思ったが、少しずつ元に戻りつつある
自分の今の役目も、もう僅かだ

………

本当なら、この夏の間に風紀委員の中での進退を決めるつもりだった
色々の人のおかげで、自分で思うよりも早く決意は固まって…
紆余曲折あり、こんなことに
でもそれで良かった、区切りは近い

夏の終わりと共に、これまでの伊都波凛霞に戻ろう

伊都波 凛霞 >  
そして、未だ自分の中にある"呪い"

この夏の間、欠員の代わりに自分を警邏のシフトに叩き込みまくったのは他でもない
自分自身のためでもあった
あちこちでサイコメトリーを繰り返し、あの夢の中で繋がったあの場所へのルートを探し続けた
そして、大きなアタリはつけ終わった

片膝を立て、立ち上がる
手元には、とある男性から譲られた手拭いが握られている

夏が終わり、再び学園が動き出す
そこで、呪いの主にも決着をつけさせてもらおう

伊都波 凛霞 >  
大きな流れは、緩やかとなった
けれど、此処に来ると否応なくそれを考えることになる
大元の問題は解決したのか、どうか──

「……──レイチェルさん」

小さく、言葉を呟く
あのときのことを思い出すように

きっと彼女はあの時、異能が使えなかった
それを自覚できていなかった故に、重傷までも負った

以前からそういうことがあったのかはわからない
けれど、そういった兆候は、もしかしたらあったのかもしれない

現場への復帰を嘆願した時、
自分に真っ直ぐ向かい合ってくれていた彼女が、なぜかその断る理由を明確に口にしなかったからだ

伊都波 凛霞 >  
言えない理由があったのだと推察できる
もしかしたら異能が使えなくなることを知っていたのかもしれない
でもそれならどうして、此処で、あの時……
『殺す気で来い』
なんて言葉を、自分に言ったのか…──

あの時、彼女は此処で自分と本気で立ち合うことで…
何かを…何かを伝えたかったに違いないのに

「──………」

考えたところで推察にしかならない
彼女は目覚めた。なら…時期を見て、直接問おう

胸の中のもやもやとしたものを振り払うように、型稽古を始める
流れるような動き、流水──時に激しく打ち据える、激流
それを思わせるような、緩急のある、型

伊都波 凛霞 >  
凛とした立ち姿から、緩やかな…舞うような所作
迷いなく、淀みない動きは、美しさすら感じさせ
元々目を引く少女の容姿を更に際立たせる

鋭い動きに追従する長い髪も、
道着袴から覗く細い手首や足首も
女性であることを何よりも主張するその端正な顔も

それら全てが、その場を清廉な空気で満たしてゆく──

伊都波 凛霞 >  
その姿を"美しい"と思う者がいたならば、それは素人
その姿を"恐ろしい"と思う者がいたならば…それは優れた眼を持つ者だ

舞踊のようにも見えたその動きの中に、"仮想敵を想定してそれを観た"者がいたならば
たった数分間の型稽古の間に。何人が急所を貫かれ絶命したかが理解るからである

伊都波 凛霞 >  
背面に振り抜いた二本拳
その指先までを含めた、返しの動作
華奢で可憐な指の踊る姿に魅了される者もいるかもしれない

その実、視る者が視れば、
手首からのスナップで生まれる貫通力を指先に伝え、
喉笛を貫き、頚椎を捻り壊すまでの流れるようなプロセスが見えるだろう

「──ふう」

一連の動作を終えると、一息
深く浅く、呼吸を終えれば、息の乱れ一つなく、再びその場に座する

伊都波 凛霞 >  
──今回、落第街の警邏に当たるに至って使用したのは、古流武術における兵法の部分だけだった

一子相伝の技である古流武術・伊都波
その技自体は使用していない
…いや、一度だけ使用したか

池垣あくる、彼女の武人然とした振る舞いと、見事なまでの技の冴えに敬意を評して

彼女はあの時、張り巡らされていた鋼線が見えていなかっただろうから、それを解除しなければ…
まぁ、両腕くらいは失っていたかもしれないが、その決着を良しとさせなかったその精神には敬服せざるを得ない

