2020/11/12 のログ
ご案内:「訓練施設」にラウラ・ニューリッキ・ユーティライネンさんが現れました。
■ラウラ・ニューリッキ・ユーティライネン > 射撃訓練を終えて、帰ろうかと思ったところ。
誰かが近接戦の練習をしているようだった。
「あれは……風紀委員ですか」
どうやら、訓練をしている二人組の片方は風紀委員のようで、
剣を振るう姿が外から見て取れた。
(曲がりなりにも風紀委員、動きは相当のようですが……)
何と言うか、集中していないように見える。
動きが惰性的というか、心ここにあらずというか。
(気になりますが、さて。どうにか声をかけるきっかけが欲しいですね)
戦闘。
この島に来てからほとんどしていない。
本当に命のやり取りをするような戦闘行為は嫌いだが、
訓練として身体を動かす手合わせは好きだ。
「えっと……初めまして。
もし不都合がなければ、手合わせをお願いしたいのですが……」
勇気を振り絞って、消えそうな声を振り絞って、声をかけた>
■レオ >
「…、……」
汗を拭くのすら億劫になりつつ、かけられた声に反応する。
暗く淀んだ瞳。
金色のそれには光はなく、どうにも心ここに非ずという印象を受ける。
「……すみません。
今は………その……」
口が上手く回らない。
言葉の発し方すら忘れたかのように、しどろもどろになる。
言葉を選べない。
何を言えばいいのか、わからない。
「……加減が、でき…なくて。
その……
僕、よりも…他の人のが、いいと…おもいます、多分…」
なんとか絞り出す声は、弱弱しく。
相手の方も向いてはいられぬように、目を背ける。
■ラウラ・ニューリッキ・ユーティライネン > 「……」
遠くで見たときは、何となく集中していないような印象だった。
声をかけてみると、その印象は少し変わった。
「そう、ですか。
お疲れでしょうし……とりあえず、座りませんか?」
その瞳には見覚えがある。
戦場を見て、疲弊しきった兵士の眼に似ていた。
だから、汗すら拭かずに立ち尽くす彼には
無難な言葉しか掛けられなかった。
「す、すみません。
名前も名乗らずにいきなり声をかけてしまって……。
私、ラウラって言います。
ラウラ・ニューリッキ・ユーティライネンです」>
■レオ >
「…ぁ。
すみ、ません……」
気を使われたのに後になって気が付き、謝る。
たどたどしい足取りで椅子まで近づいて座れば、だらりと項垂れるようになってしまうだろう。
なんとか顔を女性の方へと向けるが、やはり、くたびれた様子だろう。
「…ラウラさん、ですか。
…‥あ、すみません……名前、です、よね……
レオ…レオ・スプリッグス…ウイットフォードです。
…すみません、模擬戦、お誘いしてもらったのに」
すみません、が口癖なのかと思えるほどに発しながら、息を吐く。
体が疲れ切っている訳ではない。
ただ、模擬戦で一瞬、未遂で止まったとはいえ”殺す気”で動いてしまった事も含め……大分参っている様子だ。
「……ラウラさんは、学生…ですか?
