2020/10/04 のログ
ご案内:「訓練施設」にラピスさんが現れました。
■ラピス > よいこらしょ、と魔法のトランクを引っさげて、やって来たのは訓練施設。
頭上には、最近のオフで定番になったちびくろにゃんこをぺとりと乗っけて。
なぅー、と時々鳴く黒のふわもこを時折撫でたり擽ったりしながらのエントリー。
へっぽこ教師が借りるのは、魔術の行使が可能な区画。異能や魔術の試し打ちをする場所。
「……で、試し打ちをする訳ですけど、クロはそこから動く気ねーですな、これ」
いくつかの的が並ぶ射的場めいた空間。その中の射手が立つ位置で、へっぽこ教師はポツリとぼやく。
頭上のにゃんこは、さも当然、と言わんばかりに、なーぉ、と鳴いて、しっぽをてふてふ。
破片で怪我でもしたらどうするのか、とも思うが、こにゃんこがいなかったら頭にダイレクトだ。
結局どっちにしろ危ないのでは、と結論づけると、ふむむぅ、と難しい顔で少々思案。
その後、結局諦めたのか、近くの床にトランクをおいて、ぱちりと留め金を外し、中を物色。
「ま、それじゃ落ちたり転がったりしないようにお願いしますよ?」
独り言めいた呟きとともに、トランクから取り出すのは細長い機械的なフォルムの錫杖だ。
へっぽこ教師の背丈からおよそ七割ほど――1m近い長さのそれは、先端に七色の宝石を嵌め込んだもの。
それは、へっぽこ教師が興味本位で作ってみた、魔法具の試作品。自分専用にチューンした魔導杖である。
今日は、暇潰しの工作が一段落したから、実用性のテストの予定。白衣に杖、気分だけは魔法少女だ。
■ラピス > 魔法の杖というと、多くあるのは霊木などの由緒ある素材を使った代物だ。
用いた素材の霊験があらたかであればあるほど、魔術への親和性も高いのだろう。
他方で、へっぽこ教師が作った魔導杖は、一見すると白色の金属棒。イメージはトーチだ。
石突からほっそりとしたフォルムが伸び、切っ先は直径12cmほどの金属球になっている。
その側面に、白・赤・青・緑・黄・紫・透明の宝石が、用いる精霊に対応してそれぞれ埋め込まれる。
事前に契約した精霊から譲り受けた、それぞれの力の結晶。それを用いて、魔術を行使するという寸法だ。
お陰で、お菓子を年単位で定期的に差し入れるという習慣が新たに生まれたわけだが――。
「それじゃ、まずは起動確認から参りましょうかー!」
――閑話休題。杖に向けて魔力を通すと、切っ先の宝石が揺らめく様に光を帯びる。
ぽわぽわとした七色の燐光が、先端の球体に纏わりつくようにチラチラと瞬き始める。
それこそが、魔力を充填した結果。魔導杖の起動の証である。とりあえず、ここまでは想定通り。
なるほど、こんな感じになるのか。自分で作った素敵な玩具に、すっかり上機嫌なへっぽこ教師である。
■ラピス > 頭上のこにゃんこは、杖の先から立ち上る魔力光に向けて肉球を伸ばし、ぺふぺふたしたし。
魔力光はこにゃんこに当たると、淡雪のように消えていく。それはさながら、実態のない蛍の様で。
なおぅ。なおぅ。こにゃんこも興味津々な杖の先を、へっぽこ教師は彼方の的に向けて。
「さて、起動は完了したので、次は出力確認です。
基本的な術式で、的を破壊できるか試してみましょう!」
ではでは、と前を見据えて、イメージするのは魔力の塊。霧散する魔力に指向性を与える。
同時に、自身の体から杖に魔力を通し、杖に先に集約させる。出来上がるのは円形の光球。
次に、集約した魔力と精霊から譲り受けた宝石を呼応させて、魔力の属性を変換する。
まず試してみるのは、炎熱魔法。光球は赤色に変わり、やがてちろりと火が立ち上る。
「右よし、左よし。人が居ないなら、行きましょう!――《火矢》!」
扱う魔術の名を唱えれば、切っ先に宿った炎は空間を走る矢になって、杖の切っ先から放たれる。
それは、そのまま的まで一直線に突き進み、中心よりも若干右上の辺りに突き立って、ぼん、と爆ぜる。
極小規模の爆発と同時に、的は炎に包まれて、やがて焼け落ちるように消えていく。中々の威力だ。
ご案内:「訓練施設」にセレネさんが現れました。
■セレネ > 不慣れな武器の扱い方の練習の為、今日も刀を手にやってきた訓練施設。
武器を扱う用の的や人形は此処にはないけれど魔術を扱う身としてはやはり気になって立ち寄ってしまうのだ。