伊都波 凛霞 >  
どの道、封印である
学生の領分で、風紀委員としての活動を含めても武器術だけで事足りる

「……そういえば何も言わなくなったけど、
 あの子は、もう諦めたのかな……」

ぽつりと零しながら、思い浮かべるのは最愛の妹の顔

ご案内:「訓練施設」に持流 童男さんが現れました。
伊都波 凛霞 >  
ある時期まで、あの子…悠薇は姉である自分と共に、父から武術の教えを受けていた

伊都波の古流武術は一子相伝
どちらかが継承するのであれば、そのどちらかの拳を封じなければならない
…幸い、色々あって最近はそんな素振りを見せていない
諦めてくれたのなら…心配もせずに済むのだけど
あの子の口からは、はっきりと聞いたわけでもない

「まったく、だいたい父様が甘いから…」

そして漏れ出る不平不満
まぁ、今回門限を0時過ぎまで寛容してくれたので、あまり悪くは言えないが

持流 童男 > 「さーって今日も今日とて訓練場でしゅぎょ・・・・・」

そういって訓練施設から現れる一人の男
そして
道着袴着姿の凛霞さんを見て、
エロイなぁと思いながら

「こんにちはー、凛霞殿ー修行でござるか?」

そう思いつつも凛霞さんに言った

伊都波 凛霞 >  
「…あれ、童男くん?」

見慣れた巨体
最近痩せたらしい彼を見て、声を返す

「修行というか…まぁ日々の鍛錬、かな?
 今朝ちょっと忙しくって、家の道場で出来なかったから」

持流 童男 > 「ほうほう、それは大変でござるなぁ。
日々の鍛錬は大事でござるからな。」

そう、うんうん頷きつつも、
ん?家の道場?家の道場って言ったでござるな今。

「家の道場ってまさか凛霞殿いいところのお嬢さんでござるか?
いやいやまさかまさか。」

そう冗談めかして言いつつも笑いながら

「そういえば、スラムでパトロールしてたらシンデレラっていうのを聞いたんでござるが、あれって誰のことなんでござろうな。すっごいか・・・かわいい名前でござるが」

世間話をするようにそういった

伊都波 凛霞 >  
「いいとこの、ってほどでもないけど。家の歴史は古いよー」

道着袴の凛とした姿は育ちの良さも感じさせるかもしれないが、
お金持ちというよりもどちらかといえば古家の令嬢だろう

「しらない」

『あれって誰のこt』あたりでキッパリとした返事が返ってきた
ニコニコと笑顔を浮かべている。なんのこと?といったオーラがマシマシだ

持流 童男 > 「ん?あぁ知らないんでござるな。凛霞殿、シンデレラっていうのはでござるね」

そう言って説明する

「ある時、突然現れた、違反部活を用意周到な罠でいつの間にか一網打尽にしてるというちょうすっげぇシノビっぽいやつでござるな。それにこう、噂では100人くらいに分身するとかなんとか。まぁ人ずてのうわさでござるからな。」