‥‥…いえ、すみません。この島にいるなら学生か、教師かのどっちかですよね…
…‥‥あの、どうして僕に…声を?」
■ラウラ・ニューリッキ・ユーティライネン > 「レオさんですか。お互い名前が長いですね。
レオさんって呼んでいいですか?私のことはラウラと呼んでください」
彼の名前を聞いて、ちょっと笑ってしまった。
この国にいると、私の名前はだいぶ長い方だ。
しかし彼の名前も私に負けず長い。
「ええ、一応学生です。
残念ながら人に何かを教えられるほどの技能は持ち合わせていないので」
教えられることがあるとするならば、それは戦争のやり方くらいなものだ。
「どうして、と言われると少し困るのですが……。
レオさんが訓練しているのを見てたら、身体を動かしたくなったので」
もともと身体を動かすのは好きですし、得意でしたから。
そんな風に答えると、彼の顔を見た。
随分と落ち込んでいるようで、
声をかけたのは不味かったかな、なんて思いはじめる。
「その……随分やつれているように見えますけど、
何かあったんです?」
そんな状態で訓練だなんて。そう付け加えて>
■レオ >
「…あぁ、大丈夫ですよ。
…そうですね、お互い長い名前で……」
自分もよく名前が長いとは言われる。
極東の人が多いのもって、外国性の名前は長く感じられるのだろう。
「…そうですか、それは…すみません。
お付き合いできればよかったんですが……
…ちょっと、仕事で色々ありまして。
どうすればいいんだろうって…悩んでいまして。
体動かせば気もまぎれるかなって思ったんですけど……今日はちょっと、逆効果だったみたいで。
…すみません、風紀委員がこんな顔していたら不安にさせてしまいますよね」
なんとか作ろうとした笑みは、笑み…と言えるかも怪しいほどにぎこちなく。
次の瞬間にはため息と共に消えてしまうだろう。
こんな調子でいてもどうにもならない、というのは分かっている筈なのに…
■ラウラ・ニューリッキ・ユーティライネン > 「逆に、名前が長いと短く愛称で呼んでくれるので、
私みたいに人見知りだったりすると助かることもあるんですけどね」
なんて苦笑いとともに答えて見せる。
もっとも、人見知りだと自己紹介だけでも地獄だったりするので、
短い名前をうらやましく思うことも珍しくないが。
「いえいえ、いきなり声をかけたのは私ですし、
むしろその……忙しい時にごめんなさい。
風紀委員のお仕事ですか。
大変そうですよね、風紀委員。
知り合いにも一人、風紀委員がいますけど。
何ていうかこう……嫌われ役というか。やり方が過激というか」
少し言葉を選んで話をする。
その知り合いとやらにももう半年近く会っていない。
彼は元気にしているだろうか。
「そんな。気にしすぎですよ。
風紀委員だって人間、落ち込んでしまうことがあって当然です。
軍人ですら泣き言をいう時があるんですから」>
■レオ >
「ありがとうございます。
…やり方が過激、か」
励ましてくれる彼女に、お礼を言ってから彼女の言葉に反応をする。
過激な人。
自分が憂いている先輩も、同じような人だった。
その過激な考えは、確かに間違っていない部分もあるのだろうが。
しかし今起き始めている問題は、確実に事態が悪い方向へと転がっていっており……
「……過激なやり方も、必要な時はありますから。
やり過ぎたら、駄目ですけれど‥‥
風紀の知り合い、ですか……なら、多分僕の先輩にあたる人なんでしょうね。
僕……この島にきてまだ2か月程なので。
その二か月で、色んな先輩によくしてもらって。
…ただ、その。
よくしてもらっている先輩の中に…最近少し、動向が怪しい人がいて。
ちょっと…不安で」
詳しい内容を話す訳にはいかないので、一部ぼかして話をする。
そもそも、初対面に話すような内容でもないのだが……
しかし口に出しでもしなければ、このもやもやが晴れない気がした。
藁にも縋る思い…という奴だった。
■ラウラ・ニューリッキ・ユーティライネン > 「ええ、必要な時もあると思います。
話し合いで済むなら、この世界はもっと平和になっているはずですから」
そう、平和になっているはずだ。
そういう世界になれたなら、
彼が訓練する必要も、私がこの銃を担ぐ必要もないのだから。
「……ただ、それには正当な理由と、
盤石な制御があって初めて容認されると思います。
絶対的な力があれば、そもそも争いなんて起きない。
弱いのが悪い。
でも、そこに自制心がないのなら、それはただの暴力です。
だから、私はその知り合いのことがあまり好きじゃないんです。
喧嘩して、半年くらい話してません。
だから、レオさんの気持ちは、少しわかる気がします」
彼の話に頷きながら、抱えていたギターケースを撫でた。
「その先輩とは、その不安なことについてお話したんですか?
