2020/09/24 のログ
ご案内:「訓練施設」にジーン・L・Jさんが現れました。
ジーン・L・J > 放課後の訓練施設の1つに、夜闇より黒いスーツを纏う人影、肌は目を覆う包帯は雪のように白く、コツコツと靴音を鳴らすハイヒール、そして口元を彩る紅は血のように赤い、黒と白、そして赤、それだけがこの人影を構成する色彩だ。
この島は基本的に、少なくとも学園とその生徒が暮らす地域は治安が良い、ということは警察機構が機能しているということであり、ジーンにとってはそこそこ息苦しいことでもあった。
狩りの得物を持ち歩くことも許されないのはまるで体の一部をもぎ取られたように感じて少々ストレスを覚えていたのだ。
そこで目についたのがこの訓練施設。ここなら武器を振り回そうが魔術を行使しようがお咎めなし、むしろ推奨されるという素晴らしい空間。
授業を終えたジーンは意気揚々とやってきたというわけである。

ジーン・L・J > 火の点いてない煙草をくわえながら――この時代の悪いところの1つ、煙草をどこでも吸うことが出来ない――パンフレットを見ながら説明を見直す。
エネミーを出現させて戦うことが出来るらしいが、とりあえず数十年寝続けた体を起こすことから始めることにした。つまりは演武だ。パンフレットをスーツのポケットにしまう。
空いているドームに入り、煙草に火を点けてから空中に手をのばす。
「おいで。」
記憶の中に鮮明に残る得物の形、素材、構造、存在の根幹に打ち込まれたそれの記憶は例えどれほどの時間が過ぎてもぼやけることはない。
魔力が形を為し、鋭利な刃と鋸刃の2つを持つ曲刀、刈り取りを手の中に作り出す。
同時にそれと合体するための2つ折りの柄の重量を背中に感じる。
「やっぱり、こっちのほうが私って感じだね。じゃあ軽く、3分。」
砂時計を作り出すと逆さにしてグラウンドの端に置いた。砂が落ちると同時に中央へ向けて駆け出す。

ジーン・L・J > 踏み込んで回転しながら振り下ろした鋸刃が空想の敵の肉を削る。しかしそれで止まるような敵を想定していない、反撃を避けるため慣性を関節で柔軟に受け止めながら右に向きを変え、ステップしながら手の中で刃を半回転、鋭利な刃が傷口を更に深く切り開く。
グラウンドを転がりながら左手で鋭利なトランプのカード、切り札を2枚作り出して投擲する。
ジーンは止まらない、そのまま立ち上がる動作の途中で刈り取りを背中の柄に接続し、長柄の戦鎌へと変形させる。ジャキン!と金属音を響かせながら伸びた柄を脇の下越しに掴み、下から切り上げる。
全ての動作は繋がったダンスのように無駄なく、兵士の学ぶ格闘技のように容赦なく、明らかに人間より数倍は大きいサイズの仮想敵を切り刻んでいく。

ジーン・L・J > 舞のような武が続き、砂時計の最後の砂が落ちると同時に、渾身の突きが想像の中の敵、満月の獣の心臓を貫く。
「…………すぅー……ぷはぁ…」ここで火を点けてから初めて煙草の煙を吐き出す。今までの動作は全て無呼吸、酸欠による頭痛と指先のしびれが急速に引いていくのを覚えながら、血振りのように刃を振るう。

「鈍ってないだけマシ、ってとこかな。」
汗一つかいていない額を格好だけ払う、汗は体を伝い、滑ることで手元を狂わせる、そういった身体機能は持ち合わせていない。
「でも、どうなんだろうねぇ。満月の獣を見た者がいないのは当然として、魔術結社の痕跡もなし、他の狩人の痕跡もなし、今の所狩人は私だけ、獣の方も、どうなんだろうな、《大変容》で跡形もなく消えててくれたら嬉しいんだけど。」
言ってから自嘲するように笑う。そんな楽観は出来ない。奴らは今も闇の中で人を食らっている。そしてそれを止められるのは私だけということだ。

ジーン・L・J > 「しっかし…」とグラウンドを見渡す、それなりに刈り取りの刃や石突で切り刻み、叩きつけたというのにどこにも損傷はない。
もちろん自分は力自慢でもとんでもない武器を持っているわけではないし、壊して弁償という話になっても困るのだが……。
「一通り暴れても何もなしってのはちょっと悔しいね。一体どれだけの強度があるんだい?ここ?」
全力で攻撃しても破壊は無理だろう、となると同じ作りの部屋に閉じ込められたら自分は抜け出せないということになる。
この学園の技術、魔術のレベルはやはり、自分のような骨董品を遥かに凌駕している。
砂時計と刈り取りを魔力に分解してドームから出ると、適当なベンチに座る。
「すごい時代になったなぁ、ホント。」

ジーン・L・J > 「さってと。」短くなった煙草を灰皿に放ると、綺麗に穴にホールインワン。
「そろそろ帰るか、明日は金曜日でそしたら土日だけど…カレンダー通りに過ごすなんて初めてだなぁ。」
狩人として生まれてそのまま死ぬと思っていた自分に突如生えてきた学生という身分、それに違和感と可笑しさを覚えつつ、訓練施設を後にした。

ご案内:「訓練施設」からジーン・L・Jさんが去りました。