そうすこしだけ世間話をするように言ってから

「いやー!シンデレラ殿にあったらぜひとも手合わせしてみたいでござるよ!!」

そう目を輝かせて言った

伊都波 凛霞 >  
「ただの噂だよ」
「忘れていいと思うよそんなこと」

ニコニコと笑みを崩さない

持流 童男 > 「な・・なんでござろうすっげぇ、凛霞殿が笑顔何でござるが」

少しだけ引きつつも
咳払いして、

「そういえば、凛霞殿、訓練施設ってことだから。一回どうでござるか?戦うの。本気で」

という提案する

伊都波 凛霞 >  
「模擬戦で、ってこと?
 いいけど…」

意外な申し出だったらしい
一瞬きょとんとした顔をするが、ゆっくりと片膝から立ち上がって

「本気で、っていうのは、どこまでを指してのこと?」

持流 童男 > 「・・・うーん、そうでござるな。」

そう、凛霞さんに、対して。
考えてから

「本気で殺す気で来てくれでござる。」

そうしっかりと凛霞さんに言った

伊都波 凛霞 >  
「なるほど…」

袴の裾をぱんぱん、と叩いて
畳が敷き詰められたそこで、彼へと改めて向き直る

真剣な瞳、鈍色の視線が巨躯の男を射抜くように

「本気で殺す気で…ってなると、それはもう、模擬戦じゃないね」

あの時の、レイチェルさんとの一戦はあくまでも模擬戦闘
殺すつもりで来い…というのも手加減なしで、という意味だった

「その言葉が本気なら、童男クンには3つの覚悟がある…
 そういう前提で仕掛けることになるよ?」

静かに、問いかける

持流 童男 > 「すまぬやはり模擬戦で。
いや、何、某も仲間殺しはしたくないでござるな。
勝ってしまうでござるし。」

そう訂正する。

射貫かれつつもその眼を見てから

「うむ!正直言い方をミスった!模擬戦で本気で来てくれって言いたかった!!悪い!あ、ちなみに雑魚を軽くあしらう程度でお願いするでござる。」

そう済まないように言う

「いやぁ、情けない男で済まないでござるなぁ。コミュニケーション不足何でござるよ。」

申し訳なさそうにいう

伊都波 凛霞 >  
「そもそも此処、殺傷や重傷を与えるような行為は禁止だからね。
 勿論訓練をしていれば事故はつきものといえばつきものだけど…」

最初からその前提は、ルールを逸脱し過ぎである
風紀委員ならば、規則には則って動かねばならない

「いいよ。じゃああくまでトレーニング、ってことで。
 異能の使用はどうするの?私は戦闘に使える異能を持ってないから、どちらでもいいんだけど…」

持流 童男 > 「うーん・・そうでござるな。異能の使用はありにしてくれでござる。正直お主の場合そこが見えなくて怖いんでござるよ」

そう言ってから構えをとる。
大きい巨体でいつでも動けるようにして

「トレーニングでよろしくお願いするでござるよ」

そうしっかりと凛霞さんに言った。

伊都波 凛霞 >  
「ん、じゃあそれで…──」

しん…とあたりが静まり返る
それは突然張り詰めた場の緊張感故か

「いつでも、どうぞ?」

まっすぐに童男を見据え、鈴鳴りのような声が向けられた

持流 童男 > 「では、征くぞ」

そう言ってから一気に距離をまっすぐに詰める!!

そして拳を思いきり振り上げて、凛霞さんに当たるようにする!!

知られざる英雄の一撃:10パーセント!!!

地面に亀裂を入れる程度の力だ!

伊都波 凛霞 >  
まっすぐに間合いを詰める巨体
そして振り上げられる拳──

「んー…甘い!」

振り下ろされた、大地を砕くハンマーのような一撃を、その細腕が、片手で軽々と受け止める
それどころか、もう片腕が掌底の形で全く同じ威力のエネルギーカウンターを男の鳩尾に向け打ち放った

「まっすぐ来てまっすぐ振り下ろすだけじゃ当たらないよ?童男クン」

持流 童男 > 「---っぐ」

同じ威力のエネルギーカウンターを鳩尾に向け、打ち放たれた
痛い、だが、鈍くなっている痛覚を自覚しながら、精神力で耐えて。
そしてニヤッと笑いながら

「なるほど。伝わせたでござるか。力を」

そう言ってから距離をとる。やはりこの子は、底が見えない。

「ならこんなのはどうでござるかっ!!」

そう言ってから知られざる英雄の一撃:10パーセントで視認できないくらいの速さで畳を踏み込んで、
フェイントを入れてから、凛霞さんに放つ!!