なんていうかその、腹の内をお互いに確かめたんですか?」>
■レオ >
「…いえ、まだ。
なんとなく、話しかける機会がなくて……少し避けてるのかもしれません、僕の方が」
俯いて、返事をする。
その人は自分の身近な人と深い関わりを持っている…”持っていた”人で、何より同じ風紀委員だ。
”機会”なんて…こじつけようと思えばいくらでもこじつけれる。
なのに、それをしない。
それは無意識に避けているという事なのかもしれない。
「…本当は話した方がいいのかも、とは思うんですが。
なんていえばいいのか……
そもそも、言葉で分かってくれるなら、もう色んな人から言葉は受け取ってると思うんです。
僕は、その先輩と本当に仲のいい……心配してくれる人も、知っているので。
……だから、会って、どうすればいいのか分からなくて。
何よりそれで今、ちょっと……色んな不安が増えてきていて。
止めないといけない、って思って‥‥でも止める方法も見つからなくて。
……そんな事ばかりずっと考えていて」
熱が引いて、汗で濡れた体が寒さを訴えはじめながらも。
もやもやとした感情に引っ張られているかのように、動きだす事がひどく億劫になる。
前に進んだ、と思っていた。
でもそれは自分だけの話。
自分はこの二か月、激動と言うのがふさわしい日々だったから、そうあっただけ。
新しい環境に身を置いて、新しい出会いをして……良い影響をもらったから、前に進んでいるだけ。
他の人は、ちがう。
もっと緩やかかもしれないし、もっと複雑な問題があるかもしれない。
それは自分の手だけじゃどうしようもならないし、そもそも自分にそれをどうする等という権利はない。
頭では分かっている。
分かっているつもりなのに……心だけが、晴れない。
■ラウラ・ニューリッキ・ユーティライネン > 「そうですか。
いや、難しいですね。親しい人ほどそう言う話は切り出しにくい。
……その、レオさんはその先輩への気持ちは、
同僚として抱いている気持ちですか?
それともいち友人としての気持ちですか?」
ああ、戦場にでたばかりの新兵が良く陥る状態だ。
彼の話を聞いて、勝手にそんなことを思った。
昔、こんな風に悩む兵士をたくさん見てきた。
「もし、話さないといけないとわかっていて話しづらいなら、
レオさんは同僚として話すべきです。
その先輩が、上からの指示で動いていたなら別ですが、
そうではなくて、暴走してその不安な気持ちを抱いているなら、
――組織の人間として、私情を殺すことだと思います」
あったばかりの青年に、残酷なことを言ってしまった。
ただ、他人事のようには思えなかった。
軍属として、彼の言葉に対して言えることがあるとするなら、
このくらいだろう。>
■レオ >
「……」
同僚か、友人か。
あの人との関係性はどっちなのだろう。
自分にとっては、先輩だった。
ただ。
問題は……彼女の言葉の中にもあった。
「……多分。
その先輩は…上の命令で動いていると、思います。
それを……殺しを本当に好む人では、ないと思っています。
そうじゃなかったら、あんな事をやるとは思えない……少なくとも、僕は…
でも、だからこそ……難しくて」
上からの命令だから。
それを拒否するのは非情に難しい事であるのは、自分だって分かっている。
分かっているから、どうすればいいのか分からない。
「……僕はその人と親しい先輩とも、懇意にしてもらっていて。
彼女が、その人の事を大切に思って、心配してる事も知っていて。
心配で体調を崩してしまったり、こっちの方が見ていて心配になったりもするんですが……
……そういう状態なので」
あの二人の向いてる向きは致命的な程にすれ違っていて。
一緒にいるべきじゃなかったのではとすら思えてしまう時もあって。
一度交わったからこそ、それが絡み合ってどうしようもなくなっている。
「他にも色々、憂いてる事はあるんですが……だいたい、こんな所です」
言葉にするたびに、気が沈む。
解決の糸口が見つからないという不安が、浮彫になっていくようで。
■ラウラ・ニューリッキ・ユーティライネン > 「なら――レオさんは風紀委員として動くか、
風紀委員をやめて友人として動くか、じゃないでしょうか。
その先輩の行動が上からの命令なら、
それを止める権限は”風紀委員の”レオさんにも、
その先輩にもありません」
――組織って、そういうものです。
「組織にいる以上、私情は殺すべきです。
そして、上からの命令であれば、
その命令が組織として間違っていると、示す必要があります」
――私情で組織が動いたのでは困るのですから。
「その先輩のためにも、その先輩と親しい人のためにも、
レオさんは”風紀委員として”話すのが良いんじゃないでしょうか。
命令が不適切だと示せれば、命令で動いている先輩は止まるんですから」
――組織って、そういうものです。
「……もし不快じゃなければ、私の手を握ってくれませんか?」
そういって、彼に手を差し出した。
もし彼がその手を握ってくれるなら、
被っていたキャップを押し上げるように白狐の耳が生えて、
彼の不安が幾ばくか落ち着くだろう。
根本的な解決にはならないが、楽にはなるはず、そんな思いだった>
■レオ >
「命令が不適切なら、か……」
それを示す方法を、探さないといけない。
分かっててやってる人なら、猶更。
間違っているのを自覚していないのなら、幾分かマシだ。
間違っているのを自覚しているのであれば、それを正すのは難しい。
いや…どちらも同じかもしれない。
人を正すなど、変えるなど…そう簡単にできるものではないのだから。
「…すみません、変な話しちゃいまs……え?