そんな中一人、杖を持ち詠唱魔術により的を燃やし尽くした小さな後ろ姿を発見して蒼を瞬かせ。
白衣に銀髪、そして頭上の黒仔猫。
どこからどう見ても己の仲良しさんだ。
少し距離を開けたところで立ち止まり、刀を杖代わりにして少し体重を乗せつつ黙ってそれを眺めて居よう。
とはいえ仔猫がいるから、己に気付いて存在を飼い主に伝えるかもしれないが。
こんな珍しい機会、黙って見るに決まっている。少なくとも己は。
■ラピス > 「……なるほど、なるほど?威力はそこそこ、消耗は無手より軽い、と。
これは、威力の向上よりも、変換効率に分がある感じでしょうかね……?」
一応、へっぽこ教師も魔法使いの端くれ。準備をすれば無手から魔術を行使出来る。
例えば、先に詠唱しておいた魔法を書いた単語帳を用意して、魔術の名と共に切り離すとか。
或いは、準備となる段取りを全て省略し、多めの魔力を精霊に献上して、詠唱を割愛するとか。
だが、それとは別に、錬金術で杖作ったら楽しそうだなぁ、とか思ってしまった結果がこの杖だ。
金属部分も錬金術を用いて産み出した魔法金属を用いて、平時は指輪に変わる機能も備えた一品。
性能は想定よりやや異なるものの、概ね許容範囲。これなら、実用性は十二分だろう。
「では、他の属性の魔法もテストしておかないとですね」
杖を構えて、再び魔力の収束を開始。今度は氷の魔術を行使するつもり。
白い魔力が切っ先に収束し、青色を帯びて冷気を纏う。後はそのまま――。
「行きますよぅ――《氷針》!」
生み出されるのは、氷柱の如き冷徹なる針。それが、勢いよく的に向かって疾駆する。
それはそのまま、的の左上を直撃すると、着弾点の穴から周囲には、花咲く様に氷が広がる。
そして、そのままぺきぺきと凍てついた穴開きの的は、やがて重さでごろりと落ちていく。
その様子を眺めているへっぽこ少女。その頭上では、やって来た何者かに気づいたこにゃんこが鳴く。
なうなう、てしてし。てしてしてし。来客だよ、と告げる肉球の連打は、ふにふにで気持ち良い。
「……うぃ、いい感じですねぇ――っと、なんですか、クロ?」
なおぅ。ぺふ、と別の肉球が後頭部を叩く。こちらを向けということか。
何ぞ、と振り向けばそこには、仲良しの彼女ウィズ刀。ひゅう、かっこいい。
「うや、こんばんはですよ、セレネちゃん」
とりあえずはご挨拶。そこから先はノープランである。
■セレネ > 己の場合基本、杖や魔術・魔導書等の媒体は用いない魔術を行使しているので
術式でのみの属性変換の効率のみ突き詰めているタイプだ。
己の魔術の形態は兎も角、今は彼女の魔術を観察。
彼女自身の魔力が杖の先に集束し属性が変換される様を視る。
変換魔術を用いていないように視えるが、成程杖にある宝石を使用しているのか。
先程は炎だったが、次は氷。
着弾後即座に凍結して重力に従い落ちていく様を眺めては蒼を細め。
あの宝石は実に変換効率が良さそうだなと感じる。
…ちょっと欲しいと思ってしまった。
すると案の定、気付いた黒仔猫が肉球でてしてし飼い主の頭を叩いている。
真ん丸な青が此方に向けば、片手を小さく上げてフリフリ。
「こんばんは。
邪魔するつもりはなかったのですが、珍しかったのでつい…。」
鞘に収められた刀を持ち直すと彼女の傍まで改めて歩いて行こうと。
■ラピス > 炎と氷。相反する属性の魔術でも、変わらず切っ先から放つことが出来る。
テストは終わっていないが、他の属性――月・木(風・雷)・金・土・日も同様に使えるはず。
之ならば、へっぽこ教師としても十分満足。いい感じに使えそうじゃないですか、とご満悦。
眼前の彼女にもその様子を隠すことなく、ふふりと若干自慢気に胸を張りつつ。
「思いつきで作ってみた、先生用の魔法具なのですよぅ。
魔力の変換効率が上がるので、省エネ出来る良いものなのです。
――して、セレネちゃんも訓練です?刀をお持ちのようですが……」
じぃ、と見つめる視線の先には、すらりと細い刀剣が一本。
しっかり手入れされていれば、間違いなく切れ味の良い逸品だろう。
ただ、彼女は魔術使いじゃなかったっけか、という疑問に、こてんと首を傾げてみる。
その頭上では、こにゃんこが杖の切っ先にうずうずとしながら、光をたしたし消していた。
■セレネ > 作ってみた、という事はまさか自作の品なのか?