「知られざる英雄の一撃:10パーセント!!フェイントスマッシュ!!」

伊都波 凛霞 >  
「あ、わかった?1回で理解できるのは凄いねえ」

受け止めた力をそのまま返した
その理解の早さを賞賛するが、何よりも…
あの威力を受けて平然としているその頑丈さがすごい
普通の人が受けたら五体がバラバラになりそうなものなのに

さて、続く行動は…──

「速い、けど…さっきはそのままだったから今度はフェイント、っていうのもちょっと浅いかな」

冷静に、威勢を読む
読み切れば、さっきと同じ
放たれた拳をまるで自身の掌に吸い寄せるようにして、エネルギーの指向性を自分の後方へとズラす

──結果、童男は凛霞の背後の壁へ向けて自分自身の攻撃の威力そのままに突っ込んでいくことになる

持流 童男 > 「ぬおおおおおお!?!?」

そう言ってから、思いきり背後の壁にそのままに突っ込んでいく。
そして、壁に激突する!!

ぬおおおと顔を、覆いながらも痛みに悶える。

「いやぁ、強いでござるなぁ凛霞殿。
さっきの言葉、訂正させてくれでござる。
某の負けでござるよ。いやぁ、勝てない勝てない。
殺し合いとかじゃなくてよかったー!」

そう笑う。ちなみにピンピンしている。
これ以上行くと、ケガさせてしまうので。
ここらが潮時かなーって思っている。そう目が泳いでいる

伊都波 凛霞 >  
「………」

負けであると嘯く彼をじっと見つめる
その視線は、どこか怒気を孕んでいるようだった

「まだ2回いなしただけだけど…本気で来い、なんて言っておいてこれ?
 …童男クンの言う通り殺す気でなんてやらなくて良かったかもしれないね」

彼がこれで終わりにするというなら、それでいい。けれど──

「二度と私は君と戦わない。模擬戦でも。
 それでいいなら、手を抜いて相手を軽率に扱い続けるといい、と思う。
 ──少し、幻滅しちゃったな」

怒気は鳴りを潜め、やや悲しげにその視線をそっと外す

持流 童男 > 「手を抜いて相手を軽率に扱い続けるでござるかぁ。いやぁこれは手厳しい。
・・・・はぁ、わかったでござるよ続けるでござる。
だからそんな悲しげな眼をするんじゃないでござるよ」

頭をぼりぼりと掻いてから。
右腕に英雄の一撃30パーセント、両足に30パーセントをかける
畳が、震えて。大気が震える

「・・・お主の期待に応えられるかどうかわからないでござるが。ケガしても文句言わないでくださいでござるよ」

そういってから凛霞さんの目の前に移動して出力30パーセントの拳を放つ
30パーセントは、地面が陥没するくらいの力だ!

伊都波 凛霞 >  
「だってそうでしょ?
 相手には本気を出せ、といって自分は本気を出さない模擬戦に何の意味があるの?」

──彼の言わんとしていることは理解る
彼が本気を出せばどうなるか、ということだ
けれど、それなら尚の事、なぜ模擬戦をやろうなんて言い出したのかがわからない
そこになんの意味が、何の目的があるのか…‥

「──ああ、あと…」

ドンッッ!!
拳を透かすように身を懐に入れ、その巨体を弾き飛ばす
地面が陥没?それどころの衝撃じゃない。小さく、貫く銃弾のような鋭い衝撃が男の体を貫き、背中から放出された

「多分キミが100%の力を出そうが、私を殺すどころか倒すことも出来やしない。──そんなぬるい力じゃね」

持流 童男 > 「---っ」
吹き飛ばされて、思いきりぶっ倒れる。

強い、本当に強いな。

正直満身創痍だ。地面が陥没するどころじゃない衝撃が、銃弾のような衝撃が、体を貫いてから、片膝をつく

「・・・まったくでござる  な。」

意識は何とか保っている。

伊都波 凛霞 >  
「またやられたフリ?」

片膝をつく彼を見下ろすようにして、厳しい視線を投げかける

「その程度じゃないでしょ?童男クンは」
「自分自身の、とんでもないパワーの一撃を返されてもピンピンしてたじゃない」
「私をケガさせるのが怖い?殺してしまうのが怖い?」