手、ですか…?」
おずおずと、手を差し出す。
掌の汗はもう既に乾いてしまって、堅く、肉刺をなんども潰してできたごつごつとした感触が伝わるだろう。
「こう、ですか?
と……え?」
見える、獣の耳。
亜人種か?なんて考えを巡らせるよりも先に……
何かが、伝わる。
心とは複雑で、バネによく例えられる。
重りで伸び切ってしまったバネならば、重りを外しても元には戻らない。
もう既に重りそのものを取り除いても、意味がない所まで来てしまっているから。
でも、伸び切っていないのであれば。
重りが軽くなれば、その分だけバネは元に戻ろうとする。
それが例え、重りそのものがなくなっていなくても。
軽い支えがあれば、少しだけ、元に戻る。
青年の悩みは直ぐには解決する事はできず、何より何故そうなったのかすらいまだ不明瞭だ。
霧がかった夜の森を彷徨うが如く、右も左も分からなければ、足元に何が蠢くかも分からない。
でも、だとしても。
『組織として間違っていると示す』という言葉と、その手の不思議な力は…一つの道を、光明を見せる事は出来ただろう。
それをどうやって示すのかは、まだ分からないけど。
それだけではまだ、足元まで照らすには小さすぎるけど。
少なくとも目標は、見えた気がした。
「――――――」
何より。
”握った手が、とても……安心できた”
不思議な感覚。
根本の解決には、至らない。
ただ、手を握られただけで、まるで特別な誰かに触れ合うかのように……心が少し安らぐのを感じた。
■ラウラ・ニューリッキ・ユーティライネン > 「はい、上からの命令に従うだけが組織じゃないですよ。
現場が、末端が、その命令が適切かどうかフィードバックする。
それが軍隊――じゃなくて、組織というものだと思います」
もし、その先輩という人物が、組織の命令という呪いにかけられているのなら、
そうやって呪いを解いてやる他ないのだろう。
間違っている自覚があってもなくても、
本人にはどうしようもないのだろう。
呪いとは、そういうものだから。
「いえいえ、レオさんのような”新人”をたくさん見てきましたから。
私が直接、不安の解決のお手伝いができるとは思えませんが」
――その心をいくらか軽くするくらいなら。
彼の手は私の手よりも一回り大きくて、
重ねられると私の手はすっぽりと隠れてしまった。
私の手は、機関銃を握り続けてきたせいで、
同年代の女の子に比べると信じられないほど硬くなっている。
しかしそれに負けないほど、剣を振るって訓練してきた彼の手は、
ごつごつと硬くて痛々しい。
まるで、心の重荷を静かに表すように。
「笑えるといいですね。
レオさんも、その先輩も、その先輩と親しい人も」
笑えるようになったら、手合わせ、お願いしますね?
人見知りなりにニッコリと笑えば、そっと手を離した。
「それじゃあ、私は帰りますね。
お話聞かせてくれて、ありがとうございました」
椅子から立ち上がってギターケースを担ぐと、深々と例をする。
気付けばキャップを押し上げていた白狐の耳は消えていた。
そうして頭を挙げると、少し恥ずかしそうにしながら訓練場を後にするのだった>
■レオ >
「そう、ですね……
ありがとうございます、ラウラさん…
少しだけ……気が晴れた…かもしれません。」
まだぎこちなく、無理をしているような笑み。
だけど、笑みが作れた。
さっきまでは、それすらおぼつかなかったのに。
本当に、すこしだけ。
でも確かに、気は晴れたのだ。
「―――はい、その時は…今日の埋め合わせを。
訓練室はよく来るので、顔を合わせる機会も多くなるでしょうし」
少し恥ずかしそうに去る彼女を見送りながら、握った手を開いたり閉じたりして、確認をする。
何か…何かが、あった。
それは優しい何かで、確かに僕の不安を和らげた。
…あれは、何だったのだろうか。
今度会った時は、聞いてみよう。
…それにしても。
「軍隊‥‥…か。
―――――随分懐かしいな」
あの人”も”、昔いたんだろうか。
僕はあまり良い思い出はないけれど。
ご案内:「訓練施設」からラウラ・ニューリッキ・ユーティライネンさんが去りました。
ご案内:「訓練施設」からレオさんが去りました。