魔法具、魔道具を作るのはかなり難しく、また手間もかかる物なのだというのは己自身も良く知っているけれど。
それでもその多様な属性の宝石を一つの杖に纏める技術も素晴らしいと感じた。
「魔力を如何にして余さず変換出来るかも魔術使いにとって大切ですからねぇ。
…えぇ、ちょっと運動も兼ねて。」
不思議な事に、手入れをせずとも切れ味が落ちない優れものの刀のようで、
この間も討伐した怪異を取り込んでいたのが気になって試し切りに来たのだ。
首を傾げる彼女の疑問は口に出さずとも分かる。
己は魔術を用いて戦うのが常だ。だが、武器を用いる戦闘法も覚えておいて損はない筈。
頭上の黒仔猫が光を小さな手で消している。
その仕草が可愛らしくて思わずクスクスと笑ってしまいつつ。
■ラピス > 彼女の思った通り、この杖はへっぽこ教師が作ったものだ。
予てから色々構想を練って、道具を揃えて、ひっそり計画していた研究の成果。
へっぽこ教師なりに生徒を守れる程度に強くなってみようと考えた末の代物である。
特に、フォルムを滑らかにするのに大変な苦労をしたらしいが、長くなるので割愛。
「ですです。効率がいいだけで、戦える時間や倒せる相手が変わりますからね。
――ほむ、運動ですか。それにしては物騒なものを携えてますが、まぁ良いです」
セレネちゃんは悪用とかしなさそうですからねー、とにこやかに頷いて見せて。
頭上のこにゃんこが光で遊びやすいように、杖を近づけてやりながらのんびり談話モードに入る。
こにゃんこは、特に白色の魔力光がお気に入りなようで、見つけてはてしてしと消しにかかる。
白色の魔力は、夜を示す星や月の魔力だ。黒猫的に気になるなにかなのかもしれない。
逆に、仄かに暖かく光るオレンジは少々苦手な様子。太陽を示す日の魔力だ。流石、夜行性である。
■セレネ > あの純度の宝石を取り揃えるのは大変だったのだろうなぁとか、
まさか彼女が精霊にお願いして揃えたものだとは露知らず。
是非とも間近で眺めてみたい所だけれど、その気持ちはぐっと堪えて。
「すべての属性を満遍なく効率よく扱えればそれが一番なのですけど、
人によって体質もあったりしてそうはいかないのがネックですよね。
…まぁ、だからこそそういった変換効率の為の媒体は必要なのですが。
普通に運動するより、武器の扱い方も覚えた方が効率的かと思いまして。」
危険な物を持ってる手前、下手に悪用しては風紀に目を付けられかねない。
それにこれを譲ってくれた彼にも悪いから正しく健全な扱い方をするつもりである。
漂う月の魔力に、良いなぁという羨ましい気持ちが強まる。
あの仔猫は漂う魔力を分かっているのか、日の魔力は苦手なようだ。
…親近感。
■ラピス > 先端の宝石は、この世に該当する宝石があるかもわからない精霊の力の結晶だ。
もしかしたら、超高純度の石英や翡翠、紫水晶などでも同じ効果が得られるのかもしれない。
とは言え、自然発生するそれらを買うとしたら、石油王になる必要があるだろう。
それ故、へっぽこ教師は馴染みの精霊達に定期的な供物を約束して、どうにか譲り受けている。
無論、これでも純然な力としては弱い方で、出力は増幅されない。蛇口のパイプが太くなったわけではないのだ。
「先生は半精霊だから精霊と仲良しで色々出来ますが、普通はそうはいきませんからねぇ。
セレネちゃんみたいに、魔法の源がしっかりしている場合も、恐らくはそうかと思いますよ。
武器、ですか。刀は扱いが難しいと聞きますので、怪我には十分注意してくださいね?」
よく切れる刀は、振り下ろす際に自分の体――特に足を切りかねないという。
そのため、自然と袈裟に切る――斜め上から斜め下に刀を振る形になるのだとか。
真横に振るうのは刀を支える必要がある反面、振り下ろしは刀の重さを利用できるのも要点か。
何れにせよ、彼女が刀術を学ぶと言うなら、詳しい先達が居たほうが良いような気もする。
頭の中に紹介できる相手が居ないため、ふむー、と少し悩んでから。
「こう、刀術や剣術に詳しい相手に師事するのも良いかもですねぇ。
――っとと、クロは魔力を消す遊びが大分気に入ったようですね、全く」
こにゃんこは尚もたしたし。主の魔力浪費を楽しむばかり。
その内、ずるんと前にゆっくりずり落ちてくるが、転げ落ちる寸前で止まる。
そしてそのまま、たしたし、たしたし。杖を叩く代わりに、へっぽこ教師のアイマスクと化していた。