「それは、力を扱いきれてないのと何が違うの?──立って、戦って」

「まだ終わりじゃないでしょ」

再び距離をとって、凛霞は"構え"る

それは、己の力から逃げるのと同じ
己の持つ力という責任から目を背けるのと同じ
怪我させるかもしれない?
殺してしまうかもしれない?
そんなことを、自分の力に責任転嫁させてはいけない
それは、力を持つモノが背負う覚悟、宿命だ
力を使いこなせているなら、自信をもって拳を振れるなら
そんな恐怖は、覚えるわけがない──

持流 童男 > まだ終わりじゃないでしょその言葉に
心が震える。

そうだ、まだ、まだ終わりじゃない。
少し前のなめ切った自分を殴ってやりたい。
少しだけ・・無茶をするか

自分の顔面に拳をたたきつける。
意識を覚醒させてから、痛む体を精神力で起き上がらせる。

「そうでござるな・・・まったくで御座る」

そう言った瞬間、背後に一瞬だけ気迫で獅子が見える。
ドウオが本気になった証拠だ

英雄の一撃:90パーセント、両足90パーセント 
ドウオとしての全力100パーセント

「言い訳並べてお主から、この力から逃げてたでござる」

そう言ってから凛霞さんを見据える

「異世界で、不撓不屈の童貞英雄と呼ばれた、その由縁見せてやるでござる」

シュートスタイルをとってから、蹴りのラッシを凛霞さんに浴びせる

90パーセントは・・・


地震を止めるほどの力である。

伊都波 凛霞 >  
「………」

僅かに息を飲む
彼の、童男の空気が変わったからだ
さっきまでの、手を抜いていた彼じゃない

「(──すごい重圧。銃を持った人間10人に囲まれたって、こんな緊張感は──)」

かつて13の世界を救ってきた、と男は言う
そしてその由縁を見せると宣言したその攻撃は──

ここにきての、蹴りの乱射
巨体を持つ彼のこと、当然リーチも長く、撓る
軌道を読み難ければ、その速度も比類ない
その全てにカウンターを返すのには、無理がある

「…く──!」

力を受け流し切れない
道着の背が、肩が逃しそこねたエネルギーによってほつれてゆく

返し、だけでは対応できない

「(──見切れ!)」

蹴りのパターンなんてそう多くはない
彼のリーチが長かろうと、射程距離は同じ、出どころとて同じ
人間である以上、その関節の駆動域にも限界がある

直前の鋭い蹴りを、流すではなく、避ける
そしてそのまま──攻撃の勢いが残る彼の身体へ向け、双掌による掌打を打ち放った
蹴りの力がその身に残るエネルギーカウンター、プラス、その強固なる腹筋の裏側へ浸透させる、浸透勁──

"鎧通し"

本来生身の相手に使うような技ではない
しかし彼の鎧のような骨格と筋肉に効果的に、まともにダメージを与えるには──最適だろう

持流 童男 > 「・・・・ぐっ」

鎧どおしを受ける。

90パーセントの力を出している、
現在すさまじい痛みが、蒸気が彼を襲っている。常人ならば、13回ショック死しているが
不撓不屈の精神力で耐える。

鎧どおしを受けて体の内部に衝撃が伝わる。
このままでは意識が飛ぶと思い、
内側の筋肉を凝縮させて、衝撃を軽減させる。
体に衝撃は残るが、先ほどのダメージよりかはましだ
なかなかに効く
いい技を持っているな
そう思いつつも

凛霞さんに対して、一歩踏み込んで、


「征くぞ」

本気の英雄の一撃の90パーセントのただの正拳突きを放つ。
痛みがあるが、平然とした様子で、凛霞さんに言い放つ

伊都波 凛霞 >  
手応えはあった、が…ダメージは然程でもないようだ
衝撃がその身体を貫く前に、何らかの方法で分散させたか
カウンターでもあったし、一撃KOを狙えるかなとちょっとだけ期待したのだけど

彼はすでに、次の攻撃の準備に差し掛かっていた

「そうそう…、さっきまでよりよっぽど、男らしく見えるよ。童男クン…」

ようやく、と言ったところではあるけれど

──あの正拳突き、まともに喰ったら受け流すどころの話じゃない
直感的にそう判断し、跳ぶ

「さっきも言ったけど──」
「──"真っ直ぐ"すぎるっ」

超速の正拳を放つ、その手首を逆手に捉える
速いには速いが、軌道が読めれば対応することはできるという見本だ
もちろん、相応の動体視力と反射能力は必要だが──

手首を逆手に捉え、勢いに身を任せる侭に肩口を両脚で挟み込む
姿勢を撚るようにし旋回し、彼の背中へと組み付き、その首を腕で拉ぐ

彼の骨格が強固であれば強固であるほど、筋肉が強ければ強いほど、その脊髄、その背骨へと強圧がかけられる

"絡み十文字"

見た目の鮮やかさとは裏腹に、実に極悪な──組技である
尚、おっぱいが思いっきり後頭部に押し当てられるがそんなこと気にしてられないぐらいに痛い技である

持流 童男 > 「ぐ・・・!?」

正拳突きをとらえられ、肩口を両足で挟み込まれる
背中に組み付かれて、首を腕で拉される!

このままではいかん・・!急いで離さなければいけぬでござる・・!
脊髄と、背骨に強圧がかけれられ痛みに、わずかに顔がゆがむ

「・・・っく・・!やるでござるな。凛霞殿・・!
だが・・・小細工では某は倒せん!!」

そう言ってから体を軸に振り回して
離そうとする!

何とか意識を保っている!

伊都波 凛霞 >  
「──残念。この技は別名蜘蛛絡みとも言って…──」

振り回されても、まるで剥がれ落ちる様子はない
力任せに引き剥がそうとすれば、更に身体が悲鳴を上げるだろう

「──もがけばもがくほど、深く食い込むことになる」

肉体により深く食い込み、締め上げられてゆく
骨格が、筋肉が悲鳴をあげてゆく──

「"力"だけでは無理。抜け方もちゃんと在るけど…──企業秘密、だよ」

耳元でそう囁いて、更に強く、呼吸器を塞ぐようにして喉笛を押しつぶした

持流 童男 > 「ぐっ・・・!!!」

そう言ってから喉笛を押しつぶされて、
昏倒する

あぁくそ、強いな。某もまだまだか。

知られざる英雄に振り回されてたのでござるな。某は

・・・まったくこれで次に生かせるでござる。

ありがとう

そう思いつつも、意識を失い倒れ伏す

伊都波 凛霞 >  
「………」

倒れ伏した童男から離れ、上体を起こす
その背中、背骨のちょうど中央へ膝を押し込むように当てて
更に両手を両肩に、肩甲骨で、自分の膝を挟むように──

「はっ!」

グッ、と力をいれる

──武術をやっていると、相手が気をやってしまうなんてことはよくあることだ
こうやあって、そういうことが起きるたびに気を入れるのも、慣れ、技の一つである

よっぽど変な状態になっていなければこれで意識は回復するはずだが

持流 童男 > 「ぐっは!!!?」

そう思いつつも意識は回復する。

「・・・・強いでござるな。凛霞殿は
まさか締め落とされるとは」

そう少しだけ、悔しそうに、寝転がりながら凛霞さんを後ろに見る
しばらく体が動きそうにない。
まぁいざとなったら無理やり動かせばばいい

「まったく、英雄を倒すだなんて、本当にかっこいいでござるぜ、凛霞殿。本気でやって負けたでござる」

悔しく、しかしすがすがしく言う

伊都波 凛霞 >  
「お疲れ様!」

視線を向ければ、笑顔でスポドリを差し出す凛霞が見えるだろうか

道着はところどころほつれ、その顔や頬にも汗が伝う
──決して楽な勝利ではなかったことを、それで見て取れるはずだ

「だぁって、全部の攻撃が正面から真っ直ぐにしか来ないんだもん。
 力だけはすっごかったけど、よくそれで今まで通用してたね…?」

そう言って、自分も自前のドリンクの蓋を開けて口へつける

「みんながみんな正面から戦ってくれるとも限らないよ。
 特に私達、風紀委員なんかは余計にね」

そう言って、にっこりと笑顔を浮かべた

持流 童男 > スポドリを受け取りつつ
道着がところどころほつれているのと
すこしだけ胸を見てしまう。男の子だもん!

今まで通用していたと聞かれれば

「ふっ、そうでござるな。
まぁ、今までは、ちょっといろいろとあってでござるな。
力だけでなんとかなってたでござる」

そう言ってから義手のほうでスポドリを飲む

「あぁ、確かに今回のお主との戦闘でわかったでござるよ
凛霞殿。なかなか戦闘っていうのは奥が深いでござるな」

そうこちらも笑顔に応じた

伊都波 凛霞 >  
「ふふ。本気で戦ってみて、負けてみて…何か見えた?
 ……って、見えたってそういう意味じゃないからね!?」

視線に気付くと慌てるように、顔を赤くして道着の胸元を抑える
言うほどボロボロというわけでもないけれど、視線は気になるものである

「だから私は最初に聞いたの。異能を使うか、どうか。
 君、異能を使って全力で戦えないんじゃない?」

近くに座り込んで、そう問いかける

持流 童男 > 「・・・・痛いところを突かれたでござるな」
そう少しだけ笑う。

「凛霞殿の言う通りでござる。100パーセントを使うと以前は体のどこかに大やけどでござった。それでこの世界にきて鍛錬してたらその箇所にだけ大やけどを調節することができたでござる。」

そう全力で戦えないことを言った

「・・・凛霞殿。お主は、もしも大事な人を必ず助けられてから
異能の代償で大事な人に忘れられたことがあるとしたら、その異能を使うでござるか?」

そう悲しい表情をして凛霞さんに言った

伊都波 凛霞 >  
「………」

それは唐突な質問だったけれど、少女は真面目な顔で、倒れている童男の顔を見つめていた
数瞬の後、口を開いて…

「使わない」

はっきりと、そう答える

「ねえ童男クン。大事な人って、一方通行では成り立たないよ。
 お互いがお互いを、大事に思ってこその大事な人、なんだよね?」

「その人の心に空洞を作るのと同じだもの。
 そんなの、助けたって言えない…と、思う……」

実際にそんな経験をしていないから、想像するだけだ
けれど、自分がその立場だったら
果たして助けて欲しいと思うだろうか
必ずでなくともいい、共に困難に立ち向かってもらえたほうが良いと
そう思ってしまうのではないだろうか──

「それに…」

「そんな悲しそうな顔して、誰かの答えに縋らなきゃ使えない力なんて…使わないほうがいいよ」

そう言って、もう一度笑顔を向けるのだった

持流 童男 > 「・・・それを13回繰り返してきたんでござる。
もちろんお主たちに会って、今は使う気はないでござるが」

そう悲しく少しだけ笑顔で笑って


「・・・凛霞殿、お主、記憶とか見れるか?もし見れたのなら
・・某のしたことを誰かに覚えていてほしいでござる。ただ、気持ち悪い記憶故・・お主が嫌ならいいでござる。」

少しだけ悲しく笑いながら凛霞さんに言った。

伊都波 凛霞 >  
「13回も繰り返してきた、大事な人との別れの記憶を…気持ち悪い、なんて言っちゃダメ」

少しだけ強い口調
やや自虐的なところ、英雄としての自負心、自意識過剰な部分…
こんなにもチグハグになってしまっているのは、彼のこれまでの生き方故なのだろうか

「サイコメトリーで見れるのは断片だけだよ。
 だから、童男クンは…これから出会う誰にも忘れられないように生きてけばいいと思う。
 まだ30歳でしょ?男の人は30歳からが本番、って言うじゃない」

ぺちん、とおでこに一発景気づけ、やわらかな掌で優しく叩く

「それに、そんな異能使わなくたって、人を助けることはできるよ。
 そんな悲しそうな顔さえしてなければ、ね」

持流 童男 > 「・・・凛霞殿頼らせてくれでござる・・・どうやったら異能を使わないで・・・人助けできるか・・!!!」

そう泣きそうになるの我慢して頼る

「こんな情けなくて気持ち悪くて弱い某でも、異能を使わないで
人を助けることできるんでござるか」

「13世界を渡って、すり減っちまった弱い某でも・・その方法はあるんでござるか・?」

そう凛霞さんに問いかけた

伊都波 凛霞 >  
「童男クン」
「"異能なんてないのが普通"なんだよ?」
「此処では、沢山の人が色んな異能を持っているけど…」
「それでも、島の外では異能のない人達が、人同士で助け合って生きているでしょ?」

何も難しいことなんてない
普通の人間だって誰かを助けたり、助けられたりしているのだから

「童男クンだって、生まれつきそんな力を持ってたわけじゃないんだよね?」
「異能に頼って人助けすることに、慣れ過ぎちゃった?」

問いかけながら、倒れている彼の手に、そっと自分の手を重ねる
華奢で細やかな…女の子の手だ

「童男クンにはこんなにおっきな手が、おっきな身体があるじゃない。
 異能なんて使わなくたって、たくさんの人の助けになれるよ」

持流 童男 > 「慣れすぎた・・・うむ・・慣れぎてたのでござるな」

そう言ってから重なっている女の子の手を、
凛霞さんの手を見て

「・・・・はは・・こんな・・・
こんな簡単なことだったんでござるな。
誰かと助け合う、そんな簡単なことだったんでござるな」

そう涙を流すのを我慢する。

「・・・凛霞殿・・ありがとう。ここから先は涙が流れそうなんで、かっこつけられないので・」

そう言ってから倒れつつも顔を伏せる。
頬を涙が駆け抜けた。それを見せないようにする。

伊都波 凛霞 >  
「どういたしまして」

顔を背ける彼に、笑顔のまま言葉を返す

「人は、弱いから」

「間違ったりもするし、迷ったりもするし…踏み出せなかったり、足元も見えなかったり」

「私の父様は言ってたよ」

言いながら、片膝から立ち上がる
なんとなく、天井を見上げて

「『男の涙は過去の弱い己との決別』なんだって
 誰かが死んじゃった時、痛い目にあった時、喧嘩に負けた時、恋に破れた時……。
 だから、一度泣いた後、男は前の自分よりも強くならなきゃならないんだってさ」

持流 童男 > 「うん・・・うん・・・・」

そう震える声で、顔を下に向けて泣いている

「・・・・すまぬ・・すまぬ・・・強く・・なるから・・・
強くなる・・・・」

涙で前が見えない。

「・・・・しばらく・・このままでいさせてくれでござ・・る。うっとおしかった・・・ら、出て行って構わぬでござ・・る」

そう倒れ伏しながら涙で顔を濡らして泣いている

伊都波 凛霞 > 男泣き、というにもあまりにも、な泣き方
でも、彼はそれくらい思いつめていたということなのかもしれない

「はい。下を向くのはダメ、頑張って上を向こうね」

男の子…という年齢ではないかもしれないが、きっと年齢なんて関係ない

一度立ち上がった凛霞は、再び膝を降ろして、童男の頭を抱えあげて、柔らかなその上へと誘う
涙の先に、滲んだ天井と、凛霞の顔が見れるだろう

「恥ずかしい、なんて思うならさっさと泣き終わること! …ね?」

元気づけるようにそう言葉をかける凛霞の顔も笑顔だった、が──
溢れるその涙の向こうでは、それも見えなかったかもしれない
そうして、この大きな男の子が涙を拭えるまで、そうして膝枕をしていた、かもしれない

ご案内:「訓練施設」から伊都波 凛霞さんが去りました。
ご案内:「訓練施設」から持流 童男さんが去りました。